鬱
![]() | 鬱 花村 萬月 双葉社 Amazonで詳しく見る |
ある小説家志望の男の子の青春もの? 600頁弱だったと思うけど長さは気にならない。先に先に「読ませる」文章力は健在。本人は「ガス抜き」的にこの小説を書いた部分もあるよう。
他の花村作品に見られるように「ニーチェ」や「キリスト教」についての言及が節々に見られ、娯楽(性楽?)作品にそれ以上の世界観を与えている。
そのニーチェなどの言説が小説のコンテクストの中で語られる手法だけれど、苦にならない、というよりすんなりと入ってきて気持がよいのです。
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ある小説家志望の男の子の青春もの? 600頁弱だったと思うけど長さは気にならない。先に先に「読ませる」文章力は健在。本人は「ガス抜き」的にこの小説を書いた部分もあるよう。
他の花村作品に見られるように「ニーチェ」や「キリスト教」についての言及が節々に見られ、娯楽(性楽?)作品にそれ以上の世界観を与えている。
そのニーチェなどの言説が小説のコンテクストの中で語られる手法だけれど、苦にならない、というよりすんなりと入ってきて気持がよいのです。
![]() | ハムレット ゴーズ ビジネス Hamlet Goes Business 1987年/フィンランド/86分 監督・製作・脚本:アキ・カウリスマキ 撮影:ティモ・サルミネン 出演:ピルッカ・ペッカ・ペテリウス、カティ・オウティネン、他 Amazonで詳しく見る |
脚本もよくできてるし撮りかたもいいと思うのだけど、今となっては見る前に勝手に期待してしまう「カウリスマキ的なもの」を観れないと「物足りなさ」に近いものを感じてしまいます。
そうとはいえ、ハリウッドでぱっとしなかったサスペンスを観るよりは明らかに面白い作りになっているのは「さすが」の一言。
![]() | マッチ工場の少女 Tulttikkutehtaan tytto (The Match Factory Girl) 1990年/フィンランド/70分 監督・製作・脚本:アキ・カウリスマキ 撮影:ティモ・サルミネン 出演:カティ・オウティネン、エリナ・サロ、エスコ・ニッカリ、他 Amazonで詳しく見る |
ひとことで言えば「ダサイ」というか「スタイリッシュではない」ということなんだけど、別にそういうものを目指しているものではないはずなのでいいのですが。
あとこの映画の題名の「少女」役らしいカティ・オウティネンがどう見ても少女には見えない。むしろ熟女。他に「この人が少女ではないだろう」「他に少女役がいるに違いない」といった気持ちを押さえられなかった。
そんな画の雰囲気もあいまってか、「とても暗い」、というか「やり場のない」感じで観ました。カティ・オウティネンがとても痛々しいのです。後でポスター、ビデオのパッケージ画像を見ると、「どうやらコメディ(ブラック?)」でもあったらしいことを発見。
他の多くのアキ・カウリスマキ作品のようにカティ・オウティネンが体現するカウリスマキ演出が全編にわたって炸裂していました。
ワンテイクが長いわけでもないのですが「簡単に」撮っているカメラワークもカウリスマキ作品的。
![]() | ソラリス <特別編> Solaris 2002年/アメリカ/99分 監督・脚本:スティーブン・ソダーバーグ 製作:ジェームズ・キャメロン、他 原作:スタニスワフ・レム 撮影:ピーター・アンドリュース 出演:ジョージ・クルーニー、ジェレミー・デイビス、ナターシャ・マケルホーン、ヴィオラ・デイヴィス、ウルリッヒ・トゥクール、他 Amazonで詳しく見る |
省略が多く分かりそうでわからない、でも違和感はない。というような感覚。これが余韻なのか?
DVDをコメンタリーで観ていたら、たしか粗編集が終わった段階では完成品の3倍も尺があり、もともとこの映画版権をもっていた、製作のジェームス・キャメロンに「もっと切れ」みたいなことを言われ、現在の尺になったようだが、完成品を観たキャメロンは「切り過ぎだ」と思ったそうで、これくらいのバジェットの作品で1/3って演出の転換では? とも思うのですが、ソダーバーグ監督のストイックというか贅沢な編集を感じます。
画は全体的にスタティックで安定感のあるものが積み重ねあげられとても完成度が高い。
ストーリーはあやういと言えばかなりあやういように思いますが、僕には好印象で、「違うもの」と言われているけれど、タルコフスキー版も早く観たくなってしました。
それにしてもこの映画の音楽、素晴らしい。
![]() | ペイチェック 消された記憶 PAYCHECK 2003年/アメリカ/118分 監督・製作:ジョン・ウー 原作:フィリップ・K・ディック 脚本:ディーン・ジョーガリス 撮影:ジェフリー・L・キンボール 出演:ベン・アフレック、アーロン・エッカート、ユマ・サーマン、他 Amazonで詳しく見る |
主演はベン・アフレック。彼の出演作は初めて見たのですが、「軽いけどいい奴でまじめ」な性格、ハリウッド的?がハマっていたように思う。
それと比べると、ユマ・サーマンの方は、本人の意向ではないようだが、一連のタランティーノ作品の影響で、アクション俳優、のようなイメージも強いせいか、その部分は活かされていたと思う。
個人的には、夫のイーサン・ホークと競演したリチャード・リンクレイターのDV作品「テープ」などの「しっとりとした演技」が好みなのですが。
それにしても「キル・ビル2」あたりから「バロン」の貝殻から生まれたての姿の彼女とのギャップをとても感じてしまうのは私だけだろうか? 「パルプ・フィクション」の頃の彼女とね。
![]() | ねこぢる草 Cat Soup 2000年/日本/33分 監督・脚本・構成:佐藤竜雄 原作:ねこぢる(月刊ガロ・青林堂) 構成・脚本・作画:湯浅政明 音楽:手使海ユトロ キングレコード Amazonで詳しく見る |
何年か前に「CD-ROM漫画」のようなものが少し流行って、その時の「BGM入り漫画」は見たことがあるけれど、動く「にゃっ太」と「にゃー子」が見れたのは驚きだった。それと鳴き声。にゃ~。
![]() | この世の外へ クラブ進駐軍 2003年/日本/123分 監督・脚本:阪本順治 プロデューサー:椎井友紀子 撮影:笠松則通 出演:萩原聖人、オダギリジョー、松岡俊介、MITCH、村上淳、他 Amazonで詳しく見る |
公開当時は「オダギリ・ジョー」の出演や「ジャズ」の演奏シーンなどが話題になりましたが、観終えるとふと「戦場のメリークリスマス」なんかを思い出しそうになりました。ちがうのだけれど。
群像劇として役者陣が魅力的に描かれていたのが印象的。「顔」のインパクトにはかなわないかもしれないけれど、そこらへんはジャンルが違う、ということで。
![]() | ブラウン・バニー The Brown Bunny 2003年/アメリカ・日本/90分 監督・製作・脚本・撮影・美術・編集・衣装:ヴィンセント・ギャロ 音楽:ゴードン・ライトフット 出演:ヴィンセント・ギャロ、クロエ・セヴィニー Amazonで詳しく見る |
クロエ・セヴィニーとのフェラチオからの口内射精にはちょっとびっくりしましたが、ヴィンセント・ギャロが主演で監督ならこんな映画も成立するのかなぁ、という感じです。日本ではモザイク処理が大きく入りますが、海外ではそれこそモロだしになると思うのでどうなんでしょう。
構成や語り口などが斬新というわけではないと思う。ヴィンセント・ギャロが好きは人にはいいのだろうか。「バッファロー’66」の驚きにはかなわなかったが、嫌いな作風ではない、というかロードムービーが単に好きということなのか。。
![]() | ビッグ・フィッシュ コレクターズ・エディション Big Fish 2003年/アメリカ/125分 監督:ティム・バートン 原作:ダニエル・ウォレス 脚本:ジョン・オーガスト 撮影:フィリップ・ルースロ 出演:ユアン・マクレガー、アルバート・フィニー、ジェシカ・ラング、ヘレナ・ボナム=カーター、スティーヴ・ブシェミ、他 Amazonで詳しく見る |
この作品の魅力は出演者のユアン・マクレガーや監督のティム・バートンも言っていましたが、ティム・バートン的なファンタジーを損なうことなく「物語」を描いていること。
いわゆるファンタジーの部分でも全くありえない絵空事ではなく、どこか物語の中で現実味を帯びていて、同じ物事を描いた映像でも、現実的な側面と、非現実的(ファンタジック)な側面からの両方からのアプローチがあると、表現として豊なものになるところにあるように思う。
どちらかといえばファンタジックな表現のほうが他の映画監督と比べても表現として抜きに出ているとは思いますが。
![]() | APPLESEED 2004年/日本/103分 原作:士郎正宗 製作:曽利文彦 監督:荒牧伸志 音楽:Boom Boom Satellites 声優:小林愛、小杉十郎太、松岡由貴、他 Amazonで詳しく見る |
気の強い女の子が主役、というのは「攻殻機動隊」にも通じますが、こちらの方がベタた意味でのアニメの画に近いタッチでキャラクターを描いていたように思います。ここらへんは作画監督の違いによるものか…。
プロットが「古風」というより「保守的」な感じがしましたが、こういうのは観る側の勝手な期待なのだろうか。そうこういいつつも最後まで一気に観てしまい。観せ方などの完成度は高い、ということか。
![]() | 過去のない男 Mies Vailla Menneisyytta 2002年/フィンランド・ドイツ・フランス/97分 監督・製作・脚本:アキ・カウリスマキ 撮影:ティモ・サルミネン 出演:マルック・ペルトラ、カティ・オウティネン、アンニッキ・タハティ、ユハニ・ニユミラ、他 Amazonで詳しく見る |
カウリスマキの演出は脚本(テキスト)を厳格に再現するものと、大枠だけつくっておいて即興を交えて細部まで作り上げる手法の2つがあるようですがどっちにしても、画面に現れる役者は説明的な台詞を省き「多くを語らない」、北野武にも通ずるような、一見シラけた演出はわれわれだけに馴染みのあるものなのだろうか?
いずれにせよ、よけいなものがなく、必要なものだけが結果的に必然的にそこにある、というように気張ったりすることなく、そこにあるものを心地よく受け入れることができる。
シンプルでわかりやすいのだけど、明らかにしようとするとつかみどころのないところが魅力。
こういう地味な作品が評価されるのをみると分かりやすくなくても国籍を超えて普遍的に伝わる「何か」は確実に存在していることを再確認できてほっとします。