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そして僕は恋をする

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Comment je me suis disput?…(ma vie sexuelle)
1996年/フランス/178分
監督・脚本:アルノー・デプレシャン
撮影:エリック・ゴーティエ
出演:マチュー・アマルリック、エマニュエル・ドゥヴォス、マリアンヌ・ドニクール、エマニュエル・サランジェ、ジャンヌ・バリバール
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1990年代の中盤、私が一番純粋な気持ちで映画館で映画を観ていた頃に上映されていたフランスの恋愛群像映画。改めて観るとフランス版「ビバリーヒルズ青春白書」のような感じもしますが、およそ3時間もの間「恋愛感情」だけを丁寧に綴ったこの作品は他の追随を許さないことを再確認した。

それと、私のテーマでもある「あるようでない話」、抽象的ではあるが、アカデミズムというよりは人の生活に還元されるような等身大の言葉が綿密に配置されておりデプレシャン監督の人間描写・世界観には共感できる部分が多く、そんな思いを抱けるのは数千本観てきたなかで、この「そして僕は恋をする」だけなので、この点は「ビバヒル」には全く見られないこの作品の特長の一つだ。

他では監督業もこなすという主演のマチュー・アマルリックがこの映画での共演を機に現実ジャンヌ・バリバールとの間に二児をもうけていることは驚きだ。

二十歳の死

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La vie des morts
1991年/フランス/52分
監督・脚本:アルノー・デプレシャン
撮影:エリック・ゴーティエ
出演:ティボール・ド・モンタレンベール、レシュ・レボヴィッチ、マリアンヌ・ドニクール、スゼル・ゴフリー
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「そして僕は恋をする」等のアルノー・デプレシャン監督作品のおそらく劇場公開した第一作目の監督作品。52分という100分映画の約半分の尺の映画だが、個人的にはなんというか「映画的な雰囲気」のぷんぷんする映画。こういう映画を観ると「映画製作はお金=製作費じゃない」ということを思い起こすことができる。もちろん16ミリとはいえフィルム撮影は昨今の低予算ビデオ撮影と比べれば莫大な製作費がかかるが、豪華にすること、に躍起になっている映画と比べれば「人とは何か。映画とは何か。」ということに対して真摯に向き合う監督の姿が感じられる映画で、敷居の低い、観客に歩み寄るような「娯楽性」は低いが、むき出しのそれをダイレクトに感じられる意欲作だ。

ここにあるのは、数年前に耳にした「品格」などとは違った映画に対する「志の高さ」である。映画あるいは人そのものに対して向かっていこうとするエネルギーのことなのかもしれない。ストーリーとは別に、そんなことを考えさせる映画。

去年マリエンバートで

去年マリエンバートで去年マリエンバートで
L'anne'e dernie're a' Marienbad
1960年/フランス・イタリア/94分
監督:アラン・レネ
原作・脚本:アラン・ロブ・グリエ
撮影:サッシャ・ヴィエルニー、音楽:フランシス・セイリグ
出演:デルフィーヌ・セイリグ、ジョルジュ・アルベルタッツィ、サッシャ・ピトエフ、他
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たしか大学1年の時に観て多大な感銘を受けた映画の1本。 当時、映画はもとより熱心にフランス語に励んでいただけに「・・・jardin du Luxembourg・・・」くらいの言葉でもその言葉の響きにうっとりとしていた記憶がある。小規模映画の臭いがぷんぷん漂うところも好印象である。

しかもうっとりさせるのは言葉だけでななくデルフィーヌ・セイリ(ン)グの造形的な美貌にある。彼女が女優として優れているかはわからないが、ちょうどレオス・カラックス監督の「ボーイミールガール」のミレーユ・ペリエのように彼女の魅力は色あせない。ちょうど2本ともモノクロ作品であることを考えると、実物+ブラック&ホワイト特有の幻想感が混ざり合っているのかもしれない。

それに加え、原作・脚本のアラン・ロブグリエは後に自身で「消しゴム」など様々な作品の監督もつとめているが、ぬるい心理描写などを一切排除したストイックな脚本は完璧な撮影監督によって映画化されている。撮影監督のサッシャ・ヴィエルニーは後に「ZOO」「コックと泥棒、その妻と愛人」「プロスペローの本」などピーター・グリーナウェイ監督作品群の撮影を担当している。

そして監督のアラン・レネ。「ヒロシマ・モナムール」(24時間の情事)「夜と霧」などが有名だが、初期のアラン・レネ作品は野心がありかつ実験色が強い作品を発表し続けておりどの作品も目が離せない。

これら全てが一つの作品に収まっているような映画は他に存在しないし、これからもないだろう・・・。


ちなみにこの映画のDVDは現在廃盤となっており、このサイトでリンクを貼っているアマゾンでは、中古で2万5000円くらいで取引きされているかなりのレアもののようだ。

ディーバ

ディーバディーバ
Diva
1981年/フランス/118分
監督・脚本:ジャン=ジャック・ベネックス
原作:ドラコルタ、撮影:フィリップ・ルスロ
出演:ウィルヘルメニア・フェルナンデス、フレデリック・アンドレイ、リシャール・ボーランジェ、チュイ・アン・リュー、他
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今となってはジャン=ジャック・ベネックス監督作品で一番好きな映画。2000年に「青い夢の女」を撮っているが、もう7年もたつので、善くも悪くも今後の量産は期待できない。

「IP5」から「青い夢の女」までも8年くらい空いている。たしかに1、2で一本作っていたら積み上げれば凄い量になるが、内容は伴わない。生活の糧を考えなければこれくらいのペースになるのだろうか。

ベナックス監督本人は哲学と薬学を学んだ育ちのよいインテリさんのようだが、かなり前に行った東京大学での講演(「青い夢の女」のプロモーション?)では「単なる女好きのエロおやじ」の感も少しあったが、大学では哲学を学び、現場では撮影も行い自分でファインダーを覗くという、スタイルは自分が求めるスタイルに近く、以外と実践している映画監督はほとんど皆無なので、個人的にかなりシンパシーを感じる数少ない監督の一人。

この「ディーバ」は監督の長編第1作だが、低予算ながらも、シンプルなカメラ回しながらも、少年がディーバの手を握るシーンなどは映画史に残るほど印象的なカットとなった。

ある流れのなかで、「この部分の感覚をこれくらい観たい」というような雲を掴むようなところでまったく正しい選択をしているところに、映画に無限の可能性を感じた瞬間があり、そんなことを思うのは自分の年齢も感じてしまうこのごる、新鮮な思いに立ち返ることができる作品。

暗殺者のメロディー

暗殺者のメロディー暗殺者のメロディー
The Assassination of Trotsky
1972年/フランス・イタリア・イギリス/104分
製作・監督:ジョセフ・ロージー
原作・脚本:ニコラス・モスレー
撮影:パスカリーノ・デ・サンティス、ヴィットリオ・ストラーロ
音楽:エジスト・マッキ
出演:アラン・ドロン、リチャード・バートン、ロミー・シュナイダー、ヴァレンティナ・コルテーゼ、ジャン・ドザイー、他
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ジョセフ・ロージー監督を知らず、主演のアラン・ドロンのジャケと「暗殺者のメロディー」という邦題に惹かれて観てみることに。

まずオープニングあたりから、近年めっきり見られなくなった「ズームカット(アウト)」が連発し、70年代的なシーン作りにノスタルジーを感じる。

実際は20年の服役後にスターリンによって勲章を受けたラモン・メルカデル(ジャクソン)役を演じたアラン・ドロンのさえない暗殺者っぷりに多少辟易としたが、リチャード・バートンのスケールの大きい演技っぷりやヴァレンティナ・コルテーゼの美貌にうっとりとしてしまうシーンも多々あり、シリアスな心理サスペンスものを充分堪能する。

72年公開の映画なので、デビュー10数年のアラン・ドロンは「難しい役所に挑戦」といった感が当時はあったことが予想されるが、まわりの上記のような役者とは善くも悪くも違う存在感を放っていたように感じられた。

製作も兼ねた、監督のジョセフ・ロージーの気合いの演出が感じられる印象的な1本。

クリムト

クリムト デラックス版クリムト デラックス版
KLIMT
2006年/オーストリア・フランス・ドイツ・イギリス/97分/R-15
監督:脚本:ラウル・ルイス
撮影:リカルド・アロノヴィッチ
音楽:ホルヘ・アリアガータ
出演:ジョン・マルコヴィッチ、ヴェロニカ・フェレ、サフロン・バロウズ、スティーヴン・ディレイン、ニコライ・キンスキー、サンドラ・チェッカレッリ、ポール・ヒルトン、エルンスト・ストッツナー、アグライア・シスコヴィッチ、他
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ハッキリとした展開が好きな人は退屈かもしれないが、コンセプト的には、すき放題幻想的な映像を連ねられる設定は美しく感じた。

それと主演の「マルコヴィッチの穴」などのジョン・マルコヴィッチの佇まいから、目つき、所作、声、話し方などどれをとっても魅力的で、そんな彼の実力がいつまでも観れる映画。

夢遊的な回想シーンが続くので、脈絡の展開が無いところは弱点かもしれないし、マルコヴィッチ氏の魅力は出ていても、それがクリムトのそれではないようにも観れてしまうところは、問題なのかもしれない。

個人的にはちょうど「マルホランド・ドライブ」や「インランド・エンパイア」などのデビッド・リンチ監督作品のように、音楽を鑑賞するように映画を鑑賞できて気持ちいい。しかも登場する女性が布切れ一枚身に纏わないヌードモデルが多く、いわゆる濡れ場のような感じではなく、裸婦が映画に馴染んでいて、その点も観ていて気持ちがよい。

監督のラウル・ルイスはチリ人の監督のようで、他にはプルーストの「失われた時を求めて」の映画版の監督も務めている。

先に映画「エゴン・シーレ」を観ると、シーレ役のニコライ・キンスキー氏が軽く見えた。ちなみにこのニコライ・キンスキーの義姉は「パリ・テキサス」などのナスターシャ・キンスキー。父親は寺山修二の「上海異人娼館/チャイナ・ドール」にも出演しているクラウス・キンスキー氏。

「クリムト」公式サイト
hhttp://www.klimt-movie.com/

アリゾナ・ドリーム

アリゾナ・ドリームアリゾナ・ドリーム
ARIZONA DREAM
1992年/フランス/140分
監督・脚本:エミール・クストリッツァ
製作:クローディー・オサール
撮影:ヴィルコ・フィラチ
主題歌:イギー・ポップ
出演:ジョニー・デップ、ジェリー・ルイス、フェイ・ダナウェイ、リリ・テイラー、ヴィンセント・ギャロ、ポーリーナ・ポリスコワ、ジャクソン・ダグラス、他
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基本的にこういう「腐った」感じの映画は清々しい気持ちにはなれないものの、変に頑張らずに平常心で観れるのがうれしい。

人は、それと認識しつつも、夢や幻想=希望を追い求めて生きていく、なんてことを思い起こさせる。

人間ドラマでジョニー・デップが主演だからか「ギルバート・グレイプ」を思い起こしたり。

映画好きの自分としては、自分の周りに、この作品のヴィンセント・ギャロのように映画を観ながら、作品の台詞を諳んじる人もいて、その人は特に「役者志望」というわけはないが、作品の価値観にシンパシーを感じた部分が多い作品だった。

作品全体に包まれる、なんというか「突き抜けているようで、閉ざした感じ」がモラトリアムというか青春映画っぽく、そんな時間の積み上げの中から生まれる愛情は自閉的でありながらも他と代えられない純粋さを維持している、などと思ってみたり。

この映画は使用言語が英語だったので、旧ユーゴ、サラエボ出身のエミール・クストリッツァ監督の「ハリウッド進出作品」とばかり思っていたが、意外にも製作国はフランスでした。

タイム・オブ・ザ・ウルフ

タイム・オブ・ザ・ウルフタイム・オブ・ザ・ウルフ
LE TEMPS DU LOUP
THE TIME OF THE WOLF
WOLFZEIT
2003年/フランス・ドイツ・オーストリア/109分
監督・脚本:ミヒャエル・ハネケ
製作:ファイト・ハイドゥシュカ、マルガレート・メネゴス
製作総指揮:ミヒャエル・カッツ
撮影:ユルゲン・ユルゲス、衣装:リジー・クリストル
出演:イザベル・ユペール、ベアトリス・ダル、パトリス・シェロー、ローナ・ハートナー、モーリス・ベニシュー、オリヴィエ・グルメ、ブリジット・ルアン、他
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昨今はニュース映像などで世界中の残忍な事件などの映像がすぐに見れるような時代ですが、遠目でその事件を眺めるのではなく、「実際にその事件の当事者になったら」という目線で製作されたある意味現代的な作品。

DVDの特典映像のインタビューを見るに監督自身もとりわけ「パニック映画」を撮りたかったわけではなかったようだ。

ただ「こんなことが、あなたの身に起こったらどうする?」という問いが自体がこの映画のテーマなので、それぞれのエピソードや登場人物に対し「感じ方は人それぞれ」というスタンスで作られているように思う。ハネケ作品のなかでは「ファニーゲーム」並にキャッチの効いた映画だったようにも思う。

家畜を殺すシーンや少女の死体(ヌード)など、小道具、というか細部までリアルに再現されていたところがお金はなくても「大人の仕事」を感じさせる。

意外にもイザベル・ユペール、ベアトリス・ダルといったビッグネームの女優が出演しているが、そんな華のある映画でなかったところが特徴だろうか。

また、DVDのインタビューによると、この「タイム・オブ・ザ・ウルフ」「ピアニスト」の前に企画されていた作品のようだが、ユペールとハネケが独自ルートで資金集めを試みるも失敗し、半ば頓挫していたよう。「ピアニスト」のカンヌ受賞などの成功をきっかけに資金集めに成功し、撮影にこぎつけることができた作品のよう。

コード:アンノウン

コード:アンノウンコード・アンノウン
CODE UNKNOWN
CODE INCONNU: RECIT INCOMPLET DE DIVERS VOYAGES
2000年/フランス・ドイツ・ルーマニア/113分
監督・脚本:ミヒャエル・ハネケ
製作:マラン・カルミッツ、アラン・サルド
製作総指揮:イヴォン・クレン
撮影:ユルゲン・ユルゲス
出演:ジュリエット・ビノシュ、ティエリー・ヌーヴィック、ヨーゼフ・ビアビヒラー、アレクサンドル・ハミド、他
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この作品もなんというか、いつものハネケ作品と同様に、「説明を省いて問いかける系」の映画。「分かりにくい」なんて監督本人に言ったら「説明はしない云々かんぬん」長々と説明されそうな感じである。

「71フラグメンツ」もそうだったけれど、「観ていれば分かる映画」ではなく、ハネケ監督の挑発に乗っかることで初めて道筋が見えてくるような、観る側の能動性が求められる映画。

オープニングとエンディングの「手話」などのそれぞれのエピソードの断片それぞれが複雑に絡み合うことを求めたような映画ではないこと、そうではないところを魅せることに終始しているところは、今から7年も前の映画だが、魅せ方に斬新さを感じないわけにはいかない。

さらに、ハネケ監督の代表的な映像演出の手法として長回しがあるが、その編集では、カットの頭、あるいは、最後にその長回しで魅せるエピソードが含まれていることが多いことを発見。

「コード:アンノウン」公式サイト【英語】
http://www.atalantafilmes.pt/2001/codigo/index.htm

ドリーマーズ

ドリーマーズ 特別版 ~R-18ヴァージョン~ドリーマーズ 特別版 ~R-18ヴァージョン~
The Dreamers
2003年/イギリス・フランス・イタリア/113分/R-18
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
原作・脚本:ギルバート・アデア「ドリーマーズ」白水社
撮影:ファビオ・チャンケッティ
出演:マイケル・ピット、エヴァ・グリーン、ルイ・ガレル、ロバン・ルヌーチ、アンナ・チャンセラー、ジャン=ピエール・カルフォン、ジャン=ピエール・レオ、他
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「ラストタンゴ・イン・パリ」「1900年」「ラストエンペラー」「シェルタリング・スカイ」「リトル・ブッタ」「シャンドライの恋」などのベルナルド・ベルトルッチ監督作品。

1968年のパリを描いてはいるが、60年代~80年代にあった映像の格式はなく「世界の巨匠の作品がなんと今ではお求め安くなってお茶の間価格で登場」といいた感じで、それが「成熟した」などと評価する人はいるとは思うが、逆にまた、早くして成功を収めた巨匠が、ハリウッドと同じ土壌で勝負し、作品を作り続けることの難しさを感じさせる。

例えば、ベルトルッチに影響を与えたというゴダールのように、フランス語映画ばかりを撮っていたら潜在的に多くの人に観てもらえる可能性はハリウッド映画と比べたら爪の垢程になってしまうだろうし、だからといって沈黙していても何も生まれない。

周囲の期待と自分の満足の折り合いをつけるのは若くして成功してしまうと特に難しいと思うが、臆することなく作品を発表し続けているのは驚嘆に値する。

Wikipedediaでは「1980年代にはあったカリスマ性は現在では薄れている」と表記されているが、今後はイタリア語でよいので、映画に対するオマージュではなく、新しい種類の映画を作るという気合いを感じさせる作品を観たいものです。

ちなみにこの「ドリーマーズ」「ジョルジュ・バタイユ ママン」と同様に、ルイ・ガレルが手淫して射精するシーンがじっくり描写されており「そんなタチ姿が様になる役者」という難しい、というかある種特権的な役者としての地位を確立した感もあり、今後の彼の動向は興味深い。

勝手に逃げろ/人生

勝手に逃げろ/人生勝手に逃げろ/人生 Souve Qui Peut (La Vie)
1979年/フランス・スイス/98分
監督・製作・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
脚本:アン=マリー・メルヴィル、ジャン=クロード・カリエール
撮影:ウィリアム・ルブチャンスキー、レナート・ベルタ
出演:ジャック・デュトロン 、ナタリー・バイ 、イザベル・ユペール 、ローランド・アムスタッツ 、セシル・タナー、アンナ・バルダッチニ、他
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たしか渡仏していた1996年の秋、11月にパリのリパブリックにあるシネマテークでこの「勝手に逃げろ/人生」を初めて観た記憶がある。帰国してから気づいたが、同じ頃、同じパリで哲学者のジル・ドゥルーズが「飛び降り」とも思える謎の死を遂げた時だ。

この名画座のようなシネマテークでは「ヌーベルヴァーグ特集」のようなものを上映しており、そこでの鑑賞だったが、周りの客層が若い有色人種が多かったことが印象的。

おそらく今思えば、低い階層に属する移民たちのはずだが、フランス本国では「プロレタリアのための映画」を声高に表明していたゴダールの意思が思った以上に受け入れられてたのか、それとも、日本に状況と同じように、単にゴダール映画のデザイン性などに惹かれた若者たちだったのかは今でも定かではない。

今回日本語字幕で初めての鑑賞だったが、やはり、フランス語でわからないところは日本語でもついていけなかった。

これだけの「労働」「性」「経済」についてのエピソードをノイジーに羅列しつつも、やんわりとひとつのプロットがたっている具合は、観ていて創作意欲がかきたてられるばかりだ。

日本版のDVDのジャケットは、たしか、この作品がR指定になっていないことを考えるとかなり挑戦的。ヨーロッパではたしかR-15などになっていたはず。というか、この「勝手に逃げろ/人生」は1979年の製作だが、日本で配給がついたのは90年代になってからだったらしい。10年も経てば倫理感も変わるのでそこらへんが理由だっただけかもしれないが。

「バルスーズ」「パッション」で初々しい存在感を放っていたイザベル・ユペールが大切な役所で出演していて興味深い。彼女が登場したあたりからこの映画のテンポも上がり、作品にリズムを与えている。

製作は50数作品を製作し、「マルホランド・ドライブ」ではプロデューサーを務めたアラン・サルド。

ゴダール作品は年代毎に様々あるが、この「勝手に逃げろ/人生」は個人的に一番好きな作品。

カンヌ SHORT5

カンヌ SHORT5カンヌ SHORT5 Cannes Short5
FAST FILM 2003年/オーストリア・ルクセンブルグ/14分 
監督:ヴァージル・ウィドリッチ
Do you hava the shine? 2002年/スウェーデン・フランス/6分 
監督:ヨハン・ターフィル
field 2001年/イギリス/10分 監督:デュアン・ホプキンス
Play with me 2002年/オランダ/13分 監督:エッサー:ロッツ
Janne da Arc on the Night bus 2003年/ハンガリー/25分 
監督:コーネル・ムンドルッツォ
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カンヌ映画祭の短編部門で好評だった作品5本を集めたオムニパス映画。

作っていないのかもしれないが、日本にはオーストリアやルクセンブルグ、オランダ、ハンガリーなどからの映画はなかなか入ってこないので貴重な映像体験だった。特にハンガリー映画は何年か前にハンガリー映画祭で観た、タル・ベーラ監督の「ヴェルクマイスター・ハーモニー」や「サタン・タンゴ」以来になる。

地球広しといえど案外同じような国の人が同じような人のために作った映画しか観ていないのかもしれない、という無自覚な価値観の狭さを考えさせられる。こういうことは外国に行ったときに思うことなのかもしれないが、この短編集はそんな気持ちを想いおこさせる。

より多くの人が映画館に脚をはこんび、かつ、満足感を持って帰れるような作品を作ろうとすると、結果どの映画も似てくる。そんな当たり前のことを気づかせてくれる。

5作品とも尺、テーマともにバラエティーに富んでいるので比較はできないが、カンヌなので総じてエンタテイメントというよりブラックであったりユニークであることに主眼がおかれているように思う。

5本目のハンガリーの「Janne da Arc on the Night bus 」には特にやられてしまった。


「カンヌ SHORT5」公式サイト
http://www.uplink.co.jp/cannes_short5/

L.S.D. LOVE,SEX&DRUG

L.S.D. LOVE,SEX&DRUGL.S.D. LOVE,SEX&DRUG
1996年/フランス・ポルトガル・オランダ/90分
監督・脚本:ヨランド・ゾーベルマン
撮影: ドニ・ルノワール
出演:エロディ・ブシェーズ、ベアトリス・ダル、ロシュディ・ゼム、ジュリー・バタイユ、リシャール・クルセ、リュック・ラヴァンディエ、エマニュエル・サリンジャー、他
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ジャン=ジャック・ベネックス監督の「ベティブルー」の演技があまりにも印象的なベアトリス・ダル出演作ということで鑑賞。

数年前に諏訪敦彦監督の「H Story」に出演していた彼女は当たり前ですが、いつのまにか立派な熟女になっていてすこぶる驚いたが、ちょうど初主演の「ベティブルー」と比較的最近の「H Story」の間の時期に製作された作品ということでも興味を惹いた。

この「L.S.D. LOVE,SEX&DRUG」というタイトルからはLSD食べてぶっ飛びながらSEXしていそうな映画を想像するが、実際そういうシーンもないわけではないが、以外にもなんというか「人生のやるせなさ」のようなものを描いた真面目な作品。

そういった当時のフランスのストリートのクラブシーンが生々しく臨場感をもって描かれており、ケミカル・ブラザーズのイントロでアツくなっているハコの様子などは観ているこっちまでも、90年代初頭の日本でのクラブシーンを思い出しアツくなってしまった。

関係はないが、90年代に流行したクラブカルチャーは、今となっては、ちょうどサッカーのUEFAチャンピオンシップなどと同じように、バドワイザーやハイネケンなどの洋酒メーカーと商業的に結びつき興行性に埋没してしまったようだ。最近は、ある種「公共性」をもった音楽・空間としてレイヴに、消費されるだけでない新しいモノが生まれる場として熱い注目があつまっているのもある意味必然なのかもしれない。

また、主演のエロディ・ブシェーズは「最後のロリータアイドル?」として注目されている女優さんのよう。もともと黒目がちな彼女だが、映画前半のクラブに行くシーンでLSDか何かを食べたあとという設定の「ガッチリ開ききった瞳孔」が印象的。。

キングス&クイーン

キングス&クイーンキングス&クイーン
Rois et reine
2004年/フランス/150分
監督・脚本:アルノー・デプレシャン
脚本:ロジェ・ボーボ、音楽:グレゴワール・エッツェル
出演:エマニュエル・ドゥヴォス、マチュー・アマルリック、カトリーヌ・ドヌーヴ、モーリス・ガレル、ナタリー・ブトゥフー、ジャン=ポール・ルシヨン、カトリーヌ・ルヴェル、マガリ・ヴォック、他
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「二十歳の死」「魂を救え!」「そして僕は恋をする」「エスター・カーン」などのアルノー・デプレシャン監督の最新作。

この「キングス&クイーン」の前の作品「エスター・カーン」は単なる大規模映画となっており、アルノー・デプレシャン監督の持ち味が発揮されていなくてとってもがっかりしましたが、今回はそうでないことを祈りつつ期待して鑑賞。

で、こんかいは前作以前の作風に戻り一安心。デプレシャン作品の常連のエマニュエル・ドゥヴォスが主演。フィリップ・ガレルの父親・モーリス・ガレルも出演している。

役者陣だけでも、フランスの小規模映画=自主映画的な臭いのプンプンする映画だが、長めの尺のなかで、込み入ったストーリーを登場人物の心理描写を細かくえがきながら表現する、というデプレシャン監督の持ち味が生かされていて見ごたえがある。

それと、題名でもわかる通り「二十歳の死」で主人公だった若者も今では35歳くらいの設定となっており、デプレシャン映画が好きな人にはそういった変化も好印象となるはず。


「キングス&クイーン」公式サイト
http://www.kingsqueen.com/

ぼくを葬る

ぼくを葬るぼくを葬る
Le Temps Qui Reste Time to Leave
2005年/フランス/81分/R-15
監督・脚本:フランソワ・オゾン、撮影:ジャンヌ・ラポワリー
出演:メルヴィル・プポー、ジャンヌ・モロー、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ダニエル・デュヴァル、マリー・リヴィエール、クリスチャン・センゲワルト、ルイーズ=アン・ヒッポー、アンリ・ドゥ・ロルム、ウォルター・パガノ、他
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この「ぼくを葬る」は「クリミナル・ラバーズ」「まぼろし」「8人の女達」などのフランソワ・オゾン監督の「ふたりの5つの分かれ路」に続く最新作。

個人的には「ふたりの5つの分かれ路」でたっぷり嫌気がさしていたが、この感情にも嫌気がさしむきになって鑑賞。

映画のテーマとしては「不治の病」「同性愛」「代理父」などのディープなネタが絡み合う。

個人的には母親役?のマリー・リヴィエールをエリック・ロメールの「緑の光線」のデルフィーヌ以来初めて見かけて驚いた。もちろん彼女も歳は重ねてはいたが、20年経っても変わらない人柄のようなものを再確認できたのは映画好きとして嬉しいかぎり。

ジャンヌ・モローの見事なおばあちゃんっぷりにも驚いたが、フランソワ・トリュフォー監督の「ジュリーとジム」の頃の彼女が懐かしくもあり、複雑な気持ち。

映画事態は予算なども含めシンプルな作りで、日本の映画でも製作可能な本のようにも感じる。


「ぼくを葬る」公式サイト
http://www.bokuoku.jp/
「フランソワ・オゾン」公式サイト
http://www.francois-ozon.com/

永遠の語らい

永遠の語らい永遠の語らい
Um Film Falado
2003年/イタリア・ポルトガル・フランス/95分
監督・脚本:マノエル・デ・オリヴェイラ
撮影:エマニュエル・マシュエル
出演:カトリーヌ・ドヌーブ、ジョン・マルコビッチ、レオノール・シルヴェイラ、フィリッパ・ド・アルメイダ、ステファニア・サンドレッリ、イレーネ・パパス、ルイス・ミゲル・シントラ、他
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とりあえずラストカットにびっくりさせられる映画。それとシンプルなストーリー展開のなかで、というかロードムービーに近い感じもするが、当時たしか95歳のオリヴェイラ監督はさりげなく、かつ大胆なことをやってのける。

観る前は「ギリシャ神話について」など、教養あふれた調和の範囲内の人間ドラマで良い意味で安心して観ていられるような作品を勝手に想像していたけれどそうではなかった。

遅い展開の中で映し出される映像に複線を想像しながら観ていたが、なかなか絡み合わない断片がようやくつながり始めた、と感じるようになってからはあっというまにラストになってしまった。というような感じ。単に引っ張るには1時間は長すぎる。

映画のテイストは地味といえばそうだが、豪華客船の船長であるジョン・マルコビッチを囲んでの食事のシーンなど、今までの映画の中でありえそうでいてなかったような出来事が行われている。

この映画の倫理観を考えると発するメッセージの重大性は測り知れない。

隠された記憶

隠された記憶隠された記憶
Cache / Hidden
2005年/フランス・オーストリア・ドイツ・イタリア/119分
監督・脚本:ミヒャエル・ハネケ
製作総指揮:マルガレート・メネゴス、ミヒャエル・カッツ
出演:ダニエル・オートゥイユ、ジュリエット・ビノシュ、モーリス・ベニシュー、アニー・ジラルド、ベルナール・ル・コク、ワリッド・アフキ、レスター・マクドンスキ、ダニエル・デュヴァル、ナタリー・リシャール、ドゥニ・ポダリデス、他
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「ピアニスト」「ファニーゲーム」などの、人間のなんともいえないところにメスを入れる印象のあるオーストリア生まれのドイツ育ちのミヒャエル・ハネケ監督の最新作。日本の公開はフランス映画祭やユーロスペースなどで行われた模様。

ハネケ監督作品はひょんなことから鑑賞した「ファニーゲーム」が印象的で、人間の生活の中で「よりによってどうしてそこを」というような場所、感情をシンプルかつ冷静に描く魅力がある作品。デビット・リンチ監督の描く決して晴れることのない悪夢などを思い起こさせる。

この「隠された記憶」はそんな期待をして観た割りには珍しくその期待を遥かに凌ぐ出来ですっかり興奮してしまった。「人間ドラマ」というより「サスペンス」というジャンルにおさまってしまうところが若干物足りなさを感じるものの、とりあえず2007年に観た映画ではナンバーワンになる予感が高い。

まず、お金やアクションや台詞、プロットに頼らずにまとまった時間の映像を魅せる技術に感服。

具体的には観ればわかることだが、撮りたい物を撮りたいように撮るというよりも、人が画面を見続けるために不可欠なことを理解した上で映像は積み上げられている。

配給がつくような映画はどんな映画もそこそこ大人が考えて作ってはいるが、演出以前の「見ること」についての考察が抜本的だ。

「ピアニスト」のときはあまり感じなかったが「解かりたいけれど、あと少しで解かりそう」といった感情を120分持続できた映画は自分の経験では0.1%くらい、本数で言うと1000本に1本しか観ることができない傑作。

ミヒャエル・ハネケ「隠された記憶」公式サイト
http://www.kioku-jp.com/

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ヒロシマモナムール/二十四時間の情事

ヒロシマモナムール/二十四時間の情事ヒロシマモナムール/二十四時間の情事
Hiroshima mon Amour
1959年/フランス・日本/91分
監督:アラン・レネ
原作・脚本:マルグリット・デュラス
撮影:サッシャ・ヴィエルニー、高橋通夫
出演:エマニュエル・リヴァ、岡田英次、ベルナール・フレッソン、アナトール・ドーマン、他
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「夜と霧」「去年マリエンバートで」の間に作られたセーヌ左岸派と呼ばれるアラン・レネ監督作品。

初見は10年程前でしたが、今回見返してみると改めてアラン・レネ監督の野心を感じないわけにはいかない。同じフランスの監督ならば「死刑台のエレベーター」「鬼火」などのルイ・マル監督も「ブラック・ムーン」という寓話的な実験映画を撮っているが、レネ監督は「時間と記憶」というある種哲学的なテーマで3本の映画を監督しておりその執着心というか切り口は、寓話=ファンタジーものと比べるとパンチが効いていてかつ斬新。

脚本は「ラマン」などのマルグリット・デュラス氏だが、DVDのプロダクションノートによると、レネ監督が当時新進気鋭の小説家に脚本の執筆を依頼した模様。その後、この作品をきっかけにデュラス氏は映画の世界に足を踏み入れた。

ヒロシマという場所から戦争の記憶、そして異人との情事へと連鎖していく様はシンプルな映像で簡潔に語られており、文字情報だけでは伝わりにくい部分を継続した時間を伴なってこそ現れる効果が独特で興味深い、ある意味とても映画的な映画=純映画。

台本を読んで画が浮かび、実際の人間が演じることによるリアリティーを魅せようとする映像の退屈さを思い出すと、この「ヒロシマモナムール/二十四時間の情事」の完成度の高さは驚愕に値する。純粋な意味での映画の価値は予算ではないこと痛感させられる小さな大作。

ふたりの5つの分かれ路

ふたりの5つの分かれ路ふたりの5つの分かれ路
5X2 cinq fois deux
2004年/フランス/90分
監督・脚本:フランソワ・オゾン
撮影:ヨリック・ルソー
出演:ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ、ステファン・フレイス、ジェラルディン・ペラス、フランソワーズ・ファビアン、アントワーヌ・シャピー、他
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「8人の女たち」で瞬く間に世界で注目を浴びることとなったフランソワ・オゾン監督の新作。

以前は「クリミナルラヴァーズ」や「焼け石に水」やその他の短編などでブラックな切れ味を披露していたオゾン監督ですが、最近は巨匠を目指して映画作りに励んでいるのだろうか。

「8人の女たち」も監督というよりは役者が凄い、という印象だし、「まぼろし」もシャーロット・ランプリングがいい味を出しているだけの気がしますが、オゾン監督の作品はちょうど先のリヴェット監督の「Mの物語」とは逆に、題名の段階から「やるぞ、やるぞ」という気負いが聴こえてきそうな作風。

構造的にはガス・ヴァン・サント監督の「エレファント」と同じ。ただその場合、みどころなる過去と未来の時間軸がねじれるようなオチとなる瞬間もなく、自分にとっては、シンプルだけど大胆な演出、というのではなく単に不満感が残る演出だった。

こういうオチだったら最悪だなぁ、と思いながら観ていたら、珍しく悪い予感が当たってしまった映画。

Mの物語

Mの物語Mの物語
L`Histoire de Marie et Julien
2003年/フランス/150分/R-15
監督・脚本:ジャック・リヴェット
撮影:ウィリアム・ルブチャンスキー
出演:エマニュエル・ベアール、イエジー・ラジヴィオヴィッチ、アンヌ・ブロシェ、オリヴィエ・クリュヴェイエ、ニコール・ガルシア、他
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ゴダールとともにフランスのヌーヴェルヴァーグを代表するジャック・リヴェット監督作品。

この映画もツタヤの「エロティックコーナー」に置いてあったが、ポルノグラフィックが売りのそれではなく「映画とは何か?」というプリミティブな部分の表現に野心を感じる、稀な映画だった。

以前劇場で観た「修道女」もそうだったが、この映画の後半の、それこそ、目に見えないスピード感には驚いてしまった。

中原俊監督の田口ランディ氏が原作の「コンセント」も同様の感想を持ったが、リヴェットの映画はゴダールなどとは違い「そんな大胆なコトはしませんよ」的な雰囲気を映像から醸し出しながら、後半にいきなりガラリと転換する。そんな印象を持ってしまう魅力的な映画。

ネタバレになりますが、ネタ的にはソラリスのそれと似ているしハリウッドものでは「シックスセンス」と似ている気がしますが、「ただのエロものか?」とゆるゆるの緊張感で観た私にはよけいにカウンターで入ってしまった、という感じだろうか。

もう80歳になるリヴェット監督ですが決して侮れません。「サラバンド」のベルイマン監督とは別の意味で。

軽蔑

軽蔑(デジタルニューマスター版)軽蔑(デジタルニューマスター版)
Le Mepris
1963年/フランス・イタリア・アメリカ/102分
監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
原作:アルベルト・モラヴィア
撮影:ラウル・クタール
出演:ミシェル・ピッコリ、ブリジット・バルドー、ジャック・パランス、フリッツ・ラング、他
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観たようなつもりになっていて意外にも観ていなかったゴダールの「軽蔑」を初めて鑑賞。

DVDの特典映像を見ると、1962年頃で100万ドルというゴダールの映画では大きな予算を投入して製作された映画のよう。今のレートでは1億円強だと思いますが、当時では多く3憶くらいということか? この金額はそんなに大規模なのだろうか。

この前観た「パッション」と比べるならば、「パッション」では製作費がないから撮影を続行できない、というような状態も語られていましたが、「軽蔑」では「お金を出した製作者が内容に注文をつける」状態が語られている。

製作年をくらべても、「勝手にしやがれ」以降、比較的お金はあつめられてはいたが、製作者との対立はあった、という状況から、非商業映画を経験してお金そのものを集めることが困難になってしまった状況がうかがい知れる。

製作者との対立から、接触すること事態が困難になってしまったようだ。作中でも「軽蔑」ではジャック・パランス演じる製作者が本編に登場しているが、「パッション」では、確か、資金調達を断られた、という電話や伝聞の形で表現されていた。

それはそうと、こういう、ブリジット・バルドーが意味もなく裸で寝ていたり、物語というかプロットはある程度はっきりたもっていて、かつ、ノイジーなやりとりやカットも含まれているような、ある意味いろいろバランスがとれているようなゴダール映画を好む人ももちろんいるとは思うが、個人的にはどこをとっても中途半端、というか歯切れがよくないような印象も持ってしまう。プロット的にもネチネチとした葛藤は好みではない。

ゴダールが体裁を取り繕う姿はあまり似合わない。ゴダールは突っ走っている時の方が、持ち味を発揮できているような気もする。ただそうすると、興行成績に現れるように、それに共感する人はほとんどいないので資金調達など、映画を成立させるための要素が欠けてしまうのはある意味悲劇だ。現実はそういうものなのだろうが。

クリシーの静かな日々

クリシーの静かな日々〈ヘア無修正版〉クリシーの静かな日々〈ヘア無修正版〉
Quiet Days in Clichy / Giorni felici a Clichy
Les Jours heureux de Clichy
1990年/フランス・イタリア・西ドイツ/104分
監督・脚本:クロード・シャブロル
原作:ヘンリー・ミラー
撮影:ジャン・ラビエ
出演:アンドリュー・マッカーシー、ナイジェル・ヘイヴァース、ステファニー・コッタ、 バルバラ・デ・ロッシ、マリオ・アドルフ、他
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「いとこ同志」などのヌーヴェルヴァーグのクロード・シャブロル監督作品未見の新作! しかも、原作は「北回帰線」「南回帰線」などのヘンリー・ミラー。がっつりと喰いついて観ることに。

「ハリウッドのキャストとフランス人監督の異色の組み合わせ」などと謳われていましたが、どうなんだろう。プロットの組み立てに関しては成功しているとは言いにくいように思う。雑多なカットが多く解かりにくい気がする。

しかし、饗宴が繰り返されるセットはかなり作り込んであって、大写しにならない、エキストラ的な人々もちゃんと全裸になっており、特にロングショットは圧巻の一言。

フラッシュバック的に語り口による時間の操作も行われているが、なんか浮いてしまっている感じもした。

この映画にエロスを期待しすぎてしまった感はあるが、1920年代のパリの「こんな感じであっただろう」様子が動画で観れたのはよかった。

 

夜と霧

夜と霧夜と霧
Nuit et Brouillard
1955年/フランス/32分
監督:アラン・レネ
原作・脚本:ジャン・ケイヨール
撮影:ギスラン・クロケ、サッシャ・ヴィエルニー
音楽:ハンス・アイスラー
助監督:クリス・マイケル、他
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久々に観る凄い映像だった。

フランスでの公開は1955年だったようですが、日本ではたしか15年くらい経ってからだったはず。

マイケル・ウィンターボトム監督の「ウェルカム・トゥ・サラエボ」などもそうですが、こんなに生々しい映像は誰がどうやって集めたのか。その集めた映像をどうやって手に入れたのかが、まず気になる。

それと、ナチのユダヤ人虐殺は有名、というか、日本でも広く知られることだが、日本人の中国人の虐殺はどれくらいの人がその意識、認識をもっているのだろう。日本の国、自体がいつものように国内外に対して責任を取らない態度でいるために、そこに住む日本人も無知なまま、みっともない人生を送っている人も多いはずだ。

大量に虐殺しているはずなので、映像のソースも必ずどこかにあるはずだが、不思議と映画化されていないような気がする。無駄に情報があふれる中、未だに少なくともこの「夜と霧」のように観ようと思って手に取れる状態にはなっていない。

こんなことでは広島と長崎に原爆を投下したことを未だに知らないアメリカ人を馬鹿に出来ないどころか、悪い意味で全く同等だ。

作品的には「去年マリエンバートで」「24時間の情事(ヒロシマ・モナムール)」などで知られるフランスのアラン・レネの監督作品ですが、フィクションとドキュメンタリーというジャンルをまたいだ作品を発表しながら、同じ「記憶」をテーマとした作品に仕上がっている点は特筆に値する。

そもそも製作サイドは集客が見込めるものを作るのだとは思いますが、昨今の日本では、甘ったるいヒューマニズムで観る者の思考を停止させるような右翼映画ばかり公開されて、観る人は不服を感じないのだろうか。


幸福

幸福幸福
Le Bonheur
1964年/フランス/80分/R-18
監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
撮影:ジャン・ラビエ、クロード・ボーソレイユ
出演:ジャン=クロード・ドルオ、クレール・ドルオ、マリー=フランス・ボワイエ、他
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アニエス・ヴァルタ監督作品は意外と初見だったのですが、結果的にいろいろと示唆に富んだ映画だった。

まず、シーンとシーンのつなぎのカットでパステル調のカラーが入るのはアニエス・ヴァルタ監督の夫である、ジャック・ドゥミ監督の「シェルブールの雨傘」を思い出させた。夫婦そろってそんなことをするなんて、きっといつかどこかで意気投合したに違いない。

この「幸福」は1965年のベネチア映画祭とルイドゥリックなどで受賞している作品だが、ストーリーは「妻子に恵まれた内装業を営む男が郵便局の受付嬢と浮気をして、その事実を妻に打ち明ける」といった、どうということのない話。

でも、そういえばそうではあるが、日本では案外「ありそうでない」感じの映画なのかもしれない。予算はそれほどかからないとは思うが、とりわけ「映画にしよう」とまでは思わないテーマの作品のような気がする。

でも、退屈だった瞬間はほとんどなく、素人の役者を多く起用し、スタジオ撮りをしない、ヌーヴェルヴァーグ=シネマ・ヴェリテ=ドキュメンタリー的フィクションは意外と自分の肌に合う。

ただ「自殺」についての言及があまりに淡白だったことは気にはなりますが、そこに焦点をあてると別の後味の映画になるので、監督の意向なのでしょう。

また、ほとんど全編をモーツアルトなどのクラシック音楽が流れていてあつかましい気も少しする。でも「幸福」という、ある意味敷居の高い、シンプルな題の映画の割には鑑賞後の満足度の高い作品だった。

アニエス・ヴァルタ監督は元写真家だけあってか、フレーミングや光、特に自然光に対する意識の高さも感じられる作品。

アンダルシアの犬

アンダルシアの犬アンダルシアの犬
Un chien andalou
1928年/フランス/17分
監督・脚本:ルイス・ブニュエル
脚本:サルヴァドール・ダリ
出演:ピエール・バチェフ、シモーヌ・マルイユ、ハイメ・ミラビエス、サルヴァドール・ダリ、ルイス・ブニュエル、他
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大学1年の時にフランス文学の演習の授業で観たのが最初でしたが、「ソナチネ」に引き続き、13年ぶりの鑑賞。

その授業ではルネ・クレールの「幕間」1924(Entr'acte)やマン・レイの「ひとで」1928(L'Étoile de Mer)など、シュールレアリズムの映像作品を鑑賞したのですが、当時はただ「斬新だ」と思ったのですが、今観てもわからないことはそのままで、映画をたくさん観れば解からないことも解かるわけではない、ということを再確認。

この「アンダルシアの犬」は公開?発表?当時大成功を収めたようですが、80年前の当時の時勢はなかなか想像が難しい。いっそのこと500年くらい前だったら「神の存在が信じられていた」など距離感をもって捉えることはできそうなのですが。

今観ると、所謂「自主映画」的な雰囲気で作品作りにのめり込んでいたんだろうということが画から伝わってくるような気がします。

インド夜想曲

インド夜想曲インド夜想曲
Nocturne Indien
1988年/フランス/110分
監督・脚本:アラン・コルノー
原作:アントニオ・タブッキ
音楽:フランツ・シューベルト
出演:ジャン=ユーグ・アングラード、クレマンティーヌ・セラリエ、オットー・タウシグ、ディプティ・タヴェ、パメラ・スー、他
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たしか、ロードショーは渋谷文化村「ル・シネマ」で、記録的なロングランだったような気がする。

まず驚いたのは「ベティ・ブルー」「サブウェイ」「青い夢の女」などのジャン=ユーグ・アングラードが英語ばかりを話しているということ。そういう設定ではあるのですが彼の英語はたどたどしい。ポルトガル語?なども駆使していましたが、語りがたどだどしく、結果的に、数分間しかないフランス語を話すシーンがすこぶる流暢に聴こえます。イキイキとしています。「水を得た魚」とはこのことを言うのかもしれません。

この「インド夜想曲」を観ていると、あたかも今インドにいるような「時間の流れ」を体感できる。

ある意味サスペンス要素が入った少し風変わりなロードムービー。

太陽

太陽太陽
The Sun
2005年/ロシア・フランス・イタリア・スイス/115分
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
脚本:ユーリー・アラボフ
音楽:アンドレイ・シグレ
出演:イッセー尾形、ロバート・ドーソン、佐野史郎、桃井かおり、つじしんめい、他<
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映画『太陽』オフィシャルブック映画『太陽』オフィシャルブック
アレクサンドル ソクーロフ Aleksander Sokurov

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単館系では興行収入が好調らしい、アレクサンドル・ソクーロフ監督の最新映画「太陽」をポスターのデザインやイッセー尾形がきになり銀座シネパトスで鑑賞。日曜の最終回で観たのですが、お客の入りは1/3程度。日曜の20時~の回としては混んでいる方だと思う。

結果的には「ソクーロフには裏切られたがイッセー尾形は裏切らなかった」といった感じ。

「二重被爆」もそうだったが、天皇=被害者のような図式で天皇に同情的に描かれていて、戦後責任の問題など、新たな議論が生まれない、お涙ちょうだい、な映画だった。被害者=主人公に同情しても、僕らの未来は明るくはなりえない。作り手はお客が気持ちよくなるようにだけ映画を作るのではなく、新たな議論、未来につながる作品作りを目指していただきたい。自分自身もそうですが。

とはいえ、これまで、姿をもって語ること、自体がタブーとされてきた現人神、ヒロヒトばかりが画面に映っていて、所謂「人間宣言」がどのように昭和天皇の口から語られたのか、など、ソクーロフ監督の演出はあるにせよ、確かな役者の演技で具体的に観れたことは貴重だ。

イッセー尾形氏は市川準監督の「トニー滝谷」でも難しい役どころに挑戦し、成功していましたが、今回は果敢にも「昭和天皇」に挑戦し、見事にやり遂げている。彼以外、ヒロヒトを演じきれる役者はいない。彼の演技力でこの映画は成り立っている感もある。その演技を観るだけでも劇場まで脚を運ぶ価値はある。

この作品、サンクトペテルブルグ映画祭では受賞できたようですが、ベルリン映画祭は逃していました。日本での配給先がなかなか決まらなかったようですが、幸か不幸か、911以降、現在のようにナチュラルに右翼化した日本国内ではこの映画は温かく向い入れられるはずだ。


映画「太陽」公式サイト
http://taiyo-movie.com/


それはそうと、このロシア映画「太陽」の興行収益は好調ですが、「ロシア語専門書店、破産」と聞くと、胸が痛みます。
■8月22日「Yahoo! ニュース」
ナウカ書店 老舗のロシア語専門書店が破産 神田神保町

ラ・ジュテ

ラ・ジュテ / サン・ソレイユラ・ジュテ
La Jetee
1962年/フランス/29分
監督・脚本・撮影:クリス・マイケル
製作:アナトール・ドーマン
撮影:ジャン・チアボー
音楽:トレヴァ・ダンカン
出演:エレーヌ・シャトラン、ジャック・ルドー、ダフォ・アニシ、他
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かれこれ15年くらい名前だけは知っていたクリス・マイケル作品をほんとにようやく鑑賞。

フォト・ロマンとのことですが、当然観終えても動画ではなく静止画ばかりが思い出されます。

個人的にフランス語の音の響きが好きなので、ナレーションの言葉は音楽のように聴こえて心地よい。

ただ、フィルムのコストのことなどを考えると、動画でやる必然性はあるのだろうか? という問いを考えざる終えない。

現在ならWebでもよいと思うが紙媒体で十分表現できる内容なのではないかと思ってしまう。

本編の写真は本人が写真家でもあるように、画角、光、ともにすばらしい画の連続だったのは素晴らしかったのですが。

あと、テリー・ギリアム監督が「12モンキーズ」を撮るためのインスピレーションを与えた作品、とあるが、解説がないと自分には解りませぬ。

このDVDには「ラ・ジュテ 」と「サン・ソレイユ」の2編が収録されている。「ラ・ジュテ 」自体の尺は30分程なので、すぐに鑑賞できて観やすい作品。

ピアニスト

ピアニストピアニスト
La Pianiste
2001年/フランス・オーストリア/132分/R-15
監督・脚本:ミヒャエル・ハネケ
原作:エルフリーデ・イェリネク、撮影:クリスティアン・ベアガー
出演:イザベル・ユペール、ブノワ・マジメル、アニー・ジラルド、アンナ・シガレヴィッチ、スザンヌ・ロタール、他
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久々に観た難解な映画。好きか嫌いか問われれば、好きな映画。

映画自体は「恋愛映画」の体裁をとっているが、それだけにとどまらない格式の高さと緊張感を併せ持っているように感じさせる。それは、レオス・カラックス監督作品群のように「迸る情熱」といった感じではなく「大人の、闇の部分」を感じさせる映画。

原作者のエルフリーデ・イェリネク氏はノーベル文学賞やカンヌでの審査員特別グランプリなど芸術賞を総なめにしているが、自国、オーストリアでは批評家には受けがいいが、一般には受け入れられていない作家のよう。

ミヒャエル・ハネケ監督作品は、最近、2005年にカンヌ映画祭でパルムドールを受賞した「隠された記憶」が公開されていたようだが「ファニーゲーム」の底知れぬブラック感が印象的な監督。

軽はずみで文句をつけにくい映画を撮っている。論理的、というか、一定の不可解感をかんじさせながらも、一貫した映像を積み上げている稀な監督。

当然個人差はあるが、自分にとっては「原作を読んでみたくなった」という意味で映画として成功していると思う。

でも、この作品原作はドイツ語のはずだし、監督もオーストリア人のはずなのに、何故イザベル・ユペール主演のフランス語映画になっているのだろう。

と調べてみるとヴェルナー・シュローター監督の「マリーナ」(1990年)という作品では、エルフリーデ・イェリネク氏は脚本で参加し、イザベル・ユペールが主演していた。イェリネク&ユペールコンビはここで誕生したのかもしれない。ちなみに「マリーナ」は「ママと娼婦」などのジャン・ユスターシュ監督に捧げられている。


■参考
「ノーベル文学賞イェリネク 挑発に満ちた難解さ 寺尾 格」
神奈川新聞(共同通信) 2004年10月15日

ジョルジュ・バタイユ ママン

ジョルジュ・バタイユ ママンジョルジュ・バタイユ ママン Ma Mère
2004年/フランス/110分/R-18
監督・脚本:クリストフ・オノレ
原作:ジョルジュ・バタイユ
撮影:エレーヌ・ルバール
出演:イザベル・ユペール、ルイ・ガレル、エマ・ドゥ・コーヌ、他
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ふと「ジョルジュ・バタイユ・・・」というタイトルを見つけて即劇場へ脚を運ぶ。

新宿高島屋のテアトル・タイムズスクエアで平日21時過ぎからのレイトショーで鑑賞。2週間のみのロードショーからか、平日、この原作に関わらず1/3位のお客の入りだった。

もっと女性が多いかと思ったが意外と、というか当然、男の年配者が多かった。若い女性は思ったより少なかったが、一人で観にきている人はやはり多かった。

この作品が18禁でないような作品ならば、渋谷ル・シネマなどでパトリス・ルコント作品のような扱いで上映できたかもしれないが、六本木シネ・ヴィヴァン亡き今はここでの上映になったということか。

映画を観るとジャン=リュック・ゴダールの「パッション」ベルトラン・ブリエの「バルスーズ」などでうら若き姿で動き回っていた、最近ではフランソワ・オゾンの「8人の女たち」などのイザベル・ユペールが、ある意味空前の灯火の女性になっていた。細い身体で白いシャツにデニムのブーツカットといういでたちは、特にロングショットでは実際の年齢を感じさせない。

相手役の青いツバメではなく、息子役には「ギターはもう聞こえない」「ニコ・イコン」「白と黒の恋人たち」「自由、夜」」などのフィリップ・ガレル監督に姿かたちがそっくりのルイ・ガレル。映画を観るまで知らなかった。ニコとの子供かどうかはわかりませんが、原作はジョルジュ・バタイユ、主演はゴダールの「中国女」などのイザベル・ユペール、その相手役はフィリップ・ガレルの息子、ルイ・ガレル、となるとおのずと作品のテイストは決まってくる。

自分もジョルジュ・バタイユに映画を一本捧げている者として観ないわけにはいかない。

映画の内容は観てのお楽しみですが、砂丘や労働の匂のしない画が印象的。

最初の街の真上からの俯瞰のショットはゴダールの何かの作品で観たショットに近い。ラストショットはジャン・ユスターシュの「ママと娼婦」を思い出させるふしがあり、賛否両論か。

音楽はミケランジェロ・アントニオーニの「欲望」を思い出させる使い方で、とくにタートルズの「ハッピー・トゥギャザー」は否応なく印象的でしたが、もう2006年なのに1960年代の雰囲気がするのは原作や音楽だけが理由ではない。「今」バタイユ小説を映画化する意味とは。

■「ジョルジュ・バタイユ ママン」公式サイト
http://www.at-e.co.jp/maman/


PS
21時頃、テアトルタイムズスクエア横にあるサザンテラスの喫煙所でタバコを吸っていたら、両隣りのベンチでは目の前に広がる夜景を前にカップルがイチャイチャしていて、ガラス越しに見えてしまったのですが、一方のカップル(サラリーマン風)の男は彼女の乳をもんでいた。「なんだかな~」と思いつつ、映画鑑賞後、新宿駅に向かってあるいていると、線路沿いに並べてあるベンチにはそれぞれまたしてもカップルの姿が。

そこは普通に人通りはあるのですが、その中の2組程はベンチの上で男女が向かい合ったまま、股を広げて抱き合っているではありませんか。しかも、そのうちの一組の女性はタイトスカートを捲し上げてフニャフニャしていたのです。

これって公共の場での「ペッティング」?→いつからこんなモラルの世の中になったんだろう→自分はとりのこされている? 人影に隠れてナニかしているんだったらわからんのでもないのですが・・・。

こんな出来事も「映画館に脚を運ぶ」というイベントに含まれた価値なのかなぁ、と思う今日この頃。3~4回もルイ・ガレルの射精シーンを観たばかりだから、そういったことに敏感になっていたわけではないはず。

GO! GO! L.A.

GO! GO! L.A. デラックス版GO! GO! L.A. デラックス版
L.A. Without a Map
1998年/イギリス・フランス・フィンランド・アメリカ/107分
監督・脚本:ミカ・カウリスマキ
原作・脚本:リチャード・レイナー
撮影:ミシェル・アマテュー
出演:デビッド・テナント、ヴィネッサ・ショウ、ヴィンセント・ギャロ、ジュリー・デルピー、ジョニー・デップ、他
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ついに観れました。たしか5年くらい前にユーロスペースなどでアキ・カウリスマキ特集などをやっていた時から、ミカ・カウリスマキの作品も観たいと思っていたのですが、何故か延び延びになってしまっていました。

イギリス、フィンランド、フランス、アメリカといった国々のスタッフ・キャストらによる国際色豊かな青春ラブコメディー。

チラシ(ジャケット)ではヴィンセント・ギャロとジェリー・デルピーが大写しになっていたのでもっと出演時間が長いのかと思っていましたが、ジョニー・デップ等含めたベテランが脇をかため、それ程国際的には知名度のない2人が主演でした。それぞれの役者はいい味を出していてうまく融合している感が強かった。

アキもそうかもしれませんが、おそらくミカは現場でも淡々と演出を付けていそうで、日本では黒沢清監督などもそうですが、変な気負い、のような空気ではなく、真剣なかつ穏やか雰囲気が画面から伝わってきて心地よい映画でした。

あまりこいうことはないはずなのですが、われしらず笑い声がもれてしまっていたようです。


■ミカ・カウリスマキ公式サイト
http://mikakaurismaki.com/

パッション

パッション デジタルニューマスター版パッション デジタルニューマスター版
Passion
1982年/スイス・フランス/88分
監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
撮影:ラウール・クタール
出演:イザベル・ユペール 、ハンナ・シグラ 、イエジー・ラジヴィオヴィッチ 、ミリアム・ルーセル 、ミシェル・ピッコリ、他
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「勝手に逃げろ/人生」に続く、80年代ゴダールの商業映画復帰第2作目といわれる作品。

個人的には最近は「8人の女たち」などで活躍しているうら若きイザベル・ユペールが初々しい演技を披露しているところで単純に心奪われてしまいました。

作品には明確なストーリーはなく、一連のゴダール作品にみられるような、「答え」の用意されていない抽象的な「問い」が起てられるが、特にチラシやパッケージに使われているカットに代表されるような、絵画的な美しさのある画が積み上げられているので、それだけでつい見続けてしまう。

この作品、いろんな解釈は可能だと思うのですが、能動的に感じるところがあれば、観る価値があったのだと思います。

フレンチなしあわせのみつけ方

フレンチなしあわせのみつけ方フレンチなしあわせのみつけ方
ils se marierent et eurent beaucoup d'enfants
2004年/フランス/100分/R-15
監督・脚本・出演:イヴァン・アタル
撮影:レミー・シェヴラン
出演:シャルロット・ゲンズブール、エマニュエル・セニエ、アヌーク・エーメ、クロード・ベリ、他
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「生意気シャルロット」等でフレンチロリータとしてアイドル的存在だったシャルロット・ゲンズブール主演の恋愛映画。相手役のイヴァン・アタルは実生活でも彼女のパートナーで、この作品では監督と脚本も兼任している。

作品はストーリー展開よりも手持ちカメラでのカット割りと台詞まわしの早さが印象的。テーマとしては凡庸というか普遍的だがシャルロット・ゲンズブールが実の夫が監督でかつ相手役、2人の実の子供とともに出演しているところなどに、インディペンデントなスピリッツがあらわれている。

すこし前にヴァネッサ・パラディーとの間に子供をもうけたジョニー・デップが、シャルロット・ゲンズブールの淡いアパンチュールの相手役として、通りすがりの人としては観る者に大きな印象を与えている。

監督・脚本・主演をこなしたはイヴァン・アタルは、製作、脚本の段階から、アメリカのインディペンデント映画の父、ジョン・カサヴェテスを意識していたようだ。

でもシャルロット・ゲンズブール=イヴァン・アタル組はジーナ・ローランス=ジョン・カサヴェテス組には現地点では及んでいない。日本でいうと保守的なゴールデンなどのデレビドラマのような印象がある。

インディペンデントなスピリッツを持ちながら、そのような印象を与えられるのはある意味貴重なことだと思う。

シャルロットがすっかり大人の女になっていたのも印象的だったが、近年「H Story」に出演していた「ベティ・ブルー」のベアトリス・ダルがそうだったように、口が半分開いている、というか、いつも垂れ流してしまっている感じの半分狂気の世界にいるような表情をする女優になっていたことは印象的だった。


■オフィシャルサイト
http://www.gaga.ne.jp/french/index.htm

バルスーズ

バルスーズバルスーズ
Les Valseuses
1973年/フランス/119分
監督・脚本:ベルトラン・ブリエ
撮影:ブルーノ・ニュイッテン
音楽:ステファーヌ・グラッペリ
出演:ジェラール・ドパルデュー、ミュウ=ミュウ、パトリック・ドヴェール、イザベル・ユペール、ジャンヌ・モロー、他
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まず、僕が生まれる1前年、1973年の製作で、「ジェラール・ドパルデューが若いなぁ」などと思っていたら、誰にでもすぐに股を開いてしまう女役はなんと「読書する女」などのミュウ=ミュウではありませんか。「若い」の一言。

2人はこの作品のヒットで俳優としての地位を確立した模様。「パッション」「ピアニスト」「ジョルジュ・バタイユ ママン」などのイザベル・ユペールに至っては、家族でのキャンプ中に処女を失う女の子役だったかもしれない、くらいしかわかりませんでした。ジャンヌ・モローだけはハッキリわかりましたが・・・。

監督は「私の男」などエロスものを得意とすると言われているベルトラン・ブリエ。この長編第一作であるこの作品は良くも悪くも荒削りな仕上がりですが、「私の男」など、近年の作品はしっかりとしていて安心して観ていられるものを作っている。

映画はアメリカでいうところの「ピッピー」のロードムービーといったところでしょうか。二十歳そころこの2人若造が、次々とたわいもない罪を犯していきますが、そこには犯罪性は描かれない。

それよりむしろ「人の純粋な愛」にスポットがあたっているように思う。そいういう考え方は、なまぬるい、ものですが、そこには他には代えられない「疑似家族」のような愛があると思う。「長くは続かないだろう」ことを前提に考えると切ない気持ちになります。

人にはあまり勧められる内容ではありませんがかなり好きな映画の中の1本。

愛の神、エロス

愛の神、エロス愛の神、エロス
eros
2004年/109分
フランス・アメリカ・イタリア・中国
監督:ウォン・カーウァイ、スティーヴン・ソダーバーグ、ミケランジェロ・アントニオーニ
出演:コン・リー、チャン・チェン、アラン・アーキン、ロバート・ダウニー・Jr、他
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カンヌを沸かせた3人の監督たちが「エロス」をテーマにした約30分の作品を集めたオムニパス映画。

ソダーバーグ監督のフィルムノワール調の作品やアントニオーニ監督の感覚的な作品も好きですが、何んと言っても1本目のウォン・カーワァイ監督の作品の出来が素晴らしかった。

30分程の「ショートフィルム=短編」だとプロットを説明するための段取的な映像に追われてしまい、長編作品と比べると、心のやわらかいところに届くようなところまでいかない、印象があったのですが、このウォン・カーワァイ監督の作品は見事に僕の予想を裏切った。

テーマは「接触」でしたが、娼婦に恋をした仕立て屋の切実な想いが現れ出ていて思わず熱くなってしまった。
単にこういう話が好きというわけではないとは思うのですが…。

この作品の撮影は、当時脅威をふるっていた感染症「SARS」で緊張状態にあった中国で撮影されたとのこと。

そういう状況で「接触」をテーマにしたこの作品は役者スタッフともども「マスク・ゴム手袋」などしながらの撮影だったようです。映像の中にある緊迫感はそういう現場の緊張感のような気がします。

ショートものでもやればすばらしいものができることを気づかせてくれた作品。
今年の短編部門でのNo.1です。


■公式サイト
http://www.ainokami-eros.com/

アワーミュージック

アワーミュージックアワーミュージック
Notre Musique
2004年/フランス=スイス/80分
監督・脚本・編集:ジャン=リュック・ゴダール
製作:アラン・サルド、ルート・ヴァルトブルゲール
撮影:ジュリアン・ハーシュ
美術:アンヌ=マリー・ミエヴィル
出演: ナード・デュー、 サラ・アドラー、ロニー・クラメール、サイモン・エイン、ジャン=リュック・ゴダール、他
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ふと、2000年代に入ってからのゴダール作品は観ていないことに気づき慌てて鑑賞。

ゴダール作品は「勝手に逃げろ/人生」の滑稽さが快感で特にお気に入りなのですが、そんなゴダールが2004年に元気に映画を作っていることが確認できただけでホッとしてしまいます。

多くの映画好きにとってゴダール作品は「語り」を誘発する監督のようですが、不思議と何も思いつきません。僕にとってゴダール作品は自分の中の映画にまつわる雑念を浄化してくれる貴重な映画であることは間違いありません。

3月18日、渋谷のイメージフォーラムで、17時〜の回を鑑賞したのですが、その回終了後、現「カイエ・デュ・シネマ」編集長のトークイベントがありました。19日は蓮見重彦さんと青山真治監督のトークがあったようで、とても気になるところです。

そう、今度、本国フランスのパリにある「ポンピドーセンター」でゴダールの大回顧展が催されるそうです。パリにいれば是非行ってみたいものです。


■公式サイト
http://www.godard.jp/


■ポンピドーセンター関連ページ
ポンピドーセンター(ゴダール回顧展)フランス語

ポンピドーセンター(ゴダール回顧展)英語

白と黒の恋人たち

白と黒の恋人たち白と黒の恋人たち
Sauvage Innocence 
2001年/フランス/117分
監督:フィリップ・ガレル
撮影:ラウル・クタール
出演:メディ・ベラ・カセム、ジュリア・フォール、ミッシェル・シュボール、他
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「ギターはもう聞こえない」「愛の誕生」「ニコイコン」「秘密の子供」「自由、夜」等のフィリップ・ガレル監督の現在のところの最新作。

この「白と黒の物語」は「ギターはもう聞こえない」などと同様に歌姫ニコとの映画製作=生活を題材としているが、これらと異なるところは、自伝的な作品ではありますが、作り手と題材の距離が離れている点にある。

20年間の年月がそうさせたのかもしれないが、同じテーマ(同じ人)を題材にした映画の本数が多いと思うのは私だけだろうか。

今回はその距離感があるため脚本は自主っぽくないように思うけれど、撮影のシーンの度に同じレールが登場し、磨いたり調節したり、いつもだれかがいじっていたのが印象に残っている。ガレルのこだわり?なのでしょうか。

フィリップ・ガレルはあまり人には勧められる作品を作りませんが、結局好きな監督の1人です。

苦笑いが似合うような映画です。


■公式サイト
http://www.bitters.co.jp/shirotokuro/

青い夢の女

青い夢の女青い夢の女
Mortel Transfert
2000年/フランス・ドイツ/122分
監督・製作・脚本:ジャン=ジャック・ベネックス
原作:シヤン=ピエール・ガッテーニョ
撮影:ブノワ・ドゥローム
出演:ジャン=ユーグ・アングラード、エレーヌ・ド・フジュロール、他
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数年前になりますが「青い夢の女」の日本公開にあわせて監督のジャン・ジャック・ベネックスが来日し、東京大学のフランス文学研究科主宰の講演会のようなものに参加した記憶があります。

ベネックスの作品は「ベティーブルー」が印象的ですが「ディーバ」や「ロザリンとライオン」など自分好みの作品を作ってくれる世界の中でも数少ない映画監督の一人です。

それまで監督本人はスチールでしか観たことはなかったのですが、とても「女好き」な印象が強く、良くも悪くも期待を裏切られた感がありました。いったん話し始めると、話しが長そうな人です。

さてこの「青い夢の女」ですが、今回もまたとても僕好みでした。とにかく画がすばらしい。きれいな構図を集めた映画は他にもたくさんあるのですが、なんというか、映画への愛や画のもつ深み、のようなものを再現する画はめずらしい。ハリウッドなどと比べるとお金はかかっていませんが、知恵や工夫が見られるところも好印象。

今作は新たに「ユーモア」に取り組んでいたように思われますが、そこに深みは感じられません。「ディーバ」や「ロザリンとライオン」などを思い返しても、ベネックスはナイーブな心象をさらりと的確に描くことが特長かな。

自分的にはレオス・カラックスと足して2で割ったらどんな作品になるのだろう、などど考えてしまいます。

緑の光線

緑の光線緑の光線
Le Rayon Vert
1986年/フランス/98分
監督・脚本:エリック・ロメール
原作:ジュール・ヴェルヌ
撮影:ソフィー・マンティニュー
出演:マリー・リビエール、リサ・エレディア、ヴァンサン・ゴーティエ、ベアトリス・ロマン、他
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大学時代に高田馬場ACTシアターで鑑賞、その後、今はなき池袋ACTセイゲイシアターのオールナイトなどで鑑賞。VHSなどでも観ましたが「緑の光線」が目に見えるかは上映状態にもよるかなと思う。

表層的には主人公、マリー・リヴィエールの恋物語ですが、撮り方はとてもヌーヴェルヴァーグ的・ロメール的。エリック・ロメールの「欲望」が随所に現れ出ていてとてもそそられる。

鑑賞後の「語り」を必要としない映画なので、友達などと観ても盛り上がることはありませんが、鑑賞中にニヤニヤとして堪能してしまいがちな不思議な映画です。

なお、原作は「海底二万マイル」のジュール・ヴェルヌ。

オルランド

オルランド 特別版オルランド 特別版
Orlando
1992年/イギリス・ロシア・イタリア・フランス・オランダ/94分
監督・脚本・音楽:サリー・ポッター
原作:ヴァージニア・ウルフ
撮影:アレクセイ・ロジオーノフ
出演:ティルダ・スウィントン、ビリー・ゼイン、シャルロット・ヴァランドレイ、他
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個人的には馴染みのないヴァージニア・ウルフ原作のイギリス映画。この原作が書かれたのは1920年代ということなので、ちょうどそのころフランスではシュールレアリズムが盛り上がっていた時だろうか。そう考えるとちょっと不思議な感じがします。

監督のサリー・ポッターは脚本・音楽もこなした女流監督ですが、ジョニー・デップ、クリスティーナ・リッチの『耳に残るのは君の歌声』などを思い出すと「ゴージャス」な画が好きなのかなと思います。

今回も特に序盤のコスチュームなどは「大作」っぽい雰囲気を醸し出していました。

特に笑いがとまらない、とか、押し迫る緊張感がある、といった映画ではありませんが、最後まで飽きずに観てしまいました。

2人のダイアローグをカットを切り替えず、パンしているシーンが2つあったのですが、そのテイクはエリック・ロメールの「緑の光線」でのデルフィーヌを交えた庭での団欒のシーンを彷彿とさせ、とても自分好みでした。

あと、ラストシーン。嫌な人は嫌かもしれませんが、僕的にはとても「映画的」な手法で撮影されていて、作品の味わいを深めているように感じられ印象的でした。

修道女

修道女修道女
La Religieuse
1966年/フランス/131分
監督・脚本:ジャック・リヴェット
撮影:アラン・ルヴァン
出演:アンナ・カリーナ、ミシュリーヌ・プレール、リゼロッテ・プルファー、フランシーヌ・ベルジェ、他
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何年も前にになりますが、たしかシネセゾンのオールナイトでゴダールの「女は女である」などと一緒に観たように思う。リヴェット汁だらだらの中期ヌーヴェルヴァーグの作品。

他の映画と同様に、今となっては内容を思い出せない映画のひとつなのですが、予想を超え、作品中盤から「銀幕にくぎ付け」になってことを覚えている。

特にアンナ・カリーナが刺すシーンでナイフのアップの画がカットインされているのを観たときにとても「ドキリ」とした記憶がよみがえります。クローズアップカットのカットインの成功例として引き合いにだしたくなります。

映画的には地味だったと思いますが、観終えた後に厭な気持ちになった記憶は全くありません。

以外とアンナ・カリーナがしっかり芝居をしている作品って少ないようにも思うので、そういうことでも貴重な作品。

ポーラX

ポーラXポーラX POLA X
1999年/フランス・日本/134分
監督・脚本:レオス・カラックス
原作:ハーマン・メルヴィル
撮影:エリック・ゴーティエ
出演:デルフィーヌ・シュイヨー、ペトルータ・カターナ、ギョーム・ドパルデュー、カテリーナ・ゴルベワ、カトリーヌ・ドヌーヴ、他
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この映画、封切り直後から、偶然か必然か、計6回位観ている。

一連のカラックス作品の魅力のひとつに「焦燥感」が挙げられる。観ていて自分の中に緊張感を誘発されるあまり、プロット上どのようなつながりでその緊張感が生まれているのか、つい見失ってしまうことも多い。

画的には、単なる寝起きのギョーム・ドパルデユーであるが、その画からにじみ出てる感情は絶望だったりして、その根拠、というか出来事がきれいに省かれていたりするので、観ている方としては、むきだしの感情と向かい合っているような気持ちになる。

人は「映画で何を観たいのか?」ということを考えると「人の感情」であったりするので、観終えて、仮に幸福な気持ちに近づけなくても、満足感や何か別のエネルギーのようなものが生まれることがあり、そんな気持ちにさせてくれる映画は数少ない。

それは、カラックスの映画に対する真摯な態度によるものだ。

ある女の存在証明

ある女の存在証明〈無修正版〉ある女の存在証明〈無修正版〉
Identificazione di una donna
1982年/イタリア・フランス/130分
監督・脚本:ミケランジェロ・アントニオーニ
撮影:カルロ・ディ・パルマ
出演:トーマス・ミリアン、ダニエル・シルヴェリオ、他
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10年程前に、大学の近くの「名画座」という名のレンタルビデオ店で見つけ鑑賞。

今回観たのはそれ以来。アントニオーニは好きな監督の1人で「ブロウ・アップ」「砂丘」など、というかこの2本有名だけど彼のフィルモグラフィーの中では異色を放っているかもしれない、もその予定調和を超えた「破天荒さ」、観ていて驚きがあるところなどが特に好きな作品なのですが、この作品、改めて観ると「新しさ」はない。

ても冒頭から流れる「ゆったり」とした時間の中でやりとりされる台詞まわしなど、その時代のものなのかは定かではないが、自分的には平常心のまま鑑賞できる数少ない作品の一つ。

「映画監督」ってこんなに「もてない」とも思うのは、私だけ?

ひめごと

ひめごとひめごと
Choses Secretes
2002年/フランス/115分/R-18
監督・脚本:ジャン=クロード・ブリソー
撮影:ウィルフリッド・サンペ
出演:サブリナ・セヴク、コラリー・ルヴェル、ロジェ・ミルモン、他
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「ひめごと」は作品のテイストが自主映画的で自分的には好感がもてました。去年か一昨年のカイエ・デュ・シネマ誌のいちおしだったようです。

また監督のジャン・クロード・ブリゾーはヌーヴェルヴァーグのエリック・ロメールによって見出され映画界入りしたシネフィルのよう。ヴァネッサ・パラディーの『白い婚礼』やシルビー・ヴァルタンを主役に立てた『ランジュ・ノワール 甘い媚薬』など「女性の性」にまつわる作品を次々と発表している。

この作品ではサスペンス的なドラマと女性のエロスを絶妙のバランスで描いている。日本でこういうことをやろうとすると「エロ」ばかりが前面に出てしまい、ドラマの部分が手薄になってしまうのは、観客がそういうものを望んでいるから、だけだろうか。

ケン パーク

ケン パーク スペシャル・エディションケン パーク スペシャル・エディション
Ken Park
2002年/アメリカ・オランダ・フランス/96分/R-18
監督・撮影:ラリー・クラーク、 エド・ラックマン
脚本:ハーモニー・コリン
出演:ジェームズ ランソン、ティファニー・ライモス、スティーヴン・ジャッソ、他
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勢いのある性春映画。寺山修司の「トマトケチャップ皇帝」程ではないが、「この映画に出演している少年少女はその後ちゃんと大人になれたのだろうか?」と心配したくなる映画。そういう意味で目が離せない。

作中のエピソードが逐一「エロ」く逆に清清しささえ感じるようになるのが不思議。

付録映像にはたしか「モントリオール映画祭」出品時の映像が入っていたが、「小ぶり」な映画ながらインパクトは大きい映画だったよう。

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