ロシア映画

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太陽

太陽太陽
The Sun
2005年/ロシア・フランス・イタリア・スイス/115分
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
脚本:ユーリー・アラボフ
音楽:アンドレイ・シグレ
出演:イッセー尾形、ロバート・ドーソン、佐野史郎、桃井かおり、つじしんめい、他<
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映画『太陽』オフィシャルブック映画『太陽』オフィシャルブック
アレクサンドル ソクーロフ Aleksander Sokurov

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単館系では興行収入が好調らしい、アレクサンドル・ソクーロフ監督の最新映画「太陽」をポスターのデザインやイッセー尾形がきになり銀座シネパトスで鑑賞。日曜の最終回で観たのですが、お客の入りは1/3程度。日曜の20時~の回としては混んでいる方だと思う。

結果的には「ソクーロフには裏切られたがイッセー尾形は裏切らなかった」といった感じ。

「二重被爆」もそうだったが、天皇=被害者のような図式で天皇に同情的に描かれていて、戦後責任の問題など、新たな議論が生まれない、お涙ちょうだい、な映画だった。被害者=主人公に同情しても、僕らの未来は明るくはなりえない。作り手はお客が気持ちよくなるようにだけ映画を作るのではなく、新たな議論、未来につながる作品作りを目指していただきたい。自分自身もそうですが。

とはいえ、これまで、姿をもって語ること、自体がタブーとされてきた現人神、ヒロヒトばかりが画面に映っていて、所謂「人間宣言」がどのように昭和天皇の口から語られたのか、など、ソクーロフ監督の演出はあるにせよ、確かな役者の演技で具体的に観れたことは貴重だ。

イッセー尾形氏は市川準監督の「トニー滝谷」でも難しい役どころに挑戦し、成功していましたが、今回は果敢にも「昭和天皇」に挑戦し、見事にやり遂げている。彼以外、ヒロヒトを演じきれる役者はいない。彼の演技力でこの映画は成り立っている感もある。その演技を観るだけでも劇場まで脚を運ぶ価値はある。

この作品、サンクトペテルブルグ映画祭では受賞できたようですが、ベルリン映画祭は逃していました。日本での配給先がなかなか決まらなかったようですが、幸か不幸か、911以降、現在のようにナチュラルに右翼化した日本国内ではこの映画は温かく向い入れられるはずだ。


映画「太陽」公式サイト
http://taiyo-movie.com/


それはそうと、このロシア映画「太陽」の興行収益は好調ですが、「ロシア語専門書店、破産」と聞くと、胸が痛みます。
■8月22日「Yahoo! ニュース」
ナウカ書店 老舗のロシア語専門書店が破産 神田神保町

惑星ソラリス

惑星ソラリス惑星ソラリス
Солярис/Solaris
1972年/ソ連/165分
監督・脚本:アンドレイ・タルコフスキー
原作:スタニスワフ・レム
出演:ナターリヤ・ボンダルチュク、ドナタス・バニオニス、ユーリ・ヤルヴェット、他
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作品の長さが気になったり、ソダーバーグ版ばかり観ていてなかなか観れませんでしたがようやく無事鑑賞。

漠然ともっと「難解な映画」と思っていたのですが、思ったより普通の出来栄えという印象。設定等のコンテクストがソダーバーグ版で頭に入っていたことに拠るところが大きいとは思うのですが。

観た人は感じると思いますが「跪いて許しを請う」シーンの印象が強く、そこはタルコフスキーの演出なのか、原作を再現しているのか判別しがたいところがあります。

いずれにせよ、設定等、このレムの書いた原作はとても映画向きのものであったことは間違いなく、ジェームス・キャメロンが「タイタニック」で儲けたお金でその版権を買ったことも大きく頷けます。

今となっては観たかどうかも疑わしいタルコフスキー作品なのですが、折に触れて観かえしたい監督の一人です。なかなか長尺ではあるのですが。


■イメージフォーラム
生誕70周年アンドレイ・タルコフスキー映画祭「惑星ソラリス」

http://imageforum.co.jp/tarkovsky/wksslr.html

火の馬

火の馬火の馬
Тени забытых предков
Shadows of Forgotten Ancestors
1964年/ソ連/95分
監督:セルゲイ・パラジャーノフ
出演:イワン・ミコライチュク、ラリサ・カドーチニコワ、他
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たしか、1960年代、モスクワ大学卒業後、助監督などをした後に製作されたセルゲイ・パラジャーノフ監督の長編第一作作品。

「アシク・ケリブ」「ザクロの色」と比べると、「分かれそうになるがもとさやに戻る」といった、相変わらずストーリーはとてもシンプルながら必然的でない絵画的な画の積み上げと、それによっていわゆる映画的な文法が破綻してしまうとことろは共通しているが、特に作品後半の映像から感じられる緊張感は他の2作と比べてずば抜けておりそこだけでも観る価値のある作品。

民族主義的な部分を差し引いて冷静に考えても画作りはかなりユニークな作品。「気持ちよさ」より「驚き」を感じないわけにはいられない。

この作品の後パラジャーノフは当時のソビエト連邦当局によって目をつけられ、計15年間にわたって強制労働させられることになるが、そのポイントはどこだったのかはよくわからないだけに気になるところです。

ざくろの色

ざくろの色ざくろの色
The Color of Pomegranates
1971年/ソ連/73分
監督・原案:セルゲイ・パラジャーノフ
撮影:スウレン・シャフバジャン
音楽:チグラン・マンスウリヤン
出演:ソフィコ・チアウレリ、M・アレクヤン、V・ガスチャン、他
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凄い映画だった。「溢れ出る詩情(イマジネーション)」とはこういう映画のことを言うのかもしれません。

ワンカットワンカットの構図は絵画的で、シークエンス単位で何かを感じる、というよりは、画力で魅せていく感じの映画でした。

しかも、その一枚一枚は「手作り感覚的」というか、ある種作家が抱きがちな、切迫感のような「よけいな気負い」のようなものが感じられず、単純に撮る対象に対する集中力がとても高いように思う。

それは結果として、観る側に暖かい気持ちを抱かせるように思う。これほど見終えた後に「印象的なカット」を感じる映画は少ない。

いわゆる「映画文法」をおおいに逸脱した、イマジネーション豊かな純度の高い詩映画。


■参考ページ
コロンビアミュージッック「ざくろの色」


アシク・ケリブ

アシク・ケリブ【デジタル完全復元盤】アシク・ケリブ【デジタル完全復元盤】
Ashik Kerib
1988年/ソ連/78分
監督:セルゲイ・パラジャーノフ
原作:ミハイル・レールモントフ
脚本:ギーヤ・バドリッゼ
撮影:アルベルト・ヤブリヤ
出演:ユーリー・ムゴヤン、ヴェロニカ・メトニーゼ、他
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会社近くの「ジャニス」に、大学時代、早稲田松竹で観た「火の馬」の監督、セルゲイ・パラジャーノフの作品が複数置いてあることを発見。そして鑑賞。

http://blog.sakaiakira.net/cat19/post_231/を観たのはたしか10年程前ですが、パラジャーノフは「民族意識(アルメニア)と詩的な映像」が印象的だった。日常的なリズムの中で、ふと、彼の作品にふれると、とても異界を味わうことができる。

映像は詩的というか構図などが絵画的なところが前面に出ていて、プロット的には最初の10分くらいで想像がつく程シンプル。カット割りも荒削りで、パッケージとしての作品の完成度を目指していない点で、「自主映画」を思い起こさせる映画でした。

個人的に好きな監督ですが、たびたび出てくる「ザクロ」や衣装などの根拠が自分の民族的な処によるものと。はっきりわかってしまうので、その「根拠=テーマ」も独創的だったならばどんな映画をつくるのだろう、と、つい期待してしまいます。

監督本人も絵やコラージュも制作しているようですが、「画が印象的」というところでは、鈴木清順監督の「ツゴイネルワイゼン」「陽炎座」「夢二」の大正浪漫三部作やジャン=ジャック・ベネックスの「青い夢の女」を思い出しますが、ぶっとび度はポーランドのアンジェイ・ヤロシェヴィチ監督の「ワルシャワの柔肌」に匹敵します。


ウィキペディア:セルゲイ・パラジャーノフ

オルランド

オルランド 特別版オルランド 特別版
Orlando
1992年/イギリス・ロシア・イタリア・フランス・オランダ/94分
監督・脚本・音楽:サリー・ポッター
原作:ヴァージニア・ウルフ
撮影:アレクセイ・ロジオーノフ
出演:ティルダ・スウィントン、ビリー・ゼイン、シャルロット・ヴァランドレイ、他
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個人的には馴染みのないヴァージニア・ウルフ原作のイギリス映画。この原作が書かれたのは1920年代ということなので、ちょうどそのころフランスではシュールレアリズムが盛り上がっていた時だろうか。そう考えるとちょっと不思議な感じがします。

監督のサリー・ポッターは脚本・音楽もこなした女流監督ですが、ジョニー・デップ、クリスティーナ・リッチの『耳に残るのは君の歌声』などを思い出すと「ゴージャス」な画が好きなのかなと思います。

今回も特に序盤のコスチュームなどは「大作」っぽい雰囲気を醸し出していました。

特に笑いがとまらない、とか、押し迫る緊張感がある、といった映画ではありませんが、最後まで飽きずに観てしまいました。

2人のダイアローグをカットを切り替えず、パンしているシーンが2つあったのですが、そのテイクはエリック・ロメールの「緑の光線」でのデルフィーヌを交えた庭での団欒のシーンを彷彿とさせ、とても自分好みでした。

あと、ラストシーン。嫌な人は嫌かもしれませんが、僕的にはとても「映画的」な手法で撮影されていて、作品の味わいを深めているように感じられ印象的でした。

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