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Dr.パルナサスの鏡

Dr.パルナサスの鏡 [Blu-ray]Dr.パルナサスの鏡 [Blu-ray]
The Imaginarium of Doctor Parnassus
2009年/イギリス・カナダ/124分
監督・脚本・脚本:テリー・ギリアム
撮影:ロン・フォーサイス
出演:ヒース・レジャー、クリストファー・プラマー、ヴァーン・トロイヤー、アンドリュー・ガーフィールド、ジョニー・デップ、コリン・ファレル、ジュード・ロウ、ほか
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「未来世紀ブラジル」や「12モンキーズ」「バロン」「ラスべガスをやっつけろ!」などで知られる巨匠テリー・ギリアム監督の最新作。ギリアム監督作品には、既視感のない画にいつも結果的には驚かされるが「この映像は具体的に何をイメージして撮ったのか」がとても気になることが多い。もちろん漠然あるいは抽象的なイメージは様々な人が持っているだろうし、動画ならばPVなどで「映像先攻」の画を数分間積み上げることは想像がつく。個人的に「ファンタジックなSF映画が好きだ」と言ってしまえばそれだけだが、なんというか、ジェームス・キャメロン監督の「アバター」ように「観客を意識=媚びる」ことを前提として作り出す「今まで見たことのない映像」とは、おそれく根本的に発想が異なる「今まで見たことのない映像=志が高い」ものを感ぜずにはいられない。

作品作りの間に、現実世界でも様々な「よじれ」を生み出すギリアム監督ですが「ありもしないもの=映画」に単にリアルというだけではおさまらないような作品の存在感を作り上げてしまう監督は、ある人々にとっては奇跡を作る人ではあるが、万人に対してのわかりやすい真理=価値を示してはいないという意味においては、本物の「魔術師」なのかもしれない、などと考えてしまう。

作品はミニマリズムを感じるようなSFファンタジーだが、今回は作品の中に庶民的なレベルの「社会に対する考え」がちりばめられており、個人的には多いに共感すると同時に、その破壊力に大爆笑してしまう。意図的に作られたものであっても「このことに対してこんな風に作り込むこみ、このタイミングで表現してくるとは想像していなかった」という類いのシーンが数多く見られてたことにも驚いた。

「Dr.パルナサスの鏡」公式サイト
http://www.parnassus.jp/index.html

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(c)2009 Imaginarium Films, Inc. All Rights Reserved.
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(c)2009 Imaginarium Films, Inc. All Rights Reserved.
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(c)2009 Imaginarium Films, Inc. All Rights Reserved.

フローズン・タイム

フローズン・タイム [DVD]フローズン・タイム [DVD]
CASHBACK
2008年/イギリス/108分
監督・製作・脚本:ショーン・エリス
出演:ショーン・ビガースタッフ、エミリア・フォックス、ショーン・エヴァンス、ミシェル・ライアン、ほか

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久々の、というか個人的にはマイケル・ウインターボトム以来の、最近のイギリス映画。なるほど、この映画がアメリカ人によるアメリカ映画だったら、これ見よがしのあざとくわかりやすいストーリーとなっているだろうが、これはイギリス映画。多少エロくてもそこはかとなく品があり、お洒落でかつ笑えるのでなんというか「エロポップ」な感じの映画。

もとは短編だったらしいが、この映画の映像は「キメるところはキメる」ことができているように思う。

下の画像の女性のヌードなど、スーパーマーケットでの妄想ヌードは実に映画的なヌードのように感じる。皆美人だし。はからずも「妄想でも映画にすれば映画という現実になること」を思い出すこととなった作品。DVDのパッケージなどでは乳房と乳首が隠れていますが、本編ではご覧の通りよい脱ぎっぷりです。

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シェルタリング・スカイ

シェルタリング・スカイシェルタリング・スカイ
The Sheltering Sky
1990年/イギリス/138分
監督・脚本:ベルナルド・ベルトルッチ
原作:ポール・ボウルズ
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ、音楽:坂本龍一
出演:デブラ・ウィンガー、ジョン・マルコヴィッチ、ジル・ベネット、キャンベル・スコット、ティモシー・スポール、他
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アメリカ資本かと思いきや意外とイギリス資本だったこの映画。

この映画を観て、原作のポール・ボウルズに興味を持ったが、「Just nothing , it'a sky」というようなジョン・マルコビッチの台詞が忘れられない。

オープニングの「ツーリスト」と「トラベラー」の違いなんかも、今思えば単なる「うんちく」のような気はしますが、初見の当時は「そうか!」と深く感慨したものです。

音楽としてマーラーのアダージョが使われていたのも印象的。音楽担当は坂本龍一さんだが、個人的には同じくベルトルッチ監督と組んだ「ラスト・エンペラー」と比べると、なんとうか無難な印象がある。

ポール・ボウルズの告白を観ると、このシェルタリング・スカイの執筆時のポール・ボールズ氏の様子が見て取れる。原作者はこのベルトルッチ版の映画を認めていないようですが、個人的には記憶に残る1本。

暗殺者のメロディー

暗殺者のメロディー暗殺者のメロディー
The Assassination of Trotsky
1972年/フランス・イタリア・イギリス/104分
製作・監督:ジョセフ・ロージー
原作・脚本:ニコラス・モスレー
撮影:パスカリーノ・デ・サンティス、ヴィットリオ・ストラーロ
音楽:エジスト・マッキ
出演:アラン・ドロン、リチャード・バートン、ロミー・シュナイダー、ヴァレンティナ・コルテーゼ、ジャン・ドザイー、他
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ジョセフ・ロージー監督を知らず、主演のアラン・ドロンのジャケと「暗殺者のメロディー」という邦題に惹かれて観てみることに。

まずオープニングあたりから、近年めっきり見られなくなった「ズームカット(アウト)」が連発し、70年代的なシーン作りにノスタルジーを感じる。

実際は20年の服役後にスターリンによって勲章を受けたラモン・メルカデル(ジャクソン)役を演じたアラン・ドロンのさえない暗殺者っぷりに多少辟易としたが、リチャード・バートンのスケールの大きい演技っぷりやヴァレンティナ・コルテーゼの美貌にうっとりとしてしまうシーンも多々あり、シリアスな心理サスペンスものを充分堪能する。

72年公開の映画なので、デビュー10数年のアラン・ドロンは「難しい役所に挑戦」といった感が当時はあったことが予想されるが、まわりの上記のような役者とは善くも悪くも違う存在感を放っていたように感じられた。

製作も兼ねた、監督のジョセフ・ロージーの気合いの演出が感じられる印象的な1本。

クリムト

クリムト デラックス版クリムト デラックス版
KLIMT
2006年/オーストリア・フランス・ドイツ・イギリス/97分/R-15
監督:脚本:ラウル・ルイス
撮影:リカルド・アロノヴィッチ
音楽:ホルヘ・アリアガータ
出演:ジョン・マルコヴィッチ、ヴェロニカ・フェレ、サフロン・バロウズ、スティーヴン・ディレイン、ニコライ・キンスキー、サンドラ・チェッカレッリ、ポール・ヒルトン、エルンスト・ストッツナー、アグライア・シスコヴィッチ、他
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ハッキリとした展開が好きな人は退屈かもしれないが、コンセプト的には、すき放題幻想的な映像を連ねられる設定は美しく感じた。

それと主演の「マルコヴィッチの穴」などのジョン・マルコヴィッチの佇まいから、目つき、所作、声、話し方などどれをとっても魅力的で、そんな彼の実力がいつまでも観れる映画。

夢遊的な回想シーンが続くので、脈絡の展開が無いところは弱点かもしれないし、マルコヴィッチ氏の魅力は出ていても、それがクリムトのそれではないようにも観れてしまうところは、問題なのかもしれない。

個人的にはちょうど「マルホランド・ドライブ」や「インランド・エンパイア」などのデビッド・リンチ監督作品のように、音楽を鑑賞するように映画を鑑賞できて気持ちいい。しかも登場する女性が布切れ一枚身に纏わないヌードモデルが多く、いわゆる濡れ場のような感じではなく、裸婦が映画に馴染んでいて、その点も観ていて気持ちがよい。

監督のラウル・ルイスはチリ人の監督のようで、他にはプルーストの「失われた時を求めて」の映画版の監督も務めている。

先に映画「エゴン・シーレ」を観ると、シーレ役のニコライ・キンスキー氏が軽く見えた。ちなみにこのニコライ・キンスキーの義姉は「パリ・テキサス」などのナスターシャ・キンスキー。父親は寺山修二の「上海異人娼館/チャイナ・ドール」にも出演しているクラウス・キンスキー氏。

「クリムト」公式サイト
hhttp://www.klimt-movie.com/

日の名残り

日の名残り コレクターズ・エディション日の名残り コレクターズ・エディション
THE REMAINS OF THE DAY
1993年/イギリス/134分
監督:ジェームズ・アイヴォリー
製作:マイク・ニコルズ、イスマイル・マーチャント、ジョン・コーリー
原作:カズオ・イシグロ
脚本:ルース・プラワー・ジャブヴァーラ
撮影:トニー・ピアース=ロバーツ
出演:アンソニー・ホプキンス、エマ・トンプソン、ジェームズ・フォックス、クリストファー・リーヴ、ピーター・ヴォーン、ヒュー・グラント、ミシェル・ロンズデール、レナ・ヘディ、ベン・チャップリン、他
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「モーリス」「眺めのいい部屋」などのジェームズ・アイヴォリー監督作品。

2005年にはジェームズ・アイヴォリー監督とカズオ・イシグロ氏のコンビで真田広之氏なども出演の「上海の伯爵夫人」(The White Countess)があったようで、近いうちに観たい作品の一つ。

この「日の名残り」は、まず、伯爵だかなにかの称号をもつアンソニー・ホプキンスがバトラー(執事)として仕える者として演じている点が興味深い。

映画前半は状況説明のためのシーンが多くなってしまっていてなかなか鑑賞は難しいが、後半はホプキンスの一挙手一投足に目が離せない。

「愛と死の狭間で」などのエマ・トンプソン、「スーパーマン」などの、怪我をする前のクリストファー・リーヴ、若き日のヒュー・グラントなど、蒼々たる英国の映画俳優が出演していて、それだけでも観る価値は高い。これに加え、常連のダニエル・デイ・ルイスなんかも出演していれば。

「パブリック」と「プライベート」、ラスト間近の屋敷の外から、屋敷内に佇むホプキンスのカットなど、屋敷の「内」と「外」といった二項対立がハッキリと描かれていた気がする。

それぞれの境目は「モラル」というか暗黙の了解でほどほどにあるべき姿が予め決められているが、そこから逸脱しているように見えるホプキンスに対する視線が中立的であったところも興味深かったところだ。

日本生まれのカズオ・イシグロ氏の原作、アメリカ人のジェームズ・アイヴォリー監督、インド人のイスマイル・マーチャントが製作というイギリス人でないスタッフが中心でこれ程イギリスの内部を描いた作品を作っているところも面白い。

スカイ・キャプテン

スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー プレミアム・エディションスカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー プレミアム・エディション
Sky Captain & The World of Tomorrow
2004年/アメリカ・イギリス/107分
監督・脚本:ケリー・コンラン
撮影:エリック・アドキンス
VFX;スコット・E・アンダーソン
出演:ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロー、アンジェリーナ・ジョリー、ジョヴァンニ・リビシ、マイケル・ガンボン
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ジュード・ロウが出演しているとのことで数年前に劇場で予告編を見てきになっていた「スカイ・キャプテン」を鑑賞。

実写ベースのフィルムノワール的なアクションアニメ映画、だと思っていたが、予想以上に「映画」だった。

ただ「リアルか?」と問われればそうではないので、ネパールの密教など突っ込みどころはたくさんあるはずですが、軽く受け流しながら鑑賞できればかなり楽しめる作品。グイネス・パルトロウもいい味をだしている。

ハリウッドもの、と考えると登場人物が少ないような気はするが、この映画は6分の自主制作アニメが基盤となっているようで、同じ監督がここまでおおきなバジェットの映画にしたことを考えると、ハリウッドものというより、がんばった自主映画ということになろう。

http://blog.sakaiakira.net/cat12/alfie/アルフィー」の記事にも書いたけれど、高校まではイギリスにいたというジュード・ロウですが、彼はハリウッド色に染まりきっていないアメリカ映画にのみ出演している印象がある。

イギリス人といえばマイケル・ウィンターボトム監督やケン・ローチ監督などを思い出すが、そういったイギリス代表的な作品というより、アメリカ映画ではあるがハリウッド映画というわけでもない比較的大規模な多国的映画を好んで出演している印象がある。

狙い所が地味といえばそうだが、確実に必要とされている種類の映画ではあるので、変に大量生産的な映画よりも製作者の愛情や思い入れなどを感じる世界マーケットとしては比較的小規模な作品に好んで出演するのはある意味正しい選択なのかもしれない、などと思ってみたり。

「スカイ・キャプテン」公式サイト(English)
http://www.skycaptain.com/

2001年宇宙の旅

2001年宇宙の旅2001年宇宙の旅
2001: A Space Odyssey
1968年/アメリカ・イギリス/139分
監督・製作・脚本:スタンリー・キューブリック
原作・脚本:アーサー・C・クラーク
撮影:ジェフリー・アンスワース、ジョン・オルコット
出演:ケア・デュリア、ゲイリー・ロックウッド、ウィリアム・シルヴェスター、ダニエル・リクター、レナード・ロシター、他
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昔、というか10年程前に観た「2001年宇宙の旅」を観よう観ようと何年も思いつつようやく再度鑑賞。

作品の概要・解釈などについては『ウィキペディア(Wikipedia)』の「2001年宇宙の旅」を参照。

作品は他の「フルメタルジャケット」や「博士の異常な愛情」などのキューブリック作品のように「追いつめられる緊張感」が高い作品。

宙に舞ったゴリラ?の骨と宇宙船のジャンプカットや、ラストのあたりの「自分が知覚したもの、そのものになってしまう」ところなどは単にその映像の見せ方のアイデアに脱帽。

「リアルな映像体験」とか書いてある文章なども見かけるが、あれだけゆっくり動くものをワンカットて見せたらリアル以外になることはないと思ってしまうのは自分だけだろうか。

キューブリック監督は美術にもかなり凝っているのでそれだけワンカットにたいする絵画的な価値が高いとは思うのだが、そうなるとなおさらリアルになるのは当たり前にような。

個人的には人類の始まり〜スターチャイルドの誕生までのプロットの展開にもう少しひっかかりがあってシーンを有機的に結合できる契機を見つけられれば、そこから派生させていろいろ考えたりできそうだとは思うが、自分の頭ではなかなか難しいところです。不可解感は好きだが、もう少し分からないとあれこれと考えられない、というか。

日蔭のふたり

日蔭のふたり日蔭のふたり Jude
1996年/イギリス/123分
監督:マイケル・ウィンターボトム
原作:トーマス・ハーディ
脚本:ホセイン・アミニ
撮影:エドゥアルド・セラ
出演:クリストファー・エクルストン、ケイト・ウィンスレット、リーアム・カニンガム、レイチェル・グリフィス、ジューン・ウィットフィールド、ロス・コーヴィン・ターンブル、ジェームズ・デイレイ、ジェームズ・ネスビット、ポール・コプリー、ケン・ジョーンズ、他
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イギリスの作家・詩人、トーマス・ハーディの「日蔭者ジュード」を原作とした、「9songs」「24アワー・パーティ・ピープル」「ウェルカム・トゥ・サラエボ」「I Want You あなたが欲しい」「CODE46」など、毎回異なったジャンルの作品を発表し続けるマイケル・ウィンターボトム監督作品。この作品の後、助演?のケイト・ウィンスレットはジェームス・キャメロン監督の「タイタニック」で大注目されることとなる。

そのケイト・ウィンスレットはこの「日蔭のふたり」では心理学でいうボーダーライン・パーソナリティー・ディスオーダーのような役柄を熱演しているが、少し意地悪く観ると「単に自分で蒔いた種」による悲劇に僕なんかは感じてしまい、扇情的な感情をこれ見よがしに助長するような撮り方、表層的で安っぽい感じがしましたが、これくらい分かりやすいほうが観る人に間違いなくその悲劇性が伝わるんだろうということも再確認。

マイケル・ウィンターボトム監督作品は監督が何をしたいのかが分かりやすい上に、テンポのよいプロットの展開のなかで、生々しく表層的にリアルな映像を入れ込みながら魅せる手法が評価されているように感じた。

個人的に感情移入してしまったところは「ジュード」が大学制度に頼ることなく、苦学しながら在野の精神で身につけた学問、教養には悲劇以上に本来あるべき「学ぶ姿」が感じられ、自分の身の上なども勝手に投影しながら熱くなるシーンもあった。


ドリーマーズ

ドリーマーズ 特別版 ~R-18ヴァージョン~ドリーマーズ 特別版 ~R-18ヴァージョン~
The Dreamers
2003年/イギリス・フランス・イタリア/113分/R-18
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
原作・脚本:ギルバート・アデア「ドリーマーズ」白水社
撮影:ファビオ・チャンケッティ
出演:マイケル・ピット、エヴァ・グリーン、ルイ・ガレル、ロバン・ルヌーチ、アンナ・チャンセラー、ジャン=ピエール・カルフォン、ジャン=ピエール・レオ、他
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「ラストタンゴ・イン・パリ」「1900年」「ラストエンペラー」「シェルタリング・スカイ」「リトル・ブッタ」「シャンドライの恋」などのベルナルド・ベルトルッチ監督作品。

1968年のパリを描いてはいるが、60年代~80年代にあった映像の格式はなく「世界の巨匠の作品がなんと今ではお求め安くなってお茶の間価格で登場」といいた感じで、それが「成熟した」などと評価する人はいるとは思うが、逆にまた、早くして成功を収めた巨匠が、ハリウッドと同じ土壌で勝負し、作品を作り続けることの難しさを感じさせる。

例えば、ベルトルッチに影響を与えたというゴダールのように、フランス語映画ばかりを撮っていたら潜在的に多くの人に観てもらえる可能性はハリウッド映画と比べたら爪の垢程になってしまうだろうし、だからといって沈黙していても何も生まれない。

周囲の期待と自分の満足の折り合いをつけるのは若くして成功してしまうと特に難しいと思うが、臆することなく作品を発表し続けているのは驚嘆に値する。

Wikipedediaでは「1980年代にはあったカリスマ性は現在では薄れている」と表記されているが、今後はイタリア語でよいので、映画に対するオマージュではなく、新しい種類の映画を作るという気合いを感じさせる作品を観たいものです。

ちなみにこの「ドリーマーズ」「ジョルジュ・バタイユ ママン」と同様に、ルイ・ガレルが手淫して射精するシーンがじっくり描写されており「そんなタチ姿が様になる役者」という難しい、というかある種特権的な役者としての地位を確立した感もあり、今後の彼の動向は興味深い。

カンヌ SHORT5

カンヌ SHORT5カンヌ SHORT5 Cannes Short5
FAST FILM 2003年/オーストリア・ルクセンブルグ/14分 
監督:ヴァージル・ウィドリッチ
Do you hava the shine? 2002年/スウェーデン・フランス/6分 
監督:ヨハン・ターフィル
field 2001年/イギリス/10分 監督:デュアン・ホプキンス
Play with me 2002年/オランダ/13分 監督:エッサー:ロッツ
Janne da Arc on the Night bus 2003年/ハンガリー/25分 
監督:コーネル・ムンドルッツォ
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カンヌ映画祭の短編部門で好評だった作品5本を集めたオムニパス映画。

作っていないのかもしれないが、日本にはオーストリアやルクセンブルグ、オランダ、ハンガリーなどからの映画はなかなか入ってこないので貴重な映像体験だった。特にハンガリー映画は何年か前にハンガリー映画祭で観た、タル・ベーラ監督の「ヴェルクマイスター・ハーモニー」や「サタン・タンゴ」以来になる。

地球広しといえど案外同じような国の人が同じような人のために作った映画しか観ていないのかもしれない、という無自覚な価値観の狭さを考えさせられる。こういうことは外国に行ったときに思うことなのかもしれないが、この短編集はそんな気持ちを想いおこさせる。

より多くの人が映画館に脚をはこんび、かつ、満足感を持って帰れるような作品を作ろうとすると、結果どの映画も似てくる。そんな当たり前のことを気づかせてくれる。

5作品とも尺、テーマともにバラエティーに富んでいるので比較はできないが、カンヌなので総じてエンタテイメントというよりブラックであったりユニークであることに主眼がおかれているように思う。

5本目のハンガリーの「Janne da Arc on the Night bus 」には特にやられてしまった。


「カンヌ SHORT5」公式サイト
http://www.uplink.co.jp/cannes_short5/

秘密のかけら

秘密のかけら秘密のかけら
Where the Truth Lies
2005年/カナダ・イギリス・アメリカ/108分/R-18
監督・製作・脚本:アトム・エゴヤン
原作:ルパート・ホームズ
音楽:マイケル・ダナ
出演:ケヴィン・ベーコン、コリン・ファース、アリソン・ローマン、ソニヤ・ベネット、レイチェル・ブランチャード、他
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本当に久々に観たハリウッド的なエロティックサスペンス映画。監督はエジプト出身のアトム・エゴヤン。

この「秘密のかけら」映画の製作はカナダ、イギリス、アメリカの合作で、純粋なハリウッド映画ではないようで、そのディープである意味挑発的な暴力や性描写などを観ると、そのエンタテイメント的な映画ながら非ハリウッド的なテイストに「ザ・セル」などを思い出す。作為的ではないにせよ、全編にうっすらといわゆるハリウッド映画ではない雰囲気が漂う少し変わった映画。

あの「フットルース」などのケヴィン・ベーコンがイキイキと演技をしていたのが印象的。25年くらいは経っているように思うが、その間に人間のダークな部分を表現できる独特の低い声の発声法をマスターしたのかと思うと感慨深い。

全体的にサスペンス、エロティック、人間ドラマ、といった要素がミックスされ散りばめられているだけに「盛りだくさん」な印象はあるものの「ココ」といった見所が逆に分かり難い感がある。

ユダヤ人問題のネタも表象的に語られるのみで、事柄としてアピールするというよりはプロットの説明の一つとして置いてあるだけのように見える。

キャッチでは「大胆なエロティックな描写」などとなってしまって、結局そこがウリなのかと思うと少し物足りない感もある。

「秘密のかけら」公式サイト
http://www.himitsu-kakera.jp/

未来惑星ザルドス

未来惑星ザルドス未来惑星ザルドス
Zardoz
1974年/イギリス/106分
製作・監督・脚本:ジョン・ブアマン
撮影:ジェフリー・アンスワース
音楽:デヴィッド・マンロー
出演:ショーン・コネリー、シャーロット・ランプリング、サラ・ケステルマン、サリー・アン・ニュートン、ジョン・アルダートン、他
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「エクソシスト2」などのジョン・ブアマン監督作品。撮影監督はキューブリック監督の「2001年宇宙の旅」などのジェフリー・アンスワース氏が担当。

神保町にあるCDレンタルショップ「JANIS」にて「スピルバーグが影響を受けた映画!」というPOPを見て即座に観ることにする。

僕が生まれた年、1974年に製作された映画なので、今から30年以上前のものとなるが、「永遠の命」などある意味、普遍性のあるテーマを扱っているだけに、というか、現在でも解決されていない問題を扱っているため、過ぎさった過去の映画という気持ちを抱くこともなく鑑賞。

ショーン・コネリーとシャーロット・ランプリングがウブな感じがする程若々しかったのが印象的。

恋物語的な要素もあるが「子孫繁栄」程度にしか描かれていないので「ソラリス」「ガタカ」「CODE46」のような恋愛SFではなく、劇中の倫理観に注目したいような哲学的SF作品。

この映画のデザインは時代に回収されてしまいがちなように思うが、「人間とは何ぞや」というような問いや、その着目点は時代を超えて取り組まれるものなので、好き嫌いはさておき、ある意味金字塔を打ち立てた作品といえる。

イギリス映画、侮るなかれ。

CODE46

CODE46 スペシャル・エディションCODE46 スペシャル・エディション
2003年/イギリス/93分
監督:マイケル・ウィンターボトム
脚本:フランク・コットレル・ボイス
撮影:アルウィン・カックラー、マルセル・ザイスキンド
出演:サマンサ・モートン、ティム・ロビンス、ジャンヌ・バリバール、オム・プリ、エシー・デイヴィス、他
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ちょうど本日から「グアンタナモ、僕達が見た真実」が封切りのマイケル・ウィンターボトム監督のSF恋愛作品。

う~ん、この映画のちまたの評価ってそこそこ高いように思うのだが、個人的には食べ物で例えると、ファミレスのパフェのようだった。それなりに豪勢な感じで彩りよくいろいろな具材は入っているものの、オリジナリティーに欠ける感じというか。

「CODE46」規制とか「共鳴ウイルス」とか、思わせぶりでいいネタやいい映像はあるにはあるのですが、本来あるべき重厚さがなくぺらぺらしていて考えるネタとしては物足りない。かといって脱構築しているわけでもないし、何だかなー、という印象は拭えない。

ただこの映画の映像や音楽にはジャンキーなアミノ酸的な嗜好性は存分にあるので、なんとなく鑑賞するにはもってこいのような気はする。綺麗な映像で積み上げられた恋愛SF映画はあまりないのでカップルが雰囲気を出したりするにはいいものかと。

同様の恋愛SFのジャンルの映画には「ガタカ」タルコフスキー版「惑星ソラリス」ソダーバーグ版「ソラリス」などがあるが、真面目に近未来についてひたすら考えるならば「惑星ソラリス」、それに加えムードも欲しければ「ガタカ」、ムードに加え深読みもしたければ「ソラリス」、ひたすらムードに浸りたければ「CODE46」をオススメする。

I Want You あなたが欲しい

I Want You あなたが欲しいI Want You あなたが欲しい
1998年/イギリス/87分/R-15
監督:マイケル・ウィンターボトム
脚本:エワン・マクナミー
撮影:スワヴォミール・イジャック
出演:アレッサンドロ・ニヴォラ、レイチェル・ワイズ、ルカ・ペトルシック、ラビナ・ミテフスカ、カルメン・イジョゴ、ベン・ダニエルズ、ジェラルディン・オロウ、他
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「I Want You あなたがほしい」といういやらしそうな題名に惹かれ、かつ未見のマイケル・ウィンターボトム監督作品とのことで「9songs」ばりの激しいセックスシーンなどを期待しつつ鑑賞。

思ったよりセックスなどの性愛は描かれてはいなく、ストーリーがハッキリした作品。ウィンターボトム監督はエルビス・コステロの「I WANT YOU」をいたく気に入っていて同名の映画化に踏み出した模様。

いつものウィンターボトム監督作品のように、テーマの内容を掘り下げない、というか、物事を表層的に描写している印象がありましたが、実験色の強い作品というよりは、気に入った音楽をうまくはめるために作った映画のような気がした。本編中の音楽がいたく不自然な程に馴染んでいたのが印象的。

個人的には相手役の青年は、もっとこう、監督本人の身代わり的な存在になるのかと思っていたが、やられた、というか、拍子抜けしてしまう程あっけない役柄となっていた。

女優が出演している作品では、あざとい程に、どの作品も女性に都合のよい脚本になっているように思う。これで「女性に人気の監督」と言われているのは「サービスの恩賞」のような感じがして少し醒める。

うっすらと、移民などのイギリスの地方都市の状況などが感じられた。ウィンターボトム監督作品ならでは。

ウェルカム・トゥ・サラエボ

ウェルカム・トゥ・サラエボウェルカム・トゥ・サラエボ
Welcome To Sarajevo
1997年/イギリス/105分
監督:マイケル・ウィンターボトム
原作:マイケル・ニコルソン
脚本:フランク・コットレル・ボイス
出演:ゴラン・ヴィシュニック、スティーヴン・ディレイン、エミラ・ヌシェヴィッチ、ウディ・ハレルソン、マリサ・トメイ、ケリー・フォックス、エミリー・ロイド、他
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マイケル・ウィンターボトム監督作品「9songs」「24アワー・パーティ・ピープル」に続いて「ウェルカム・トゥ・サラエボ」を鑑賞。

この作品はDV映像を用いながらも、第50回のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品されたことで話題になった。

内容に関して積極的な不服はないが、充足感もまたない作品だった。

ただ、現地の映像など「どこまでが現実でどこまでがフィクションなのか」がわからないところや、実際のサラエボの様子など記録映像としての魅力が印象的だった。

例えば同じ「戦争」を題材としたスタンリー・キューブリック監督の「フルメタル・ジャケット」と比べると、「作家性」の薄さが目に付いてしまう。

主張にたいする情熱を感じないというか、作品のテーマに対して距離をとっている感じがする。テーマに肉迫すればよい、というわけではないのでこれはこれで1つのやり方だとは思うが・・・。

それと、作品のテーマとの距離感のせいか、何故か役者の印象が薄い映画でもあった。役者陣はちゃんと芝居はしているとは思うのですが、全体的にどこか「他人事」に感じてしまった。「キャラが描かれていない」というだけの問題ではないような気がしてしまう。

ただ、作家性が薄い=マイルドな仕上がり、になっているからこそ作品の一般性は獲得しやすい部分はより多くの人に見てもらうことには貢献できそうだ。でも、やっぱりそこを狙うのならばハリウッドでやった方がいいと思うし、「ウィンターボトム監督ならもっと面白い映画が作れたはず」という印象は否めない。

本編に使用されていた音楽が刺激的でした。ウィンターボトム監督は音楽を直接の題材に立てた方が面白い作品を作るような気がしますが、様々な映画に挑戦するその姿勢にはは尊敬してしまう。

24アワー・パーティ・ピープル

24アワー・パーティ・ピープル24アワー・パーティ・ピープル
24 Hour Party People
2002年/イギリス/115分
監督:マイケル・ウィンターボトム
原作:トニー・ウィルソン
脚本:フランク・コットレル・ボイス、撮影:ロビー・ミュラー
出演:スティーヴ・クーガン、シャーリー・ヘンダーソン、アンディ・サーキス、レニー・ジェームズ、他
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長い間気にはなっていたのですが「9songs」に続いてようやく鑑賞。

マイケル・ウィンターボトム監督作品はその「9songs」だけだったのですが、「今、イギリスで一番勢いのある映画監督の一人」と聞いて観た「9songs」は企画はまぁいいにせよ、構成・演出がシンプルすぎ、というか、役者任せな部分が全編を通じて感じられてしまい、カチンコ感は評価すべきだと思うけど、映画としてはものたりないところもあった。

それにひきかえこの「24アワー・パーティ・ピープル」の出来のすばらしいこと。久々にこんな面白い映画を観た気がする。

ピンク四天王の瀬々隆久監督が「ここ数年、マイケル・ムーアやマイケル・ウィンターボトムなどがDVで作品を製作し、カンヌなどのコンペティションで上映している」と「ユダ」のDVDの特典映像で言っていましたが、そのカンヌに出品したのがこの作品。

DVは素材がフィルムではないので、「フィルム=映画」という考え方の映画際では映画でなない映像として扱われますが(ビデオ部門など)最終的に35ミリに落とすなどしているはずですが「DV作品がカンヌのコンペティションで上映」という事実には驚いた。知らなかった自分が恥ずかしい・・・。

内容はイギリス、マンチェスターを舞台にした、パンクムーブメント~アシッドハウスの終焉まで(1976年~1992年)までの音楽シーンを記録的に描いた異色作。

この映画とても手が込んでいて面白いのですが、マスコミ的なキャッチが難しいように思う。「ギャガの売り方やよくない」といいたいわけではなく、作品の面白さを伝えるのが難しいように思う。

雑多な部分が面白かったりするのですが、決してくだらない感じではなく、ある意味とても真面目に撮っていると思うが、くそ真面目にやるというよりは、音楽シーンを知らなくても楽しめる作品に仕上がっている。

それと、驚くべきはその画量。だれにでも撮ることが可能なDVだからこそ、そのその膨大なカットを観てしまうと、脚本と撮影の労力がうかがえる。機動力とメディアのコストがかからないという利点をその臨界点まで存分に活かしている作品。

映画「24アワー・パーティ・ピープル」公式サイト
http://www.gaga.ne.jp/24hour/

9 Songs ナイン・ソングス

9 Songs/ナイン・ソングスナイン・ソングス
9 Songs
2004年/イギリス/69分/R-18
監督・製作・脚本・編集:マイケル・ウィンターボトム
撮影:マルセル・ザイスキンド
出演:キーラン・オブライエン、マルゴ・スティリー、プライマル・スクリーム、フランツ・フェルディナンド、マイケル・ナイマン、他
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この「9 Songs ナイン・ソングス」が初めてのマイケル・ウィンターボトム監督作品。「CODE46」などよくツタヤなどで見かけてはいたけれどもなかなか手が伸びなかった。

今のイギリス映画界を見ると、ウィンターボトム監督が近年活躍が華々しいようで、さしあたり最近DVDに落ちたこの作品を観てみる。

嫌いな映画ではありませんが、こういうアドリブいっぱいの作品は「観る」より「作る」ほうが楽しいだろうな、とまず思う。

「イギリスで世界に誇れるもの=音楽」が映画の全面に文字通り「出ていて」これはこれで新鮮ではありました。

ただ「映画」としては、ある意味、ピンク映画(ブルーフィルム)やアダルトビデオ(AV)を超えた一般映画(でもたぶん18禁)であるところがみどころとなるのだろうか。

「男女の緊密な感情」を描くといい、役者に即興で本番させる手法って、プライマルとかフランツ・フェルディナンド、とかマイケル・ナイマンが出ていなかったならば、南極のロケがなかったならば、ただのポルノになってしまうくらい、「人間描写が浅い」と感じるのは私だけだろうか。

ヌードやからみがなくて作品に重みがない映画が多いなか、からみばっかりで人間味が薄い映画は、ある意味珍しいといえばそうかもしれない。

「9 Songs ナイン・ソングス」公式サイト【日本】
http://www.cinecrew.co.jp/9songs/

「9 Songs ナイン・ソングス」公式サイト【フランス】
http://www.9songs-lefilm

SWEET SIXTEEN

SWEET SIXTEENSWEET SIXTEEN
2002年/イギリス・ドイツ・スペイン/106分
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァーティ
撮影:バリー・アクロイド
出演:マーティン・コムストン、ミッシェル・クルター、アンマリー・フルトン、ウィリアム・ルアン、ゲイリー・マコーマック、他
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ケン・ローチ監督の切なく胸しめつけられる恋愛モノではない青春映画。観ていて、北野武監督の「キッズ・リターン」を思い出したりした。

この映画「SWEET SIXTEEN」には「救い」はほとんどないが、一方で、安い救いなら無い方がましだとも思う。ないならないなりに見る側はカタルシスを感じることはできる。

不器用で男気のある青年が主人公でしたが、自分の理想に向って行動することは大切だが、努力すればいいわけではなく、報われるわけでもないことを実感。

知識はあまりないが、現在、タジキスタン共和国など、経済状況が悪い国では、若者が手っ取り早くお金を得る手段としてコカインなどの麻薬密売があとを絶たないようだが、「意識」だけでは解決できないだけに難しい問題ように思う。

ケン・ローチ監督はある個人を描いており、それは個人から多へ広がるというよりは、個人を通して階級などの社会を描いているので「社会派」と呼ばれるような作品を撮っているのだろう、と思うが、それは同時に、物語として個人があまり反映されなくなるわけで、そこには物足りなさを感じてしまうことも再確認。

やさしくキスをして

やさしくキスをしてやさしくキスをして
Ae Fond Kiss
2004年/イギリス・イタリア・ドイツ・スペイン
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァティ
撮影:バリー・アクロイド
出演:アッタ・ヤクブ、エヴァ・バーシッスル、アーマッド・リアス、シャムシャド・アクタール、シャバナ・バクーシ
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意外にも名前だけしか知らなかったケン・ローチ。それこそ「テス」と「ケス」の区別がつかず、ラッセル? 観たような観てないような、ポランスキー監督じゃなかったっけ? といった感じだった。

「やさしくキスをして」は、「ケン・ローチ初の恋愛映画」のようなふれ込みだったようですが、例えば、フランスのジャン=ジャック・ベネックス監督やレオス・カラックス監督などの恋愛映画と比べると、「恋愛映画」というよりは、「人種をまたがった恋愛の難しさを描いた社会派映画」だったように思う。恋愛映画にしては恋愛を感情にうったえかけようという作り手の意図が薄かったように思う。

そこで、よくよくフィルモグラフィーを見てみると、ケン・ローチ監督はすこぶる「社会派」な監督さんなようで、この「やさしくキスをして」は、氏の作品群のなかではセックスシーンが多い恋愛映画、ということになるのかもしれない。

性描写については、フェラチオを描くことなくクンニリングスをしっかり描いていると、それはそれで意味、意図があるんだろうと思ってしまう。

つい、多民族国家、というと安直に「アメリカ!」と思ってしまうのですが、イギリスもいろいろ問題が絶えないだろうな、とつくづく思う。

トーンというかテンション? はアメリカ映画よりもイギリス映画の方が、素の日本人のリズムに合っているような気もする。

GO! GO! L.A.

GO! GO! L.A. デラックス版GO! GO! L.A. デラックス版
L.A. Without a Map
1998年/イギリス・フランス・フィンランド・アメリカ/107分
監督・脚本:ミカ・カウリスマキ
原作・脚本:リチャード・レイナー
撮影:ミシェル・アマテュー
出演:デビッド・テナント、ヴィネッサ・ショウ、ヴィンセント・ギャロ、ジュリー・デルピー、ジョニー・デップ、他
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ついに観れました。たしか5年くらい前にユーロスペースなどでアキ・カウリスマキ特集などをやっていた時から、ミカ・カウリスマキの作品も観たいと思っていたのですが、何故か延び延びになってしまっていました。

イギリス、フィンランド、フランス、アメリカといった国々のスタッフ・キャストらによる国際色豊かな青春ラブコメディー。

チラシ(ジャケット)ではヴィンセント・ギャロとジェリー・デルピーが大写しになっていたのでもっと出演時間が長いのかと思っていましたが、ジョニー・デップ等含めたベテランが脇をかため、それ程国際的には知名度のない2人が主演でした。それぞれの役者はいい味を出していてうまく融合している感が強かった。

アキもそうかもしれませんが、おそらくミカは現場でも淡々と演出を付けていそうで、日本では黒沢清監督などもそうですが、変な気負い、のような空気ではなく、真剣なかつ穏やか雰囲気が画面から伝わってきて心地よい映画でした。

あまりこいうことはないはずなのですが、われしらず笑い声がもれてしまっていたようです。


■ミカ・カウリスマキ公式サイト
http://mikakaurismaki.com/

オルランド

オルランド 特別版オルランド 特別版
Orlando
1992年/イギリス・ロシア・イタリア・フランス・オランダ/94分
監督・脚本・音楽:サリー・ポッター
原作:ヴァージニア・ウルフ
撮影:アレクセイ・ロジオーノフ
出演:ティルダ・スウィントン、ビリー・ゼイン、シャルロット・ヴァランドレイ、他
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個人的には馴染みのないヴァージニア・ウルフ原作のイギリス映画。この原作が書かれたのは1920年代ということなので、ちょうどそのころフランスではシュールレアリズムが盛り上がっていた時だろうか。そう考えるとちょっと不思議な感じがします。

監督のサリー・ポッターは脚本・音楽もこなした女流監督ですが、ジョニー・デップ、クリスティーナ・リッチの『耳に残るのは君の歌声』などを思い出すと「ゴージャス」な画が好きなのかなと思います。

今回も特に序盤のコスチュームなどは「大作」っぽい雰囲気を醸し出していました。

特に笑いがとまらない、とか、押し迫る緊張感がある、といった映画ではありませんが、最後まで飽きずに観てしまいました。

2人のダイアローグをカットを切り替えず、パンしているシーンが2つあったのですが、そのテイクはエリック・ロメールの「緑の光線」でのデルフィーヌを交えた庭での団欒のシーンを彷彿とさせ、とても自分好みでした。

あと、ラストシーン。嫌な人は嫌かもしれませんが、僕的にはとても「映画的」な手法で撮影されていて、作品の味わいを深めているように感じられ印象的でした。

モーリス

モーリス restored versionモーリス restored version
Maurice
1987年/イギリス/140分
監督・脚本:ジェームズ・アイヴォリー
原作:E・M・フォースター
撮影:ピエール・ロム
出演:ジェームズ・ウィルビー、ヒュー・グラント、ルパート・グレイヴス、他
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ジェームス・アイボリー監督、E.M.フォースター原作のイギリス映画。ちなみにジェームス・アイボリーはアメリカ人監督。

若く美しい英国人の同性愛を耽美的に描いた映画。いまや「フォー・ウエディング」などハリウッドでも大成功を収めたヒュー・グラントがまだ青臭い雰囲気をかもしだしながらの演技が新鮮。彼はこの作品の成功をきっかけに役者のキャリアを積んでいくこととなった。

ヒュー・グラントの役所は「眺めのいい部屋」でいうところのダニエル・デイ・ルイス的なポジション。ダニエルと比べるとどうしても演技力や存在感がとても劣っている。「実力と成功が比例するとは限らない」ことを再確認。

ヒュー・グラントの魅力は、どの作品に出演してもヒュー・グラントであるということで、それはそれでダニエル・デイ・ルイスとは違うタイプということ。

演技の中に見られる所作がいつも同じなのです。愛すべき役者ということか。

穴
The Hole
2001年/イギリス/102分
監督:ニック・ハム
原作:ガイ・バート
脚本:ベン・コート、キャロライン・イップ
出演:ソーラ・バーチ、デズモンド・ハリントン、ダニエル・ブロックルバンク、他
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「アメリカン・ビューティー」のスカーレット・ヨハンソン、ではなく、ソーラ・バーチが主演しているとのことで鑑賞。

「ゴーストワールド」でもくせのあるというか存在感のある演技を披露していましたが、この映画を観て主役をはれる女優であることを確認。でも演技力、存在感はあると思うのですが、色気を売るキャラではないのと、存在感がとてもあるので作品が限られてしまうのかもしれない、とも思ってしまう。

この「穴」もソーラ・バーチの魅力(特徴)が表現された作品だと思うが、見る側がそれを望んでいるかどうかに疑問が残る作品のように思う。案外、近い将来「監督デビュー」なんかしてしまうかも。

そう、この作品のほうは英語映画ですが、とてもインディペンデントな臭いのプンプンする映画で好感触。最近の日本映画にも通ずる雰囲気(バジェットだけ?)があるような。

眺めのいい部屋

眺めのいい部屋 完全版 スペシャル・エディション眺めのいい部屋 完全版 スペシャル・エディション
A Room With A View
1986年/イギリス/114分
監督:ジェームズ・アイヴォリー
原作:E・M・フォースター
出演:ヘレナ・ボナム・カーター、ダニエル・デイ・ルイス、他
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教養あふれる文芸大作映画。E・M・フォースターの原作を比較的忠実に再現しているよう。とかく目を惹いたのがダニエル・デイ・ルイスの演技っぷり。

「マイ・レフトフット」でも好演していた彼だが、「存在の耐えられない軽さ」で渋い演技で決めていた彼があれまあれまの豹変ぶり。役者陣全体の中でも異彩を放つキャラクターを熱演。

役になりきる彼の役者魂には脱帽です。こんなに情熱的な役者さんだったとは知りませんでした。

あと、この映画は英語の発音が奇麗だったように思います。クイーンズイングリッシュ? というやつだろうか。

真珠の耳飾りの少女

真珠の耳飾りの少女 通常版真珠の耳飾りの少女 通常版
Girl with a pearl earing
2003年/イギリス・ルクセンブルグ/100分
監督:ピーター・ウェーバー
原作:トレイシー・シュヴァリエ
脚本:オリヴィア・ヘトリード
撮影:エドゥアルド・セラ
出演:スカーレット・ヨハンソン、コリン・ファース、キリアン・マーフィ、他
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昨日、遅ればせながら「真珠の耳飾りの少女」を観てきました。 部屋のシーンの多い作品でしたが、全体的に奥行きを感じる人物画のような映画だった。

画(絵)((フレーミング))が好きな僕にとっては「青い夢の女」以上の完成度だったようにも思う。ライティング、というか、画の陰影がすばらしい。

ストーリーは、忠実、というか差し障りの感じだったけど、スカーレット・ヨハンソンは負けていなかったです。大女優になるかもしれませんな。

ストーリーとからんだ感動、があるわけではなく、あまり勧められませんが、伝記ものとして、サスペンスなどにアレンジしなかったのはよかったなと思う。

「真珠の耳飾りの少女」は、今思うに、あのフレームとライティングだったならば、ドラマ化すらしないほうが、アートよりになってしまいますが、「去年マリエンバートで」並にパンチのある映画になったのではと思ったり。

ディープ・ブルー

ディープ・ブルー スペシャル・エディションディープ・ブルー スペシャル・エディション
Deep Blue
2003年/イギリス・ドイツ/91分
アラステア・フォザーギル、アンディ・バイヤット
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六本木ヒルズ、ヴァージンシネマズで初めて鑑賞。 事前情報なしで飛び込みで観たのですが、こんなに「教育的」な映画だとは思わなかった。「海」の生態についてなどこの映画でしか観れない画が多く、しかも、恐らくCGは使用していないように思う。イギリスBBC放送製作だし。

モノローグがとても多かったのが印象的。「スクリーンには砂浜、そこには現場の環境音が…」という感じで観ていてそこにいるような、旅行気分に浸れるようなものを想像していただけに、説教、というか「自然愛護」のようなことを声高にメッセージとして訴えて教訓めいていた。

逆に分かりやすいかたちでそいういうメッセージがないほうが「海の自然」をダイレクトに感じることができるような気もしてしまうのですが。。

アンダー・ザ・スキン

アンダー・ザ・スキンアンダー・ザ・スキン
Under The Skin
1997年/イギリス/82分
監督・脚本:カリーヌ・アドラー
撮影: バリー・アクロイド
出演:サマンサ・モートン、クレア・ラッシュブルック、スチュアート・タウンゼント、他
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少し話題になっているサマンサ・モートンものを鑑賞。この人、スカーレット・ヨハンソンやソーラ・バーチのようなインディペンデント系によく出演する役者さんかと思っていたら「マイノリティー・リポート」やどこだったかわかりませんが「シザーハンズ」などのハリウッド映画にも出演しているよう。

ライトな感じのないシリアスで痛々しいドラマで、ある意味映画っぽい映画のように思う。

皆に好かれる映画ではないが、一人でこっそり深夜などに観るとより感動できる作品。

リトルダンサー

リトル・ダンサー コレクターズ・エディションリトル・ダンサー コレクターズ・エディション
Billy Elliot
2000年/イギリス/111分
監督:スティーヴン・ダルドリー
脚本:リー・ホール
撮影:ブライアン・テュファーノ
出演:ジェイミー・ベル、ジュリー・ウォルターズ、ゲイリー ルイス、ジーン・ヘイウッド、ジェイミー・ドラヴェン、他
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久々の感動作でした。家族で観れる映画。 わかりやすい悪役とうか悪者がでてこないところがいいのだろうか、子供が主役ということを差し引いても、主要な登場人物たちすべての優しさがでていたと思う。こういう映画は見終えた後に暖かい子持ちになれる。

カンヌの監督週間に出品していたみたいだけど、これくらいの規模の映画は身近に感じれて好きです。
日本だと、テイストは違うんだけど、黒沢清や青山真治や諏訪敦彦、小林政広などが出品していたと思う。

小さいバジェットでも、ある部分を描ききっている作品というか。

あと、前半最初のほうで、バレエ教師の娘とビリーが歩いていところで、
「明日はレッスンに来る?」
「わからない、ボクシングがあるから」
「お好きに」
というようなやりとりのあと警察の車?が通りがかったときに、
女の子の姿が消えてるんだけど、なんだったのだろう。
作品の内容とは関係ないのだろうか。

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