2007年09月

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君とボクの虹色の世界

君とボクの虹色の世界君とボクの虹色の世界
ME AND YOU AND EVERYONE WE KNOW
MOI, TOI ET TOUS LES AUTRES
2005年/アメリカ/90分
監督・脚本・出演:ミランダ・ジュライ
製作総指揮:ホリー・ベッカー、ピーター・カールトン、他
撮影:チューイ・チャベス、音楽:マイク・アンドリュース
出演:ミランダ・ジュライ、ジョン・ホークス、マイルス・トンプソン、ブランドン・ラトクリフ、カーリー・ウェスターマン、ヘクター・エリアス、ブラッド・ヘンケ、ナターシャ・スレイトン、他
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ガーリーな映画。 こういう恋愛至上主義的な映画を観ていると、世界で起こっている「戦争」なんてどうでもいいような気がしてくる。女子高生に「オッパイ見せろ」とかメッセージを出している中年はどうなのか、と思うが、近所の少年をフェラったり、そのメッセージに乗ってしまう女子高生ってどうなんだろう、という気はした。これが邦題で言うところの「虹色の世界」なのだろうか。

スカトロっぽい言説も、子どもを持ち出すことでさわやかなユーモア感をだしている。そんなことを考えると、この映画は「ちょっとスレた女の子」や「なよった男の子」の為の映画なような気がする。

主演で監督脚本のミランダ・ジュライの魅力が全開だったが、もう少し造形的に美しかったら上品な映画になるような気もする。監督&主演の映画は日本では北野武や塚本晋也を思い出すが、女性ではなかなかいないので、存在しているだけで貴重な価値があるようにも思う。

個人的には上記のエロシーンが具体的に生々しく描かれていたら、18禁にはなってしまうとは思うが、映画として魅力的になっただろうことを考えると惜しい一本ではあるように思う。

「君とボクの虹色の世界」公式サイト【英語】
http://www.meandyoumovie.com/

「君とボクの虹色の世界」公式サイト【フランス語】
http://www.mk2.com/datamk2/sitesfilms/moitoi/home.html

キング 罪の王

キング 罪の王キング 罪の王
THE KING
2005年/アメリカ/105分/R-15
監督・脚本:ジェームズ・マーシュ
脚本:ミロ・アディカ
撮影:アイジル・ブリルド
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ウィリアム・ハート、ペル・ジェームズ、ローラ・ハリング、ポール・ダノ、他
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題名さえよくわからないまま、ウイリアム・ハートが出演している90分ものの映画、ということで鑑賞。

ウィリアム・ハートくはマヌエル・プイグ原作の映画「蜘蛛女のキス」のたしかモリーナ役を観て以来、珍しくファンになったが、今回の作品は、デヴィッド・クローネンバーグ監督の「ヒストリー・オブ・バイオレンス」での役柄に似ていた(製作年は同年)のは少し残念だったところ。彼は徐々にマイルドなホプキンス氏に近づいているような気がする。

映画はなんというか、善くも悪くも「題名通り」だったが、カソリックを持ち出すあたりで題名を知っていたら展開が読めてしまう(最初から)気はした。

主演のガエル・ガルシア・ベルナルのために作った映画のような感じだが、彼はなんというかデビューしたての木村一八氏を思い出させた。観ていて若干唐突感はあったが、役負けすることなく演じていたようにも思う。

脚本をもう少し頑張っていたらもっと面白くなったように感じる一本。

暗殺者のメロディー

暗殺者のメロディー暗殺者のメロディー
The Assassination of Trotsky
1972年/フランス・イタリア・イギリス/104分
製作・監督:ジョセフ・ロージー
原作・脚本:ニコラス・モスレー
撮影:パスカリーノ・デ・サンティス、ヴィットリオ・ストラーロ
音楽:エジスト・マッキ
出演:アラン・ドロン、リチャード・バートン、ロミー・シュナイダー、ヴァレンティナ・コルテーゼ、ジャン・ドザイー、他
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ジョセフ・ロージー監督を知らず、主演のアラン・ドロンのジャケと「暗殺者のメロディー」という邦題に惹かれて観てみることに。

まずオープニングあたりから、近年めっきり見られなくなった「ズームカット(アウト)」が連発し、70年代的なシーン作りにノスタルジーを感じる。

実際は20年の服役後にスターリンによって勲章を受けたラモン・メルカデル(ジャクソン)役を演じたアラン・ドロンのさえない暗殺者っぷりに多少辟易としたが、リチャード・バートンのスケールの大きい演技っぷりやヴァレンティナ・コルテーゼの美貌にうっとりとしてしまうシーンも多々あり、シリアスな心理サスペンスものを充分堪能する。

72年公開の映画なので、デビュー10数年のアラン・ドロンは「難しい役所に挑戦」といった感が当時はあったことが予想されるが、まわりの上記のような役者とは善くも悪くも違う存在感を放っていたように感じられた。

製作も兼ねた、監督のジョセフ・ロージーの気合いの演出が感じられる印象的な1本。

ゲルマニウムの夜

ゲルマニウムの夜 デラックス版ゲルマニウムの夜 デラックス版
The Whispering of the gods
2005年/日本/107分
監督:大森立嗣
製作総指揮:荒戸源次郎
原作:花村萬月「ゲルマニウムの夜」(文藝春秋)
脚本:浦沢義雄
音楽:千野秀一
出演:新井浩文、広田レオナ、早良めぐみ、木村啓太、大森南朋、大楽源太、山本政志、三浦哲郁、麿赤兒、石橋蓮司、佐藤慶、他
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当時は公開前だったが、ひょんなことから五反田のイマジカの試写室でこの「ゲルマニウムの夜」を観ることに。

荒戸源次郎プロデュース作品は「ツィゴイネルワイゼン「陽炎座」「夢二」」の大正ロマン三部作や「赤目四十八瀧心中未遂」(監督作品)などが特にお気に入りだったので、期待して観てしまった。

印象としては、ピュアかつコアな感じ。過剰を抑えたストイックな演出が印象的。なんというか観ていてペニスが「キュン」となった珍しい映画。

この作品は上映前から、上野公園内の「一角座」のみで、半年以上上映することが決まっていたが、単館で長くやるのが現在の日本の映画界に対する挑戦なのは疑問だ。作り手としては映像も音も支配したいしたいことは吝かでないが、長い期間上映してくれるのは嬉しいばかりだが、観る側から考えると「上野まで脚を運べ」というのは東京圏内で生活していない者をないがしろにしているように感じられる。上映形態に関しては謎が残る作品だが、映画は人間の「余白」を感じる自分好みの作品で大満足。

個人的に荒戸源治郎映画事務所に関わることができなかったのは残念だが、別の機会を自分で作っていかなくてはいけない。

内容的には「ラジオの音?」の存在が気になる。映画でそれを聞かせないのはとても安直な解決策なので、お金を払って観るんだったら大森監督の「あっと驚く」演出も観てみたかった。

原作の花村萬月氏は他には、最近は特に「読み物的」な作品を量産し続けているが、この作品は珍しく作者の本気モードを感じる作品で、かつ、芥川賞受賞作品。

「ゲルマニウムの夜」公式サイト
http://www.aratofilm.com/index.htm

パプリカ

パプリカパプリカ
Paprika
2006年/日本/90分
監督・脚本:今敏
アニメーション制作:マッドハウス
原作:筒井康隆『パプリカ』(中公文庫/新潮文庫)
声の出演:林原めぐみ、古谷徹、江守徹、堀勝之祐、大塚明夫、山寺宏一、田中秀幸、こおろぎさとみ、阪口大助、岩田光央、愛河里花子、太田真一郎、ふくまつ進紗、川瀬晶子、泉久実子、勝杏里、宮下栄治、三戸耕三、筒井康隆、他
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たしか去年、テアトル新宿で予告編を見て「夢がこぼれる話なんて」とガッチリ喰いついたものの、何故か劇場公開を見逃しようやくDVDで鑑賞。

今敏監督の前作「東京ゴットファーザーズ」ではホームレスが主人公というある意味設定自体が野心的な作品だったが、今回は「ありがち」といえばそんな感じの近未来的な設定。

見終えて感じたのは「東京ゴットファーザーズ」でもそうだったが(「PERFECT BLUE」「千年女優」は観たけど忘れてしまった)プロットの展開にリズムがあって、本で言うならば「ページを捲りやすい」感じの映像に仕上がっていること。

物足りなかったところとしては、作品自体のスケールが押井作品や宮崎作品のように「文明とは」「インターネットとは」といった大きいテーマがなかったように感じたところ。ディテイルや機微で観れるのですが、トータルでの満腹感がないのはそのためだったような気がする。

「夢」だったらユングをだしてみるなり、広がりの可能性があるテーマであるだけに、原作者と監督にその素養がないためか、「深いテーマを浅く掘った」印象が残る映画になってしまった。

それと、カッコいい映像ではありましたが、特に夢の部分が「どこかで観たことがあるような映像だった」こと。テレビ作品じゃなくて映画なのでそこらへんは求めないわけにはいかない。

ただ、何のひねりもない、かんたんなオチではあったが、ヒューマニズム的には今監督のテイストが出ていた作品だったようには思うので、「PERFECT BLUE」「千年女優」「東京ゴットファーザーズ」などの今敏監督作品のファンはこぞって観るべき。


「パプリカ」公式サイト
http://www.sonypictures.jp/movies/paprika/

クリムト

クリムト デラックス版クリムト デラックス版
KLIMT
2006年/オーストリア・フランス・ドイツ・イギリス/97分/R-15
監督:脚本:ラウル・ルイス
撮影:リカルド・アロノヴィッチ
音楽:ホルヘ・アリアガータ
出演:ジョン・マルコヴィッチ、ヴェロニカ・フェレ、サフロン・バロウズ、スティーヴン・ディレイン、ニコライ・キンスキー、サンドラ・チェッカレッリ、ポール・ヒルトン、エルンスト・ストッツナー、アグライア・シスコヴィッチ、他
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ハッキリとした展開が好きな人は退屈かもしれないが、コンセプト的には、すき放題幻想的な映像を連ねられる設定は美しく感じた。

それと主演の「マルコヴィッチの穴」などのジョン・マルコヴィッチの佇まいから、目つき、所作、声、話し方などどれをとっても魅力的で、そんな彼の実力がいつまでも観れる映画。

夢遊的な回想シーンが続くので、脈絡の展開が無いところは弱点かもしれないし、マルコヴィッチ氏の魅力は出ていても、それがクリムトのそれではないようにも観れてしまうところは、問題なのかもしれない。

個人的にはちょうど「マルホランド・ドライブ」や「インランド・エンパイア」などのデビッド・リンチ監督作品のように、音楽を鑑賞するように映画を鑑賞できて気持ちいい。しかも登場する女性が布切れ一枚身に纏わないヌードモデルが多く、いわゆる濡れ場のような感じではなく、裸婦が映画に馴染んでいて、その点も観ていて気持ちがよい。

監督のラウル・ルイスはチリ人の監督のようで、他にはプルーストの「失われた時を求めて」の映画版の監督も務めている。

先に映画「エゴン・シーレ」を観ると、シーレ役のニコライ・キンスキー氏が軽く見えた。ちなみにこのニコライ・キンスキーの義姉は「パリ・テキサス」などのナスターシャ・キンスキー。父親は寺山修二の「上海異人娼館/チャイナ・ドール」にも出演しているクラウス・キンスキー氏。

「クリムト」公式サイト
hhttp://www.klimt-movie.com/

愛するSEX

愛するSEX愛するSEX
SEXO CON AMOR
2003年/チリ/90分
監督・脚本:ボリス・ケルシア
製作:ディエゴ・イスキエルド
撮影:アントニオ・ケルシア
出演:シグリッド・アレグリア、ボリス・ケルシア、他
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邦題は「愛するSEX」だが、どちらか言うと「愛のあるSEX」といった感じで、ジャケの印象とは裏腹に、比較的真面目なヒューマンドラマだった。

DVDの裏ジャケには「チリで空前の支持を集めた!」というようなキャッチに踊らされ「意識的にチリ映画を観た事がない」→「どんな映画だろう?」というような流れで鑑賞することに。

使用言語はスペイン語だったが、スペイン語自体が、イタリア語とフランス語を足して2で割った感じで、普段耳にしない言語だけに、それだけで印象的。

映画自体は思ったより普通で、脚本の構成・演出もオーソドックス。ただ、おそらくカソリックの国、チリは「性」に関して保守的な態度が多いらしく、女性のパンツ越しの股座カットの数などが以外と多く、局部アップは誰のものであっても、然程変わらないことなどを再認識することに。

個人的には「性」の扱い方に興味があったが、サスペンスとエロスを一体化されるよりは、ヒューマンドラマとエロスが合体している方が個人的に好みであることを認識させられた。

ヒューマンドラマの体裁になっているため、ひとまず、性に疎い「箱入娘」はオススメの一本。スタイリッシュなものが好みの方には、マイケル・ウィンターボトム監督の「I want you」をお勧める。大島渚監督の「愛のコリーダ」並に映画の作品内で前張りなしで本番をしているようです。

見つめる女

見つめる女見つめる女
LA SPETTATRICE
THE SPECTATOR
2004年/イタリア/98分
監督・脚本:パオロ・フランキ
脚本:ハイドラン・シュリーフ、ディエゴ・リボン
撮影:ジュゼッペ・ランチ、音楽:カルロ・クリヴェッリ
出演:バルボラ・ボブローヴァ、アンドレア・レンツィ、ブリジット・カティヨン、キアラ・ピッキ、マッテオ・ムッソーニ、ジョルジオ・マルケージ、他
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「イタリア映画」といえば、アントニオーニ、フェリーニ、ロッセリーニ、パゾリーニ、オリヴェイラ、ベルトルッチなどのビックネームをすぐさま思い浮かべますが、逆にいうとそれ以外の作家の名前はなかなか聞く機会がない。最近(2000年以降)のイタリア映画ではアゴタ・クリストフの「昨日」を映画化した、「風の痛み」があるが、いい映画だとは思いますが、作家性を感じる程の作品ではなかったようにも思う。

そんな中で、ちょっとしたいやらしさと作家性を求めつつこの「見つめる女」を鑑賞。

結果的には、まさに「見つめる女」という感じの映画で、善くも悪くもそれ以上でもそれ以下でもないように思う。ラストのあたりで「10cc」の「I'm not in love」が流れた時には正直「どうしよう」とも思ったが、「軸がぶれない」といえばそういう映画。

個人的には、こういう脚本がシンプルなつくりの映画は主演の魅力次第で作品のできが大きく変わる映画のように思う。そういう意味では、モノローグ的な恋愛感で突っ走れる感じが、精神年齢の低さを関させ、かつ、ちょっと鼻が上えを向きつつある感じが「スパイダーマン」のキルスティン・ダンストを彷彿とさせる、バルボラ・ボブローヴァはチャーミングに映っていたようには思う。

仮にこの映画、舞台が日本であっても、大学卒業直後というよりは、大学入学直後くらいの恋愛感だったようにも思うのは私だけだろうか。

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