2006年08月

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昨晩お会いしましょう

昨晩お会いしましょう昨晩お会いしましょう
田口 ランディ

幻冬舎
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田口ランディ氏作品は中原俊監督の映画「コンセント」をテアトル新宿で観て衝動を覚えて以来3部作にのめり込んだのですが、熊切監督の「アンテナ」、は未だに観れていないのですが、近い将来に必ず観たいものです。

3部作を読み終えると、他の作品が読みたかったのですが、エッセイばかりで長編が見つけられず何年も経ってしまいました。この「昨晩お会いしましょう」は短編集ですが、「読ませる展開力」に期待して購入。

読み終えると短編小説というよりはエッセイに近いような後味な気がする。ハッキリいうとどこかもの足りない感じなのですが、ページを繰る重さはなくすぐに終わってしまう感じ。

凄いのか単に中身がないだけなのか判断がつかないので、ランディ氏の他の作品も読んでみようかな。


「田口ランディ」公式サイト
http://www.randy.jp/


それいぬ
正しい乙女になるために

それいぬ―正しい乙女になるためにそれいぬ
正しい乙女になるために

嶽本野ばら

文藝春秋
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当初、国書刊行会より出版された、嶽本野ばら氏の初期、フリーペーパー時代? に掲載されたエッセイをまとめた、氏の原点というべきエッセイ=エッセンス? 集。

「エミリー」「ミシン」「世界の終わりという名の雑貨店」「鱗姫」「カフェ小品集」など、今、野ばら作品を数冊読んだ後にこの「それいぬ」を読むと、著者本人も認めているように、後に小説となるネタが満載です。

どこかのレビューで読みましたが、最近の洗練された嶽本野ばら作品に物足りなさをを感じる人は必読です。ちょっとリキミのある感じがまた好印象です。

サラリと読むこともできますが、じっくりと何度読んでも読む度に新しい発見がありそうな、強度のある作品です。

Mr.ジレンマン 色情狂い

Mr.ジレンマン 色情狂いMr.ジレンマン 色情狂い
1979年/日本/70分
監督:小沼勝
原作:笠太郎
脚本:荒井晴彦
音楽:ダディ・竹千代&東京おとぼけcats
出演:柄本明、高田純次、ベンガル、朝霧友香、小川亜佐美、他
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東京乾電池と荒井晴彦氏と小沼勝氏らによる、一種贅沢なタレントによるポルノコメディ。エロヒーローもの。

柄本明、高田純次、ベンガルの出世作となった作品のようですが、当たり前ですが、今観ると皆さん若いです。

濡れ場シーンの多かった柄本明氏などは筋肉質で男らしい身体を披露していた。

1979年に制作された映画とのことですが、もう30年近くも前の作品になるにもかかわらず、東京乾電池の面々のキャラクター、芸風、などは今と変わらないことに感慨を覚えたり。

全体的に向う見ずとも感じられるエネルギーに溢れており、その時代特有の空気かもしれませんが、好感がもてました。

ヒーローもの+エロ、子供時代にみたらどんな刺激を受けただろう、と想像すると楽しくなってしまします。

ツインズ
続・世界の終わりという名の雑貨店

ツインズ―続・世界の終わりという名の雑貨店ツインズ
続・世界の終わりという名の雑貨店

嶽本野ばら

小学館
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Amazonのレビューなどでとっても評判の悪い嶽本野ばら氏の「ツインズ―続・世界の終わりという名の雑貨店」を鑑賞。

読んでみると何故評判が悪いのかが理解できるような気がする。

主人公が白目をむいて口から泡をふくような生々しいものはいわゆる嶽本野ばらの読者は好まないような気がする。

同じ描写でも心構えのような準備があれば違う結果になるとは思うのですが。

でも、この主人公の女の子、僕が「こんな娘が近くにいたら嫌だな」と思うようなそのもののような気がして、違う意味目が離せなかった。

心地よいカタルシスは得られなかったけれど、ページをめくる指の重さは軽く、文句を思いながらも中断することなく読みきってしまった。


太陽

太陽太陽
The Sun
2005年/ロシア・フランス・イタリア・スイス/115分
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
脚本:ユーリー・アラボフ
音楽:アンドレイ・シグレ
出演:イッセー尾形、ロバート・ドーソン、佐野史郎、桃井かおり、つじしんめい、他<
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映画『太陽』オフィシャルブック映画『太陽』オフィシャルブック
アレクサンドル ソクーロフ Aleksander Sokurov

太田出版 2006-07-26
売り上げランキング : 56855

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単館系では興行収入が好調らしい、アレクサンドル・ソクーロフ監督の最新映画「太陽」をポスターのデザインやイッセー尾形がきになり銀座シネパトスで鑑賞。日曜の最終回で観たのですが、お客の入りは1/3程度。日曜の20時~の回としては混んでいる方だと思う。

結果的には「ソクーロフには裏切られたがイッセー尾形は裏切らなかった」といった感じ。

「二重被爆」もそうだったが、天皇=被害者のような図式で天皇に同情的に描かれていて、戦後責任の問題など、新たな議論が生まれない、お涙ちょうだい、な映画だった。被害者=主人公に同情しても、僕らの未来は明るくはなりえない。作り手はお客が気持ちよくなるようにだけ映画を作るのではなく、新たな議論、未来につながる作品作りを目指していただきたい。自分自身もそうですが。

とはいえ、これまで、姿をもって語ること、自体がタブーとされてきた現人神、ヒロヒトばかりが画面に映っていて、所謂「人間宣言」がどのように昭和天皇の口から語られたのか、など、ソクーロフ監督の演出はあるにせよ、確かな役者の演技で具体的に観れたことは貴重だ。

イッセー尾形氏は市川準監督の「トニー滝谷」でも難しい役どころに挑戦し、成功していましたが、今回は果敢にも「昭和天皇」に挑戦し、見事にやり遂げている。彼以外、ヒロヒトを演じきれる役者はいない。彼の演技力でこの映画は成り立っている感もある。その演技を観るだけでも劇場まで脚を運ぶ価値はある。

この作品、サンクトペテルブルグ映画祭では受賞できたようですが、ベルリン映画祭は逃していました。日本での配給先がなかなか決まらなかったようですが、幸か不幸か、911以降、現在のようにナチュラルに右翼化した日本国内ではこの映画は温かく向い入れられるはずだ。


映画「太陽」公式サイト
http://taiyo-movie.com/


それはそうと、このロシア映画「太陽」の興行収益は好調ですが、「ロシア語専門書店、破産」と聞くと、胸が痛みます。
■8月22日「Yahoo! ニュース」
ナウカ書店 老舗のロシア語専門書店が破産 神田神保町

ラ・ジュテ

ラ・ジュテ / サン・ソレイユラ・ジュテ
La Jetee
1962年/フランス/29分
監督・脚本・撮影:クリス・マイケル
製作:アナトール・ドーマン
撮影:ジャン・チアボー
音楽:トレヴァ・ダンカン
出演:エレーヌ・シャトラン、ジャック・ルドー、ダフォ・アニシ、他
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かれこれ15年くらい名前だけは知っていたクリス・マイケル作品をほんとにようやく鑑賞。

フォト・ロマンとのことですが、当然観終えても動画ではなく静止画ばかりが思い出されます。

個人的にフランス語の音の響きが好きなので、ナレーションの言葉は音楽のように聴こえて心地よい。

ただ、フィルムのコストのことなどを考えると、動画でやる必然性はあるのだろうか? という問いを考えざる終えない。

現在ならWebでもよいと思うが紙媒体で十分表現できる内容なのではないかと思ってしまう。

本編の写真は本人が写真家でもあるように、画角、光、ともにすばらしい画の連続だったのは素晴らしかったのですが。

あと、テリー・ギリアム監督が「12モンキーズ」を撮るためのインスピレーションを与えた作品、とあるが、解説がないと自分には解りませぬ。

このDVDには「ラ・ジュテ 」と「サン・ソレイユ」の2編が収録されている。「ラ・ジュテ 」自体の尺は30分程なので、すぐに鑑賞できて観やすい作品。

夏の花火編 -あさがお-

夏の花火編 -あさがお-夏の花火編 あさがお
2003年/日本/56分
監督・製作・脚本:熊切和嘉
脚本:宇治田隆史
出演:高階祐子、越後隆之、柳沢えり花、山下昭和、他
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熊切和嘉監督作品を観るのは「鬼畜大宴会」以来の「夏の花火編 -あさがお-」ですが、観終えたら監督名を知らされていなくても熊切監督では? と良くも悪くも思う作品。

劇場公開はしていないオリジナルビデオ作品のようですが、特に後半の狂気の世界へ踏み出した後のシーンの緊張感はいわゆる快ではないが「映画的」と思わせる。

言ってしまえばなんてことはないストーリー展開かもしれないが、最後まで「目を離すわけにはいかない感じ」にさせる演出は流石の一言。

「鬼畜大宴会」の時もそうでしたが、カメラや録音などのスタッフを含め、出演者は大変だろうな、と心配してしまう。でも案外エンタテイメント作品の方がシリアスものなどよりも現場はピリピリすることもあるのでどうなのかなわかりませんが。

そういえば、熊切監督は最近観た、石井輝男監督の「盲獣vs一寸法師」に少し出演していました。大の江戸川乱歩ファンとのことですが、こんな顔をしていたとは。なんとなく想像はついていたのですが。

そう、この作品の前に作られた田口ランディー氏原作の「アンテナ」の劇場公開を見逃してから地元のツタヤに入荷されずに何年も経ってしまった。渋谷ツタに足を運ぶしかないのかな。

屋根裏の散歩者

屋根裏の散歩者〈完全版〉屋根裏の散歩者〈完全版〉
1994年/日本/74分/R-18
監督:実相寺昭雄
プロデューサー:一瀬隆重、他
原作:江戸川乱歩
脚本:薩川昭夫
撮影:中堀正夫
出演:三上博史、宮崎ますみ、六平直政、加賀恵子、嶋田久作、他
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未見の「江戸川乱歩」ものということで、石井輝男監督の「盲獣VS一寸法師」に続いて鑑賞。

全編スタジオ撮影で、使用機材などがハイクオリティーで「国内の主要な映画会社が制作した作品」な感じがする。ようは低予算インディペンデントな臭いがしないミステリー作品。

プロットは、安心して観ていられる、というか、途中でオチがわかる。想像以上のそれがあるのか? と少し期待して最後まで観る、が裏切られる。そういった意味で、原作に忠実なのか、脚色がない、というか保守的で、予定調和な印象をもった。単に題名「屋根裏の散歩者」それ以上でもそれ以下でもない作品。

この作品の製作後、実相寺昭雄監督は江戸川乱歩の別の短編「D坂殺人事件」を撮ることとなるが、とりわけ、乱歩ものがウマいわけではないように感じる、が、この「屋根裏の散歩者」は、セピアな色彩や意匠を凝らしたフレームワークなど、乱歩ファンは観て損はない映像作品に仕上がっている。

役者陣は、個人的に「いい味」を出していた宮崎ますみさんがプロットにあまり関わってこなかったのが残念ですが、「乱歩もの、というより、ポルノ映画か?」と思う程、濡れ場が多く、現在女優を休業しているらしい加賀恵子さんの艶っぽい演技や、俳優陣の腰のフリには少し驚いた。三上博さんの小芝居も随所に見られて少し楽しい。

ヘアーくらいはボカシ無しで観たいものですね。映倫さん。不自然に感じるのは私だけではないはず。

鱗姫

鱗姫鱗姫
嶽本野ばら

小学館
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2001年単行本化された作品の文庫版。

帯は「ホラー小説」のようなキャッチでしたが、そもそも「ホラー小説」を読まないのでどんなものか解からないまま鑑賞。

経験的には「楳図かずお」漫画の画が浮かんでくるような作品。

楽んで一気読みでしたが、「ミシン」や「世界の終わりという名の雑貨店」のような、なんというか人間の内面描写が薄く感じてしまう。「下妻物語」と同じくらいの程度だろうか。

ジャンル的に仕方のないことなのかもしれませんが。

例によって「尻切れ」な感もあるので、続編の可能性もあるかもしれない。

読む者にページを繰らせる力はさすが。

雨音を聴く魚たち

雨音を聴く魚たち雨音を聴く魚たち
2002年/日本/63分
監督・脚本:菅原隆
企画:朝倉大介
撮影:森下彰三
主演:東城えみ、中川真緒、山田智範、大槻修治、他
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個人的には嫌いなテイストではないが、というかむしろ、自分などは作品のターゲットとなる客層のようにも思うが、予算・演出・脚本・画作り等のまとまりに欠ける感があった。作り手としては他人事ではすまされない。

あるいは高倉健さんや北野武さんなどが主演だったならば同じ演出プランでも違うテイストの作品になっていたとは思う。

文字だけで成立している小説などとは違って、製作にコストが発生してしまう映画では「予算の範囲内でクオリティーを追求すべき」ということを考えさせられる。

製作関係者が、高いクオリティーを追求するというよりは、等身大の自分で勝負に挑むべき、というか、できないことを求めるというよりできることで最高を目指すべきというか。

結果的にAV女優としても活躍することとなった、元女子プロレスラーの東城えみさんが主演のエロティックサスペンス映画、ということですが、特にファーストシーンの濡れ場や作品タイトル、チラシ画像などはとても自分好みでしたが、観続けてていて興奮が続かなかった。全体的に好きな作風なだけにもったいない感じがしてしまう。

脚本を女性が書いていれば違った角度からの演出も可能なはず。

ミシン

ミシンミシン
嶽本野ばら

小学館
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「ミシン」という作品一編が収録かとおもいきや「世界の終わりという名の雑貨店」という聞き覚えにある作品がメインで「ミシン」も収録、といった感じになっていたことには驚いた。

「世界の終わりという名の雑貨店」は何年も前にビデオで鑑賞した記憶があって「役者はいいけどとても低予算な日本映画」だと思った記憶がある。誰のために撮られた作品なのかよく解からなかったのですが、今思えば「嶽本野バラ」作品の映画化だったということか。

縁あって原作を読むことができたので、今度また映画版を観てみようと思う。

まったくもって忘れてしまっているのですが、映画版「世界の終わりという名の雑貨店」は観ているはずなのに、原作を読んでいて、ところどころ、西島英俊さんや高橋カオリさんのまなざしなど、映画版の画は思い出すのですが、先の展開がまったく読めななかった。「こんな話だったんだ」という感じでしたが、それは僕がいつもプロットを軽視してしてしまっ全くて記憶に残っていないからだろうか。

「ミシン」はどうも「ナナ」を読んでいる感じと似ている、というか、「下妻物語」もそうでしたが「女の子同士の友情」を描こうとする、と自ずとキャラクターの設定などが似てくる、ということなのかもしれない。

二重被爆

二重被爆二重被爆
2006年/日本/60分
監督・編集:青木亮
プロデューサー:稲塚秀孝
撮影:三浦貴広
出演:山口彊、佐藤邦義、岩永章、松平和夫、浦頭和子、荒木良子、賀谷美佐子、故 山本芳子、他

大学時代の「腐れ縁の友人が監督をした」との知らせを聞いて、ちゃんと8月6日に浜離宮朝日ホールへ足を運ぶ。

作品は60分程でしたが、「原爆」という扱う題材のスケールが大きいわりに、作品全体を貫くテーマがぶれている、ところと、マイルドといえばそうだがメッセージ性に欠けているところが気になった。

映画のテーマが「二重被爆者」についてなのか「二回投爆」についてなのか「原爆の非人道性」についてなのかハッキリしない。難しいとは思うが、尺が60分ならばなおさら絞ったほうが良いのでは。

作る段階で方向性は決まっているはずだし、「二重被爆」についての映画ならば、後半の原爆でお妹さんと娘さん?を亡くしたことを、その簪でみつけた方のエピソードはこの作品が「原爆」についての話しならば必用だが、「二重被爆」についての作品ならばカットすべきシーンだ。論旨が通っていないと、扇情的に同情を引こうとしているだけの予定調和な作品になってしまう。

個人的には「被害者」=「二重被爆者」を切り口にするよりは、「二回投爆」何故アメリカは広島と長崎それぞれに原爆を投下したのか、を中心に据えた方が靖国参拝問題などを含めた、現在のアクチュアルな戦後問題などについて、建設的な意見の展開が可能となり、この作品を広く伝える必然性も高まるように思う。

「二重被爆者」の人物で押してくと、その事実をもとに原爆を考え直す契機にはなるかもしれないが、それで一見映画として成立していそうな作品にはなるが、フィクション戦争映画ならば「ハンバーガー・ヒル」のように「お国のために戦ってくれてありがとう」的に「2回も被爆にあうなんてかわいそう」「おきのどくに」で終わってしまうように思う。

この映画は、「二重に被爆を受けてもなお生きている人がいる。しかもその人は90歳になってもご存命だ。」というだけの論旨では、今、映画化する意義や、「原爆」というテーマがもつ議論の可能性を考えるともったいない選択だ。チラシの裏に書いてある「アメリカが二回投爆したこと」にたいする作り手の問題提起も、出演者の証言が少しあるだけで、作り手の意図、言わないならば言わない意図、がほとんど感じられない。

取材者に慰安を与えるような作品は過去60数年の間にさんざん作られたいたと思うので、今、このテーマを映画にするのならば、その必然性が感じられる作品にして欲しかった。


また、それとは別に、この作品を観て「映画」と「番組」の違いも考えた。

番組は、例えばNHKにはNHKの都合があるだろうし、それに合わせるのが必然となるが、映画ならば、その制約はないなず。製作者のメッセージ性が高い作品を作りやすい状況になる。

取材先のソースから得た情報のみを提示するのは一見「好印象」なような気がするが、その対象は恣意的なものであるので、それを解かっていてやらないのならば納得できるが、どうも並びがいいように整えてあるだけのような印象をもってしまうところに、この作品の不満点があるように思う。などなど。


と、さんざん文句を挙げてしまったが。幸か不幸かこの作品の尺は60分。

一般の映画にくらべて気軽に見やすい長さであるのと、大学などであれば、ひとコマ90分なので作品を見終えても30分議論の時間がとれてちょうど良いと思う。

それに、この作品は上記の理由で、潜在的に引っ張り出せる議論には事欠かなくあるので、識のある人が、広島と長崎に使われた原爆の種類が違うことから導き出せる、アメリカの人体実験の話、など「補足」を加えていけば「二重被爆」についての見識のない若い人たが、この作品を観る価値は高まるはずだ。

季節映画以上の作品になることを期待する。
監督まだ若いわけだしね。

盲獣VS一寸法師

盲獣VS一寸法師盲獣VS一寸法師
2001年/日本/95分
監督・脚本・撮影:石井輝男
原作:江戸川乱歩
出演:リリー・フランキー、塚本晋也、平山久能、リトル・フランキー、藤田むつみ、及川光弘、丹波哲郎、他
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鬼才、石井輝男監督の最期の作品。去年亡くなっていたことは知りませんでした。

主演は「東京タワー」がベストセラーとなった役者ではないリリー・フランキーさんが主演。明智役には塚本晋也監督が役者として登場。他にも手塚眞監督や園子温監督や熊切監督なども出演。

映画はオウム真理教モノなどでもそうでしたが、手作り美術とアスペスト館協力のもとの舞踏、意味のない若い女性の上半身のヌード満載の石井ワールドが炸裂。

観てみると石井ワールドと江戸川乱歩のエロワールドは相性がいい、というか石井監督の力量なのかもしれませんが、作品と題材がフィットしている感じがある。

カメラやマイクは自主映画と同等の機材を使っており、ハード的には観ていられない作品だが、出演者の面々や作り手の情熱と美術でそれをカバーしている。

映画塾の生徒さんが多いとはいえ、これだけのスタッフをかかえて一ヶ月も撮影するのだから、恐らくギャラはないことを考えると目を覆いたくなるような劣悪な状況下での撮影だったことが想像される。

小規模映画はお金うぃお稼ぐことが目的はないとは思いますが、映画を作る=ご飯を食べて寝ることすら危うい状況、というのは避けなくてはならない。学生とかだったならいいとは思うのですが、30代、40代が必死になっていてもそんな状況から脱し得ないのは問題だ。そんなこともふと考えてしまう映画。


「盲獣VS一寸法師」公式サイト
http://www.fjmovie.com/ishii/mojuvs/

カフェー小品集

カフェー小品集カフェー小品集
嶽本野ばら

小学館
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「エミリー」に引き続き鑑賞。

他のレビューなどを読むと嶽本野ばら氏の文章は「くせがある」というようなことが書いてあったりしますが、すこぶるナチュラルに鑑賞。

最近はあまり開拓できていが「そういえば自分は喫茶店(カフェー?)好き」であったことを思い出す。

「カフェー小品集」とのことですが、それぞれの喫茶店での恋愛エピソードなどがエッセイのように連ねてある。普段、活字は字幕か小説ばかり読んでいるせいか意外に新鮮に思えた。

登場する喫茶店のなかの3件ほどは個人的に利用したことがあるだけに、その場の情景が思い浮かぶのと同時に、著者の嶽本野ばらさんもその場所にいた、という事実が作品に親近感を湧かせる。

ちなみに、先日、何年も前に入り口までま行ったけれど入ったことがなかった喫茶店にはいることが出来た。

思ったより素敵な雰囲気で雪のカマクラの中にいるような感じで間接照明に包まれている感じが心地よし。

火事だよ! カワイ子ちゃん

火事だよ!カワイコちゃん火事だよ!カワイコちゃん
Hori, Ma Panenko/The Fireman's Ball
1967年/チェコスロバキア・イタリア/71分
監督・原案・脚本:ミロス・フォアマン
原案・脚本・助監督:イヴァン・パセル、原案・脚本:ヤロスラフ・パポウシェク、撮影:ミロスラフ・オンジーチェク
出演:ヤン・ヴォストゥルチル、ヨゼフ・シェバーネク、ヨゼフ・コルプ、フランチシェク・スビェト、ヨゼフ・ヴァルノハ、他
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「勝手にミロス・フォアマン映画祭 第3弾」としてフォアマンのチェコスロバキア時代の「火事だよ! カワイ子ちゃん」を鑑賞。

フォアマンは当時フランスのヌーヴェルヴァーグの影響を受けた「チェコ、ヌーヴェルヴァーグ」の若手筆頭だったようです。日本ではちょうど「松竹、ヌーヴェルヴァーグ」として増村保造監督や中平康監督や大島渚監督などが活躍していた時代と重なるはず。

パペットなどのアニメではない実写のチェコ映画はお初だったのですが、結論から言うと色々不思議な映画だった。

まず、主要な登場人物の年齢が60歳以上で、しかもその数はたくさんだったこと。

プロットの展開からオチにかけてが均一に描かれていたこと。

低予算だとは思うが、画面の中には人があふれていたこと。

そして、転機となる火事のシーンがどうみてもCGでは無いのに一般人的な出演者が火の中からでてきたり、必要以上に体アタリだったこと。

良くも悪くも、僕の想像力を超えた映画だった。暗黙で「ここは流す感じだろう」というようなシーンでも力が入っていたし、観客の設定など、当時のチェコの文脈がわかればついていけたのかもしれませんが、とにかく不思議な映画でした。

チェコ映画、あなどれない。

プロフィール

「映画喫茶」は自主映画監督、酒井啓が鑑賞した映画や小説などについて綴った備忘録ブログです。プロフィールなどの詳細は下記公式サイトへどうぞ。
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