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Dr.パルナサスの鏡

Dr.パルナサスの鏡 [Blu-ray]Dr.パルナサスの鏡 [Blu-ray]
The Imaginarium of Doctor Parnassus
2009年/イギリス・カナダ/124分
監督・脚本・脚本:テリー・ギリアム
撮影:ロン・フォーサイス
出演:ヒース・レジャー、クリストファー・プラマー、ヴァーン・トロイヤー、アンドリュー・ガーフィールド、ジョニー・デップ、コリン・ファレル、ジュード・ロウ、ほか
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「未来世紀ブラジル」や「12モンキーズ」「バロン」「ラスべガスをやっつけろ!」などで知られる巨匠テリー・ギリアム監督の最新作。ギリアム監督作品には、既視感のない画にいつも結果的には驚かされるが「この映像は具体的に何をイメージして撮ったのか」がとても気になることが多い。もちろん漠然あるいは抽象的なイメージは様々な人が持っているだろうし、動画ならばPVなどで「映像先攻」の画を数分間積み上げることは想像がつく。個人的に「ファンタジックなSF映画が好きだ」と言ってしまえばそれだけだが、なんというか、ジェームス・キャメロン監督の「アバター」ように「観客を意識=媚びる」ことを前提として作り出す「今まで見たことのない映像」とは、おそれく根本的に発想が異なる「今まで見たことのない映像=志が高い」ものを感ぜずにはいられない。

作品作りの間に、現実世界でも様々な「よじれ」を生み出すギリアム監督ですが「ありもしないもの=映画」に単にリアルというだけではおさまらないような作品の存在感を作り上げてしまう監督は、ある人々にとっては奇跡を作る人ではあるが、万人に対してのわかりやすい真理=価値を示してはいないという意味においては、本物の「魔術師」なのかもしれない、などと考えてしまう。

作品はミニマリズムを感じるようなSFファンタジーだが、今回は作品の中に庶民的なレベルの「社会に対する考え」がちりばめられており、個人的には多いに共感すると同時に、その破壊力に大爆笑してしまう。意図的に作られたものであっても「このことに対してこんな風に作り込むこみ、このタイミングで表現してくるとは想像していなかった」という類いのシーンが数多く見られてたことにも驚いた。

「Dr.パルナサスの鏡」公式サイト
http://www.parnassus.jp/index.html

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(c)2009 Imaginarium Films, Inc. All Rights Reserved.
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(c)2009 Imaginarium Films, Inc. All Rights Reserved.
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(c)2009 Imaginarium Films, Inc. All Rights Reserved.

秘密のかけら

秘密のかけら秘密のかけら
Where the Truth Lies
2005年/カナダ・イギリス・アメリカ/108分/R-18
監督・製作・脚本:アトム・エゴヤン
原作:ルパート・ホームズ
音楽:マイケル・ダナ
出演:ケヴィン・ベーコン、コリン・ファース、アリソン・ローマン、ソニヤ・ベネット、レイチェル・ブランチャード、他
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本当に久々に観たハリウッド的なエロティックサスペンス映画。監督はエジプト出身のアトム・エゴヤン。

この「秘密のかけら」映画の製作はカナダ、イギリス、アメリカの合作で、純粋なハリウッド映画ではないようで、そのディープである意味挑発的な暴力や性描写などを観ると、そのエンタテイメント的な映画ながら非ハリウッド的なテイストに「ザ・セル」などを思い出す。作為的ではないにせよ、全編にうっすらといわゆるハリウッド映画ではない雰囲気が漂う少し変わった映画。

あの「フットルース」などのケヴィン・ベーコンがイキイキと演技をしていたのが印象的。25年くらいは経っているように思うが、その間に人間のダークな部分を表現できる独特の低い声の発声法をマスターしたのかと思うと感慨深い。

全体的にサスペンス、エロティック、人間ドラマ、といった要素がミックスされ散りばめられているだけに「盛りだくさん」な印象はあるものの「ココ」といった見所が逆に分かり難い感がある。

ユダヤ人問題のネタも表象的に語られるのみで、事柄としてアピールするというよりはプロットの説明の一つとして置いてあるだけのように見える。

キャッチでは「大胆なエロティックな描写」などとなってしまって、結局そこがウリなのかと思うと少し物足りない感もある。

「秘密のかけら」公式サイト
http://www.himitsu-kakera.jp/

月の瞳

月の瞳月の瞳
When Night Is Falling
1995年/カナダ/95分
監督・脚本:パトリシア・ロゼマ
音楽:レスリー・バーバー
出演:パスカル・ビュシエール、ヘンリー・ツェーニー、レイチェル・クロフォード、ドン・マッケラー、トレイシー・ライト、他
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あまり日本に入ってこないカナダ映画ということで鑑賞。

観はじめると、一般映画ではありそうで実はあまりない、女流監督によるレズビアン恋愛映画だったことに少し驚く。

恋愛映画の作りとしては特に新しさや野心は感じない、普通というか展開、オチともに想像の範囲内というか、レズビアン映画としてちゃんとした映画ですが、そもそもこのジャンルの映画が他にないため、普通の作りでもやる価値はあるのかなとは思う。

マイノリティーものをメジャー感のある手法で表現しているが、この場合の潜在的な観客はメジャーな人となるため、商業的は大丈夫だったんだろうか、とつい心配してしまう。

カナダ映画とのことで出演者もカナダ系の役者さんがほとんどのようですが、アメリカ映画やハリウッド映画で観た顔は出演しておらず、新鮮なフラットな気持ちで鑑賞できた。

1995年製作のようなので、今から10年程前の映画ですが、音楽でいう80年代のニューロマンティック音楽のように、何故か「ひと昔前の映画」という感じがした。画作りがそう感じさせるのか、演出がそう感じさせるのかは定かではありません。

死ぬまでにしたい10のこと

死ぬまでにしたい10のこと死ぬまでにしたい10のこと
My Life Without Me
2003年/カナダ・スペイン/106分
監督・脚本:イザベル・コヘット
製作総指揮:ペドロ・アルモドバル
撮影:ジャン=クロード・ラリュー
出演:サラ・ポーリー、スコット・スピードマン、デボラ・ハリー、マーク・ラファロ、レオノール・ワトリング、他
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スペインの巨匠、ペドロ・アルモドバル監督が製作総指揮の感動作。

原題は「My Life Without Me」だが、「死ぬまでにしたい10のこと」という邦題の方が映画の内容にも合致し、かつ、キャッチが効いていて素晴らしい。

映画の内容についてもあからさまな不満はないが、ペドロ・アルモドバル監督が総指揮だから仕方がないことだと思うが「ハイここが泣きどこです」といった露骨な演出に違和感を感じないわけにはいかない。

それだけ監督の意図がハッキリと映像化されている、とも言えるとは思うが、個人的には、ちょっと目を惹く美術や風変わりなキャスティングなど、息抜きというか「笑い」はいらないとは思うが、それ以外の魅せ場が欲しかった。そうすると「これ見よがしさ」がより気にならなくなるように思う。

でも、これくらいストレートな方が世界で感動作として理解されやすいし、日本でも受けるには受けるとは思うのですが。

みなさんは「あざとい」というか「わかりやすい」のがお好きなのかな。


ザ・コーポレーション

ザ・コーポレーションザ・コーポレーション
The Corporation
2004年/カナダ/145分
製作・監督:マーク・アクバー、ジェニファー・アボット
原作・脚本:ジョエル・ベイカン
音楽:レナード・J・ボール
出演:マイケル・ムーア、ノーム・チョムスキー、ナオミ・クライン、ジェーン・エイカー、レイ・アンダーソン、他
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「現代社会をどう生き抜くか?」というようなキャッチの「ナイキ」など大手企業を批判したアメリカンドキュメンタリー。

日本の番組や低予算記録映画などとは異なり、「これでもか」くらい取材をおかない、ふんだんに著作権料を支払って過去の偉大な映像を使用した、贅沢なドキュメンタリー。

実際に作るとなると、取材拒否や映像使用料などが問題で端折っていくうちに、作品自体がチープになってしまう作品が多いなか、大健闘した作品だと思う。

少しは関わりはもっているが、個人的には馴染みの薄い「経済モノ」ですが、ブラックなユーモアと速い展開、莫大な情報量に飽きる暇がなかった。

ただ、「これだけ大風呂敷を広げてしまって、どうオチをつけるつもりなのだろう」と観てる最中に気になりましたが、結論がどうこう、というより、「発信すること自体に意義がある」的な雰囲気が感じられ、残念なところもあった。

「マル投げ的な問いかけ」って、一見、問う=批判しているように見えるが、ただ、収拾がつかなくなって安易に責任逃れをしているだけ、のようにも思う。自分の落ち度を認めたくないがゆえに相手の責任に転換してしまっているような。

いずれにしても、オーバーアクションおのアメリカ人って良くも悪くも滑稽です。「そこが面白い」といえばそうなのではあるのですが。

ポール・ボウルズの告白

ポール・ボウルズの告白~シェタリング・スカイを書いた男~ポール・ボウルズの告白
~シェタリング・スカイを書いた男~

Let It Come Down:The Life Of Paul Bowles
1998年/カナダ/73分
監督:ジェニファー・ベイチウォル
出演:ポール・ボウルズ、ウィリアム・バロウズ、アレン・ギンズバーグ、他
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ポール・ボウルズ関連はベルトリッチが監督した「シェルタリング・スカイ」しか観たことはなく、他の著作は読んだことがないのですが、モロッコのタンジールでのボウルズの生活を通じて、「ビート・ジェネレーション」と呼ばれているウィリアム・バロウズ、アレン・ギンズバーグ、ジャック・ケルアックなどが、現地安い値段で若い男を買い、召使いを複数雇い、ハシシなどに耽っていた生活が「アメリカ人」的フラットな視点で語られていた。

ボウルズは20年代からタンジールに渡っていたようだが、50年代になってバロウズやギンズバーグが来てからは他の名立たる「ビート」の方々がタンジールで(勝って)気ままな生活をしていた様子が、今となっては「おじいちゃんの昔話」のように好感度すら感じるくらいフランクに語られる。

あと、作中でボウルズとバロウズが話していましたが、ベルトリッチの映画版「シェルタリング・スカイ」を原作者のボウルズは全く認めていないよう。

バロウズも「映像化不可能だ」と同調していましたが、映画の「原作者」が別メディアの作品として一人歩きした作品に不満を言う、という紋切り型がわかりやすくあらわれていたことには少し驚いてしまった。

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