2006年11月

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欲望

欲望欲望
2005年/日本/133分/R-18
監督:篠原哲雄、企画・製作:鈴木光
原作:小池真理子
脚本:大森寿美男、川崎いづみ
撮影:上野彰吾
主題曲:布袋寅泰
出演:板谷由夏、村上淳、高岡早紀、利重剛、大森南朋、津川雅彦、他
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小池真理子氏原作の同名小説が原作の映画。

その原作を先に読んでいたのですが、ラストの方は映画独自だと思いますが、基本的に原作に忠実という感じだった。

小説ではあまり気にならなかったのですが、板谷由夏さんの演じる役柄に違和感を感じるところがあった。その時は一時的に勃たなくなった男に対して「できないのなら帰って」はどうなんだろう。フェラチオでも手コキでも、自分もセックスをしたい、快楽を共有したい、のならばできることはいろいろあるはず。

それと村上淳さんとの文字通りのカラミでも、勃起しないのならば、アナルとか使ったりしての前立腺プレイなど、不能が原因で、できないことはあるのかもしれませんが、諦めて悲観的になる前に、いろいろ試みるくらいのきおいは見せてほしいものです。そんなことを思ってしまうのは男性の私だけでしょうか。

全体的には主演の板谷由夏さん、村上淳さん、高岡早紀さんの他にも、利重剛監督や大森南朋さん、津川雅彦さんなども独自の存在感を発揮していて見ごたえがありました。

板谷由夏さんはデビュー作、大谷健太郎監督の「アベック・モン・マリ」の頃、「演技するって何ですか」と言っていたようですが、その頃と比べると全裸でセックスシーンに挑むなんて、腹が据わっている、というか女優としての気合を感じないわけにはいきません。

アンダルシアの犬

アンダルシアの犬アンダルシアの犬
Un chien andalou
1928年/フランス/17分
監督・脚本:ルイス・ブニュエル
脚本:サルヴァドール・ダリ
出演:ピエール・バチェフ、シモーヌ・マルイユ、ハイメ・ミラビエス、サルヴァドール・ダリ、ルイス・ブニュエル、他
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大学1年の時にフランス文学の演習の授業で観たのが最初でしたが、「ソナチネ」に引き続き、13年ぶりの鑑賞。

その授業ではルネ・クレールの「幕間」1924(Entr'acte)やマン・レイの「ひとで」1928(L'Étoile de Mer)など、シュールレアリズムの映像作品を鑑賞したのですが、当時はただ「斬新だ」と思ったのですが、今観てもわからないことはそのままで、映画をたくさん観れば解からないことも解かるわけではない、ということを再確認。

この「アンダルシアの犬」は公開?発表?当時大成功を収めたようですが、80年前の当時の時勢はなかなか想像が難しい。いっそのこと500年くらい前だったら「神の存在が信じられていた」など距離感をもって捉えることはできそうなのですが。

今観ると、所謂「自主映画」的な雰囲気で作品作りにのめり込んでいたんだろうということが画から伝わってくるような気がします。

東京ゴッドファーザーズ

東京ゴッドファーザーズ東京ゴッドファーザーズ
TOKYO GODFATHERS
2003年/日本/90分
監督・原作・脚本:今敏
脚本:信本敬子、音楽:鈴木慶一
声の出演:江守徹、梅垣義明、岡本綾、飯塚昭三、加藤精三、石丸博也、槐柳二、屋良有作、大塚明夫、小山力也、柴田理恵、矢原加奈子、犬山犬子、山寺宏一、他
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11月25日からテアトル新宿などで最新作「パプリカ」が公開される今敏監督の「PERFECT BLUE」「千年女優」に続く第3作。

キャラクターデザインにはマッドマックス。音楽はムーンライダーズの鈴木慶一氏が参加している。

DVDの特典映像で監督本人も言っていましたが、イケメンとかではないホームレスが主人公の映画(実写)だったら企画の段階で通らない。アニメだからこそできることがる、ということを考えさせられる。

この映画は「画」は所謂「リアルな感じ」でクールだが、設定自体は現実に基づいてはいるが、プロットは今監督の願望が込められた、むしろ「べたな感じ」のものとなっており、そのギャップが魅力のひとつになっていると思う。

「美少女」とか「爆発」ばかりがアニメではない、ということを気づかされますが、それって一見「実写でやればいいじゃん」と思えますが、作り手にとっては、キャスティングなど興行的に実写だと難しくなってしまうという現実もあります。でも、観る側としてはそんなことは考えないのでひょっとすると、この映画はなかなか評価されにくい作品なのかもしれません。

人と人の愛情あふれる映画に仕上がっていますが、キャッチに欠ける感はあるのかもしれない。

「東京ゴッドファーザーズ」公式サイト
http://www.sonypictures.jp/archive/movie/worldcinema/tgf/

ソナチネ

ソナチネソナチネ
Sonatine
1993年/日本/93分
監督・脚本:北野武
製作:奥山和由
音楽:久石譲
出演:ビートたけし、国舞亜矢、渡辺哲、勝村政信、寺島進、大杉漣、津田寛治、他
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1993年公開の北野武監督の第4作。

この「ソナチネ」は公開当初、大学1年だった私は映画サークルの人々と劇場に足を運び、その時の映画館の人ごみや臭いなどの記憶が懐かしい作品。

数えると13年ぶりに観たのですが、主演のたけしさんの肌ツヤが若かった。相対的に自分も変わっているのだと思うと恐ろしい気持ちになります。

この映画を初めて観た時は映画を作ったことはなかったので、ひたすら「カッコイイ」と圧倒されたことを思い出しますが、今観ると沖縄の自然のロングショットや廃屋のようなところでの滞在など、お金をかけずに魅せる画作りの工夫が凝らされていることが目についた。

あと、任侠といえばそうですがこの映画の非エンタテイメント=プライベート=純映画=観る人を選ぶ、映画であったこと再確認。やっぱりエンタテイメント作品はディズニーランドに行く時のように「楽しまなければいけない圧力」が強く、僕には敷居が高い。

この映画くらい「平常心」で観れる作品がたくさん作られる状況になればいい、と思いますが、こういう映画は「商品」と考えるとその存在意義が怪しくなるのも事実だと思う。

最近は低予算のDV映画などが増えてきましたが、そういう低予算ものでも、「しっかり客を楽しませなきゃいけない」的な映画がその中でも商業ラインにのっているケースが多く、映画を撮れる可能性は広がったけれど、それで成り立つかどうかの状況は、結局13年前とあまり状況は変わっていないことも改めて認識してしまった。

映画「ソナチネ」公式サイト
http://www.bandaivisual.co.jp/kitano/sonatine/

ウェルカム・トゥ・サラエボ

ウェルカム・トゥ・サラエボウェルカム・トゥ・サラエボ
Welcome To Sarajevo
1997年/イギリス/105分
監督:マイケル・ウィンターボトム
原作:マイケル・ニコルソン
脚本:フランク・コットレル・ボイス
出演:ゴラン・ヴィシュニック、スティーヴン・ディレイン、エミラ・ヌシェヴィッチ、ウディ・ハレルソン、マリサ・トメイ、ケリー・フォックス、エミリー・ロイド、他
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マイケル・ウィンターボトム監督作品「9songs」「24アワー・パーティ・ピープル」に続いて「ウェルカム・トゥ・サラエボ」を鑑賞。

この作品はDV映像を用いながらも、第50回のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品されたことで話題になった。

内容に関して積極的な不服はないが、充足感もまたない作品だった。

ただ、現地の映像など「どこまでが現実でどこまでがフィクションなのか」がわからないところや、実際のサラエボの様子など記録映像としての魅力が印象的だった。

例えば同じ「戦争」を題材としたスタンリー・キューブリック監督の「フルメタル・ジャケット」と比べると、「作家性」の薄さが目に付いてしまう。

主張にたいする情熱を感じないというか、作品のテーマに対して距離をとっている感じがする。テーマに肉迫すればよい、というわけではないのでこれはこれで1つのやり方だとは思うが・・・。

それと、作品のテーマとの距離感のせいか、何故か役者の印象が薄い映画でもあった。役者陣はちゃんと芝居はしているとは思うのですが、全体的にどこか「他人事」に感じてしまった。「キャラが描かれていない」というだけの問題ではないような気がしてしまう。

ただ、作家性が薄い=マイルドな仕上がり、になっているからこそ作品の一般性は獲得しやすい部分はより多くの人に見てもらうことには貢献できそうだ。でも、やっぱりそこを狙うのならばハリウッドでやった方がいいと思うし、「ウィンターボトム監督ならもっと面白い映画が作れたはず」という印象は否めない。

本編に使用されていた音楽が刺激的でした。ウィンターボトム監督は音楽を直接の題材に立てた方が面白い作品を作るような気がしますが、様々な映画に挑戦するその姿勢にはは尊敬してしまう。

スカートの中の秘密の生活

スカートの中の秘密の生活スカートの中の秘密の生活
田口 ランディ

幻冬舎

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今となってはちょっと古さが目に付く、インターネット通信、黎明期のエッセイ集ですが「オンナ心とはなんぞや」といった、僕が死ぬまでわかることのない事柄がぎっしりとつまっていて、今読んでもなにかと参考になる1冊。

ニフティなどのインターネット通信にハードも含めて年間100万くらいつっこんでいた田口氏の気合いが感じられる。

普段は女心のことなんて少しも考えないので、たまに「女心なんでわからん」と思い困ってしまった時に、反省も含めて読んでみようと思う。

原題は「淫乱菩薩」。


サラバンド

サラバンドサラバンド
Saraband
2006年/スウェーデン/112分/R-15
監督・脚本:イングマール・ベルイマン
製作:ピア・エーンヴァル
撮影:レイモンド・ウェンメンロブ、ペーオー・ラント、ソフィ・ストリッド
出演:リヴ・ウルマン、エルランド・ヨセフソン、ボリエ・アールステット、ユーリア・ダフヴェニウス、グンネル・フレッド、他
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イングマール・ベルイマン本人が遺作と表する、約20年ぶりの最新作。

円山町に引っ越しをした、ユーロスペースで初めて鑑賞。

ハイビジョン撮影のビデオ上映でしたが、同じハイビジョンでも最終的に、フィルムにプリントするかしないかで大きな質感の違いがでることを改めて発見。

ハイビジョンはきれいといえばそうですが、プロジェクターなどの上映装置にもよるとは思うが、劇場の大写しには向いていないように思う。どちらかといえばDVDなどのデジタルメディアとの相性は良いとは思いますが。

ちなみに、この「サラバンド」は15禁になっていますが、何故なんだろう。父と娘が舌を絡ませたディープキスをするシーンと、老人の全裸が映るシーンはありますが「卑猥さ」はどこにも感じなかったのですが。

個人的には全裸の老人のカットでボカシが入っていた部分で、昔の妻を目の前にしてイレクトしていたかどうかは作品の解釈を変えるかもしれない大事な部分だと思うのですが、それがボカシが入っているためにペニスが見えないのは滑稽だ。

ビデ倫のようにとは言わないにせよ、見せるべきところは見せてくれないと単なる検閲になりかねない。映倫の考えることはよくわかりません。

内容は日本でいっても「低予算映画」の部類にはいるような、地味な画が続きますが、人間の素朴な部分を的確に表現しているからか飽きることはなかった。共感する、できる、かどうかはありますが、確かな映画、という感じ。

これほど老人目線での語りがリアルな映画も珍しい。等身大のベルイマン=とってもユニーク、ということか。

「サラバンド」公式サイト
http://www.saraband-movie.com/

ハードボイルド/ハードラック

ハードボイルド/ハードラックハードボイルド/ハードラック
吉本 ばなな

幻冬舎

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「アルゼンチンババア」に引き続き、奈良さんのイラスト装丁に惹かれて文庫を購入。

「脳死とは?」ということを考えさせる作品で、個人的には「アルゼンチンババア」よりも映画にするのにちょうど良いような印象。

吉本ばなな作品は他もそうんな感じがしますが、所謂「女性」が「女性らしい」感性で生き生きとしている主人公を描いているように思う。

自分では共感するところなんてありませんが、「女の人はそういうもんなのかなぁ」なんて思ったり。

作者も主人公も女性だと、手法はさておき、描かれる世界は所謂「女性」から観た「ヤクザもの」や「格闘技」などと同様に追随を許さないものになっているようにも思う。

媚びればイイ、ということではないですが、そこを売りにされるように感じてしまうと同じことのように思います。

「ハードボイルド/ハードラック」ということで、そういうことなのかもしれません。

インド夜想曲

インド夜想曲インド夜想曲
Nocturne Indien
1988年/フランス/110分
監督・脚本:アラン・コルノー
原作:アントニオ・タブッキ
音楽:フランツ・シューベルト
出演:ジャン=ユーグ・アングラード、クレマンティーヌ・セラリエ、オットー・タウシグ、ディプティ・タヴェ、パメラ・スー、他
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たしか、ロードショーは渋谷文化村「ル・シネマ」で、記録的なロングランだったような気がする。

まず驚いたのは「ベティ・ブルー」「サブウェイ」「青い夢の女」などのジャン=ユーグ・アングラードが英語ばかりを話しているということ。そういう設定ではあるのですが彼の英語はたどたどしい。ポルトガル語?なども駆使していましたが、語りがたどだどしく、結果的に、数分間しかないフランス語を話すシーンがすこぶる流暢に聴こえます。イキイキとしています。「水を得た魚」とはこのことを言うのかもしれません。

この「インド夜想曲」を観ていると、あたかも今インドにいるような「時間の流れ」を体感できる。

ある意味サスペンス要素が入った少し風変わりなロードムービー。

痙攣

痙攣 けいれん痙攣 けいれん
2004年/日本/64分/R-18
監督:田尻裕司
製作:朝倉大介
脚本:芳田秀明
撮影:飯岡聖英
出演:佐々木ユメカ、真田幹也、堀正彦、北の国、大葉ふゆ、はやしだみき、他
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新鮮ないやらしいシーンを期待して鑑賞するも、想像以上にいい映画だった。

「カラミシーンを早送りしても成立するような映画はピンク映画じゃない!」と脚本家の荒井晴彦さんはどこかでおっしゃっていましたが、この映画はカラミのシーンが、この映画から感じた「生きることとは?」という問いにしっとりと馴染んでいたように思う。カラミがなかったならばセリフの重みがなくなってしまう。

気になったのは画からあふれる70年代的な空気。作中に使用されている携帯電話などを見ると、比較的最近、2000年以降に撮影されたもののなずだが、どうにもレトロ、というか、一昔前の印象が強い。最近撮った8ミリフィルムのような感じ。

現代風にアレンジされた8ミリ映像ならばPVなどでも、うらやましくなるような画になると思うが、そう感じなかったところが問題なように思う。「35ミリのアフレコ」だけが原因ではないはずなのだが。

いい映画だし、ビデオではないある意味最高の媒体、35ミリフィルムで撮影している気はするのですが、いい気持ちになれない画がもったいないように感じた作品。これはピンク映画全般に感じるところですが、何故なんだろう。

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