日本映画・邦画

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ナショナルアンセム

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NATIONAL ANTHEM
2003年/日本/100分
監督・撮影・編集:西尾孔志
音楽:小林祥夫
出演:小島祥子、和田純司、鼓 美佳、渡辺大介、中村哲也、三嶋幸恵、宇野祥平、ほか
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友人のすすめがあってDVDで鑑賞。 まず、奇怪なタイトル「ナショナルアンセム」に喰いつく。この「政治ネタ」を話すことが禁止され、逮捕されかねないようなこの社会のなかで「君が代」を映画のタイトルにつけるとは。ひとまず少し前に話題となった「太陽」「靖国」などを連想しつつ鑑賞することに。

結果的には、この映画のスケールの大きさ、威厳の高さに、最近の映画を観すぎて忘れかけていた「大きさ」のようなものを思い出すことができた。

「映像」と「プロット」と「テーマ」が発酵するほど練られており即座に脱帽。監督はこのテーマだから燃えたのかはわかりませんが、冒頭から「はっきりとはわからないながらも、次に何かを感じさせる「映像=時間」作りには巧妙な「サスペンス」の手法を感じさせた。

個人的にはテレビなどでは扱うことのないテーマの映画=フィクションを期待したいけれども、この映像演出の手法を使えば、すぐさま「ユージュアル・サスペクツ」のようなよく練られた脚本を感じさせる映画を撮れてしまいそうに感じる西尾監督に才能を感じないわけにはいかない。

ところどころに見られた「ドラクロワ」の絵画をチープな小道具で(黒いビニルゴミ袋、など)で再現するところにも小規模映画ファンとしては「ぐっ」としてしまいます。個人的には映画製作のモチベーションがあがる映画。次回作にも期待です。


「ナショナルアンセム」配給サイト【UPLINK】
http://www.uplink.co.jp/webshop/log/003320.php

闇の子供たち

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2008年/日本/138分/PG-12
監督・脚本:阪本順治
原作:梁石日
主題歌:桑田圭祐
出演:江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡、佐藤浩市、鈴木砂羽、ほか

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人身売買をテーマにした社会派映画。
この作品もたしか2008年の秋ころに池袋ロサで鑑賞。

この映画は「社会派」映画ではあるが、一見それを感じさせないところに工夫がある。

第一に、原作の梁石日さん。「血と骨」(監督:崔洋一)など他の映画化された作品もそうですが、「フィクションとノンフィクションの境」を追求しながら結果的にエンタテイメント性のある小説に仕上げる作風によるもの。彼は彼なりの真摯な考えをもって作品を発表していると思うが、生真面目で杓子定規なドキュメントと比べれば、作者自身の脚色が入った作品に仕上がっているととは否めない。このあたりに梁石日作品の魅力のひとつがあるように感じる。

第二に、ポスター等のビジュアル展開。まずもって、テレビドラマでよく見かけるこれだけの俳優陣(江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡、等)の顔を見せられて「目を背けたくなるような痛々しい現実」を突きつけられ続けるとはだれも思わないだろう。簡単に言うと、本来は、所謂「タブー」もテレビなどで知られた顔の俳優が演じれば、流行=大多数という意味のバイアスでそれでなくなる。しかしこの作品は坂本監督の確かな演出によってその安易さを突き抜けている。

同時に残念なのは、見終わったあとに「この映画すごくいい映画だけど流行らないだろうな」と感じてしまったこと。なんというか、受け入れられにくいモチーフであっても、作品自体に想定を超えたパワーのようなものがあれば、このようなことは気にならないような気がするからである。ただこの作品の力は、監督をはじめとするスタッフや出演者の想いや熱意だけでは打破できないものであるように感じる。これは製作者の映画映像にたいする美意識の問題かもしれないし、制作費や照明の問題かもしれないし、その状態を作るための社会の景気なのかもしれないし、それこそ選挙やサッカーのように投票者やサポーターのような想定観客によるものなのかもしれない。いずれにしても気概のある一本。

「闇の子供たち」公式サイト
http://www.yami-kodomo.jp/

トウキョウソナタ

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Tokyo Sonata
2008年/日本/119分
監督・脚本:黒沢清
脚本:マックス・マニックス、田中幸子
撮影:芦澤明子
出演 :香川照之、小泉今日子、小柳友、井之脇海、井川遥、津田寛治、役所広司、他

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この作品は去年の秋頃、たしか恵比寿のガーデンシネマで観ました。ブログはすっかりご無沙汰でしたが、映画自体もすっかりご無沙汰となってしまっていました。

黒沢作品はいつも楽しみにしているが、個人的にはこの作品もその期待を裏切らなかった。ただ想像以上にユーモラス、というか、笑わせる台詞まわしが多く、黒沢監督の新境地というべきか、脚本家によるところが多いのかはわからない。ただ、黒沢映画にユーモアの要素が入っても「メジャー感」は出ないことを確認することができた。監督本人はアメリカ映画を好んでいるようだが、受け入れられやすいのは欧州圏のような気がする。こういったところも私が黒沢映画を好きな所以なのかもしれない。

俳優陣では香川照之さんが相変わらずいい味を出していた。プロット的には公開は一年前の作品ですが、つまり製作準備から数えると数年前のネタのはずですが、昨今の不景気事情を鑑みても香川さんのような「総務課長」は現在も進行形のような気もしてしまうのはさみしいところ。

部屋のシーンで「ひぱって」と言う小泉今日子さんの台詞が印象的。

2008年カンヌ国際映画祭「ある視点」審査員特別賞受賞作品


「トウキョウソナタ」公式サイト
http://tokyosonata.com/

Tokyo_Sonata.jpg

けものがれ、俺らの猿と

けものがれ、俺らの猿とけものがれ、俺らの猿と
Getting wild with our monkey
2000年/日本/107分
監督:須永秀明
原作:町田康
脚本:木田紀生、久保直樹、撮影:北信康
出演:永瀬正敏、鳥肌実、小松方正、車だん吉、ムッシュかまやつ、他
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なんとも不思議な映画。 監督の須永秀明氏はPV出身の方のようですが、意外とコテコテのPVっぽさはない。むしろ映画っぽい映画。

全編を通じて「鳥肌的」な緊張感がみなぎっているが、個人的には何故か癒される。

どうもテンション=緊張感の高さが想像の範囲を超えていると、観ている側はその緊張感を背負う必要がなくなる、ということを発見できた映画。

原作は読んでいないが、これまた不思議と、映画は面白かったものの「原作を読もう」という気にさせない不思議な映画。

こんな映画のスタッフに加わりたいものです。

ツィゴイネルワイゼン

ツィゴイネルワイゼン デラックス版ツィゴイネルワイゼン デラックス版
1980年/日本/145分
監督:鈴木清順
製作:荒戸源治郎
原作:内田百間(「サラサーテの盤」)
脚本:田中陽造
撮影:永塚一栄、音楽:河内紀
出演:原田芳雄、藤田敏八、大谷直子、大楠道代、麿赤兒、樹木希林、他
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初めて観たのはたしか大学1年生時。この映画はロードショーは、「赤目四十八瀧心中未遂」の荒戸源治郎氏などによって、プラネタリウムのような感じで上映され当時話題となったらしいが、是非、今、そんな形で上映される機会があれば脚を運びたいもの。

特に印象的なカットは大谷直子さんが「ちぎりこんにゃく」をちぎるシーン。「赤目・・・」ではたしか「肝」か何かだったが、「生々しい造形の食べ物」が映画の雰囲気と相まって何とも言えない効果を出しているように感じる。

何度観ても脚本的に「解釈不能」に陥るが、それはこの映画が解釈を求めていないからのような気がする。同じことは他の鈴木清順監督作品の「大正浪漫三部作」にも通ずる。

「日常的な妖艶さ」をどっぷりと表現するには、つじつまを合わせるような明確なプロットは必要がないことを学んだ映画。

この映画の原田芳雄バージョンのポスターを部屋に貼っていると、部屋の雰囲気ごともってかれる感アリ。

最近はこの「ツィゴイネルワイゼン」などの三部作は、スチールを見ると「新しい」印象を覚え、十代などの若者の支持も得られるように感じるが、映画の中身をじっくり観ると、やっぱりかなりディープ。

世界の終わりという名の雑貨店

世界の終わりという名の雑貨店世界の終わりという名の雑貨店
2001年/日本/94分
監督・脚本:濱田樹石
原作:嶽本野ばら(小学館刊『ミシン』収蔵)
脚本:鷲見剛一
撮影:大橋仁
出演:西島秀俊、高橋マリ子、真行寺君枝、益富信孝、川合千春、他
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主演はたしかこの頃、「J-PHONE」のCMやモデルなどで脚光を浴びていた、高橋マリ子さんの、おそらく映画初主演作。相手役には「脚本で出演する作品を選ぶ」という西島英俊さん。そして、原作は最近、新宿三丁目で「大麻所持」か何かで逮捕されてしまった嶽本野ばら氏。

原作とキャストの組み合わせとして、大いに興味を惹いた作品だった。制作に「小学館」が入っていることからも「原作ありき」の映画。

そのせいかどうだかはわからないが、なんというか映画的な魅せ方に乏しい映画なような気がした。たしかどこかの映画祭で監督は新人賞か何かを取ったらしいが、一般の観客が観るには正直しんどい映画だと思う。

ただ、原作(「ミシン」に収録)や嶽本野ばら氏のファンならば楽しめるはずではある。高橋マリ子の存在感が初々しい。

お葬式

伊丹十三DVDコレクション お葬式伊丹十三DVDコレクション お葬式
1984年/日本/124分
監督・脚本:伊丹十三
撮影:前田米造、助監督:平山秀幸
出演:山崎努、宮本信子、菅井きん、大滝秀治、奥村公延、財津一郎、江戸家猫八、友里千賀子、尾藤イサオ、岸部一徳、津川雅彦、横山道代、小林薫、池内万平、西川ひかる、海老名美どり、津村隆、高瀬春奈、香川良介、藤原釜足、田中春男、吉川満子、加藤善博、関弘子、佐野浅夫、関山耕司、左右田一平、利重剛、井上陽水、黒沢清、笠智衆、他
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思えば謎の飛び降り自殺からはや10年が経った、伊丹十三監督の第1回監督作品。

序盤のCM監督役で出演していた黒沢清監督が若々しかったのが印象的だったが、宮本信子さんや岸部一徳さんやその他の出演者全員の肌艶がよく、それだけで微笑ましい感じだった。

映画はなんというか「アート・シアター・ギルド」風で、俳優出身の監督の割には、まず、カメラワークや作画にその意欲を感じた。

製作から25年近くたって観ても、古めかしさはもちろんあるが、十分に観れる作品。

この映画の製作時には伊丹氏は50歳過ぎ。マルチタレントのはしりにとどまらない年齢だ。フランスのヌーヴェルヴァーグの一人とされるエリック・ロメールもたしか40歳過ぎて「獅子座」を撮っていたような気がする。彼は「カイエ・デュ・シネマ」の編集?をしていたようだが、壮年になってから映画をとるようになった巨匠たちは、振り返って作品群を眺めるとさすがにまとまりがある感が強い。

当時、青姦シーンに対するクレームはあったようだが、言ってしまえば、この作品の客層はおそらく広かったので、こんなエロシーンで喜ぶ人はいても不快に感じる人が多かったのも予想できる。東京ディズニーランドで青姦していたら、クレームをつける人も少なくないことが想像できるのと同じである。

それと、監督の存命中はどちらかというと、興行的に成功していた妬みからかどちらかと言うと「しゃくに障る」監督と感じていたが、この「お葬式」を改めて観ると、監督の映画に対する情熱と可能性をビシビシと感じ、個人的にはそういう意味で刺激のある作品だった。

なんというかアンダーグラウンドなものが、陽の目を見ると不当ともいえるところで非難されることを思い起こさせた作品。

ゲルマニウムの夜

ゲルマニウムの夜 デラックス版ゲルマニウムの夜 デラックス版
The Whispering of the gods
2005年/日本/107分
監督:大森立嗣
製作総指揮:荒戸源次郎
原作:花村萬月「ゲルマニウムの夜」(文藝春秋)
脚本:浦沢義雄
音楽:千野秀一
出演:新井浩文、広田レオナ、早良めぐみ、木村啓太、大森南朋、大楽源太、山本政志、三浦哲郁、麿赤兒、石橋蓮司、佐藤慶、他
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当時は公開前だったが、ひょんなことから五反田のイマジカの試写室でこの「ゲルマニウムの夜」を観ることに。

荒戸源次郎プロデュース作品は「ツィゴイネルワイゼン「陽炎座」「夢二」」の大正ロマン三部作や「赤目四十八瀧心中未遂」(監督作品)などが特にお気に入りだったので、期待して観てしまった。

印象としては、ピュアかつコアな感じ。過剰を抑えたストイックな演出が印象的。なんというか観ていてペニスが「キュン」となった珍しい映画。

この作品は上映前から、上野公園内の「一角座」のみで、半年以上上映することが決まっていたが、単館で長くやるのが現在の日本の映画界に対する挑戦なのは疑問だ。作り手としては映像も音も支配したいしたいことは吝かでないが、長い期間上映してくれるのは嬉しいばかりだが、観る側から考えると「上野まで脚を運べ」というのは東京圏内で生活していない者をないがしろにしているように感じられる。上映形態に関しては謎が残る作品だが、映画は人間の「余白」を感じる自分好みの作品で大満足。

個人的に荒戸源治郎映画事務所に関わることができなかったのは残念だが、別の機会を自分で作っていかなくてはいけない。

内容的には「ラジオの音?」の存在が気になる。映画でそれを聞かせないのはとても安直な解決策なので、お金を払って観るんだったら大森監督の「あっと驚く」演出も観てみたかった。

原作の花村萬月氏は他には、最近は特に「読み物的」な作品を量産し続けているが、この作品は珍しく作者の本気モードを感じる作品で、かつ、芥川賞受賞作品。

「ゲルマニウムの夜」公式サイト
http://www.aratofilm.com/index.htm

SURVIVE STYLE 5+(サバイブ スタイル)

SURVIVE STYLE 5+ プレミアム・エディションSURVIVE STYLE 5+プレミアム・エディション
サバイブ スタイル 5+プレミアム・エディション
2005年/日本/120分/PG-12
監督:関口現
企画・原案・脚本:多田琢
撮影:シグママコト
音楽:JAMES SHIMOJI
出演:浅野忠信、橋本麗香、小泉今日子、阿部寛、岸部一徳、麻生祐未、貫地谷しほり、神木隆之介、津田寛治、森下能幸、Jai WEST、荒川良々、ヴィニー・ジョーンズ、三浦友和、千葉真一、他
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こういうシークエンスというよりカットで魅せる感じの映画はあまり好みではないが、「鮫肌男と桃尻女」などのイケてるCM製作者が作る漫画のような映画は何度みても「個人」というよりは「社会」の歪みや病みを感ぜずにはいられない。

個人的なそれはそれなりにシンクロできますが、社会的なそれは、なんというか、アクの強い広告代理店のように手のつけようがない、ような印象を持つ。それはちょうど、PV製作者たちが実際のファインアートなどのアーティスト達よりもアーティスティックな風貌であることなどと似ているような気がする。

なんというかCM出身の人の映画って悪い意味で人間描写が表層的な気がしてしまう。世界には哲学だって歴史だってあるのに、「そんなものは存在しない」かのような軽い振る舞いに、「できそこないのアメリカ」感が生まれるような気がする。

ポップになりきれないけれど、表層的にしかモノを考えることができないから=もとめられていないから、メッセージ、というかテーマ、というか、人間描写が画一的に見えてしまう気がする。

とはいえ、もう定着しているのかもしれませんが、良くも悪くも、今までの日本映画に対して一石を投じている作品群ではあるとは思う。「新感覚」というより、なんというか金持ちでオシャレなアッパークラスの日本人向けの映画なのかな。それか学生向け。

「SURVIVE STYLE 5+」公式サイト
http://ss5.goo.ne.jp/

ストロベリーショートケイクス

ストロベリーショートケイクスストロベリーショートケイクス
Strawberry Shortcakes
2006年/日本/127分/R-15
監督:矢崎仁司、製作:浅井隆
原作:魚喃キリコ「strawberry shortcakes」(祥伝社)
脚本:狗飼恭子
撮影:石井勲、音楽:虹釜太郎
出演:池脇千鶴、中越典子、中村優子、岩瀬塔子、加瀬亮、安藤政信、趙民和、他
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大学時代の学園祭の時にサークルで「三月のライオン」の上映を行い、その時にたしか監督を囲んで飲んだ記憶がある、矢崎仁司監督の最新作。

「花を摘む少女と虫を殺す少女」は観れていないものの、なんというか、私にとっての映画の原風景のような監督。

この作品を観ると、ことごとく「男」が出てこない。趙方豪さんの死後、男を撮るのはやめてしまったのかと、勝手に心配になったり。

単に美術の問題かもしれませんが、画が「矢崎監督作品」という感じがあった割には、画のつなぎは「新鮮」というよりは「ぎこちない」気がしたが、原作は魚喃キリコ氏の同名漫画であったことを、見終えてから思い出すことに。

個人的には女性のヌードやセックスシーンは大好きなので、とりあえずそんなカットは嬉しいが、やはり、プロットの設定にリアリティーを持たせるヌードは、役者的にはいいのかもしれませんが、なんというか「想定の範囲内」な気がする。やっぱり「無駄脱ぎ」でないどぐっと心を奪われることは少ない。

そういう意味では「中越さんや池脇さんも当たり前のように脱いでくれたらもっと良かったのに。」という気持ちはあるが、こういう「女の子が夜中に独りで観る映画」は、その作品のクオリティーに関わらず興行的には赤字になってしまうんだろうな、などと考えると俄然応援したいような気持ちになる。

矢崎監督の幻想=フィクションが、「魚喃キリコ」という価値を通して、
社会と折り合いをつけたような印象。嬉しいような悲しいような。

「ストロベリーショートケイクス」公式サイト
http://www.strawberryshortcakes.net/

バッシング

バッシングバッシング
Bashing
2006年/82分/日本
監督・脚本:小林政広
助監督:川瀬準也
撮影:斉藤幸一
編集:金子尚樹
出演:占部房子、田中隆三、香川照之、大塚寧々、加藤隆之、本多菊次朗、板橋和士、他
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以外とたくさん観ている小林政広監督作品。「海賊版 ブートレッグフィルム」「クロージングタイム」「女子社員愛欲依存症」「殺し」などの監督作品以外にも脚本参加として「夢ならさめて」「でらしね」「LUNATIC ルナティック」など多くの作品がある。

個人的には「海賊版=BOOTLEG FILM 」でガツんと捕まれ、それ以降、その監督名のクレジットを見つけられれば観るようにしている数少ない監督のひとり。

しかもこの作品は「半ドキュメンタリー」というか私が一番興味深く感じる分野、「ドキュメンタリータッチのフィクション」であったことからして思わず食いついてしまう。なんというか、例えばヒューマニズムのようなものを美化するようなことはなく、中立的な視線で映画が撮られているため、見終えたあとに自分の頭でいろいろ考えることができる、ありそうで、なかなかない映画。

個人の行動が国益に関与するようなことは、あまりないことだと思うが、この事件?の時には起こってしまった。当時の国民のバッシングはナショナリスティックな気がするが、想定外のことにヒステリーを起こしたにすぎないような気がする。「マスコミがおかしい」といっても、マスコミは視聴者・読者が求めているものを書き立てるわけだから、国民の意識の持ちようがバッシングを是認しているように思う。

「なれあい」は得意でも「責任」の意味を知らない日本人が、「自己責任」なんて言ったところで言葉が先走るだけだ。言葉の意味も分かっていない政治家などの発言があるのは、本来あり得ないことだし、それを堂々と報道するマスコミにも罪はある。しかもその報道を疑う意識を持たずに信じてしまう人々の多さにはもう脱帽するしかない。この映画が無能社会の循環を止める、ささやかなストッパーになることを願ってやまない。

久しぶりに大塚寧々さんを観ましたが、しっとりとした物腰が印象的だった。主演の占部房子さんは「ジュリエット・ビノシュに似ているなぁ」と一度思うと、それ以外には見えなくなる。そう思いはじめるとこの映画は「日本映画」というより「フランス映画というかヨーロッパ映画」のように見えてくる。「パリのシネマテークでこんな映画が上映されていそう」などと思ったり。

「バッシング」公式サイト
http://www.bashing.jp/

パビリオン山椒魚

パビリオン山椒魚 プレミアムエディションパビリオン山椒魚 プレミアムエディション
2006年/日本/98分
監督・脚本:冨永昌敬
製作:松下晴彦、御領博
撮影:月永雄太
音楽:菊地成孔
出演:オダギリジョー、香椎由宇、高田純次、麻生祐未、光石研、KIKI、キタキマユ、斉藤陽一郎、杉山彦々、津田寛治、他
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率直なところ好きな映画だったが、観ていて入り込めず、不思議とあまり楽しめない映画だった。自分が作ってみたい映画と、観て楽しめる映画に隔たりがあることを今更ながら発見することに。

富永監督の「亀虫」は漫画家の安彦麻理江さん見たさに観ていたが、こんなに注目される監督になるとは気づかなかった。

この「パビリオン山椒魚」を観ていて思い出したのは後期鈴木清順作品。斉藤陽一郎さんなど青山組の影響が強いののかと思いきや、かつての荒戸源治郎プロデュース作品を観ているようなところが印象的だった。

映画にのめり込むにはある程度ディープで複雑な世界が必要でかつその世界に軽快さを同時に含ませるのは困難だな、など考えさせられた一本。

やっぱり「表層的な解釈と裏の解釈」というように分けられたものではなく、観たとおりの画が、深くもあり浅くもあるような映画を作りたい、と思うが、これに一番近いのは、「希望を感じるドキュメンタリー作品」なのだろうか。

「パビリオン山椒魚」公式サイト
http://www.pavillion.jp/

血と骨

血と骨 コレクターズ・エディション血と骨 コレクターズ・エディション
2004年/日本/144分
監督・脚本:崔洋一
原作:梁石日
脚本:鄭義信
撮影:浜田毅、小泉篤美
出演:ビートたけし、鈴木京香、新井浩文、田畑智子、オダギリジョー、他
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まさに「血と骨」という感じの映画。想像以上に俳優北野武の魅力が満載の映画だった。と同時に「在日もの」と考えたら原作・脚本・監督、と最高のスタッフで作り上げた感もある。

個人的にはルビィ・モレノさんが主演の「月はどっちに出ている」でもそうだったが、崔洋一監督作品は作品の中に入るのを拒まれている感じがする。

監督を始めとするスタッフや出演者などが一丸となって、情熱的にその気になって良い映画を目指していることは、画から伝わってくるが、自分の中までは浸透してこない。「在日はこんなに大変なんだ!」と叫ばれてピンときません、というような感じを受けてしまうのが正直なところ。

なんというか、どうせいい映画を作るのならば、キューブリック監督などのように、その倫理観自体を宙づりにするような、もっと普遍的な視点で作品を撮れれば面白くなると思うのはキューブリックファンの私だけでしょうか。

春の雪

春の雪春の雪
2005年/日本/150分
監督:行定勲、原作:三島由紀夫
脚本:伊藤ちひろ、佐藤信介、撮影:李屏賓
出演:妻夫木聡、竹内結子、高岡蒼佑、スウィニット・パンジャマワット、アヌチット・サパンポン、及川光博、田口トモロヲ、高畑淳子、石丸謙二郎、宮崎美子、柄本佑、少路勇介、朝倉えりか、上杉二美、小堀陽貴、志田未来、田中千絵、三谷侑未、徳井優、中原丈雄、石橋蓮司、山本圭、真野響子、榎木孝明、大楠道代、岸田今日子、若尾文子、他
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三島由紀夫原作映画ということで鑑賞。原作は読んでいませんが「森田芳光監督の夏目漱石原作の『それから』のようにすばらしい文藝映画なこともあるかもしれない」ことを若干期待してみたものの、この勝手な期待は裏切られることに。

話によると主演の竹内結子さんはこの映画の撮影中に実際に妊娠なさっていたようですが、主演女優を魅力的に美しく撮るのは監督の役割なので、この映画は現場でO.K.を出している監督の姿が浮かばない珍しい作品だった。

そうそうたる役者陣が出演している割には、妻夫木聡さん、竹内結子の主演2人にはがっかりする場面が多かった。妻夫木さんの英語は「意味はわからないけど、音で覚えました」という感じがして短い台詞でも見ていて恥ずかしくなることは避けられなかった。これも行定監督がどんな感じでO.K.を出していたんだか想像できない。

個人的には及川光博さん、田口トモロヲさんの演技に目を奪われた。それと、大楠道代さん、岸田今日子さん、若尾文子さん。伏し目がちになるだけでその奥ゆかしさと多くを語ってしまう佇まいには脱帽。

海猫

海猫海猫
2004年/日本/129分/R-15
監督:森田芳光
原作:谷村志穂「海猫」(新潮社)
脚本:筒井ともみ
撮影:石川稔
音楽:大島ミチル
出演:伊東美咲、佐藤浩市、仲村トオル、ミムラ、小島聖、角田ともみ、蒼井優、鳥羽潤、深水元基、三田佳子、白石加代子、他
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「のようなもの」「家族ゲーム」「失楽園」「阿修羅のごとく」などの森田芳光監督の、ある意味「今時には珍しい純愛映画」。

作品を鑑賞すると、良くも悪くも「昭和の漁村」ってこんな感じだったんだろうなぁ、ということを思い起こさせる作品。音楽で言えばこぶしがきいた感じ。

でもやっぱり「今、何故この作品なんだろう」感は否めない気がする。びっくりする程「保守的」を絵に描いたような村社会の悲劇を描くことの現代性が見えてこない。

もちろん映画初主演となる伊東美咲さんは頑張っていたけれど、脱げばいいわけではないが、脱ぐほどではなかったし。やっぱり個人的に観る側としては「脱いではいるけれど、いやらしくはない」ような人間ドラマを観たいので、そういう意味ではそもそも彼女の気合いが足りなかったのでは、という気はする。

周りの脇を佐藤浩市さんや白石加代子さんなどの確かな演技で魅せる役者さんに囲まれているとなおさらそんなことを思ってしまう。いくら深津絵里さんなどの数々の映画女優を発掘してきた森田監督の演出をしても、なんというか痛々しさを感ぜずには居られなかったのが印象的だった。

これもこの前観た「父と暮らせば」のように脚本が甘い、というか原作の小さな世界観に映画が制限されてしまっていることのような気もする。映画的というよりテレビの特番か何かでやればいいのに、と思わずにはいられない。

あまり期待していなかった割には比較的観てガッカリした映画。森田監督が原作を読んで自ら映画化を思い立った、というエピソードがよくわからない。もちろん、制作スタッフさんや関係者の方々は
「良い映画」を作ろうと必死で頑張っていたとは思うが、やっぱり、良い映画にしよう、と作り手が思わない映画はほとんどないわけだし。

「海猫」公式サイト
http://umineko.biglobe.ne.jp/

乱歩地獄

乱歩地獄 デラックス版乱歩地獄 デラックス版
2005年/日本/135分/R-15
監督:竹内スグル、実相寺昭雄、佐藤寿保、カネコアツシ
原作:江戸川乱歩
脚本:竹内スグル、薩川昭夫、夢野史郎、カネコアツシ
撮影:竹内スグル、八巻恒存、芦澤明子、山本英夫
衣装:北村道子
出演:浅野忠信、成宮寛貴、松田龍平、森山開次、shan、市川実日子、吉行由実、寺島進、岡元夕紀子、大森南朋、緒川たまき、他
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何年か前にテアトル新宿でロードショーしていた「乱歩地獄」をようやく鑑賞。この映像作品集は乱歩作品のオムニバス形式になっている。

江戸川乱歩原作ものでは実相寺昭雄監督の「屋根裏の散歩者」石井輝男監督の「盲獣VS一寸法師」などを鑑賞しているが「是非原作を読みたい」と思わせる作品ではなかったのでそんなことを期待しつつ観ることに。

特に「芋虫」「蟲」観ていて思ったのは私がかつて撮った「液体と傷」は映像的にはこんな感じのことをやろうとしていたことを確認してしまった。

「プロットがない中で2人の女がモノローグ的に会話をしていく様子はその人個人の社会性を排除してしまうと、結果的に残るのはエロティックなものだった」ということが、乱歩原作の作品にも感じられ新鮮だった。

同時に、自分が撮るなら乱歩もののような作品を撮りたいが、自分が観て面白いと感じる作品は違うテイストであることも確認させられた。「こういうの好きだけど、面白くはない」などと他人事のように思いそうになるがそうではない。

個人的には「芋虫」の岡元夕紀子さんと「蟲」の緒川たまきさんの演技が好印象だった。「美しい人はただそこにいるだけで美しい」なんて言葉を思い出してみたり。

父と暮せば

父と暮せば 通常版父と暮せば 通常版
2004年/日本/99分
監督・脚本:黒木和雄
原作:井上ひさし
撮影:内田絢子
美術:木村威夫
音楽:松村禎三
出演:宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信、他
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当時務めていた会社が岩波ホールのすぐ近くにあったにも関わらず、この「父と暮らせば」に興味を持っていたにも関わらず、結局劇場に足を運ぶことはできずに3年越しでようやく鑑賞。

黒木和雄監督作品は初めてですが、観ていて複雑な気持ちになる映画だった。

まず気になったのはこの映画は戦争を扱ったフィクション映画だが、その戦争に対する視線が「被害者一色」であったこと。「お涙頂戴」であったこと。

これは原作の井上ひさし氏によるところが大きいとは思うが、この映画自体の進展性に歯止めをかけていることは否めない。興行的でない日本の戦争映画を観るといつも感じることだが「戦争体験を語り継ぐため」にわざわざ映画を作るのはコスト的にもバカバカしく感じる。やはり忘れてならないのは「戦争の記憶」ではなく「2度と戦争を起こさないこと」「何故戦争になってしまったのか」ということで、これはいろいろな国の事情が絡み合っているので色々な側面からのクレームなど一筋縄にはいかないだろうが、これを描かなければ「語り継ぐ」意味はほとんどない。

簡単なヒューマニズムで涙を誘っても満足させれるのは、戦争の記憶を持ち続けている60代くらいの例えば岩波ホールに足を運ぶ人々や、あるいは、戦争に対して具体的に何も行動しない人たちだけで、そういう意味では結果的に「反戦」がテーマなはずの戦争映画なのにその効力がほとんどなくなってしまっている。この映画は感傷的になることを強要し、戦争を起こさないよう考えることを禁じている変な映画だ。

ただ、上記の制限は脚本の制限であったようにも思う。

台本段階でできることとできないことがハッキリとするとは思うが、撮影段階では可能なできることは丁寧にすべてやってある印象も同時に持った。小規模な予算を想像すると、驚くほどこの映画のクオリティーは高い。

プロット的には90年代のハリウッドの恋愛映画「ゴースト ニューヨークの幻」を彷彿とさせるような見せ方を戦争ものに取り入れた井上ひさし氏の功績も大きいように思う。

それとこの「父と暮らせば」はファーストカットから「演劇的な演出のスタジオ撮り」だったが、街に出て撮影できれれば、パッケージとしての完成度は落ちるものの、違った作風の映画らしい映画になったかもしれないなどと考えてみたり。。

メゾン・ド・ヒミコ

メゾン・ド・ヒミコ 特別版 (初回限定生産)メゾン・ド・ヒミコ 特別版 (初回限定生産)
2005年/日本/131分
監督:犬童一心
脚本:渡辺あや
撮影:葛井孝洋
音楽:細野晴臣
出演:オダギリジョー、柴咲コウ、田中泯、西島秀俊、歌澤寅右衛門、他
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「ジョゼと虎と魚たち」の犬童一心監督と脚本家の渡辺あやさんのコンビで送る第2弾。渡辺あやさんは大谷健太郎監督の「約三十の嘘」でも脚本を担当しているが、この作品はオリジナル脚本で5年間温めた作品のよう。

個人的には細野晴臣氏が音楽を担当していたのと、西島秀俊さんが出演している映画ということで鑑賞することに。

映画としては犬童監督の「金髪の草原」もそうだったが、くっきりハッキリとした画が積み上げられており、特に映像の完成度の高さが印象的。

「トニー滝谷」などの市川準監督もそうだが、CM出身の監督のワンカットに対する意識の高さをうかがい知れる。

と同時に、そのワンカットの中の間というか隙間の作りに映画的な中身を感じないというかある意味贅沢ではあるとは思うのだが、その間の取り方に消費経済的なムダを感じる気もする。

形式的にはワンカットがしっかりとした映画ではあるのだが、それに至る必然が観ていて感じられないところによるところが大きいように感じる。

カットとしてはオダギリジョーさんと西島秀俊さんの2人が1画面の中でやり取りをするカットが印象的。というか何よりも細野晴臣氏の音楽がこの「メゾン・ド・ヒミコ」という映画全体の質をひとつ上げている印象が強い。


「メゾン・ド・ヒミコ」公式サイト
http://himiko-movie.com/

やわらかい生活

やわらかい生活 スペシャル・エディションやわらかい生活 スペシャル・エディション
2006年/日本/126分
監督:廣木隆一
プロデューサー:森重晃
原作:絲山秋子「イッツ・オンリー・トーク」(文藝春秋)
脚本:荒井晴彦
撮影:鈴木一博
音楽:nido
出演:寺島しのぶ、豊川悦司、松岡俊介、田口トモロヲ、妻夫木聡、大森南朋、柄本明、他
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この「やわらかい生活」は「800 TWO LAP RUNNERS」「L'amant ラマン」「不貞の季節」「東京ゴミ女」「ヴァイブレータ」「female フィーメイル」(太陽のみえる場所まで)など、クールな作風が印象的な巨匠、廣木隆一監督作品。

脚本は「ヴァイブレータ」と同様に荒井晴彦氏が担当。主演も「ヴァイブレータ」に引き続き寺島しのぶさんが務め、脇を豊川悦司さん、松岡俊介さん、田口トモロヲさん、妻夫木聡さん、大森南朋さん、柄本明さんなど確かな演技の男優達がしめる、逆ハーレム的な意味で寺島しのぶさんにとって贅沢なキャスティング。

廣木隆一監督作品というと、「撮るテーマに対して距離をとる」印象があり、そこがクールさにつながっているような作品が多いが、今回はらしからぬ感じが出ていて、逆に好印象。名実ともに演出プランは「ヴァイブレータ」の延長線上にあることが感じられる。

絲山秋子氏の原作は読んでいないが、寺島しのぶさん演じる役柄のような30代女性は自分の周りに多いような気がした。役中の設定も早稲田卒だったが、「気づかないうちに生きていくのが苦しくなってしまった30代女性」などには癒しの1本となる映画のような気がする。

相手役の豊川悦司さんもそういう意味ではハマリ役なような気がする。一方で、松岡俊介さんと妻夫木聡さんは役柄が逆な方が自然だった感がある。このキャストは冒険といえばそうだが、冒険する必然を観ていて感じなかったのは少し残念な点。

個人的には撮るテーマを真摯に追い求めるような映画が好きな私にとっては、この「やわらかい生活」は廣木隆一監督作品の中でナンバーワンだ。

「やわらかい生活」公式サイト
http://www.yawarakai-seikatsu.com/

松ヶ根乱射事件

松ヶ根乱射事件 松ヶ根乱射事件
2006年/日本/112分/PG-12
監督・脚本:山下敦弘
脚本:向井康介、佐藤久美子
撮影:蔦井孝洋
音楽:パスカルズ
エンディング曲:BOREDOMS「モレシコ」
出演:新井浩文、山中崇、川越美和、木村祐一、三浦友和、キムラ緑子、烏丸せつこ、安藤玉恵、西尾まり、康すおん、光石研、でんでん、榎木兵衛、中村義洋、鈴木智香子、宇田鉄平、桜井小桃、他

「この男狂棒に突き」「リンダ・リンダ・リンダ」「不詳の人」「リアリズムの宿」などの山下敦弘監督作品。

先日「何か新しいものが観れるハズ」と期待しテアトル新宿に脚を運ぶも、その期待の高さからかガッカリして映画館から出る。

まず、ビジュアル的に立つ女優を使っていないことやユーモアを交え、最後まで観続けさせる力量は凄いといえばそうだが、製作段階からのこの映画での「作為」と山下監督の持ち味が生かされていない作品に感じてしまった。この作品に三浦友和氏や新井浩文氏などが出演していなかったことを考えると、単なる安い自主映画になってしまっただろうことは否めなく、期待される若手監督の作品のハズが、観ていて哀しくなる。

難しいテーマを考えや確信なしに、ユーモアは混ぜて個人的な思い提示したような映画という印象。
取り入れようと思えば、時代的に松本サリン事件や阪神大震災など、いろんな普遍性のあるテーマはあったはず。

山下監督には独特のユーモアが持ち味のように感じていたが、たいした考えなしにシリアスものを撮っても、そういう路線が得意な人たちの作品などと比較すると見劣りしてしまう。

他人の土俵で相撲をとっても見劣りしてしまえばその価値はない、というか、製作に協力してくれた長野県の人たちなどがこの映画を観てどう思うのか。あるいは、映画好きがこの映画を観てどう思うのか。映画好きでなくてもたまたまこの映画を観た人がどう思うのか。どこにいってもいいことがないような作品のような気がして貴重なお金や人材のことを考えるとため息がとまらなくなってしまう。劇場では台詞聞き取りにくいし。というかあまり聞こえないし。

「ひょっとしてこの『松ヶ根乱射事件』は『春子』に乱射という意味?」と思わせるところは面白いといえばそうだ。ラストもタイトに締めておりその点は好感が持てる。

山下監督期待していたんだけどなぁ・・・。
でも、この作品の後も何やらたくさん撮っているようなのでそっちに期待。

「松ヶ根乱射事件」公式サイト
http://www.matsugane.jp/

不詳の人

不詳の人不詳の人
2004年/日本/64分
監督:山下敦弘
脚本:向井康介
撮影:近藤龍人
編集:山本浩司
出演:海老原薫、土屋壮、大澤聖子、高橋美保、津川美幸、土橋直美、永井陽子、東亜希子、山本剛史、他
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最近いろんなツタヤを見回して、自主映画あがりの監督で、その自主映画時代の作品のDVDが一番数多くレンタルされている山下敦弘監督作品。

この「不詳の人」「道」「その男狂棒に突き」と同様なドキュメンタリーを装ったフィクション映画。

ふと、この映画の面白さって「近しい人の他人事」なのかなと思う。ネットでどこかの記事にも書いてあったが、確かに登場人物に感情移入して観るような映画ではない。「明日はわが身」というよりは、「気持ちはわからんでもないが、所詮他人事」といった事柄をその「他人」に近い目線で作られているところに笑いというか面白さがあるように感じる

「ハイこれがおもしろいとされているものです」というような提示はハードルが高いが、必死に苦しんでいる「他人」の、その人自身の目線で語られていれば、映っている当人や事柄自体は緊迫しているので、それを観る側のハードルも低く設定されやすい。

個人的には「美男、美女」ばかりが登場する「その男狂棒に突き」を観てみたいが、そんなものは存在不可能だろうか。

YUMENO ユメノ

YUMENOYUMENO
2004年/日本/93分
監督・脚本:鎌田義孝
プロデューサー:浅野博貴、朝倉大介、岩田治樹
脚本:井土紀州
撮影:鍋島淳裕
音楽:山田勲生
出演:菜葉菜、小林且弥、金井史更、夏生ゆうな、内田春菊、小木茂光、長井秀和、渡辺真起子、柳ユーレイ、寺島進、他
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伊藤秀裕監督の「男たちのかいた絵」、青山真治監督の「Wild Life」、小田切正明監督の「ありがとう」「TOKYO BEAST」、望月六郎監督の「恋 極道」、中田昌宏監督、花村萬月原作の「紅色の夢」など1990年代の邦画立て続けに出演していた夏生ゆうなさんが出演している映画を久々に見つけ即座に鑑賞。

彼女の出演時間自体は短かかったが、いい女になっていた。年齢も重ねているはずだが、そうも見えなかったのがまた魅力的。

それに加え、長井秀和さん、諏訪敦彦監督の「M/OTHER」や「TAMPEN 短篇」に出演していた渡辺真起子さん、や柳ユーレイさん、今や名俳優の風格漂う寺島進さんなどの押さえた演技を魅せることができるたしかな役者さんたちが出演していたのが印象的。

この「YUMENO ユメノ」はなんというか、私が唯一鑑賞中に途中で映画館から出てしまった、塩田明彦監督の「害虫」を思い出させる。単純に「少女が主演」だからとも思うが嫌いではないがどうも水が合わない。自主映画的なテイストは好きだが、どうも「子供を出すのは卑怯だ」なんて考えてしまう。

たしか主演の菜葉菜さんは最近活躍の場を広げている園子温監督の「夢の中へ」にも出演していたはず。ある意味夢つながり???

■アルゴピクチャーズ「YUMENO」
http://www.argopictures.jp/lineup/yumeno

ゆれる

ゆれるゆれる
2006年/日本/119分
監督・原案・脚本:西川美和
企画:是枝裕和、安田匡裕
撮影:高瀬比呂志
音楽:カリフラワーズ
出演:オダギリジョー、香川照之、伊武雅刀、新井浩文、真木よう子、木村祐一、ピエール瀧、田山涼成、河原さぶ、キタキマユ、田口トモロヲ、蟹江敬三、他
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この「ゆれる」「のんきな姉さん」の助監督、「female」の「女神のかかと」、「野いちご」などの西川美和監督の最新作。

始めはオダギリジョーさんの主演作だと思って観ていたが、兄弟の話ではあるけれど、観終える頃には次第に香川照之さんが主演でオダギリさんは助演、という感じ。

台本段階ではどちらもが主演でいたはずだが、オダギリさんもいい芝居をしたと思うが、香川照之さんの観るものの意識を惹く演技には正直びっくり。

「ゆれる」はチャラチャラしたものを真剣に撮る、というよりは、骨太な純映画を真剣に撮っているのが観る者に伝わる作品に仕上がっている。冒頭の音楽にはその気合いすら感じる。

主演の2人の脇を固める伊武雅刀さん、新井浩文さん、田口トモロヲさん、蟹江敬三さんなどは確かな演技でこの映画のフレームの格式を与えている、と同時に、木村祐一さんやピエール瀧さんもその特長を活かしアクセントを与えている。これくらいの役者陣が出演すれば、予算的にギリギリの映画であっても、脚本次第ではそれを感じさせない作品となる好例だ。

ちょっと前の東京新聞でも「今注目の女性」という感じで紹介されていたが、個人的にも今後の動向が気になる数少ない監督のひとり。

壊音 KAI-ON

壊音 KAI-ON壊音 KAI-ON
2002年/日本/84分
監督・撮影・編集・音楽:奥秀太郎
原作:篠原一「壊音」文春文庫
音楽:大友良英
出演:小林愛、宮道佐和子、岡光美和子、片山圭、中坪由起子、他
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この「壊音 KAI-ON」「赤線」「日雇い刑事」などの奥秀太郎監督作品。

たしか自分の映画の上映会のビラを新宿のツタヤに撒きに行ったときに、この「壊音」のビラが置いてあっり、そのビラのシンプルなデザインに「なんかかっこいい」と思った記憶がある。

もう5年も前のことになるのかと思うと自分の非進化っぷりを考えるとがっくりきそうになる。

それはさておき、この映画はDVD+ヘッドホンで鑑賞したが、そんなスタイルでの鑑賞があう作品のように思う。

小規模の劇場だとスピーカーなどの音響の問題が大きいのでヘッドホンだと手軽に、周りに迷惑をかけることなく、まあまあの音でノイジーな音楽を楽しむことができる。

この映画はその題名通り「壊音」という感じの映画だが、原作はどうなっているのかわからないけれど、個人的にはせっかく実写で撮るのなら、形式だけでいいのでプロット的なものを入れたほうが見やすいようには思う。

役者立たせて教室を借りたり破壊したりするわけだから、なんか「人力がもったいない」と感じたのが正直なところ。

ただ、観ていていい音楽でサイケデリックな気持ちでになれる瞬間はあるので、部分的にカタルシスを感じれて気持ちがいい。夢に出そう、というか、音楽と映像の断片が記憶に残る映画。

濡れた赫い糸

濡れた赫い糸濡れた赫い糸
2005年/日本/103分/R-15
監督:望月六郎
原作:山之内幸夫「実録・女師 遊廓 信太山エレジー」双葉社
脚本:石川均
撮影:田中一成
音楽:サウンドキッズ
出演:北村一輝、高岡早紀、吉井怜、奥田瑛二、佐倉萌、他
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以外に最近観ていなかった望月六郎監督作品。個人的にはとりわけ「スキンレスナイト」「皆月」などが印象深いが、数多くの作品を精力的に発表し続けている。

いわゆる極道モノが多い望月監督作品だが、この「濡れた赫い糸」は極道の哀しみ、というよりは、人間の哀しみ、やさしさ、などが表現されているように思う。ただ、スタッフも役者も極道的な作品に出演している方が多いので画づら的には一般映画に臭いがあまりしないものとなっている。

あと、フィルム製作のせいだけではないとは思うが、画が古い、感じがした。1990年代中ごろくらいの製作かと思いきや2005年ではありませんか。それは最近のハイビジョン映画に慣れてしまっているのかもしれないが、ピンク映画を観ている時の感じに近い感じがする。フィルムや照明などの状況が似ているからだけなのかもしれないが。

この「濡れた赫い糸」は映画として完成度は高いとは思うし、現場には優秀なスタッフがたくさんいることも想像できまるが、商品として観客が想定しにくい映画であるようにも思う。銀座シネパトスでレイトロードショーといっても映画館でも興行収入はあまり見込めないだろうし、たとえば「カンヌ」を狙う、といった感じも少ない。

たしか「皆月」は賞を受賞していたが、この映画はエンタテイメントとしては真面目だし、なら芸術性が高いのかといえばそうでもない。かといって、押しが弱い、といのではなくある種臨界点での表現となっているように思う。そう考えるとこういう映画こそが形式を逸脱した真の映画なのかもしれない。

リアリズムの宿

リアリズムの宿リアリズムの宿
2003年/日本/83分
監督・脚本:山下敦弘
原作:つげ義春
脚本:向井康介
音楽:くるり
出演:長塚圭史、山本浩司、尾野真千子、多賀勝一、サニー・フランシス、他
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「松ヶ根乱射事件」「リンダ リンダ リンダ」「この男狂暴に突き」などの山下敦弘監督作品。

主演の1人の長塚圭史氏は大学時代、私は哲学科でしたが、英文科なども履修できる授業で姿を何度か見かけた記憶がある。「ヤツがここにいるのか」と思うと複雑な気持ちでもある。たしか彼は阿佐ヶ谷スパイダーズという劇団を主宰していたはず。この「リアリズムの宿」では山下敦弘率いる「山下組」に単独で乗り込んだというところだろうか。

映画はDVDの特典映像で長塚氏が言っているように「これといった事件はないが、少し前に進んだように感じれる」映画。

というか主演の2人は「自主映画監督」という他にない、まさしく僕などのための映画? のような気もすする。鳥取の山陰特有というか、閉鎖的で寒い感じが原作とマッチしていてよかった。

とりとめのないやりとりがじんわりと笑いを誘う。鑑賞後「一歩前に進んだ感じ」になれるのは、当たり前といえばそうだが、主人公の2人が、映画の中でつくられていく人と人としての関係性によるものだ。

閉じこもろうとは思っていなくても、新しい関係性を築くのは案外難しいことで、思ったより多くの人はそれを望んでいるということを再確認。

地味ながら何度も観かえせる映画。

「リアリズムの宿」公式サイト
http://www.bitters.co.jp/yado/

棒 Bastoni

棒 Bastoni
Bast Oni
2001年/日本/103分
監督・脚本:中村和彦
プロデューサー・脚本:望月六郎
撮影:石井浩一
出演:松岡俊介、田口トモロヲ、中里栄臣、小島由佳、金谷亜未子、北村一輝、日比野克彦、奥田瑛二、他
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監督は多くの望月六郎監督作品でチーフ助監督としてその作品作りを支えてきた中村和彦氏の初監督作品。

望月監督作品と同様にディープな語り口が印象的。DVDの特典映像では監督の中村和彦氏に加え、プロデューサー兼脚本の望月六郎監督、主演の松岡俊介さんの3人のインタビューが収録されており、製作の経緯や撮影秘話などをざっくばらんに語っている。

それとこの映画「棒 Bastoni」で印象的なのが豪華な役者陣。主演の松岡俊介さんをはじめ奥田瑛二さん、田口トモロヲさん、北村一輝さん、そして日比野克彦さんまでも友情出演的に出演している。

役柄というか設定もショービジネスというより自主映画的で観ていて温かい気持ちになれるというか、映画の高感度が高まった。

中村和彦監督も仰っていましたが「倒れそうで倒れない男」の話。なんというか決定的にタイミングをハズしてしまう主人公をユーモラスに描いた監督に、監督本人の人柄が反映されている。次回作も是非期待したい。

何故かAVとサッカーが好きな方は必見の一本!

好きだ、

好きだ、好きだ、
2005年/日本/104分
監督・製作・脚本・撮影・編集:石川寛
撮影: 尾道幸治
音楽: 菅野よう子
美術: 富田麻友美
出演:宮崎あおい、西島秀俊、永作博美、瑛太、小山田サユリ、野波麻帆、加瀬亮、大森南朋、他
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たまたま去年別々に出会った2人の女の子からこの「好きだ、」という映画がよかった、という話を聞いてどんな映画なのか期待して鑑賞。

石川寛監督は女性の瑞々しさを描いた「TOKYO.SORA」の監督でもありましたが、今回もフォトジニックな映像で魅せていた。

この「好きだ、」を観ていると人間語るべきことだけを語ればよいわけで、多くを語る必要はない、というように思え、個人的にはその価値観に安心できる映画。

もちろん、映画にかかわらず、文体というか呼吸が合わない人には合わない映画だとは思うが、若い人向けの映画ということで、自主製作でなくてもスポンサーはついてもいいような気がする。映画自体の中にも救いはあるし、気持ちよく鑑賞できる映画ではあるので。

なんというか身体に染み入ってくるような映画。


「好きだ、」公式サイト
http://www.su-ki-da.jp/

でらしね

でらしねでらしね
deracine
2002年/日本/94分
監督:中原俊
脚本:小林政広
撮影:石井浩一
音楽:大友良英
出演:奥田瑛二、黒沢あすか、益岡徹、三谷昇、田鍋謙一郎、他
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「桜の園」「コンセント」などの中原俊監督最新作。一見、原作ものの映画化のように見えるが、小林政広氏によるオリジナル脚本。

小林政広氏は「バッシング」「女子社員淫乱依存症」「海賊版=BOOTLEG FILM」の監督をしているが、あのフランソワ・トリュフォーの現場に入った経験や、フォークシンガーとしてレコードも出している変わった経歴の持ち主。氏はブログ「小林政広のブログ」も公開している。「バッシング」は劇場公開を見逃してしまったのでDVDに大期待。

でこの「でらしね」は、奥田瑛二+中原俊+小林政広の3人の有志による自主映画的な雰囲気を感じる映画だ。

なんというか、長時間酒を呑んでいて、ふとあらぬ方向にいってしまった話の時のような、根源的な現実味をともなうファンタジーのような映画だった。「でらしね=deracine=根無し草」という感じ。上の3人の名前を見ると、大胆なセックスシーンなんかを期待したりもするが、そんなシーンはなかった。

DVDの特典インタビューでは、中原俊監督、奥田瑛二さん、黒沢あすかさんが登場していたが、3人のトークを聞いていると、現場の光景や映画「でらしね」を動かした人々の人柄などが浮かび上がる。

劇場公開まで2年かかったとのことだが、必ずしも「映画は生ものだからすぐに公開すべし」ではないことも考えるようになる。…といいてもすぐに配給が見つかるに越したことはないとは思うのだが。

東京ゴミ女

東京ゴミ女東京ゴミ女
2000年/日本/88分
監督:廣木隆一
脚本:及川章太郎
撮影:鈴木一博
音楽:岡村みどり
出演:中村麻美、鈴木一真、柴咲コウ、小山田サユリ、戸田昌弘、田口トモロヲ、他
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この「東京ゴミ女」は2000年の製作なので、現在「どろろ」などで活躍中の柴咲コウさんがいまのようにブレイクする前の作品。

7年前の作品ですが、10年近く前の作品には見えない。ここ2、3年の作品に思えるのは廣木隆一監督の抑えた演出のなせる業か。

中村麻美さんと柴咲コウさんがウエイトレスで田口トモロヲさんがマスターの喫茶店なんて、通ってしまう戸田昌弘さんの気持ちも少しわかる気もします。

映画としては「リアル」を求めるとつまらない作品に映るかもしれないが、なんというか「ダラっ」とした感じで観ると心地よい時間を味わえるのは、廣木監督作品の特徴なのかもしれない。

フィルム作品かと思いきやDV作品だったので4:3の縦横比にまず驚いたけれど、廣木作品でレールをひかずにカメラを担いで被写体を追うようなカメラワークは初めて観た。予算、あるいは、DVの機動性を活かしてのことなのかとは思うがどうなんだろう。

あと、主演の中村麻美さんはたぶん初見でしたが、隣人のゴミをキャミソール+パンツ姿で漁るカットがあるわりには、ベッドシーンでは胸も背中も見せないなんて逆に不自然な気がして「やる気あんのかなぁ」と思う部分もあった。

ただ廣木監督作品は「ラマン」もそうでしたが、台詞も映像も生々しいところは映さないので、監督の意向だったのかもしれません。

観た印象「さらり」としていて危うく見逃してしまいそうになるが、「救い」はほとんど見つからないダークな映画。

TAKESHIS'

TAKESHIS'TAKESHIS'
2005年/日本/107分
監督・脚本・編集:北野武
撮影:柳島克己
音楽:NAGI
衣装:山本耀司
出演:ビートたけし、京野ことみ、岸本加世子、大杉漣、寺島進、他
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こういうスキゾ的に時間軸で遊んでいる映画は大好きだ。

脈絡があまりなくても観進めることができるし、次の瞬間どのカットにいくのかわからない、という緊張感は観ていてかなりエキサイティング。こんなに退屈できない映画は久しぶりです。山野一氏の漫画「パンゲア」や園子温監督の「夢の中へ」を思い起こさせる。

前作の「座頭市」はエンタテイメント作品と聞いて、今でも観るには気がすすまないが、この「TAKESHIS'」は劇場で観なかったことを大後悔。

「難解、感想が言いづらい」などのコメントやレビューを耳にしていたのですが、良い意味で、このような映画の製作費を集められる北野武監督の才能にうっとりとしてしまう。

観ていて気になったのは映画の中の倫理観。ソナチネのときもそうだったが、死ななくてもよい人間が死んでいること。せめて、殺されるべき人間と、生きるべき人間、どちらでも良い人間、の3パターンぐらいには分けて欲しかった。

ほとんど皆殺しで、かつ、自殺。となると付ける薬はありません。

それと、仕方がないのかもしれないが、ドールズなどで見られた「文楽」や「風車」などの、なんというか露骨に海外のためにジャポニズムを差し出すようなシーンがなかったのはホッとしました。「ソナチネ」の「紙相撲・相撲」は動きなどが面白かったので良かったので撮る価値があると思うが、単にイメージカットのように差し込まれてもどっと引いてしまう。

勝手な希望としては、オチがなんとなく見えてしまうところと、それと同様に、海辺の銃撃戦のカット割りが「ハイここまで」といったように仰々しく感じられてしまったところがなんとかならぬのかともどかしく思ったり。

「TAKESHIS'」公式サイト
http://www.office-kitano.co.jp/takeshis/


奇妙なサーカス

奇妙なサーカス Strange Circus奇妙なサーカス Strange Circus
Strange Circus
2005年/日本/108分/R-18
監督・脚本・音楽:園子温
撮影:大塚雄一郎
出演:宮崎ますみ、いしだ壱成、桑名里瑛、高橋真唯、不二子、他
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園子温監督の新作、かつ、少し前に昨年末に亡くなった実相寺昭雄監督の「屋根裏の散歩者」で独特の存在感を放っていた宮崎ますみさんが主演のR-18ものということでがっつり喰いついて鑑賞。

園監督作品なので「夢の中へ」のようにある種の「ミニマリズム+エロ」を期待していたが、方向的には予想通りでしたが、その内容の密度は良い意味で裏切られる作品だった。

まず、ネタの豊富さ。障害者差別・ピアスなどの身体改造・近親相姦・教育問題、といったネタというかテーマがひとつの物語の中に押し込まれており、見ごたえ十分。

それに加え、宮崎ますみさんの気合の入った濡れ場のシーンも数多く、いしだ壱成さんの独特の演技とがあいまってマイナーなテーマをメジャー感のある耽美な役者が、園監督作品というある意味コアな舞台で融合し、単にクオリティーの高さ以上のものが表現されていた。

2005年製作の割りにはレトロな雰囲気が漂うが、このレトロで扇情的な雰囲気は寺山修司監督に通ずるものがある。

作品全体がコアな仕上がりとなっているので、胡坐をかいて予定調和な作品を観たい人にはオススメできないが、人間あるいは社会のある一部分の根源性のようなものに触れたいような人には強く勧める1本。

最近私が観る日本映画・邦画によく出演している「肌の隙間」「卍」などの不二子さんもわずかの出演ながら存在感を発揮している。

昔劇場で観た16mm作品「部屋/The Room」の頃の園監督が懐かしいような気持ちにもなり感慨深い。

ヒロシマモナムール/二十四時間の情事

ヒロシマモナムール/二十四時間の情事ヒロシマモナムール/二十四時間の情事
Hiroshima mon Amour
1959年/フランス・日本/91分
監督:アラン・レネ
原作・脚本:マルグリット・デュラス
撮影:サッシャ・ヴィエルニー、高橋通夫
出演:エマニュエル・リヴァ、岡田英次、ベルナール・フレッソン、アナトール・ドーマン、他
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「夜と霧」「去年マリエンバートで」の間に作られたセーヌ左岸派と呼ばれるアラン・レネ監督作品。

初見は10年程前でしたが、今回見返してみると改めてアラン・レネ監督の野心を感じないわけにはいかない。同じフランスの監督ならば「死刑台のエレベーター」「鬼火」などのルイ・マル監督も「ブラック・ムーン」という寓話的な実験映画を撮っているが、レネ監督は「時間と記憶」というある種哲学的なテーマで3本の映画を監督しておりその執着心というか切り口は、寓話=ファンタジーものと比べるとパンチが効いていてかつ斬新。

脚本は「ラマン」などのマルグリット・デュラス氏だが、DVDのプロダクションノートによると、レネ監督が当時新進気鋭の小説家に脚本の執筆を依頼した模様。その後、この作品をきっかけにデュラス氏は映画の世界に足を踏み入れた。

ヒロシマという場所から戦争の記憶、そして異人との情事へと連鎖していく様はシンプルな映像で簡潔に語られており、文字情報だけでは伝わりにくい部分を継続した時間を伴なってこそ現れる効果が独特で興味深い、ある意味とても映画的な映画=純映画。

台本を読んで画が浮かび、実際の人間が演じることによるリアリティーを魅せようとする映像の退屈さを思い出すと、この「ヒロシマモナムール/二十四時間の情事」の完成度の高さは驚愕に値する。純粋な意味での映画の価値は予算ではないこと痛感させられる小さな大作。

卍まんじ

卍まんじ卍まんじ
2006年/日本/80分/R-15
監督・脚本:井口昇
原作:谷崎潤一郎
撮影: 武山智則
音楽:清水真理
出演:秋桜子、不二子、荒川良々、野村宏伸、吉村実子、他
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「クルシメさん」「恋する幼虫」や「おいら女蛮」などの井口昇監督作品。

鑑賞後の印象としては、確かに谷崎潤一郎氏原作の卍の映画化とはなっているが、「おいら女蛮」などのはじけ具合をこの卍にも投入できればもっと面白い作品に仕上がったように思ってしまう。

脚色はあったとは思うのですが、若尾文子さんと先日お亡くなりになった岸田今日子さん主演の増村保造監督バージョンを超えるためには独自解釈があったほうが井口監督は自分の土俵でこの映画を撮ることができたのではないかと個人的には思う。

チラシのデザインは他の作品と比べて群を抜いているように見えるだけに落胆が大きかったのかもしれない。

「肌の隙間」などの不二子さんや秋桜子さん、野村宏伸さん、荒川良々さんなどが好演をしていたのが印象的。

永井豪原作ものでは「おいら女蛮」は庵野秀明監督の「キューティーハニー」を凌いでいると思いますが、勝手にそれ以上のものを期待していただけに少し残念。

「卍まんじ」公式サイト
http://www.artport.co.jp/movie/manji/

L'amant ラマン

ラマンラマン
2004年/日本/92分/R-15
監督:廣木隆一
原作:やまだないと
脚本:七里圭
撮影:鈴木一博
出演:安藤希、田口トモロヲ、村上淳、大杉漣、前田綾花、他
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やまだないと氏+廣木隆一監督でこんな映画になるとは、ナチュラルなことのようにも思いますが、意外とハマルんだというところに少し感動。

「800 TWO LAP RUNNERS」での生々しくないクールなスポーツ性春ゲイものなど、一貫してクールではあるが、地味にどこか変わったところに目をつけた作品が多い廣木監督ですが、この「ラマン」も主演の女子高生にのみ魅せ場を作るのではなく、共演の大杉漣さんや田口トモロヲさん、村上淳さんの男3人組のそこはかとない魅力を引き出しており、そこが原作ともマッチして地味ではあるが見るとこ満点の作品に仕上がっている。

脚本は「のんきな姉さん」などの七里圭監督が担当している。

「熱っぽさ」を期待すると物足りなさを感じるかもしれない廣木監督ですが「少し遠くから観たいような事」に関してはは絶妙のタッチで映像化する稀な映画監督です。

「2番目の彼女」の前田綾花さんも独特の存在感を発揮している。

個人的な勝手な希望では、廣木監督には政治的なメッセージ性の強い作品を恋愛だけに焦点をあてるのではないような作品を撮ってもらいたいものです。

のんきな姉さん

のんきな姉さんのんきな姉さん
2002年/日本/82分
監督・脚本:七里圭
原作:森鴎外、唐十郎 、 山本直樹
撮影:たむらまさき
音楽:侘美秀俊
助監督:西川美和
出演:梶原阿貴、塩田貞治、大森南朋、梓、細田玲菜、三浦友和、他
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珍しく早くもセカンドカットあたりで「これはイケる!」と感じさせた僕好み映画。

山本直樹氏原作の同名マンガの映画化、という頭で見始めたのでイヤラシイ、ポルノグラフィックな雰囲気のある映画を想像していたが、そういう映画ではなかった。

その上、十数年前に観た、諏訪敦彦監督の「Mother」を彷彿とさせる役者や画面の印象、おそらく撮影監督のたむらまさき氏やその他のスタッフなどが共通しているような印象を受けた。

カメラやフィルムの種類、現像方法などのハード的なものだけかもしれないが、演出家をたてない渡辺真紀子さん主演の短編映画集「TAMPEN/短編」にも通ずる部分があった。

脚本は原作・原案が森鴎外氏・唐十郎氏・山本直樹氏とのことだが、山本直樹氏の原作漫画しか読んでいないが、独自の詩的な解釈が施されているようでユニークな作風に仕上がっている。

三浦友和さんの芝居は現場ではどう受け止められていたかが興味深いが、作品中ではしまりのある演技でよい意味の安心感がある。

ちなみに監督は廣木隆一の「ラマン」で脚本を務めた七里圭監督。

溺れる人

溺れる人溺れる人/DROWNING MAN
2000年/日本/82分
製作・監督・脚本・編集:一尾直樹
撮影:山崎のりあき
音楽:南野梓、エモーショナル・アワー
出演:片岡礼子、塚本晋也、火田詮子、上馬場健弘、海上宏美、他
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「ハッシュ!」などの片岡礼子さんと、塚本晋也監督が主演の一尾直樹監督の自主製作映画。題名通り「溺れる人」という後味の残る、ある意味着眼点が素朴かつ普遍的な映画。

好きな映画ですが、もう少し「はっちゃける」というか全体的にパンチがあると印象もより強くなるように思う。以前VHSで観ていたことを途中まで忘れてしまっていた。

こういう低予算映画は親近感をもって観てしまいますが、少なくともDVDでは画が暗すぎであまりよく見えなかった。あと、小規模邦画によくあるように、台詞も聞き取りにくい場面があって、そこは大事なシーンだったりして、観る側としては困ってしまう。

特典のメイキング映像を観ていると、本編よりも広く、明るいいい感じの部屋で撮影していたように思ってしまい、今、撮影するならフィルムライクなハイビジョンか24コマのminiDVで撮影した方が雰囲気ともどもより表現できたのではないかと思ってしまう。

ヨーロッパなどでは特に「film=映画」なようですが、余りにも低予算のフィルム映画ならば、むしろフィルムにこだわらない方が作品の質を保てるような気がしてしまう。フィルムで公開するとなると結局35ミリにプリントする必要はあるけれど、DVDも視野に入れるならばデジタルでやった方が努力が報われる可能性が高いように思う。

とは言いつつ、結局フィルム好きなんだけど、自分の思い描く画を作るには手間とコストがかかりすぎだ。

おいら女蛮

おいら女蛮おいら女蛮
2006年/日本/62分/R-15
監督・脚本:井口昇
原作:永井豪
撮影:長野泰隆
音楽:石井雅子
出演:亜紗美、桃瀬えみる、松中沙織、伊東静香、デモ田中、美羽、村上浩章、ビートありま、三浦敦子、大堀こういち、他
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良い意味で期待を裏切られた1本。

井口昇監督作品は初めて観ましたが、もう少し役者への演出をちゃんとしてくれてもいいような気はしますが、ギャグ、エロ、コメディー、アクション、様々な要素を盛り込んだ力量は圧巻の一言。

特に美術は、もし、この作品がシリアスでサイバーな雰囲気の映像だったら初期の塚本晋也監督を彷彿とさせる、作り込みの確かなもので作り手の情熱を感じないわけにはいかない。

画に映っているのは「おっぱい(乳首)ミサイル」を「いやん、いやん」と言いながら発射する映像とかだったりするので一瞬評価をためらいそうになるが、映画のできは良い。

見る前から想像がついてしまうような予定調和的な、映画版「キューティー・ハニー」と比べても、良い意味で自主映画的で原作者は同じでも作り手によってこんなに作品の質に違いがでることを再認識。

エロコメディー映画というと小沼勝監督、脚本・荒井晴彦氏、原作・笠太郎氏の「Mr.ジレンマン 色情狂い」などを思い出しますが、これなんかと基本的には同じ路線のように思う。

こういう映画を突破口として何か「新しい映画」ができはしないか、とつい期待してしまう。

援助交際撲滅運動 地獄変

援助交際撲滅運動 地獄変援助交際撲滅運動 地獄変
2005年/日本/57分/R-18
監督・撮影:鈴木浩介
原作:山本英夫、こしばてつや
脚本:豊島圭介
音楽:遠藤浩二
出演:蒼井そら、遠藤憲一、緋田康人、諏訪太朗、大西武志、他
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同名マンガが原作の「援助交際撲滅運動」の続編映画。監督の鈴木浩介氏はこの他には、数年前、最近閉館してしまった、テアトル池袋で上映された、仲根かすみ さん主演の「八月の幻」なども監督している。

今回の「援助交際撲滅運動 地獄変」はパッケージ画像などを見ると蒼井そらさんが主演のように見えますが、第一作と同様に遠藤憲一さんの怪演? が光る? 作品。

原作のマンガは読んでいませんが、脈絡なく演劇的に役者のテンションが高いことが印象的な映画だった。

映画「ナナ NANA」などもそうですが、原作のマンガに集客力があれば、映画自体は面白い作りになっていなくても、マンガのコマやキャラクターを実写で再現していれば原作のファンは満足するのだろうか?

小説が原作となっている場合、読みながら各自が画を想像してしまうせいか、不条理にも、原作→映画、の順だと満足感が得られにくい。

漫画が原作のものは、その難関をやすやすと越えているようで、不思議な感じがします。

レイクサイド マーダーケース

レイクサイド マーダーケースレイクサイド マーダーケース
2004年/日本/118分
監督・脚本:青山真治
原作:東野圭吾
撮影:田村正毅
出演:役所広司、薬師丸ひろ子、柄本明、鶴見辰吾、杉田かおる、眞野裕子、黒田福美、豊川悦司、他
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大概のミステリー・サスペンスものがそうであるように、鑑賞中はところどころ爆笑しつつ、くいいるように観ていたが、観終えた後の満足感は不思議と低い映画だった。

単純にオチに納得がいっていないからのように思いますが、つじつまに関しては映像表現が雑だったからのように思う。東野圭吾氏の原作は読んでいませんが、女性写真家がどこで事件と関わりをもったのか、子供の行動は予測不能、というだけの説明など、半ば「強引」ともとれる説明だけでは、観ている側は納得しにくいので、満足感を得るのは難しい。

役者陣はすこぶる豪華。鶴見辰吾さん、杉田かおるさんの「金八先生コンビ」は夫婦役だし、「Wの悲劇」「セーラー服と機関銃」などの角川映画などを彷彿とさせる、薬師丸ひろ子さん、ほとんど声を発しなかった黒田福美さん、他にも役所広司さんや豊川悦司さん、柄本明さんなども、持ち味を生かした演技で観ている者を安心させる。

鶴見辰吾さんの演技っぷりには随時爆笑。

眞野裕子さんは初見でしたが、端整な顔立ちから想像できないナチュラルかつ大胆な脱ぎっぷりには「こんな綺麗な人がこんなに惜しげもなく」と良い意味で驚いた。眞野裕子さんは青山監督の「ユリイカ」にも出演しているようなので、今度もう一度彼女を探しつつ鑑賞したいものです。彼女は今のクールで放映中の「だめんずウォーカー」にも出演中とのことで、最近売れてきている役者さんなのかもしれません。ヌードやカラミのシーンなどのセクシャルな演技は、役者のその作品に賭ける想いが表現されやすいことを再確認。

過去の青山真治監督作品を思い返すと「EM EMBALMING/エンバーミング」に近いような感じがした。

「レイクサイド…」はサイコものではありませんが、娯楽ものにも関わらず、「作品に華がない感じ」は共通している。「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」は行き過ぎだとするならば、「ユリイカ」「Helpless」くらいの、リアルと非リアル、非娯楽と娯楽のバランスくらいの作品が青山真治監督の真骨頂のような気がする。

2007年4月に完成予定の新作「サッド・ヴァケイション」も浅野忠信さんや石田えりさん、板谷夕夏さん、宮崎あおいさん、オダギリジョーさん、光石研さん、嶋田久作さん、豊原功補さんなど、そうそうたる面々が出演しているようで俄然気になるところ。


ヘイズ/HAZE

ヘイズ/HAZE-Original Long Versionヘイズ/HAZE-Original Long Version
2005年/日本/49分
プロデューサー・監督・脚本・撮影・編集:塚本晋也
音楽:石川忠
出演:塚本晋也、藤井かほり、村瀬貴洋、神高貴宏、辻岡正人、さいとう真央、他
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「鉄男」「東京フィスト」「バレットバレー」「ヴィタール」「玉虫」などの塚本晋也監督の最新作。

塚本監督は、今思えば、昨今の「ジャパニーズ・ホラー」ブームの火付け役の一人だったのか? などと思ったりした。「15年かけて時代が追いついた」ということなのかもしれない。

この「HAZE/ヘイズ」は過去の塚本監督の作品郡からみると初期の作品、テイスト的には「鉄男」に近いように思う。役者陣的には「東京フィスト」以来の藤井かほりさんが出演している。ちなみに今回も監督自ら主演もしている。

この映画はエンドクレジットをみると、撮影カメラには Panasonic AG-DVX100 を使用し、FCPでカンパケにしたDV作品のよう。

光量が充分なシーンではすこぶる綺麗な映像に仕上がっていて、同じカメラで撮影した、瀬々隆久監督の「ユダ」の映像などを思い起こしたりしますが、本編のほとんどを占める、暗めのシーンではあまり見たくない感じのノイズがのっている。

塚本監督は「これでよし」としたのかもしれませんが映像的ながっかり感は否めない。フィルムカメラでは小回りの効いた少人数での撮影や、水中撮影、エフェクトなどがやりにくかったからかな、と想像しますが、見る側は撮影の段取りなんて気にしないので、仕上がりを見るとそんな風に感じてしまう、もったいない感じの画でした。

画的には16ミリ、スパー16ミリなどの質感があれば、作品に品格が生まれたように思う。DVは、フィルムと違って暗めの映像はハマらないことを再認識。

ただ、いつもの塚本節は健在で、塚本監督作品が好きな人にはなかなかたまらない作品であるようにも思う。

欲望

欲望欲望
2005年/日本/133分/R-18
監督:篠原哲雄、企画・製作:鈴木光
原作:小池真理子
脚本:大森寿美男、川崎いづみ
撮影:上野彰吾
主題曲:布袋寅泰
出演:板谷由夏、村上淳、高岡早紀、利重剛、大森南朋、津川雅彦、他
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小池真理子氏原作の同名小説が原作の映画。

その原作を先に読んでいたのですが、ラストの方は映画独自だと思いますが、基本的に原作に忠実という感じだった。

小説ではあまり気にならなかったのですが、板谷由夏さんの演じる役柄に違和感を感じるところがあった。その時は一時的に勃たなくなった男に対して「できないのなら帰って」はどうなんだろう。フェラチオでも手コキでも、自分もセックスをしたい、快楽を共有したい、のならばできることはいろいろあるはず。

それと村上淳さんとの文字通りのカラミでも、勃起しないのならば、アナルとか使ったりしての前立腺プレイなど、不能が原因で、できないことはあるのかもしれませんが、諦めて悲観的になる前に、いろいろ試みるくらいのきおいは見せてほしいものです。そんなことを思ってしまうのは男性の私だけでしょうか。

全体的には主演の板谷由夏さん、村上淳さん、高岡早紀さんの他にも、利重剛監督や大森南朋さん、津川雅彦さんなども独自の存在感を発揮していて見ごたえがありました。

板谷由夏さんはデビュー作、大谷健太郎監督の「アベック・モン・マリ」の頃、「演技するって何ですか」と言っていたようですが、その頃と比べると全裸でセックスシーンに挑むなんて、腹が据わっている、というか女優としての気合を感じないわけにはいきません。

ソナチネ

ソナチネソナチネ
Sonatine
1993年/日本/93分
監督・脚本:北野武
製作:奥山和由
音楽:久石譲
出演:ビートたけし、国舞亜矢、渡辺哲、勝村政信、寺島進、大杉漣、津田寛治、他
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1993年公開の北野武監督の第4作。

この「ソナチネ」は公開当初、大学1年だった私は映画サークルの人々と劇場に足を運び、その時の映画館の人ごみや臭いなどの記憶が懐かしい作品。

数えると13年ぶりに観たのですが、主演のたけしさんの肌ツヤが若かった。相対的に自分も変わっているのだと思うと恐ろしい気持ちになります。

この映画を初めて観た時は映画を作ったことはなかったので、ひたすら「カッコイイ」と圧倒されたことを思い出しますが、今観ると沖縄の自然のロングショットや廃屋のようなところでの滞在など、お金をかけずに魅せる画作りの工夫が凝らされていることが目についた。

あと、任侠といえばそうですがこの映画の非エンタテイメント=プライベート=純映画=観る人を選ぶ、映画であったこと再確認。やっぱりエンタテイメント作品はディズニーランドに行く時のように「楽しまなければいけない圧力」が強く、僕には敷居が高い。

この映画くらい「平常心」で観れる作品がたくさん作られる状況になればいい、と思いますが、こういう映画は「商品」と考えるとその存在意義が怪しくなるのも事実だと思う。

最近は低予算のDV映画などが増えてきましたが、そういう低予算ものでも、「しっかり客を楽しませなきゃいけない」的な映画がその中でも商業ラインにのっているケースが多く、映画を撮れる可能性は広がったけれど、それで成り立つかどうかの状況は、結局13年前とあまり状況は変わっていないことも改めて認識してしまった。

映画「ソナチネ」公式サイト
http://www.bandaivisual.co.jp/kitano/sonatine/

痙攣

痙攣 けいれん痙攣 けいれん
2004年/日本/64分/R-18
監督:田尻裕司
製作:朝倉大介
脚本:芳田秀明
撮影:飯岡聖英
出演:佐々木ユメカ、真田幹也、堀正彦、北の国、大葉ふゆ、はやしだみき、他
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新鮮ないやらしいシーンを期待して鑑賞するも、想像以上にいい映画だった。

「カラミシーンを早送りしても成立するような映画はピンク映画じゃない!」と脚本家の荒井晴彦さんはどこかでおっしゃっていましたが、この映画はカラミのシーンが、この映画から感じた「生きることとは?」という問いにしっとりと馴染んでいたように思う。カラミがなかったならばセリフの重みがなくなってしまう。

気になったのは画からあふれる70年代的な空気。作中に使用されている携帯電話などを見ると、比較的最近、2000年以降に撮影されたもののなずだが、どうにもレトロ、というか、一昔前の印象が強い。最近撮った8ミリフィルムのような感じ。

現代風にアレンジされた8ミリ映像ならばPVなどでも、うらやましくなるような画になると思うが、そう感じなかったところが問題なように思う。「35ミリのアフレコ」だけが原因ではないはずなのだが。

いい映画だし、ビデオではないある意味最高の媒体、35ミリフィルムで撮影している気はするのですが、いい気持ちになれない画がもったいないように感じた作品。これはピンク映画全般に感じるところですが、何故なんだろう。

アンテナ

アンテナ スペシャル・エディションアンテナ スペシャル・エディション
2003年/日本/117分
監督・脚本:熊切和嘉
脚本:宇治田隆史
原作:田口ランディ
音楽:赤犬 、松本章
出演:加瀬亮、小林明実、木崎大輔、宇崎竜童、麻丘めぐみ、大森博、小市慢太郎、甲野優美、入川保則、黒沼弘巳、占部房子、榎戸耕史、春海四方、寺島進、光岡涌太郎、他
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数年前に国際映画祭(ベルリンあるいはベネチア)に出品しているとの情報はあったが、ロードショーを見逃がし、近くのツタヤにもDVDが入荷されていなかったが、ふと渋谷ツタヤをみていたらDVDを発見し、即鑑賞。

原作の田口ランディ氏の「アンテナ」は読んでいたのですが、「こんな話だったっけ?」というのが正直なところ。

忘れてしまっている部分は多いとは思いますが、「アンテナ」という言葉が指し示す内容が映像で膨らんでいる、というより説明されるにとどまっている、という部分でがっかりした。

メイキングで熊切監督本人も言っていますが「家族の物語」として成立しているように思う。

夢がこぼれた時の表現の方法など工夫の余地はあったのでは。同じランディ作品ならば中原俊監督の「コンセント」のラスト間際のストリーキングのシーンなどは圧巻だったことを思い出すと、脚色力に欠けている感は否めない。

とはいえ、加瀬亮さんをリアルなまでに追い込んでいく演出はいつもの熊切節をみれた気持ちになり、観た映画が腹にたまる感じ。しかも腹持ちはよい。

かえるのうた

かえるのうたかえるのうた
2002年/日本/65分/R-18
監督・脚本:いまおかしんじ
製作:朝倉大介
撮影:前井一作
出演:向夏、平沢里菜子、吉岡睦雄、七瀬くるみ、川瀬陽太、他
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誰がどう観ても「かえるのうた」という感じの映画。なぜ「かえる」なのかはわかりませんが、一貫して「かえる」でした。ロケ地は下北沢が中心で行ったことのある場所、見たことのある風景が多々ありました。

主演は最近「ビタースイート」にも出演していた向夏さん、吉岡睦雄さんはいまおか監督の「たまもの」にも出演していました。

なんというか形式的には「濡れ場」のシーンは多いですが、あまりポルノグラフィックではないように思う。

「濡れ場」をとばしたら映画は成立しないとは思いますが、ポルノではないナチュラルな裸のシーンが、特にラブホテルでの平沢里菜子さんとの2人のカットが印象的。

「自分の墓場まで持ち帰りたい映画か?」と問われれば分かりませんが、いい映画です。

たまもの

たまものたまもの
2004年/日本/65分/R-18
監督・脚本:いまおかしんじ
企画:朝倉大介
撮影:鈴木一博
出演:林由美香、吉岡睦雄、華沢レモン、栗原良、桜井一紀、 川瀬陽太、他
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第17回ピンク映画大賞受賞作品。

主演は数年前に他界した左利きの林由美香さん。

原題は「熟女・発情タマしゃぶり」で2004年のユーロスペースでのレイトロードショーでは改題し「たまもの」として公開された。

いまおかしんじ監督の素朴なアイデアがぎっしり詰まった作品。監督のこの映画に懸ける想いが伝わってくる作品です。

カットしてあるのかもしれませんが、ピンク映画のはずなのに、所謂「濡れ場」的な濡れ場はあまりなく、ちょっといやらしい一般映画を観ている感じだった。一般映画的にはいいと思うけれど、これでピンク映画といえるのだろうか。

DVD特典映像の初日舞台挨拶を見ると、ピンク映画界の現状が垣間見れ刺激的。

林由美香さんが素敵でした。

エロス番長1「ユダ」

ユダエロス番長1「ユダ」
2004年/日本/104分
監督・脚本:瀬々敬久
脚本:佐藤有記
撮影:斉藤幸一
音楽:安川午朗
出演:岡元夕紀子、光石研、本多一麻、三浦誠己、下元史朗、他
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ピンク四天王の一人、瀬々敬久監督作品。同型のDVカメラ、同予算で「新人監督発掘」のために製作された「映画番長」シリーズの1つ、「エロス番長」シリーズの番長こと瀬々敬久監修による作品。

瀬々作品は「エロス+同時代の社会事件+ドキュメンタリー的要素」が特徴のように思うが今回のその特徴にのっとている。

「理解はできないけれど、殺人者の哀しみのようなことを表現したかった」と瀬々監督はDVDの特典映像で言っていた通りの内容。

一見「小雪」風の風情のある主演の岡元夕紀子さんは初めて演技を観ましたが、腹の据わった感じは伝わってくるものがありました。元、雑誌「セブンティーン」のモデル、と聞くと小規模映画とかは駄目そうなように思っていましたが、観てびっくり。110分のうち100分くらいは彼女のアップばかりが映っていた印象。よほど監督のお気に入りなのか。「汚いかっこうをさせても清潔感がある」と監督も言っていましたが、その清楚な顔立ちはエロスをかきたてる。

また、前述の「肌の隙間」と同様に脚本は佐藤有記さんですが、「女流脚本家」ばかりが脚光を浴びがちなピンク的な映画で彼女と瀬々監督とのコンビの作品が自分には一番しっくりくる。

「撮影はDVの24Pで行われた」とのことなのでおそらくカメラはパナソニックのAG-150あたりが使われていた可能性が高いように思う。

監督も言っていましたが、本来、メディアに即した脚本で映画は撮られるべき。35ミリ、16ミリ、8ミリ、ハイビジョン、DV。

DVDを観て、これだけの映像で撮れるのならば、パーソナルな事柄に関してはDVが一番だ、と再認識。フィルムだと、予算とか観客のこととか、作りたいもののこと以上に、考えなければならないことも発生してきてしまうので、当たり前といえばそうだが、自分が撮りたいものはDVで撮るのが順当。マイケル・ウィンターボトムなどのように。

エロス番長1「ユダ」公式サイト
http://www.eigabancho.com/

ピンクリボン

ピンクリボンピンクリボン
Pink Ribbon
2004年/日本/118分
監督・脚本・撮影:藤井謙二郎
出演:黒沢清、高橋伴明、井筒和幸、女池充、池島ゆたか、若松孝二、渡辺護、足立正生、田尻裕司、林田義行、他
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「乳がんの早期発見・早期診断・早期治療の大切さを伝えるシンボルマーク」ではない方の「ピンクリボン」。近年40周年を迎えたピンク映画のドキュメンタリーフィルムを鑑賞する。

最近、パッケージ画像につられて一般公開されたピンク映画のDVDを観る機会が多いのですが、思えばこんな機会があるのもVHSからDVDへとメディアが変化するタイミングと、一般公開するピンク映画が出始めるタイミングが重なったからなんだろうか。

この「ピンクリボン」を観て驚いたことは、まず、ピンク映画などで「製作」としてとしてクレジットされている「朝倉大介」氏が女性であったこと。若松孝二監督が「ねえさん」と呼んでいたのが印象的。

黒沢清監督の日活ロマンポルノ「神田川淫乱戦争」は日活側の判断で公開されなかったこと。

ずっと「コワもて」系の人だと思っていた高橋伴明監督がとても温和でやさしい感じの人柄のように見えたこと。

撮影中に「神と交信する」という女池充監督の現場風景が見れたこと。

などでしょうか。他にも最近面白い作品を撮る人だな、と思っていた田尻裕司監督の姿や、若松孝二監督の冷静な会社経営能力=予算管理能力(ひたすら情熱的に湯水のように使ってしまう印象がありました)が垣間見れたのは刺激的だった。

舞台挨拶など観ても「昭和の香り」漂う人によって支えられているとは思いましたが、思っていたとおり後継者がいない、というか、メディア形態として瀕死の状態であることも実感できました。「20年前にあと10年でなくなる」と言われていた理由がわかります。2015年にはどうなっていることやら。

フィルム撮りのオールアフレコ、という形式は8ミリ映画に通ずるところを感じ、ピンク映画製作の膨大なノウハウはそのまま低予算フィルム映画作りのノウハウとして受け継ぐ場所が存続して欲しいことも強く感じます。


「ピンクリボン」公式サイト
http://www.uplink.co.jp/pinkribbon/

刺青

刺青 SI-SEI刺青 SI-SEI
2005年/日本/72分
監督:佐藤寿保
原作:谷崎潤一郎
脚本:夢野史郎
撮影:斉藤幸一
出演:吉井怜、弓削智久、他
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谷崎潤一郎原作の「刺青」ということで谷崎ファンとして期待して、かつ深紅のチラシ画像につられて鑑賞。

見始めると谷崎の「刺青」を読んでいたのかどうかわからなくなってしまったのですが、自分には観ていて言葉があまり体に入ってこない作品だった。珍しく最後まで映画にも入れない感じだった。

自分が作った作品のことを考えてしまい、身につまされる思いもありますが、映像的にも単調な感があった。個人的な好みとしては、もっと現代風にプロットも含めて脚色してほしかった。

肌のクローズアップでは、首に生えている産毛が気になったりしてしまった。

佐藤寿保監督はピンク映画界の巨匠ですが、この作品は自分にはあまり合わない作風で残念。

草叢

草叢 KUSAMURA草叢 KUSAMURA
2005年/日本/70分/R-18
監督:堀禎一
脚本:尾上史高
撮影:橋本彩子
音楽:網元順也
出演:速水今日子、吉岡睦雄、伊藤猛、冴島奈緒、佐々木ユメカ、下元史朗、他
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「牧歌的・幻想的なエロ」風のDVDパッケージに惹かれて鑑賞。公開名は「不倫団地 かなしいイロやねん」。

ファーストカットから、そういう感じではなさそう、と感じる。最近のDVD化されるピンク映画は中身以上にパッケージがポップになっている気がする。

僕のようにそれが決め手で見ることになる人も少なくないはずなので、見事な販売戦略にというか、結果的には功を奏していると思う。

パッケージ画像には「股を広げた女の脚」は写っていたが、本編に出演している主演がこんな歳、格好だとは全く想像できなかった。ウソはないけれども、ジャケットって恐ろしい。

映画自体は「チープ・低予算・華がない」感じでしたが、エレジーを感じる、練り上げられた脚本に驚いた。

映画作りに対する、作り手の情熱を感じる1本。

ビタースイート

ビタースイートビタースイート
2004年/日本/58分/R-18
監督:女池充
企画:朝倉大介
脚本:西田直子
撮影:伊藤寛
出演:向夏、石川KIN 、林由美香、佐野和宏、福島拓哉、他
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クールな後味が残るピンク映画の劇場公開バージョン。公開名は「濃厚不倫 とられた女」。

ピンク映画ですが「ピンク七福神」の一人、女池充監督作品のピンク映画の枠を超えた映画。

個人的には両方好きなのですが、芸術的な感じの映画より、元気いっぱい、というか、勢いで魅せるような女池充監督作品も観てみたくもなりました。

この作品には数年前に亡くなった林由美香さんや、自主映画などの場で活躍している知人の福島拓哉さんなどが出演している。

DVD特典映像で荒井晴彦さんが言っていたように思いますが、良くも悪くも、この映画、濡れ場がなくても映画として成立しているように思います。

「ビタースイート」公式サイト
アルゴピクチャーズ

NANA-ナナ

NANA -ナナ- スペシャル・エディションNANA -ナナ- スペシャル・エディション
2005年/日本/114分
監督・脚本:大谷健太郎
原作:矢沢あい
撮影:鈴木一博
出演:中島美嘉、宮崎あおい、成宮寛貴、松山ケンイチ、平岡祐太、他
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まだ未見だった映画「NANA-ナナ」をようやく鑑賞。

珍しく、原作の漫画は会社で回し読みに参加させてもらい読んでいたので、映画版も気にはなってたのですが、監督を自主映画上がりの大谷健太郎監督がやると聞くと俄然期待してしまう。

観終えた後のガッカリ度は測り知れない。主人公と同年代の人たちがどう観るのかはわからないが、原作ものの映画としては「ライブシーンがよい」以外、観るべきところはなかった。終始観ていて恥ずかしくなってしまうような薄っぺらい演技の中島美嘉さんが気のどくに思ってきてしまった。悪い意味で自主映画くさい。

原作の漫画にあった「テンポの良さ」や「ト書き的な書き込み」など、僕が魅力的に思った部分は映画には反映されていなかった。こんなに観るべきところがない映画も珍しく、現場でプロデューサーなど誰も不安にならなかったのか、と思ってしまう。大谷監督もこの作品を最後に終わってしまうのではないかと心配したが、これまた驚いたことに今公開中の映画「ラフ」の監督をしているようだ。さらにこの映画の続編も大谷監督がメガホンをとるらしい。

百歩譲っても、原作ものは、その原作をなぞるようにして撮る場合は森田芳光監督の「失楽園」のように興行的に成功しないことには生きる道はないと思う。作る側も結果的に自分をすり減らすことになるわけだし。

LOFT








「LOFT」公式サイト
http://www.loft-movie.com/

2005年/日本/115分
監督・脚本:黒沢清
撮影:芦沢明子、音楽:ゲイリー芦屋
出演:中谷美紀、豊川悦司、西島秀俊、安達祐実、大杉連、鈴木砂羽、他

「神田川淫乱戦争」「ドレミファ娘の血が騒ぐ」「地獄の警備員」「CURE」「ニンゲン合格」「カリスマ」「アカルイミライ」「回路」「ドッペルゲンガー」などなど、独自の作風でジャンルの臨界点に挑んだ作品を発表し続けている黒沢清監督の3年ぶりとなる最新作。

黒沢作品初の女性を主役においた恋愛映画の要素も強い映画ですが、映画「嫌われ松子の一生」など「中谷美紀さんが出演している作品はあまり好きになれない」ジンクスも黒沢清監督作品なら覆せるはずだ、という期待も込めて、5年ぶりくらいに平日の昼間の映画館で鑑賞。

観終えた後の満足感は過去の黒沢清作品にはないほど低いものだった。こんな時には実際と異なるチラシやポスターのキャッチコピーも文字に虚しさを感じてしまいます。良ければキャッチなんか気になりはしないのですが。

敷居を高くしてしまったからだけではないとは思うのですが、個人的には黒沢作品の「曖昧なところ」に魅力を感じていたのですが、その余地が感じられなかった。

プロット的には曖昧な部分もあったようにも思うのですが、恋愛映画的になっていたせいか、映画全体を動かす根のようなところが変にハッキリと表現されていたように思う。

そもそもこの作品「LOFT」は、パンフレットによると、「もうホラーはやらない」と考えていた黒沢清監督に韓国の製作会社からオファーがあり製作に至った模様で、以前の作品のようにネタを暖めていた作品ではないよう。

でも、一定の知名度をもった役者さんばかりが出演していて、ハマる人はハマるかもしれないし、黒沢清ファンならずも楽しめる作品なのかもしれない。


約三十の嘘

約三十の嘘 特別版約三十の嘘 特別版
2004年/日本/100分
監督・脚本:大谷健太郎
原作・脚本:土田英生
脚本:渡辺あや
撮影:鈴木一博
音楽クレイジーケンバンド
出演:椎名桔平、中谷美紀、妻夫木聡、田辺誠一、八嶋智人、他
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まず、オープニングの音楽が「面影ラッキーホール」に違いない! と思ったら、「クレイジーケンバンド」でした。三池崇史監督の「ブルースパープ」を観ていたら勘違いしてしまう人もいるかもしれない。

大谷健太郎監督は「アベック・モン・マリ」「とらばいゆ」で、非商業映画的=自主映画的ながら、エリック・ロメール的、とも言うべき、くったくのない台詞回しで観せる映画にファンになってしまったのですが、その大谷監督が日本のメジャー所の役者さんを起用した密室劇を撮ったと聞いて、ずっと観たかったのですが、ようやく観ることができました。

結果的にはほとんど密室劇ですが、役者が魅力的に描かれていて心地よかった。のと、脚本が練られていたのが印象的だった。

椎名桔平さんは好きな役者の一人ですが、彼の魅力が映画の中で生きていると感じられた。あまり好きではない中谷美紀さんもこの映画の役どころはハマリだったように思う。「ちょっと意地っ張りだけど純粋」な感じはハマルように思う。何度も書いてしまうが、映画「嫌われ松子の一生」の彼女はイマイチだ。

その他、妻夫木聡さん、田辺誠一さん、八嶋智人さんなども、それぞれいい味をだしていて魅力的だ。

セクシードリンク大作戦

セクシードリンク大作戦~神様のくれた酒セクシードリンク大作戦 神様のくれた酒
2003年/日本/63分/R-15
監督・脚本:本田隆一
脚本:佐藤佐吉
撮影:今泉尚亮
音楽:サミー萩原
出演:片桐華子、山本浩司、千原浩史、森下能幸、森三中、他
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今回もいやらしい映画を期待して鑑賞。

が、最初の数分でセクシー系というよりはお笑い系の映画であることを、そのキャストの面々で確認することになる。

お笑いはライブ感が命であることを再確認。コントの寒いこと寒いこと。お笑い芸人さんは観られる=被写体、としては板についていますが、ミュージシャンやモデルと同じで、役者に求められるもの全ては持ち合わせていない。

主演の片桐華子さんは上の文脈ならばミュージシャン系の役者さんに見えましたが、熱のこもった演技でした。

個人的には千原浩史さんのファンなのですが、彼の魅力が出尽くされた作品ではなかったのが残念。お笑いのムード漂う映画が好きな人にはオススメの一本。尺も短いので気軽に観れる。

美女缶

美女缶美女缶
2003年/日本/61分
監督・脚本・編集・美術:筧昌也
撮影:森克彦
音楽:浅田将助、椎名高之、水野修一
出演:藤川俊生、吉居亜希子、木村文、小沢喬、他
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平日の深夜に一人でぴっそりといやらしい映画を観ようと鑑賞を始める、が、ファーストカットからどうもそうじゃないことを実感するようになる。

結果的には期待を裏切られた作品でした。いい意味で。久々の自分中でのヒット作。
それにしても四畳半SFだったとは・・・。

何かを考えさせるような作風ではありませんが、自主制作でありながら、商業ものと同じ土俵で、かつ、この「美女缶」の方がおもしろいなんて素敵だ。

DVDの特典映像を見るとこの作品は2003年のゆうばりファンタスティック映画祭でグランプリを獲得した模様。脚本は漫画を書くような感じで作成したとのことです。

完成当初は仲間内では不評だったようですが、「あんまり自主映画とか観たことないけどいろいろ観てみたい」というような人達にはとてもやさしい映画だと思う。

特に脚本、設定等、自主映画が抱えるデメリットが気にならない、というか、むしろこの方がネタのおもしろさが栄えるようにすら感じてしまう。

後にBS-iなどで番組化などされたようですが、「時代はやっぱり漫画映画なのか?」と感ぜずにはいられませんが、最近、嶽本野ばら氏の作日を耽読している自分ならば「乙女路線」を狙うべき?


「美女缶」公式サイト
http://bijocan2.s141.xrea.com/index.php

マグマのごとく

マグマのごとくマグマのごとく
2004年/日本/68分/R-15/
監督:亀井亨
製作・原案・脚本:永森裕二
撮影:中尾正人
出演:黒沢愛、水元ゆうな、 藤田浩、深来勝、阿倍泰之、江原修、他
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風呂場でのみSEXをしたがる女の話。

映像は綺麗でお洒落な感じなのですが、なんとも中途半端な印象。

fuckシーンやヌードなど、濡れ場のシーンは多いのですが、興奮しない。

かといって、物語を観ているような気持ちにもなれず、観たいはずのものが、綺麗に映っているのに、何も見えない、という不思議な感じすらした。

これはおそらく、作り手のスピリッツと僕の見方に全く接点がなかったということか。

ある意味、珍しい体験でした。

Mr.ジレンマン 色情狂い

Mr.ジレンマン 色情狂いMr.ジレンマン 色情狂い
1979年/日本/70分
監督:小沼勝
原作:笠太郎
脚本:荒井晴彦
音楽:ダディ・竹千代&東京おとぼけcats
出演:柄本明、高田純次、ベンガル、朝霧友香、小川亜佐美、他
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東京乾電池と荒井晴彦氏と小沼勝氏らによる、一種贅沢なタレントによるポルノコメディ。エロヒーローもの。

柄本明、高田純次、ベンガルの出世作となった作品のようですが、当たり前ですが、今観ると皆さん若いです。

濡れ場シーンの多かった柄本明氏などは筋肉質で男らしい身体を披露していた。

1979年に制作された映画とのことですが、もう30年近くも前の作品になるにもかかわらず、東京乾電池の面々のキャラクター、芸風、などは今と変わらないことに感慨を覚えたり。

全体的に向う見ずとも感じられるエネルギーに溢れており、その時代特有の空気かもしれませんが、好感がもてました。

ヒーローもの+エロ、子供時代にみたらどんな刺激を受けただろう、と想像すると楽しくなってしまします。

夏の花火編 -あさがお-

夏の花火編 -あさがお-夏の花火編 あさがお
2003年/日本/56分
監督・製作・脚本:熊切和嘉
脚本:宇治田隆史
出演:高階祐子、越後隆之、柳沢えり花、山下昭和、他
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熊切和嘉監督作品を観るのは「鬼畜大宴会」以来の「夏の花火編 -あさがお-」ですが、観終えたら監督名を知らされていなくても熊切監督では? と良くも悪くも思う作品。

劇場公開はしていないオリジナルビデオ作品のようですが、特に後半の狂気の世界へ踏み出した後のシーンの緊張感はいわゆる快ではないが「映画的」と思わせる。

言ってしまえばなんてことはないストーリー展開かもしれないが、最後まで「目を離すわけにはいかない感じ」にさせる演出は流石の一言。

「鬼畜大宴会」の時もそうでしたが、カメラや録音などのスタッフを含め、出演者は大変だろうな、と心配してしまう。でも案外エンタテイメント作品の方がシリアスものなどよりも現場はピリピリすることもあるのでどうなのかなわかりませんが。

そういえば、熊切監督は最近観た、石井輝男監督の「盲獣vs一寸法師」に少し出演していました。大の江戸川乱歩ファンとのことですが、こんな顔をしていたとは。なんとなく想像はついていたのですが。

そう、この作品の前に作られた田口ランディー氏原作の「アンテナ」の劇場公開を見逃してから地元のツタヤに入荷されずに何年も経ってしまった。渋谷ツタに足を運ぶしかないのかな。

屋根裏の散歩者

屋根裏の散歩者〈完全版〉屋根裏の散歩者〈完全版〉
1994年/日本/74分/R-18
監督:実相寺昭雄
プロデューサー:一瀬隆重、他
原作:江戸川乱歩
脚本:薩川昭夫
撮影:中堀正夫
出演:三上博史、宮崎ますみ、六平直政、加賀恵子、嶋田久作、他
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未見の「江戸川乱歩」ものということで、石井輝男監督の「盲獣VS一寸法師」に続いて鑑賞。

全編スタジオ撮影で、使用機材などがハイクオリティーで「国内の主要な映画会社が制作した作品」な感じがする。ようは低予算インディペンデントな臭いがしないミステリー作品。

プロットは、安心して観ていられる、というか、途中でオチがわかる。想像以上のそれがあるのか? と少し期待して最後まで観る、が裏切られる。そういった意味で、原作に忠実なのか、脚色がない、というか保守的で、予定調和な印象をもった。単に題名「屋根裏の散歩者」それ以上でもそれ以下でもない作品。

この作品の製作後、実相寺昭雄監督は江戸川乱歩の別の短編「D坂殺人事件」を撮ることとなるが、とりわけ、乱歩ものがウマいわけではないように感じる、が、この「屋根裏の散歩者」は、セピアな色彩や意匠を凝らしたフレームワークなど、乱歩ファンは観て損はない映像作品に仕上がっている。

役者陣は、個人的に「いい味」を出していた宮崎ますみさんがプロットにあまり関わってこなかったのが残念ですが、「乱歩もの、というより、ポルノ映画か?」と思う程、濡れ場が多く、現在女優を休業しているらしい加賀恵子さんの艶っぽい演技や、俳優陣の腰のフリには少し驚いた。三上博さんの小芝居も随所に見られて少し楽しい。

ヘアーくらいはボカシ無しで観たいものですね。映倫さん。不自然に感じるのは私だけではないはず。

雨音を聴く魚たち

雨音を聴く魚たち雨音を聴く魚たち
2002年/日本/63分
監督・脚本:菅原隆
企画:朝倉大介
撮影:森下彰三
主演:東城えみ、中川真緒、山田智範、大槻修治、他
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個人的には嫌いなテイストではないが、というかむしろ、自分などは作品のターゲットとなる客層のようにも思うが、予算・演出・脚本・画作り等のまとまりに欠ける感があった。作り手としては他人事ではすまされない。

あるいは高倉健さんや北野武さんなどが主演だったならば同じ演出プランでも違うテイストの作品になっていたとは思う。

文字だけで成立している小説などとは違って、製作にコストが発生してしまう映画では「予算の範囲内でクオリティーを追求すべき」ということを考えさせられる。

製作関係者が、高いクオリティーを追求するというよりは、等身大の自分で勝負に挑むべき、というか、できないことを求めるというよりできることで最高を目指すべきというか。

結果的にAV女優としても活躍することとなった、元女子プロレスラーの東城えみさんが主演のエロティックサスペンス映画、ということですが、特にファーストシーンの濡れ場や作品タイトル、チラシ画像などはとても自分好みでしたが、観続けてていて興奮が続かなかった。全体的に好きな作風なだけにもったいない感じがしてしまう。

脚本を女性が書いていれば違った角度からの演出も可能なはず。

盲獣VS一寸法師

盲獣VS一寸法師盲獣VS一寸法師
2001年/日本/95分
監督・脚本・撮影:石井輝男
原作:江戸川乱歩
出演:リリー・フランキー、塚本晋也、平山久能、リトル・フランキー、藤田むつみ、及川光弘、丹波哲郎、他
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鬼才、石井輝男監督の最期の作品。去年亡くなっていたことは知りませんでした。

主演は「東京タワー」がベストセラーとなった役者ではないリリー・フランキーさんが主演。明智役には塚本晋也監督が役者として登場。他にも手塚眞監督や園子温監督や熊切監督なども出演。

映画はオウム真理教モノなどでもそうでしたが、手作り美術とアスペスト館協力のもとの舞踏、意味のない若い女性の上半身のヌード満載の石井ワールドが炸裂。

観てみると石井ワールドと江戸川乱歩のエロワールドは相性がいい、というか石井監督の力量なのかもしれませんが、作品と題材がフィットしている感じがある。

カメラやマイクは自主映画と同等の機材を使っており、ハード的には観ていられない作品だが、出演者の面々や作り手の情熱と美術でそれをカバーしている。

映画塾の生徒さんが多いとはいえ、これだけのスタッフをかかえて一ヶ月も撮影するのだから、恐らくギャラはないことを考えると目を覆いたくなるような劣悪な状況下での撮影だったことが想像される。

小規模映画はお金うぃお稼ぐことが目的はないとは思いますが、映画を作る=ご飯を食べて寝ることすら危うい状況、というのは避けなくてはならない。学生とかだったならいいとは思うのですが、30代、40代が必死になっていてもそんな状況から脱し得ないのは問題だ。そんなこともふと考えてしまう映画。


「盲獣VS一寸法師」公式サイト
http://www.fjmovie.com/ishii/mojuvs/

空中庭園

空中庭園 通常版空中庭園 通常版
2005年/日本/114分
監督・脚本:豊田利晃
原作:角田光代
撮影:藤澤順一
音楽:ZAK
出演:小泉今日子、鈴木杏、板尾創路、ソニン、國村隼、大楠道代、他
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以前、テアトル新宿で千原浩史さん主演の「ポルノスター」を観て好きになった豊田利晃監督の2005年公開作品。

豊田監督自身にはゴシップ等はありますが作品を観ると、松田龍平主演の「青い春」、ソウルフラワー・ユニオンが音楽を担当した「アンチェイン」「ナイン・ソウルズ」どれも低予算かもしれないが「安っぽさ」を感じさせない「確かな映画」を撮れる数少ない監督の一人だと思う。

この「空中庭園」もそんな良質の豊田映画だが、今回はイメージシーンに頼りすぎている感があった。

語られることのない大楠道代さんや小泉今日子さんの秘密。イメージカットがすんなりハマればそれにまさるものはないのですが、個人的にはそこらへんをハッキリさせたうえてどうなるのか観たかった。

揺れる、回転するカメラワークや雨のシーンなどの画がシャープで印象的。シーンのつなぎのカットなどもセンスを感じてしまう程心地よい。

「見せ場」がしっかりしているのはもちろん、そのつなぎとなる伏線の部分でも「魅せる映像」が多く「映画的な仕上がり」が観れて満足度は高い。

小泉今日子さんのパート先の若い女の子以外は役者陣の演技も観ていて安心できる。小泉今日子さんは相米慎二監督の遺作となった「風花」以来でしたが、大楠道代さんとのやりとりなど見応えのある演技でした。

あと作中やDVDのメニュー画面などで使われている主題曲? のα波の出そうな音楽はすこぶる自分好み。

次回作も期待してしまいます。


「空中庭園」公式サイト
http://kuutyuu.com/

下妻物語

下妻物語 スペシャル・エディション 〈2枚組〉下妻物語 スペシャル・エディション 〈2枚組〉
2004年/日本/102分
監督・脚本:中島哲也
原作:嶽本野ばら
撮影:阿藤正一
音楽:菅野よう子
出演:深田恭子、土屋アンナ、宮迫博之、篠原涼子、阿部サダヲ、他
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正直、映画「嫌われ松子の一生」はイマイチでしたが、中島哲也監督の事実上の出世作「下妻物語」を期待を込めつつ、ようやく鑑賞。

結果的にはとても楽しめました。セクシャルな表現がまたしても省かれていたことには落胆しましたが、特に深田恭子さんの演技がすばらしかった。彼女の使い方は北野武監督の「dolls」の上を行くものでした。「嫌われ松子の一生」の中谷美紀さんにもこれくらいは頑張ってほしかった。アイドルじゃなくて女優で売っているんだし。

この映画の物語自体はすこぶる「保守的」ですが、ローカル的なのりを笑い飛ばすのは時流に乗っていると思うし、好感を感じる。「御意見無_様_」なんて笑えます。

あと、これも原作の設定かもしれませんが、一匹狼、というか、群れない個人、にスポットがあたっているところにも良かったです。こういうヒット作からはある基盤のようなものを暗黙に強要されているように感じがちなのですが、今回はそれがなかった。

個人的には楽しんでしまいましたが、ふと考えるとこの作品、とっても「女の子」向きな気がする。


「下妻物語」公式サイト
撮影日誌、スタッフエッセイ、などが参照できる。
http://www.shimotsuma-movie.jp/

嫌われ松子の一生

嫌われ松子の一生 通常版嫌われ松子の一生 通常版
2006年/日本/130分 監督・脚本:中島哲也
原作:山田宗樹、撮影:阿藤正一
出演:中谷美紀、瑛太、伊勢谷友介、香川照之、市川実日子、黒沢あすか、柄本明、木村カエラ、蒼井そら、柴咲コウ、片平なぎさ、本田博太郎、奥ノ矢佳奈、ゴリ(ガレッジセール)、榊英雄、マギー、竹山隆範(カンニング)、谷原章介、甲本雅裕、キムラ緑子、角野卓造、阿井莉沙、宮藤官九郎、谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)、劇団ひとり、大久保佳代子(オアシス)、BONNIE PINK、濱田マリ、武田真治、木野花、荒川良々、渡辺哲、山本浩司、土屋アンナ、AI、山田花子、あき竹城、嶋田久作、木下ほうか、他
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久々に観る、豪華キャストの邦画でした。チラシにもあるように「これでもか」くらい話題の役者にとどまらない芸(能)人が出演していたのには少し驚き。

あと画面。細部にまでこだわった映像は良くも悪くもカット数が多く、現場の方々の苦労がひしひしと感じられます。

今回は、原作の小説は先に読んでいて、中島哲也監督がどんな風に映画化するのかを注目したのですが、彼は原作から痛々しいリアリティーを抜いて、ミュージカルの要素とユーモアをプラスしていた。

中島監督作品はたしか90年代の前半に、まだできたばかりの渋谷シネ・アミューズで「ビューティフル・サンデー」を観て、そのブラックユーモアと自主映画的な作風にCM界の巨匠らしくないセンスを感じてファンになったのですが、「嫌われ松子の一生」でもその片鱗は、ちょっとしたブラックな会話にやりとりや回想シーンでの8ミリ映像に現れているといえばそうだが、個人的には「人を描く」のを前提として映画を作って欲しかった。

結果として原作以上にエンタテイメント性の高い作品に仕上がっているが、映画にそれを求めていない自分としては「そんなサービスはいらない」といった感じ。ミュージカルものも嫌いだし。CGの星の数だけ、ディズニーランドなどが好きな若い女の子を映画観に呼ぶことができれば映画界に対する貢献は大きいと思う。

監督本人はどう思っているか分からないけれど、プロットに展開力のある本なら、「嫌われ松子・・・」じゃなくても同じようなテイストの作品ができあがっていたと感じてしまうところにこの映画の魅力の浅さがある。

あと、原作を読んだ人の多くが感じていると思うが、後半1/3が長くそれまでの勢いを殺している。編集権のある人はあの編集に疑問を抱かなかったのか不思議。

主演の中谷美紀さんは、周りの柴咲コウさんや濱田マリさんなどとの造形的な兼ね合い上でも中谷さんがベストなのかもしれませんが、別に主演を柴咲コウさんがやっても良かったように思う。ヌード込みの体当たりの演技が観れれば映画好きの人も文句は言いにくくなったと思う。作品の浅さは中谷さんと中島監督のコラボレーションの産物だと思う。

でも、テレビ番組から映画になった作品や、数年前の「世界の中心で愛を叫ぶ」に比べれば好感の持てる作品だと思う。この映画が大好きな人ゴメンナサイ。

オフィシャルサイトでは「自分の名前を入れて楽しめる『嫌われ松子の一生』オリジナル壁紙」を作ることができる。


■「嫌われ松子の一生」オフィシャルサイト

http://kiraware.goo.ne.jp/

ジョゼと虎と魚たち

ジョゼと虎と魚たちジョゼと虎と魚たち
2003年/日本/116分/PG-12
監督:犬童一心
原作:田辺聖子
脚本:渡辺あや
撮影:蔦井孝洋
音楽:くるり
出演:妻夫木聡、池脇千鶴、新井浩文、上野樹里、江口徳子、他
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長い間気にはなっていたのですが、数年越しでようやく鑑賞。

犬童一心監督作品は何年も前の東京国際映画際で「金髪の草原」を観て以来となります。犬童監督は「トニー滝谷」などの市川準監督作品の助監督などをしていたことは知っていたのですが、自主映画出身の監督さんだとは知りませんでした。

この「ジョゼと虎と魚たち」は田辺聖子氏の原作ものですが、登場人物、特に妻夫木さんの演じる役柄のキャラクターの設定に違和感があった。

ので、結果的に、このプロットならばわざわざ映画でなくても、テレビの特番などでやればいいような気はしてしまった。女性身体障害者の報われない恋愛、というストーリー全体がしっくり来ない感があった。

とはいえ、画作りはCMというよりは、必要以上に奇麗な画を目指していない感じがして、良い意味で自主映画的、というか高感度があった。

あと、池脇千鶴さんや妻夫木さんの弟の奥さん役のヌードなど「脱ぐ必然」はあまり感じないヌードがあり、原作に忠実だっただけかもしれませんが、この映画のリアリティーを深めることにつながっていると思う。


■「ジョゼと虎と魚たち」公式Webサイト
http://jozeetora.com/

その男狂棒に突き

その男狂棒に突きその男狂棒に突き
2003年/日本/75分
監督・脚本・撮影・編集・出演:山下敦弘
プロデューサー:富岡邦彦
撮影・出演:定者如文
出演:山本剛史、里美瑶子、三上良太、南堂元気、他
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エロい映画を期待してレンタル。「その男凶暴につき」は北野武の監督作品だったことをふと思い出す。

この「その男狂棒に突き」は自称、刑事兼アダルトビデオ(AV)の汁男優(女優とのカラミはおこなわずマスターベーションで射精する男優、詳しくは本編で)がいっぱしのAV男優として女優とのSEXに挑戦する話。

プロット的には「暗い」というか「夢がない」話ですが、観ているうちにだんだん汁刑事のキャラクターがかわいらしくなってきて「撮って?」という台詞には切なさがあってキュンとしてしまいました。

瀬々隆久監督の「肌の隙間」を観たときもそうでしたが、撮影現場の雰囲気が想像しにくい作品で、DVDの特典映像に付いていた「メイキング映像」が面白かった。

10分間の「汁刑事」、25分間?の「その男狂棒に突き」と併せて、この「メイキング映像」30分くらい?を観て、作品と映画作りを味わうと色々楽しみは深まるのではないでしょうか。

ストーリー的に所謂女性は観づらい作品だとは思いますが、もし観る人がいれば、どんなところに喰いついて観るのか気になるところです。お笑いにを観る感じと似てくるのかな。

あまり期待していなかっただけに、久々に良い印象の作品に出会えてよかった。


■アップリンク 実録シリーズ その男狂棒に突き
http://www.uplink.co.jp/factory/log/001040.php

さよならみどりちゃん

さよならみどりちゃんさよならみどりちゃん
2004年/日本/90分
監督:古厩智之
原作:南Q太
脚本:渡辺千穂
撮影:池内義浩
出演:星野真里、西島秀俊、松尾敏伸、岩佐真悠子、佐藤二朗、他
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さよならみどりちゃんさよならみどりちゃん
南 Q太

祥伝社 1997-07
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たしか、大学時代、色々な漫画を読み漁っていた頃、1997年頃に原作のほうを読んでいたのですが「何故今、映画化?」と強く思いながらDVDを鑑賞。

主演の星野真里さんは、初めて目にしたのですが、金髪先生などテレビでいろいろ活躍しているよう。「もう脱がないつもりなのだろう」と半ばあきらめかけた、ラストに近いシーンでいきなりヌードになっていて少し驚きでした。初々しい演技が印象的。

DVDの特典映像についているナント映画祭などの映像を見ると星野さんはいたくかわいらしく見え、それと比べるとフィルムに映っている彼女はとかく幼くみえた。

緊張していたのかもしれませんが、照明の足りない35ミリ独特の「じとっと」した感じによるところなのかもしれない。

西島秀俊さんは、癖のある役を演じていましたが「タンクトップ」だけでキャラクターの多くを表現しているようにも思いました。西島さんがこの役を演じているのは面白い。タンクトップを着出てきて最初はびっくりしてしまったのですが。

「灼熱のドッジボール」「この窓は君のもの」のなどの古厩監督ですが青山真治監督「Helpless」で助監督をしていたのは知りませんでした。

最近はテレビ作品を多く手がけているようですが、オリジナル脚本の長編映画を観たいものです。


■さよならみどりちゃん公式サイト
http://actcine.com/midorichan/

春眠り世田谷

春眠り世田谷春眠り世田谷
2001年/日本/80分
監督・脚本・編集:山田英治
撮影:郡司掛雅之
出演:大森南朋、今井あずさ、紀伊修平、川屋せっちん、永井英里、他
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ここ数年、三池崇史監督の「殺し屋1」やNTTドコモのCMなど活躍の場を広げている、大森南朋さん主演の自主映画作品。大森南朋さん、父は大駱駝艦の麿赤兒さん、お兄さんは「ゲルマニウムの夜」などの大森立嗣監督。とても映画一家。こうなると麿さんの奥さんの姿なども見てみたくなります。

さて映画ですが、いわゆるメタ映画、というか「主人公が映画をつくろうとする」話。といっても、製作段階というよりは、撮影段階等に至るまでの準備、はらを決めるまでの葛藤、といったところか。大森南朋さんのかわいらしい、というか、かざることのない、ナチュラルな魅力が表現されていました。

作中8ミリフィルム映像とDV映像を融合させて作品として成立させていく手法は、手法としては思いつくけれど、それを効果的に実現することは難しく、なかなか手がだせずにいたのですが、この作品で前向きになれました。

等々、主人公が映画撮るために会社辞めたのに毎日ぷらぷらしているところなども、個人的に身に積まされる部分は大きい作品でした。ある意味「僕などのための作品」と思っていいようにすら感じてしまいました。

赤線

赤線赤線
2004年/日本/90分
監督・音楽:奥秀太郎
脚本:小柳奈穂子
音楽:宮田芳郎
出演:中村獅童、つぐみ、小松和重、片山佳、荒川良々、今奈良孝行、山田広野、野田秀樹、森本訓央、野村朋子、安元遊香、るう、大政智己、藤崎ルキノ、植田裕一、岸建太朗、田丸こよみ、佐藤貴史、他
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オープニングからカッコイイ音楽が印象的でした。音楽監督には監督の奥秀太郎さんも参加している。

予算の関係か、浅草六区? の「赤線」地帯の街並はワンセットしか作られていませんでしたが、当時の状況を全く知らない私には興味津々でした。

映画は、芝居の演出が映画的、というよりコテコテに演劇的だったので、私の好みではありませんでしたが、特に、主役の中村獅童さん、つぐみさん、永井荷風役の小松和重さんなどの魅力が満載。


■「赤線」公式ウェブページ
http://nega.co.jp/aka_sen/

青い車

青い車 プレミアム・エディション青い車 プレミアム・エディション
2004年/日本/90分
監督・脚本:奥原浩志
原作:よしもとよしとも「青い車」イースト・プレス
脚本:向井康介
撮影:斉藤幸一
音楽:曽我部恵一
出演:ARATA、宮崎あおい、麻生久美子、田口トモロヲ、水橋研二、曽我部恵一、他
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こういう脚本(ストーリー)は好みではありませんが、僕が観たいと思っている役者陣が魅力的でした。

青山真治監督の「シェイディー・グローブ」が印象的だったARATAさんや渡辺謙作監督の「ラブドガン」などの宮崎あおいさん、黒沢清監督の「回路」などが印象的な麻生久美子さん、塚本晋也監督の「鉄男」などの田口トモロヲさんなど、こんなに自分の好みの人ばかりが出演する映画ってあまりない。

監督の奥原浩志さんの作品は「タイムレス・メロディー」以来久しぶりに観ましたが、適切な画を積み上げることができる監督に感じられ好印象です。原作の漫画に忠実なのかもしれませんが、この作品はクローズアップが必要以上に多かったようにも思う。奥原監督のオリジナル脚本作品を次回は期待したいところです。

出ている役者さんがそれぞれ持ち味を発揮していて、満足感が大きい映画でした。

元サニーデイ・サービスのボーカル・曽我部恵一さんの音楽も印象的です。

肌の隙間

肌の隙間肌の隙間
2004年/日本/77分/R-18
監督:瀬々敬久
脚本:佐藤有記
撮影:斉藤幸一
出演:不二子、小谷健仁、伊藤洋三郎、三浦誠己、他
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瀬々監督作品は、学生時代にたしかユーロスペースやテアトル新宿などで「雷魚」「汚れた女」「冷血の罠」「Histeric」などを観ていましたが、気づいたら何年も間があいてしまっていました。

自分がいったい何をしていたのか不思議にすら思います。この作品を観終えると、未見の「Moon Child」「ユダ」など、がぜん観たくなってしまいました。

この映画は音楽等を含め「説明」が少ないのが、逆に、この映画が何を撮っているのかが前面にでている。商業的に商品として成立しているのかはわかりませんが、18禁にもなってしまっているし。

でもエンタテイメントではなく、ポルノ映画でもない、純文学的な意味での純映画は、自分にとってはみどころ満載です。

DVD版の特典映像には瀬々敬久監督、主演の不二子さん、小谷健仁さんへのインタビューを収録。


■アルゴピクチャーズ「肌の隙間」
http://www.argopictures.jp/lineup/hadano

亀虫

亀虫亀虫
2003年/日本/61分
監督・原案:冨永昌敬
撮影・照明:月永雄太
音楽:ノーシーズ
出演:杉山彦々、安彦麻理絵、木村 文、尾本貴史、冴嶋園子、大塚風子、他
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神保町ジャニスで、ふとDVDパッケージを手に取ると、なんと「メロドラマチック」「臍下の快楽」などの漫画家、安彦麻理絵さんが出演している映画があるではないか。どんな顔なのか知りたい一心で鑑賞開始。

「姉」役でしたが、なかなかお姉さんっぷりを発揮していてよかったです。作品によって顔が違うようにも思うのですが、作品の撮影が比較的長期に渡っていることが推測されます。漫画をコツコツ書いている画が思い浮かびにくいのは僕だけでしょうか?

作品は無音を切ったナレーションなどが独特の風合いを出していた。破綻しそうでしない作風などを観ると、自分も参考にしなければならない、と自問自答。

日本の小規模映画を観ると勝手に身に積まされてしまうことは多いのですが。たんたんとした語り口の中にある整合性のようなものが感じられて、面白かったです。


■Opaluc
http://www.h7.dion.ne.jp/~opaluc2/

female

femalefemale
2005年/日本/118分/R-18
「桃」監督:篠原哲雄
原作:姫野カオルコ、主演:長谷川京子
「太陽のみえる場所まで」監督:廣木隆一
原作:室井祐月、主演:大塚ちひろ
「夜の舌先」監督:松尾スズキ
原作:唯川恵、主演:高岡早紀
「女神のかかと」監督:西川美和
原作:乃南アサ、主演:大塚寧々
「玉虫」監督:塚本晋也
原作:小池真理子、主演:石田えり
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最近「短編=ショートフィルム」が気になりだし、その流れに乗って鑑賞。

そもそも塚本晋也監督の現在の最新作「玉虫」目当てに鑑賞したのですが、ノーマークだった「女神のかかと」監督:西川美和、原作:乃南アサ、主演:大塚寧々がこの5本の中では人の機微が表現されていて特に印象的でした。

この作品の公式サイトを見てみると、西川監督は、僕と同じ大学、同じ歳で、僕の好きな作品、「M/OTHER」(諏訪敦彦監督)などにフリーの助監督として参加していた人のようで、一方的に妙な親近感というか、ライバル心のようなものをかきたてられてしまった。西川監督には今後も注目です。

肝心の「玉虫」ですが、短編、長編の違いはありますが、前作「ヴィタール」の方が自分好みだったことは否めない。「六月の蛇」以降「エロスもの」? に向かっている感がありますが、塚本監督の今後の方向にも注目です。

短編=ショートフィルムはとかく段取りをすすめるだけで終わってしまう感じがある。余白を感じられる作品はネタによる部分が大きいので、ネタ繰りが特に難しいですね。


■公式サイト
http://www.female-movie.com/

凶気の桜

凶気の桜凶気の桜
2002年/日本/122分
監督:薗田賢次
原作:ヒキタクニオ
脚本:丸山昇一
撮影:仙元誠三
主題歌:キングギドラ
出演:窪塚洋介、RIKIYA、須藤元気、高橋マリ子、江口洋介、原田芳雄、他
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日曜の深夜にふとテレビをつけたら見覚えのある映画が放送されていて再び見てしまった。

そろそろ、桜の季節の到来ですが、この「凶気の桜」は公開当時、「GO」で時の人となった窪塚洋介さんが製作段階から関わったことや、主演で昼間の渋谷のロケの苦労話、などがテレビで放送されていたことを覚えています。

ヤクザ映画的でありながら、原田芳雄さん、江口洋介さん、高橋かおりさん、須藤元気さん、など、Vシネの臭いのしない役者陣や、重く、かつ、透明感のある映像が印象的な映画です。

その後の窪塚さんの事故のことなどを思い出すと、「映画を生きる人々の危うさ」などを考えてしまします。何もなければ何も作れないのですが、最近観たフィリップ・ガレルの作品などを観てもそんなことを思ってしまいます。


■公式サイト
http://www.toei-video.co.jp/data/kyoki/

ヴィタール

ヴィタール スタンダード・エディションヴィタール スタンダード・エディション
VITAL
2004年/日本/86分
製作・監督・脚本:塚本晋也
音楽:石川忠
エンディング:Cocco
出演:浅野忠信、岸部一徳、國村隼、串田和美、リリィ、木野花、利重剛、他
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「鉄男」「東京フィスト」「BULLET BALLET バレット・バレエ」「六月の蛇」などで有名な塚本晋也監督作品。この作品、公開は2004年でしたが、観たい観たいと思いつつようやく鑑賞。

結果的には2006年に観た映画、今のところ No.1 になりました。まず、「人間性とは何ぞや?」といった普遍的な大きなテーマに挑んでいること。「肉体」と「記憶」といったテーマも脚本の中にうまく入っていること。さらに、脚本を通じてこの作品に対する塚本監督の並々ならない取材力を感じたこと。などで印象的な1本となりました。

主演の浅野忠信さんが意外と「普通の人」というか「ヒューマニズム」を感じる役柄に挑戦していたのは意外と新鮮でした。

もちろん岸辺一徳さんの独特の語り口も光っていたのですが、利重剛監督もいい味をだしていました。彼の演技は何故か「クロエ」に出演していた塚本晋也監督の演技そのもの、のような印象を受けました。2人の関係がそうさせるのでようか。青山真治監督の「ユリイカ」と利重剛監督の「クロエ」を観ても2人の演技は相関的になっている気がします。不思議です。

これまで「鉄男」や「双生児」など、とかく「美術の人」と思われがちな塚本監督ですが、この作品は人間の根源的、普遍的なテーマに正面から挑戦しており、「妖怪ハンターヒルコ」などの頃と比べると、映像も洗練され、人間的、というか反ミニマリズム的な意味で「巨匠」という単語を思い出したりもするようになりました。

■公式サイト
http://www.vital-movie.com/

エリ・エリ・レマ・サバクタニ

エリ・エリ・レマ・サバクタニ 豪華版 2枚組エリ・エリ・レマ・サバクタニ 豪華版 2枚組
Eli,Eli,Lema Sabachthani?
2005年/日本/107分
監督・脚本:青山真治
撮影:たむらまさき
出演:浅野忠信、宮崎あおい、中原昌也、筒井康隆、戸田昌宏、鶴見辰吾、エリカ、川津祐介、岡田茉莉子、他
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嫌いな映画か? と問われれば好きな映画。劇中の効果音を含めた(劇中の釧路? での野外ソロライブは観ているだけで気持ちがよい)音楽が印象的。レオス・カラックスの「ポーラX」を思い出す。

「Helpless」の浅野忠信さんや「EUREKA」の宮崎あおいさんのセリフのない演技で魅せるシーンが多いように思ったが、2人とも過去の青山作品でいい味をだしていたので安心して観れる。

監督もハマり具合を計算しやすかったのでは? ただ筒井康隆氏は滑稽な程の大根っぷりで別の意味で際だった存在だった。深く刻まれた皺など「顔」はできていると思うのですが、しゃべらせるとなかなか凄いことを再確認。

よほど低予算で作っていたのか、画がとてもチープな感じがした。映っているものにお金がかかっていない。

美術さんが作ったであろうセットや小道具は素敵でしたが、プロットを押し進める力が感じられず取って付けたような印象が残るのは、ひとえに筒井さんのせいかもしれないが、「レミング病で自殺者が1000万人を超えている」という、「リアル感」がほしいSFには、セットや美術などを完璧にしないと中途半端になってしまいかねないと感じてしまう。

「リアル感」というより「フィクション感」が強ければそれはそれとして受け入れやすいのだが。その場合、低予算でもアイデア次第で面白くなりえるのではと思う。

細かいことはさておき「爆音がキモチイイ」映画。


公式サイト
http://www.elieli.jp/

東京ゾンビ

東京ゾンビ東京ゾンビ
2005年/日本/103分
監督・脚本:佐藤佐吉
原作:花くまゆうさく
撮影:石井勲
出演:浅野忠信、哀川翔、奥田恵梨華、松岡日菜、古田新太、中村靖日、高樹マリア、谷村美月、楳図かずお、他
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ようやく昨日渋谷、シネセゾンで鑑賞しました。お客の入りは日曜の16:45~の回で1/3程、70人強。

浅野忠信+哀川翔、が主演で話題の漫画が原作のゾンビコメディ。

節々思わず吹き出してしまうカットはあったが、なんとなく見終えた後の満足度は低い映画だった。原作に対する思い入れや漫画を読む感覚で映画を観たら面白いのかもしれないが、映画的な映画、を求めて観ると物足りなさを感じた。

といっても、やはり、浅野・哀川両氏の演技は素晴らしく安心して観ていられた。フジオの妻役の奥田恵梨華さんは芝居は未知数ですが、時々ドキリとする色っぽさを感じてしまいました。コカコーラ「FRESS」などのCMに出演している方なのですね。

原作は読んでいませんが、同じく「漫画が原作」で思い出す「ピンポン」などと似ている雰囲気があったように思う。

特に音・音楽は負けかな。あと、役者陣、僕はとても好きだけど、ふだん映画を観ない人には地味なのかもしれない。たとえ単館でもそういう人を取り込めれれば興行的には成功すると思う。せっかく原作モノ(漫画)をやるならね。

そういえば、監督の佐藤佐吉さんは三池崇監督、大森南朋さん主演の「殺し屋1」の脚本を担当していたのですね。知らなかった。個人的には「殺し屋1」の方が衝撃的でした。

CASSHERN

CASSHERNCASSHERN
2004年/日本/141分
監督・撮影・脚本:紀里谷和明
原作:竜の子プロダクション「新造人間キャシャーン」
衣装:北村道子
主題歌:宇多田ヒカル
出演:伊勢谷友介、麻生久美子、唐沢寿明、寺尾聰、樋口可南子、小日向文世、宮迫博之、佐田真由美、要潤、西島秀俊、大滝秀治、他
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70年代の「新造人間キャシャーン」は知りませんが、とりあえず映像が凄かった。初監督の紀里谷和明氏は撮影監督も兼任していたようですが、「実写とCGの融合」と言ってしまえば簡単ですが「おおっ」と思うような映像を作るのはとても困難だと思う。

特にアニメで最近よく行われているけれど悪い意味で「なんか不自然」な感じは否めない。その点この映画は僕が今まで観た合成映像の中で一番の出来だと思う。数カット「えー」と思ってしまう部分はありましたが。

ただ、「もったいない」と思ったのはそのテーマと内容。原作に忠実かどうかはわかりませんが、生命の倫理を描くならば、脚本にそれをちゃんと組み込まないと、観客に対してイマイチ訴求力に欠ける感があるように思う。

「教授が新造細胞の理論を完成させた」というだけでは薄いと感じてしまう。もう少しそれにまつわるテーマを掘り下げないと、「ある倫理を問う映画」にはならない。

あるいは、それはそれとして、原作を忠実に再現するのであれば、題名だけでお客さんを呼べるくらいの作品でないと、「エンタテイメント映画」として存在しにくいと思う。「映像が凄い」だけでは製作費をとりかえすことは難しいのではないだろうか。恐らく出演者やCG等にお金はとてもかかっているように思うし。

なんか「もったいない感」はありますが、今まで観たことのない映像は体験できるし、出てくる出演者が魅力のないアイドルなどではなく演技のできる役者さんばかりなので、とてもゴージャスな気持ちになれる一本です。

TAMPEN 短篇

TAMPEN 短篇TAMPEN 短篇
2001年/日本/65分
製作:磯見俊裕
撮影:猪本雅三、佐藤譲、田村正毅、山崎裕
出演:渡辺真起子、永瀬正敏、柳愛里、青山真治、他
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演出家(監督)をたてない手法で製作された変わった作品。

細かい演技指導をしないという点では阪本順次監督などとは正反対の出来上がりになるかと思う。そればかりか、黒沢清監督や北野武監督らのような「過剰な演技をそぎ落としたタイトな」演出すらない。

どちらかといえば、諏訪敦彦監督の「Mother」などと同じ方向性をもった作品のように思いますが、「Mother」のような長編ではなく20分程の短編のオムニバス形式なので、また違った切れ味、味わいがあるように思う。

女優の渡辺真紀子さんの魅力溢れる作品である、と同時に、役者として出演している、青山真治監督の意味深な台詞も心にひっかかる。

アカルイミライ

アカルイミライ 通常版アカルイミライ 通常版
2002年/日本/115分
監督・脚本:黒沢清
撮影:柴主高秀
衣装:北村道子
音楽:パシフィック231
出演:オダギリジョー、浅野忠信、藤竜也、りょう、笹野高史、白石マル美、他
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友人から「今度黒沢清が『クラゲ』がたくさん出る映画を作っていて、エキストラ探しているよ」と言われ、2つ返事で参加してしまった作品。

黒沢清の演出が間近かで見られたのは新鮮でした。画を観ての通り、淡々とした演出っぷりでした。「監督もう帰っちゃったよ!」と慌てふためいているアップリンクの助監督の台詞が印象的でした。

さて、本編ですが、これほど様々な視点から鑑賞できる作品は少ないのではないでしょうか?

「文部省認定」的にも観れるし「ゲイ」もののようでもありますし、前提としがちな「倫理観」に対して疑問を投げかけている、ようにも観れます。

DVD巻末のインタビューにもあったように、黒沢監督自体も「これがアカルイミライ」だというものを表現しているわけではなく、観る者に委ねられている部分が多いのが、その要因のような気がします。

劇場では、当時「売出中」だった、オダギリ・ジョーさん目当ての、若い女の子が目立ちましたが、少なからず、藤竜也さんのファンも後ろの方とかにいたはずです。

僕個人は藤竜也さんの演技が観れてとても満足でした。「黒沢監督の演出と藤竜也さんの演技」がスクリーン上でどう現れるのか楽しみにしていましたが、とても満足のいくものでした。一筋縄ではいかない映画です。

すべては夜から生まれる

すべては夜から生まれるすべては夜から生まれる
2002年/日本/79分
監督・編集:甲斐田祐輔
脚本:木田真
撮影:星野有樹
出演:西島秀俊、甲田益也子、水沢螢、川口潤、青崎寿幸、他
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実験色のある夜のロードムービー。とりあえず4:3の画面にびっくり。最近の映画ではあまりないように思う。何かの都合がそうなっているのかもしれません。

控えめかもしれませんが、西島秀俊さんの役者魂が現れている作品だったと思う。彼は作品の規模に関わらず、脚本などで出演作を選んでいるようで、そういった価値観を持っている役者は監督心をくすぐります。

全体的に抑えた演出ですが、全編を通して統一感があり、この映画のリズムを生んでいる。

ただ、「映画」なので、目に見えるアクションとしての「動き」、あるいは感情の「動き」などを描写し続けるほうが見る者は「何を見ているのか」を見失わずにすむと思う。

現状のスタイルが多分演出の結果なのでそれはそれで良いとは思うのですが。

とりあえずこういう規模のある意味、野心溢れる作品は、作風の好みに関わらずたくさん観ていきたいものです。

ちなみに甲田益也子さんは元ananの専属モデルだったんですね。どこかで観たことがあると思っていたのですが。手塚眞監督の「白痴」で主役を演じています。

クロエ

クロエクロエ デラックス版
Chloe
2001年/日本 /128分
監督・脚本:利重剛、原作:ボリス・ヴィアン
脚本:萩生田宏治
撮影:篠田昇
編集:掛須秀一
出演:永瀬正敏、ともさかりえ、塚本晋也、松田美由紀、鈴木卓爾、青山真治、西島秀俊、他
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ボリス・ビアンの「うたかたの日々」が原案。「エレファントソング」の利重剛監督の「映画への愛」に満ちた作品。

原案が原案だけにストーリー展開は観始めて30分でラストが読めるのですが、それとは別に、ライティングや演出、場面設定など「お金をかけずに手間かける」というか、映画愛に裏打ちされた様々なアイデアが散りばめられており、それを感じれる者は、それだけでいい気持ちになれる「映画的な映画」。

塚本晋也監督のキャラクターやセリフは「心に響く」と同時に「どこかユーモラス」に感じられる。青山真治監督の「キタノ役」やもキャラクター設定などが面白い。「医者役」に西島秀俊さんが現れたときも少しびっくりしました。

ところで青山真治監督の「ユリイカ」には利重剛監督が出演していますが、「クロエ」の青山監督よりも「ユリイカ」の利重監督の方が存在感があるように思うのは私だけだろうか? どっちの監督が使い方うまいのか、役者としての力量があるのかはわかりませんが。(笑)

そう、こうゆう派手さはないがある部分をちゃんと描いている映画って案外少ないように思います。

興行成績などにばかり気をとられていると、いい映画は作られにくくなることを再認識。「クロエ」が興行的に駄目だったわけではありません。

ニンゲン合格

ニンゲン合格ニンゲン合格
1998年/日本/109分
監督・脚本:黒沢清
撮影:林淳一郎、音楽:ゲイリー芦屋
主題歌:洞口依子
出演:西島秀俊、役所広司、菅田俊、リリィ、麻生久美子、大杉漣、哀川翔、戸田昌宏、鈴木ヒロミツ、他
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初めて観たのはたしか1998年の東京国際映画祭だったように思う。それ以来折に触れて観てしまう作品。

公開当初、黒沢清監督の「家族モノ」ということで漠然と期待していたが、良い方向に裏切られてしまった。

最近、CMなどでもよく見かける西島秀俊さんが主役ですが、特に印象的なのは彼がソープランドに連れていかれるシーンや、後半の父親がテレビのニュース映像に現れるところは特に驚く、というか笑ってしまった。

映画好きでも(だと?)観ていて心地よい笑いを触発される映画はとても少ないので、私にとってとても貴重な監督の作品の一つ。

もちろん、西島秀俊さんと麻生久美子さんの絡みのシーンなどもとても印象深い。

阪本順治監督などと違って、北野武監督のようにシラけた感じの演出が冴える黒沢清監督ですが、目の前の映像に土は映っていても土の匂いを感じさせない。

でも、人間的な「やるせなさ」のようなものはしっぽりと伝わるこの作品は、私にとってとてもとらえどころがない魅力に溢れた1本。

幸福の鐘

幸福の鐘 デラックス版幸福の鐘 デラックス版
2002年/日本/87分
監督・脚本:SABU
撮影:中堀正夫
出演:寺島進、西田尚美、篠原涼子、益岡徹、塩見三省、鈴木清順、板尾創路、白川和子、手塚とおる、滝沢涼子、田山涼成、他<
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数年前、大学時代のサークルの先輩のつてで、プロの撮影現場を見たくてエキストラに行った作品。

SABU監督は、今まで、「弾丸ランナー」「ポストマン・ブルース」「アンラッキー・モンキー」「DORIVE」と、作家性を出しつつエンタテイメント性も併せもった、数少ない映画監督だと思っていたのですが、今回は「弾丸ランナー」の時はひたすら走っていましたが、それが良いかどうかわからないけれど、今回も一つのことを追求していた。

たしか、ベネチア映画祭に出品していましたが「こういう作風の映画は映画祭で賞を受賞しないと興行的に厳しいだろう。」と思いながら現場に参加していたことを思い出した。

結果的には受賞は逃しましたが、その当時は北野武監督の「花火」がベネチアで金獅子賞を受賞したりと世界的に「日本映画」が流行っている感があったので、ひょっとすると受賞もあるかな、と期待もしていたのですが。

映画は出てくる役者がみな素晴らしいので安心して観ていられる感の高い映画でした。この脚本を自主映画でやっても「観続けるのはキビシイ」感じになると思う。

そんな地味な演出・脚本は自分好みで、低予算でもある意味ゴージャスだと思うのですが、もう一歩テーマを掘り下げる、というか、スケールを大きくできたら、感動できる人が増える作品=作品のメッセージに普遍性が出るのではないかと思ってします。

インストール

インストール コレクターズ・エディション (2枚組)インストール コレクターズ・エディション (2枚組)
2004年/日本/94分/PG-12
監督:片岡K
原作:綿矢りさ「インストール」河出書房新社
脚本:大森美香
撮影:池田英孝
出演:上戸彩、中村七之助、神木隆之介、菊川怜、小島聖、田中好子、他
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たしか、今年の正月に池袋でロードショーしていて、綿谷りささんの本の映画化ということで、村上龍氏が審査委員長の時の芥川賞受賞作「蹴りたい背中」などでも気になっていた作家だったので「ぜひ劇場に足を運ぼう」と思っていたが、予告編の「コケティッシュな感じ」にすっかり足が動かなくなってしまい、観れるまで早9ヶ月がたってしまった。

結果的には、自分にとっては原作を読みたくならなかったのは残念だった。原作ものの(オリジナル脚本じゃない)映画で出来がいいものはつい原作に手がのびてしまうことが多い。

広い気持ちを持って、良いところをひろっていけばそれなりにはたくさん見つかるのだろうけど、根本的に演出が中途半端だった感は否めないと思う。

作品を観始めて5分くらいで終わりまで自分の想像を超えるようなことが起こらないだろう、という確信がもててしまうのは、脚本以上に作品にたいする演出家の手腕によるものが大きいと思う。

演出家のその作品に対する情熱というか想いが小さくまとまってしまったまま、スタッフ、役者に誤解なく伝わっている、という感じだろうか?

用は「もったいない」感がとてもしてしまう映画でした。本とか美術とかスタッフとか役者とか、話題性のある人たちが集まって作った割には「普通の作品ができた」という気がします。

上戸彩さん、今後、どんな女優になっていくのか、とか、小島聖さんってきっとじかに本人と話したら自分をもっていかれてしまいそうだな、とか、田中美子さんの存在感って自分好みだな、などいろいろ感じました。

でも変に期待しないで観れば、この作品を楽しめるようにも思う。

家族ゲーム

家族ゲーム家族ゲーム
1983年/日本/106分
監督・脚本:森田芳光
原作:本間洋平「家族ゲーム」
撮影:前田米造
助監督:金子修介
出演:松田優作、伊丹十三、由紀さおり、宮川一朗太、辻田順一、他
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懐かしさが込み上げる作品。10年程前にビデオで鑑賞して以来となる。

ふと、この10年で松田優作さんや伊丹十三さんが亡くなったことを実感した。松田優作さんの出演作品は「陽炎座」「それから」とこの「家族ゲーム」が僕的には印象深いが、多くの人にとっては「死亡遊戯」「さまよえる金狼」「探偵物語」などが馴染みがあるようで、話をする度にすれ違うことがある。自分が異色作が好きなだけなのかもしれませんが…。

上記の2人に加え、由紀さおりさん、宮川一朗太さん、清水健太郎さん、など、バジェットはとても小さな映画のはずですが、出演者はビックな顔ぶれがそろった偉大な作品。

作中の中では、「カット割り」や「音楽を一切使用しない」、「4人家族が横一列で並んで食事をする」、など、様々な作為に満ちた演出が試みられていて、映画好きとしては「目がくぎ付け」になる。

この前観たときもそうでしたが、森田芳光監督の偉大さにあっぱれです。自主映画出身で野心溢れる作品ばかりではなく、興行的に成功している作品をバランスよく撮り続けている監督は日本に5人といないのではないだろうか? 尊敬してやまない監督の一人です。

メノット

メノットメノット
2005年/日本/104分/R-15
監督・脚本:及川中
脚本:甲谷利恵
撮影:西村聡仁
出演:国分佐智子、藤本綾、金子昇、阿部進之介、魚谷輝明、甲本雅裕、他
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たしか数年前だけど警察沙汰の事件を起こしていたはずの及川監督の最新作ということで劇場まで足を運ぶ。タイトルはわからないけど友達が及川監督の作品に出演したことがあるようで気になる監督の一人だった。

15禁のレイトショーなのでもっといやらしいシーンが多いかと思ったのですが「さりげない感じ」でこれで「映倫」にひっかかってしまうのはシビアな現実ですな。この作品にはないですが、そもそも作品に「ぼかし」入れるような日本映画? 映倫? の現実が未だに理解できない。普通に考えたらあり得ないことだと思うのですが。

さて本編ですが、登場人物のキャラクター設定が現実以上にハッキリ分かれていたところが気になった。そういう演出なんだろうけど所謂「演劇的」な感じがして「映画的」なリアリティーは感じられない。

こういう脚本は基本的にファンタジーではないのである程度「実話に即した」とか「現実にあり得るような」感じが必要になると思うますが、そこからの方向性が「即興」など「役者の地の部分」を活かす、というよりは、一つの「その映画の中での現実」を設定し、結果的に脚本を忠実に再現する、という方法がとられたように思う。

特に前半はしっくりこなかったのですが、後半はプロット内での不確定な要素が収斂してテンポアップしていてよかった。

出演の金子昇さんや藤本綾さんは以前テレビで見たことがあったように思うのですが、これからは映画にどんどん出演して欲しいです。出演数が増えれば事前情報としての「存在感」が増す、ということもあると思うのです。

あと藤本綾さんのヌード、綺麗でした。「脱ぐイメージ」の無い人が脱ぐとひとまずグッときてしまいます。

夢の中へ

夢の中へ夢の中へ
2005年/日本/103分
監督・脚本:園子温
撮影:柳田裕男
出演:田中哲也、夏生ゆうな、村上淳、オダギリジョー、市川実和子、岩松了、麿赤兒、温水洋一、手塚とおる、小嶺麗奈、臼田あさ美、菜葉菜、他
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まず、役者陣が豪華な映画でした。

園監督とは本人はまったく覚えていないと思いますが、10年程前に当時僕が通っていた大学の映画サークルのイベント絡みで一緒に旗に詩を書いた記憶があります。

たしかランボーを引用したことも今思い出しました。その頃から、園監督作品はほとんど全部観ているのですが、前作の『自殺サークル』と比べると初期の作品の印象に近いように思います。

DV作品ですが、撮る側の人間として「フィルムだったらなぁ」と思う気持ちも正直あります。もったいないように思います。

あと、レイトロードショーだったので、もっと「いやらしい」映画を期待していたのですが、想像以上に「真面目」というか「真摯」な後味の残る作品でした。

プロットの展開は漫画家の山野一氏の「パンゲア」におさめられている「ラヤニール」のように「どこかで観たような感じ」だと思いますが、台詞から見ている側の意識までこぼれてくる言葉は全体を通じて一つの線になっており、脚本の完成度の高さが伺えます。

それと演出。あの台詞まわしで長回ししたということは相当リテイクがあったか、役者が優秀だったか、だと思いますが、そんなところからも、「フィルムだったら・・・」と思う気持ちを思い出します。

自然光の美しさはフィルムの得意とするところだし、最終的に映画館で上映するためにキネコするのであれば素材は是非16ミリでもフィルムでお願いしたかったです。

なんだかんだ言っても観終えていい気持ちになってしまったし、いろんな部分で完成度が高かった作品でした。

「夢の中へ」公式サイト
http://yumenonaka.netcinema.tv/

恋の門

恋の門 スペシャル・エディション (初回限定版)恋の門 スペシャル・エディション (初回限定版)
2004年/日本/114分
監督・脚本:松尾スズキ
原作:羽生生純「恋の門」エンターブレイン
撮影:福本淳、衣装:北村道子
主題歌:サンボマスター「月に咲く花のようになるの」
出演:松田龍平、酒井若菜、松尾スズキ、小島聖、塚本晋也、小日向文世、大竹まこと、田辺誠一、片桐はいり、市川染五郎、忌野清志郎、他
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大人計画の松尾スズキ氏の初監督作品。

のっけからとても「演劇的」な映画だった。何がそう感じさせるのかを観ながら考えてしまったが、その原因は「セリフまわし」もそうだけど「カット割り」と「空間の見せ方」にあるように思う。なんか映画っぽくない。それとも演劇的=松尾スズキ的ということか。。

それとこの映画、役者の使い方がとても贅沢。

内容、というかプロットの伏線だけに頼るのではなく、その筋で知名度のある役者さんを多数、というかキャラクターとして登場している人は全て名のある役者さんだったような気がする。コスプレ、同人誌、漫画芸術家?などある意味マイナーでディープな人々を描いているが、こういう役柄をメジャー感のある役者さんがやると絵になりやすいように思う。重さが半減されるのだろうか。

また、役者にとどまらずアニメ、漫画も庵野夫妻らによるオリジナルだったりしたところがこの映画の全体のクオリティーを上げている。

松田龍平さんは両親の顔が浮かびます。「陽炎座」と「エレファントソング」を足して2で割ったような。

この世の外へ クラブ進駐軍

この世の外へ クラブ進駐軍この世の外へ クラブ進駐軍
2003年/日本/123分
監督・脚本:阪本順治
プロデューサー:椎井友紀子
撮影:笠松則通
出演:萩原聖人、オダギリジョー、松岡俊介、MITCH、村上淳、他
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いつものように役者への「抑えた演出」がひかる映画。阪本順治監督は「911」事件をきっかけに脚本を執筆したよう。

公開当時は「オダギリ・ジョー」の出演や「ジャズ」の演奏シーンなどが話題になりましたが、観終えるとふと「戦場のメリークリスマス」なんかを思い出しそうになりました。ちがうのだけれど。

群像劇として役者陣が魅力的に描かれていたのが印象的。「顔」のインパクトにはかなわないかもしれないけれど、そこらへんはジャンルが違う、ということで。

変態家族・兄貴の嫁さん

変態家族 兄貴の嫁さん変態家族 兄貴の嫁さん
1984年/日本/62分
監督・脚本:周防正之
企画:朝倉大介
撮影:長田勇市、滝影志
音楽:周防義和
出演:風かおる、山地美貴、麻生うさぎ、大杉漣、他
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最近、ハリウッドでのリメイク作も日本で公開されている、周防正行監督の初期のポルノ作品。DVDに付属のインタビューを見ると低予算、撮影期間は5日間だったよう。とてもタイトな現場だったことが伺えますが、低予算映画はそんなものなのかもしあれません。

小津監督の「東京物語」も模して、「もし原節子が嫁いだ先が変態家族だったら」という設定で作られたこの作品、見所はたくさんあるのですが、「小津監督に重なりたい」という周防監督の想いが全面に現れている。

その時の状況を語る周防監督の表情も生き生きとしていてとても好感のもてるものだった。語っている口もとから悦びがこぼれだしそうだった。これだけの想いがあれば細かいことをあれこれ言うよりさしだされたものを素直に受け入れたくなるし、作品自体にもそれが現れていた。

周防監督はその後「ファンシーダンス」「しこふんじゃった」「Shall we ダンス?」などのエンタテイメント性のある映画を撮ることになりますが、その兆しを感じます。

笠智衆役を若かりし大杉連が演じていたのも新鮮。たしかこのころはまだ30歳くらいだったはず。よい意味でやりたいこと自体を客に媚びない自主映画的な奔放さが感じられてすがすがしい。ポルノ作品なのに。

トニー滝谷

トニー滝谷 プレミアム・エディショントニー滝谷 プレミアム・エディション
2004年/日本/75分
監督・脚本:市川準
原作:村上春樹「レキシントンの幽霊」文春文庫
撮影:広川泰士
音楽:坂本龍一
出演:イッセー尾形、宮沢りえ、西島秀俊、篠原孝文、四方堂亘、谷田川さほ、小山田サユリ、山本浩司、塩谷恵子、猫田直、木野花、他
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画面がとてもよく作られた映画のように思いました。さすがCM界の巨匠、市川準です。映画ばかり作ったら「凄い作品」も撮りそうな気もしますが、この作品はシンプル=ストイック=非エンタテイメント=作家性?=自主っぽい=好きな人は好き、という感じだろうか。

宮沢りえは期待通りよかったが、イッセー尾形は思ったよりカッコよかったです。

よくを言えば、原作は忘れてしまったけれど、観ていて迫ってくるモノが何かあればより映画として完成度が上がるとは思うが、きっと原作に忠実、とかなんだろうとは思う。

映っている現象と観ていて感じるものに距離感を感じた。でも、それは、きっとよく作ってあるということで、クールということでもあるように思う。

地味な映画ですが、映像のレトリック的なものなど見所は多く鑑賞後の満足度は高いです。

西島秀俊さんの語りもいい感じで存在感をだしていて好印象でした。彼は小規模映画出身ながら、順調に大きな役者さんになっているように感じます。

ゼブラーマン

ゼブラーマンゼブラーマン
2003年/日本/115分
監督:三池崇史
脚本:宮藤官九郎、撮影:田中一成
主題歌:ザ・ハイロウズ「日曜日よりの使者」
出演:哀川翔、鈴木京香、渡部篤郎、大杉漣 、岩松了、渡辺真紀子、徳井優、田中要次、柄本明、他
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「ゼブラーマン」観てしまった。 エンタテイメント性の強い作品だけど、三池監督は好きな監督の1人で、新作がでると必ず観てしまう。2度観ることはあまりないのだが。

映像のインパクトはさることながら、哀川翔、渡部篤郎、鈴木京香、大杉連、など役者陣も魅力的。宮藤官九郎は好きになれない脚本家だけど、観ていて飽きさせないユーモアはやはり凄いのだろう。。

主役100本目の哀川翔は後半ほとんど着ぐるみを着ていて、顔が出ていなかったことにはつい面白くなってしまった。

珈琲時光

珈琲時光珈琲時光
2003年/日本/108分
監督・脚本:侯孝賢
撮影:李屏賓
衣装:星野和美、山田洋次
主題歌:『一思案』作曲:井上陽水、作詞・歌:一青窈
出演:一青窈、浅野忠信、萩原聖人、余貴美子、小林稔侍、蓮實重彦、他
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監督は世界の巨匠、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)。主演は一青窈さん。浅野忠信さんや萩原聖人さん、小林侍さん、余貴美子さんなど確かな演技力を持った面々が脇を固める。この作品は「小津安二郎生誕100周年」を記念して製作された。

映画のリズムは溝口健二監督ばりの長回しで、良くも悪くも気持ちよくなって眠りに落ちてしまうくらい淡々ていたが、一青窈の透明感のある存在がフィルムに馴染んでいたのが印象的。

本編に度々登場する「電車」とそこでの「録音」についてはあまりピンとはこなかったけれど、べたといえばべたですが、「肉じゃが」ひとつにこれだけのエレジーを込められるのはさすがです。

阿修羅のごとく

阿修羅のごとく阿修羅のごとく
2003年/日本/135分
監督:森田芳光
原作:向田邦子
脚本:筒井ともみ
撮影:北信康
出演:大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子、小林薫、中村獅童、木村佳乃、桃井かおり、八千草薫、仲代達矢、他
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向田作品はそれほど読んだことはありませんが、安心して観ていられる映画。

家族がテーマなので、この時期居間などでみんなで楽しめるもののようにも思う。フランソワ・ オゾン監督の「8人の女たち」もそうでしたが、有名女優が一つのフレームにたくさん入っていると画に迫力がる。現場の監督は主役級の女優ばかりがいると気遣いが大変だとも思いますが。笑

家族を扱った作品での「面白さ」ならば森田監督の「家族ゲーム」が衝撃的でした。

「変わった映画」ならば黒沢清監督の「ニンゲン合格」が印象的。「山田洋次もの」に、いまいちぐっとこない私は、つい変な、というかわかりにくい家族ものを好んでしまいます。

アイデン&ティティ

アイデン & ティティアイデン & ティティ
2003年/日本/118分
監督:田口トモロヲ
原作:みうらじゅん
脚本:宮藤官九郎
音楽:大友良英 ・遠藤賢司
出演:峯田和伸、麻生久美子、中村獅童、大森南朋、マギー、コタニキンヤ、岸部四郎、他
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あの田口トモロヲが監督!原作は三浦じゅん!というところにガッシリくいついて映画館で鑑賞。封切りになってしばらくたっていたが、それなりに混んでいた。シネセゾン渋谷で上映しているのを観たけれど、内容とお客さんは「中央線」な感じがして、ちょっと好印象。

ストーリー的には自分の身の回りのバンドマンのことなどを思い浮かべたりできて、それほど遠い内容の話ではようにも感じた。撮り方はオーソドックスな印象。俳優として数え切れない程多くの現場を経験している田口トモロヲ監督ならでは、ということかもしれない。

青春の切なさが心にしみる1本。

H story

H storyH STORY
2001年/日本/111分
監督・編集:諏訪敦彦
プロデューサー:仙頭武則
撮影・出演:キャロリーヌ・シャンプチエ
音楽:鈴木治行
出演:ベアトリス・ダル、町田康、馬野裕朗、他
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「H story」は「Mother」や「デュオ」を撮った広島出身の諏訪敦彦監督の作品。

今回の作品は、フランスの監督で「去年マリエンバートで」や「夜と霧」などを撮ったアラン・レネの「二十四時間の情事/ヒロシマモナムール」をリメイクしようとする、ということ自体が内容のドキュメント的な映画。

役者にはジャン・ジャック・ベネックスの「ベティー・ブルー」に出演していたベアトリス・ダル、や、町田康、などが出演。

かなり変わった作品でしたが、現場のやりとりなど、どこまでほんとかわからないところにニヤニヤしながら観てしまった。

それこそ視点(カンヌの「ある視点」か何かの部門受賞していたはず)、主題?、がかなり変わっているのでいわゆる他の映画と比べられないのが歯がゆい感じではあるのだが、ベアトリスには思った以上に引き込まれてしまった。

それほど好きな女優ではなかったはずなんだけど、ああいう人が目の前にいたら嫌なんだけど、町田康と絡んでいたからか、初めて観たときよりかなり歳をとっていたからか、アンニュイだったからか、勝手にすごく親近感を感じてしまった。

ベッドシーン、というか話し相手がとても近くにいる状態でのセリフ?のやりとりが多く、そのためかアップも多く、近くにいる感じがしたのだろうか。自分ももちろんそうなのでけれど、人は歳をとる、ことを再認識。

やっぱり彼女は「ベティー・ブルー」の破天荒な印象がとても強いので予想できない行動をとりそうでそわそわしてついじっくり追ってしまった。

それにしても、映像作品で何をどのように観せるのか、という問題意識の珍しい作品でした。笑うところないし、ストーリーも破綻してるし、役者の数少ないし、暗いし、それほど真面目でもないし、ここまでネガティブなキャッチがポンポンでてくる映画はとても少なく、とても人に勧められないのが残念なのですが、僕が撮る人だからだと思いますが、自分がその場にいるように感じる数少ない映画で、彼の映画はそういう作品が多いです。

それにしても、問題意識の珍しい作品だ。自分もあやかりたいものです。

ラブドガン

ラブドガンラブドガン
2004年/日本/111分
監督・脚本:渡辺謙作
プロデューサー:菊地美世志
撮影:安田圭
出演:永瀬正敏、宮崎あおい、新井浩文、岸部一徳、田辺誠一、野村宏伸、荒戸源治郎、他
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今日「ラブドガン」(渡辺謙作監督「プープーの物語」(上原さくら、松尾れい子主演)たしか、永瀬正敏、宮崎あおい「ユリイカ」「月光の囁き」「害虫」主演)をテアトル新宿で観てきました。

テイストとしては、この前話題になった「赤目四十八瀧心中未遂」の荒戸源治郎さん(彼も役者の一人として出演していた)、鈴木清順監督(渡辺監督の師匠筋?)の雰囲気で、意味不明というか、解釈不能というか、見終わったあとあまり語りを必要としない感じの映画でしたが、自分的にはかなりストライクゾーンで堪能してしまいました。

地味なファンタジーとでもいうべきか。とりあえず、宮崎あおいさん、と岸部一徳さんは光っていました。人に勧めづらいのが残念なところなのですが。。


折り梅

折り梅折り梅
2001年/日本/111分
製作・監督・脚本:松井久子
原作:小菅もと子「忘れても、しあわせ」日本評論社
脚本:白鳥あかね
撮影:川上皓市、音楽:川崎真弘
出演:原田美枝子、吉行和子、トミーズ雅、金井克子、岡本麗、中島ひろ子、加藤登紀子、他
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TVで映画「折り梅」(松井久子監督・脚本・製作)を観ていたのだけど、最近、漫画映画やアニメばかり観ていたせいか、感動してしまった。

個人的には、もっと長回しを多用してくれたらよかったな、とは思うのだけど、ストーリーの展開上難しかったのかな。吉行和子と原田美枝子がとてもよかった。

ドッペルゲンガー

ドッペルゲンガードッペルゲンガー
2002年/日本/107分
監督・脚本:黒沢清
脚本:古澤健
撮影:水口智之
出演:役所広司、永作博美、ユースケ・サンタマリア、ダンカン、戸田昌宏、佐藤仁美、柄本明、他
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早崎とドッペルの会話、 「お前は俺、俺はお前」 「お前はそんなこともわからないのか?」

という台詞なんかは観ている者に「どっちが本物?」という問いに疑問を投げかけてる気がする。
もちろん答えはないんだけど、自分的にはその混乱が気持ち良く感じる。

あと、ちょっと無理があるけど、自分の好きな「マルホランドドライブ」や「ツィゴイネルワイゼン」などにもみられる、ある部分での解釈不能性があるように思う。心地よい不可解があるというか。。曖昧さを肯定しているというか。。

黒沢作品はいつも後半「自分が今何を観ているんだかわからないんだけど、気持ち良く観れてしまう感じがあって、今回も堪能。

ささいなところでもふきだしながら観てしまった。永作博美の「どうでもよくなってきた」というセリフあたりからユースケとのからみなど、展開が面白い。

でも、今回はかなり図式的な感じは気になった。黒澤清作品はいつも「流れるよう」な作風ではないけれど、パズル的というか、血がこもってないというか。土くさい、というより、宇宙人的な印象。

赤目四十八瀧心中未遂

赤目四十八瀧心中未遂 プレミアム・エディション赤目四十八瀧心中未遂 プレミアム・エディション
2003年/日本/159分
監督:荒戸源次郎
プロデューサー:村岡伸一郎
原作:車屋長吉「赤目四十八瀧心中未遂」文藝春秋
脚本:鈴木棟也、撮影:笠松則通、音楽:千野秀一
出演:寺島しのぶ、大西滝次郎、大楠道代、新井浩文、大森南朋、内田春菊、渡辺謙作、赤井英和、内田裕也、麿赤兒、他
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先日「赤目四十八瀧心中未遂」という映画を観ました。たぶん僕の中では今年のNo1になりそう。 映画の持つ独特のリズムが自分好み。

「このシーン20分くらい前に観た気がする」というような感じの「精神のロードムービー」といったところか。
あと「陽炎座」の「ちぎりこんにゃく」のような扱いで「モツの串刺し」が行われていて「今度はモツか」と好印象。

鈴木清順の大正ロマン三部作で製作だった荒戸源次郎さんが監督で寺島しのぶが日本アカデミーで主演女優賞を獲った、妖気あふれる日本映画です。

ちなみにこの作品の原作は車屋長吉氏で直木賞を受賞した本のよう。

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「映画喫茶」は自主映画監督、酒井啓が鑑賞した映画や小説などについて綴ったデータベースです。プロフィールなどの詳細は下記公式サイトへどうぞ。

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