2007年07月

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ルネッサンス

RenaissanceRenaissance
ルネッサンス
2007年/フランス・イギリス・ルクセンブルグ/106分
監督:クリスチャン・ヴォルクマン
脚本:アレクサンドル・ド・ラ・パトリエール、マチュー・デラポルト
音楽:ニコラス・ドッド
声の出演:ダニエル・クレイグ 、キャサリン・マコーマック 、ジョナサン・プライス 、ロモーラ・ガライ 、イアン・ホルム 、ケヴォルク・マリキャン
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「新種のアニメ」のような触れ込みに乗せられて鑑賞。アニメの新作にはどうしても「アキラ」「攻殻機動隊」クラスの仕上がりを期待してしまうところがそもそもの間違いか。

なんというか全編ほとんど白と黒のコントラストだけで「色」がない、という意味では「スカイ・キャプテン」に通ずるところがあるが、「実写ベース」ではない。劇場のシネセゾン渋谷では、音が後ろから聞こえたことが印象的だったが、さして「まったく新しいアニメを観た」というようなありがたみは感じなかった。かといって過去のアニメの「焼き直し」感は画的にはなかったので新しい画だったのかもしれない。

プロット的には「どこかで観た感じのする」もので、斬新さなどは感じることはなかった。せっかく実写のような「重さ」がないのでスケールの大きな画がもっと欲しかったし、その画をプロットに緻密に入れ込んで欲しかった感が残る。

紙媒体でも、4色の印刷物でないと人になかなか手にとってもらえないことをなどを踏まえると、わざわざ1色の映画を作るのは、本来、相当の赤字の覚悟が必要だということを再確認することに。

「ルネッサンス」公式サイト
http://www.renaissance-movie.net/

ストロベリーショートケイクス

ストロベリーショートケイクスストロベリーショートケイクス
Strawberry Shortcakes
2006年/日本/127分/R-15
監督:矢崎仁司、製作:浅井隆
原作:魚喃キリコ「strawberry shortcakes」(祥伝社)
脚本:狗飼恭子
撮影:石井勲、音楽:虹釜太郎
出演:池脇千鶴、中越典子、中村優子、岩瀬塔子、加瀬亮、安藤政信、趙民和、他
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大学時代の学園祭の時にサークルで「三月のライオン」の上映を行い、その時にたしか監督を囲んで飲んだ記憶がある、矢崎仁司監督の最新作。

「花を摘む少女と虫を殺す少女」は観れていないものの、なんというか、私にとっての映画の原風景のような監督。

この作品を観ると、ことごとく「男」が出てこない。趙方豪さんの死後、男を撮るのはやめてしまったのかと、勝手に心配になったり。

単に美術の問題かもしれませんが、画が「矢崎監督作品」という感じがあった割には、画のつなぎは「新鮮」というよりは「ぎこちない」気がしたが、原作は魚喃キリコ氏の同名漫画であったことを、見終えてから思い出すことに。

個人的には女性のヌードやセックスシーンは大好きなので、とりあえずそんなカットは嬉しいが、やはり、プロットの設定にリアリティーを持たせるヌードは、役者的にはいいのかもしれませんが、なんというか「想定の範囲内」な気がする。やっぱり「無駄脱ぎ」でないどぐっと心を奪われることは少ない。

そういう意味では「中越さんや池脇さんも当たり前のように脱いでくれたらもっと良かったのに。」という気持ちはあるが、こういう「女の子が夜中に独りで観る映画」は、その作品のクオリティーに関わらず興行的には赤字になってしまうんだろうな、などと考えると俄然応援したいような気持ちになる。

矢崎監督の幻想=フィクションが、「魚喃キリコ」という価値を通して、
社会と折り合いをつけたような印象。嬉しいような悲しいような。

「ストロベリーショートケイクス」公式サイト
http://www.strawberryshortcakes.net/

バッシング

バッシングバッシング
Bashing
2006年/82分/日本
監督・脚本:小林政広
助監督:川瀬準也
撮影:斉藤幸一
編集:金子尚樹
出演:占部房子、田中隆三、香川照之、大塚寧々、加藤隆之、本多菊次朗、板橋和士、他
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以外とたくさん観ている小林政広監督作品。「海賊版 ブートレッグフィルム」「クロージングタイム」「女子社員愛欲依存症」「殺し」などの監督作品以外にも脚本参加として「夢ならさめて」「でらしね」「LUNATIC ルナティック」など多くの作品がある。

個人的には「海賊版=BOOTLEG FILM 」でガツんと捕まれ、それ以降、その監督名のクレジットを見つけられれば観るようにしている数少ない監督のひとり。

しかもこの作品は「半ドキュメンタリー」というか私が一番興味深く感じる分野、「ドキュメンタリータッチのフィクション」であったことからして思わず食いついてしまう。なんというか、例えばヒューマニズムのようなものを美化するようなことはなく、中立的な視線で映画が撮られているため、見終えたあとに自分の頭でいろいろ考えることができる、ありそうで、なかなかない映画。

個人の行動が国益に関与するようなことは、あまりないことだと思うが、この事件?の時には起こってしまった。当時の国民のバッシングはナショナリスティックな気がするが、想定外のことにヒステリーを起こしたにすぎないような気がする。「マスコミがおかしい」といっても、マスコミは視聴者・読者が求めているものを書き立てるわけだから、国民の意識の持ちようがバッシングを是認しているように思う。

「なれあい」は得意でも「責任」の意味を知らない日本人が、「自己責任」なんて言ったところで言葉が先走るだけだ。言葉の意味も分かっていない政治家などの発言があるのは、本来あり得ないことだし、それを堂々と報道するマスコミにも罪はある。しかもその報道を疑う意識を持たずに信じてしまう人々の多さにはもう脱帽するしかない。この映画が無能社会の循環を止める、ささやかなストッパーになることを願ってやまない。

久しぶりに大塚寧々さんを観ましたが、しっとりとした物腰が印象的だった。主演の占部房子さんは「ジュリエット・ビノシュに似ているなぁ」と一度思うと、それ以外には見えなくなる。そう思いはじめるとこの映画は「日本映画」というより「フランス映画というかヨーロッパ映画」のように見えてくる。「パリのシネマテークでこんな映画が上映されていそう」などと思ったり。

「バッシング」公式サイト
http://www.bashing.jp/

パビリオン山椒魚

パビリオン山椒魚 プレミアムエディションパビリオン山椒魚 プレミアムエディション
2006年/日本/98分
監督・脚本:冨永昌敬
製作:松下晴彦、御領博
撮影:月永雄太
音楽:菊地成孔
出演:オダギリジョー、香椎由宇、高田純次、麻生祐未、光石研、KIKI、キタキマユ、斉藤陽一郎、杉山彦々、津田寛治、他
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率直なところ好きな映画だったが、観ていて入り込めず、不思議とあまり楽しめない映画だった。自分が作ってみたい映画と、観て楽しめる映画に隔たりがあることを今更ながら発見することに。

富永監督の「亀虫」は漫画家の安彦麻理江さん見たさに観ていたが、こんなに注目される監督になるとは気づかなかった。

この「パビリオン山椒魚」を観ていて思い出したのは後期鈴木清順作品。斉藤陽一郎さんなど青山組の影響が強いののかと思いきや、かつての荒戸源治郎プロデュース作品を観ているようなところが印象的だった。

映画にのめり込むにはある程度ディープで複雑な世界が必要でかつその世界に軽快さを同時に含ませるのは困難だな、など考えさせられた一本。

やっぱり「表層的な解釈と裏の解釈」というように分けられたものではなく、観たとおりの画が、深くもあり浅くもあるような映画を作りたい、と思うが、これに一番近いのは、「希望を感じるドキュメンタリー作品」なのだろうか。

「パビリオン山椒魚」公式サイト
http://www.pavillion.jp/

ベニーズ・ビデオ

ベニーズ・ビデオ
BENNY'S VIDEO
1992年/オーストリア/105分
監督:ミヒャエル・ハネケ
製作:ファイト・ハイドゥシュカ、ベルナール・ラング
製作総指揮:ミヒャエル・カッツ、ゲブハルト・ツパン
脚本:ミヒャエル・ハネケ
撮影:クリスチャン・ベルジェ
プロダクションデザイン:クリストフ・カンター
出演:アルノ・フリッシュ、アンゲラ・ヴィンクラー、ウルリッヒ・ミューエ、他

この「ベニーズビデオ」は「隠された記憶」と同様に少年犯罪を扱ったミハエル・ハネケ監督作品。 両方観ると「ベニーズビデオ」を魅せる映画として洗練させたのが「隠された記憶」となった印象がある。

実話かどうかはわかりませんが、作中でもたびたび映されるような「ニュース」に高い関心をもっているハネケ監督が当時の関心事をぶつけた作品のよう。

オープニングの高速道路、洗車、のあたりの映像でなんというか「ドイツやロシアっぽい感じ」がした。フィルムの質感と黄色い文字がそんな効果を出しているのかもしれないが、例えば同時代の北野武監督の「ソナチネ」と比べても単に「その時代だから」ではないことが分かる。

子供が主人公となっていたので「子供は純真だ」といったヒューマニズムのようなオチになるかと一瞬心配したがハネケ監督は裏切らなかった。

特に後半で、青年が銀行強盗+自殺を図るシーンはとってつけたといえばそんな気もするが、観ている最中はこの映画の不確定性のようなものが感じられて楽しめた。

劇中のニュース映像で、少年がテレビに映っているシーンがあったが、このシーンは黒沢清監督の「ニンゲン合格」で主人公のお父さんが新興宗教の集まりで海外にいる時に、何かの事故に巻き込まれた時のニュース映像を思い出させた。ハネケ監督作品にもベタじゃなくて驚きに近いようなユーモアがあればもっとファンは増えるのではなどと思ってみたり。

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