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勝手に逃げろ/人生

勝手に逃げろ/人生勝手に逃げろ/人生 Souve Qui Peut (La Vie)
1979年/フランス・スイス/98分
監督・製作・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
脚本:アン=マリー・メルヴィル、ジャン=クロード・カリエール
撮影:ウィリアム・ルブチャンスキー、レナート・ベルタ
出演:ジャック・デュトロン 、ナタリー・バイ 、イザベル・ユペール 、ローランド・アムスタッツ 、セシル・タナー、アンナ・バルダッチニ、他
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たしか渡仏していた1996年の秋、11月にパリのリパブリックにあるシネマテークでこの「勝手に逃げろ/人生」を初めて観た記憶がある。帰国してから気づいたが、同じ頃、同じパリで哲学者のジル・ドゥルーズが「飛び降り」とも思える謎の死を遂げた時だ。

この名画座のようなシネマテークでは「ヌーベルヴァーグ特集」のようなものを上映しており、そこでの鑑賞だったが、周りの客層が若い有色人種が多かったことが印象的。

おそらく今思えば、低い階層に属する移民たちのはずだが、フランス本国では「プロレタリアのための映画」を声高に表明していたゴダールの意思が思った以上に受け入れられてたのか、それとも、日本に状況と同じように、単にゴダール映画のデザイン性などに惹かれた若者たちだったのかは今でも定かではない。

今回日本語字幕で初めての鑑賞だったが、やはり、フランス語でわからないところは日本語でもついていけなかった。

これだけの「労働」「性」「経済」についてのエピソードをノイジーに羅列しつつも、やんわりとひとつのプロットがたっている具合は、観ていて創作意欲がかきたてられるばかりだ。

日本版のDVDのジャケットは、たしか、この作品がR指定になっていないことを考えるとかなり挑戦的。ヨーロッパではたしかR-15などになっていたはず。というか、この「勝手に逃げろ/人生」は1979年の製作だが、日本で配給がついたのは90年代になってからだったらしい。10年も経てば倫理感も変わるのでそこらへんが理由だっただけかもしれないが。

「バルスーズ」「パッション」で初々しい存在感を放っていたイザベル・ユペールが大切な役所で出演していて興味深い。彼女が登場したあたりからこの映画のテンポも上がり、作品にリズムを与えている。

製作は50数作品を製作し、「マルホランド・ドライブ」ではプロデューサーを務めたアラン・サルド。

ゴダール作品は年代毎に様々あるが、この「勝手に逃げろ/人生」は個人的に一番好きな作品。

風の痛み

風の痛み風の痛み
Brucio nel vento
2001年/イタリア・スイス/117分
監督・脚本:シルヴィオ・ソルディーニ
原作:アゴタ・クリストフ
音楽:ジョヴァンニ・ヴェノスタ
出演:イヴァン・フラネク、バルバラ・ルクソヴァ、カロリーヌ・バエル、シトラド・ゲーツ、他
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少し前に原作となったアゴタ・クリストフの小説「昨日」を読み、「映画化されている」という情報を得ていたが、地元のツタヤなどでは扱っておらず、新宿ツタヤでようやくDVDをゲットする。

チェコ人はフランス語で書いた原作のはずだが、イタリアとスイスが製作なせいか、終盤、決定的に違う部分もあった。でも、基本的に原作の小説を忠実に再現していたように思う。

個人的にはチェコ人? が集まるフランスのBarは壁などうらびれた雰囲気の店を想像していたが、壁が明るいクリーム色で少しびっくりしたのと、時代設定が思ったより現代になっていたのが新鮮だった。

あと、リーヌ役の女優さんがもう少し造形的に美しい方だったら、プロットに説得力がましたようにも思う。

映画としては、鑑賞に備え、無理にテンションを上げなくてもゆっくり鑑賞できるしっとりとした作品。

「イタリア映画祭傑作選」の2作目の作品のようですが、フェリーニ、ビスコンティ、アントニオーニの作品郡などと比較してしまうと、あまり「傑作」ではないような気もします。

ただ、最近のイタリア映画、日本にはあまり入ってきていないように思うので貴重な作品ではあるはず。

「風の痛み」公式サイト
http://home.m02.itscom.net/rakusha/kaz/

太陽

太陽太陽
The Sun
2005年/ロシア・フランス・イタリア・スイス/115分
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
脚本:ユーリー・アラボフ
音楽:アンドレイ・シグレ
出演:イッセー尾形、ロバート・ドーソン、佐野史郎、桃井かおり、つじしんめい、他<
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映画『太陽』オフィシャルブック映画『太陽』オフィシャルブック
アレクサンドル ソクーロフ Aleksander Sokurov

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単館系では興行収入が好調らしい、アレクサンドル・ソクーロフ監督の最新映画「太陽」をポスターのデザインやイッセー尾形がきになり銀座シネパトスで鑑賞。日曜の最終回で観たのですが、お客の入りは1/3程度。日曜の20時~の回としては混んでいる方だと思う。

結果的には「ソクーロフには裏切られたがイッセー尾形は裏切らなかった」といった感じ。

「二重被爆」もそうだったが、天皇=被害者のような図式で天皇に同情的に描かれていて、戦後責任の問題など、新たな議論が生まれない、お涙ちょうだい、な映画だった。被害者=主人公に同情しても、僕らの未来は明るくはなりえない。作り手はお客が気持ちよくなるようにだけ映画を作るのではなく、新たな議論、未来につながる作品作りを目指していただきたい。自分自身もそうですが。

とはいえ、これまで、姿をもって語ること、自体がタブーとされてきた現人神、ヒロヒトばかりが画面に映っていて、所謂「人間宣言」がどのように昭和天皇の口から語られたのか、など、ソクーロフ監督の演出はあるにせよ、確かな役者の演技で具体的に観れたことは貴重だ。

イッセー尾形氏は市川準監督の「トニー滝谷」でも難しい役どころに挑戦し、成功していましたが、今回は果敢にも「昭和天皇」に挑戦し、見事にやり遂げている。彼以外、ヒロヒトを演じきれる役者はいない。彼の演技力でこの映画は成り立っている感もある。その演技を観るだけでも劇場まで脚を運ぶ価値はある。

この作品、サンクトペテルブルグ映画祭では受賞できたようですが、ベルリン映画祭は逃していました。日本での配給先がなかなか決まらなかったようですが、幸か不幸か、911以降、現在のようにナチュラルに右翼化した日本国内ではこの映画は温かく向い入れられるはずだ。


映画「太陽」公式サイト
http://taiyo-movie.com/


それはそうと、このロシア映画「太陽」の興行収益は好調ですが、「ロシア語専門書店、破産」と聞くと、胸が痛みます。
■8月22日「Yahoo! ニュース」
ナウカ書店 老舗のロシア語専門書店が破産 神田神保町

パッション

パッション デジタルニューマスター版パッション デジタルニューマスター版
Passion
1982年/スイス・フランス/88分
監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
撮影:ラウール・クタール
出演:イザベル・ユペール 、ハンナ・シグラ 、イエジー・ラジヴィオヴィッチ 、ミリアム・ルーセル 、ミシェル・ピッコリ、他
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「勝手に逃げろ/人生」に続く、80年代ゴダールの商業映画復帰第2作目といわれる作品。

個人的には最近は「8人の女たち」などで活躍しているうら若きイザベル・ユペールが初々しい演技を披露しているところで単純に心奪われてしまいました。

作品には明確なストーリーはなく、一連のゴダール作品にみられるような、「答え」の用意されていない抽象的な「問い」が起てられるが、特にチラシやパッケージに使われているカットに代表されるような、絵画的な美しさのある画が積み上げられているので、それだけでつい見続けてしまう。

この作品、いろんな解釈は可能だと思うのですが、能動的に感じるところがあれば、観る価値があったのだと思います。

アワーミュージック

アワーミュージックアワーミュージック
Notre Musique
2004年/フランス=スイス/80分
監督・脚本・編集:ジャン=リュック・ゴダール
製作:アラン・サルド、ルート・ヴァルトブルゲール
撮影:ジュリアン・ハーシュ
美術:アンヌ=マリー・ミエヴィル
出演: ナード・デュー、 サラ・アドラー、ロニー・クラメール、サイモン・エイン、ジャン=リュック・ゴダール、他
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ふと、2000年代に入ってからのゴダール作品は観ていないことに気づき慌てて鑑賞。

ゴダール作品は「勝手に逃げろ/人生」の滑稽さが快感で特にお気に入りなのですが、そんなゴダールが2004年に元気に映画を作っていることが確認できただけでホッとしてしまいます。

多くの映画好きにとってゴダール作品は「語り」を誘発する監督のようですが、不思議と何も思いつきません。僕にとってゴダール作品は自分の中の映画にまつわる雑念を浄化してくれる貴重な映画であることは間違いありません。

3月18日、渋谷のイメージフォーラムで、17時〜の回を鑑賞したのですが、その回終了後、現「カイエ・デュ・シネマ」編集長のトークイベントがありました。19日は蓮見重彦さんと青山真治監督のトークがあったようで、とても気になるところです。

そう、今度、本国フランスのパリにある「ポンピドーセンター」でゴダールの大回顧展が催されるそうです。パリにいれば是非行ってみたいものです。


■公式サイト
http://www.godard.jp/


■ポンピドーセンター関連ページ
ポンピドーセンター(ゴダール回顧展)フランス語

ポンピドーセンター(ゴダール回顧展)英語

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