2007年05月

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マイ・プライベート・アイダホ

マイ・プライベート・アイダホ デジタルリマスター版2枚組<br />【初回限定生産 メモリアル・フォト集付】マイ・プライベート・アイダホ デジタルリマスター版2枚組【初回限定生産 メモリアル・フォト集付】
My Own Private Idaho
1991年/アメリカ/105分
製作・監督・脚本:ガス・ヴァン・サント
音楽:ビル・スタッフォード
出演:リヴァー・フェニックス、キアヌ・リーヴス、ジェームズ・ルッソ、ウィリアム・リチャート、キアラ・カゼッリ、他
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観た映画では「ドラッグストア・カウボーイ」初期ジャームッシュ的というか、初期コッポラ的というか、いわゆる「奇才」の印象のあるガス・ヴァン・サント監督。「エレファント」では2003年のカンヌ映画祭でパルムドールを取っていましたが、ヨーロピアンなタッチ=アンチ・ハリウッド的=純映画的な映画を撮ってくれる監督の印象があり、この未見だった「マイ・プライベート・アイダホ」もそんなタッチを期待しつつ鑑賞。

リヴァー・フェニックス、キアヌ・リーヴスとかハリウッド的な役者が出ているなぁと思っていたら、テイストはハリウッド的というか、かなり演劇的で映画的な映画を期待していた自分にはかなり拍子抜けの演出だった。チャレンジャーというか節操がないというかきっといろいろやる監督さんなのでしょう。そうじゃないとなかなかチャンスすらつかめないのかもしれないが。

観ていて思ったのは思っていた以上にリヴァー・フェニックスがジョニー・デップに似ているように感じたこと。また、それとは別に、この作品の役柄はリヴァー・フェニックスにハマッテいた、というか、恐らく身を削りながらの役作りだったのでは? と想像してしまったこと。

それと意外とキアヌ・リーヴスには個性がある、というか、どこにいっても「キアヌ・リーヴス」な人なんだろうなということがわかったこと。たしかマトリックスの前の作品なので、それ程世界的にはまだ売れていない頃だったと思うが、大根といわれればそうかもしれないが、西洋人ながらレバノンで生まれているようにどこかオリエンタルなものを感じさせるキアヌの魅力は現れていた映画だった。

作り、構成はハリウッド的で紋切り型のような気は少ししたが、映画としては91年なら今よりマイノリティーであったはずのゲイを描いている割には役者の力もあってか文字通りメジャー感の漂う映画でそれだけでも新鮮。

アイズ ワイド シャット

アイズ・ワイド・シャットアイズ・ワイド・シャット
Eyes Wide Shut
1999年/アメリカ/159分/R-18
監督・脚本:スタンリー・キューブリック
原作:アルトゥール・シュニッツラー
撮影:ラリー・スミス
出演:トム・クルーズ、ニコール・キッドマン、シドニー・ポラック、トッド・フィールド、マリー・リチャードソン、他
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言わずと知れた、スタンリーー・キューブリック監督の遺作。最近はローマ字のまま「クーブリック」と発音しているらしい。

「2001年宇宙の旅」「フルメタルジャケット」「シャイニング」「時計じかけのオレンジ」などを好む人はこの「アイズ・ワイド・シャット」を好かない人が多いように思う。

個人的には「神」のような目線で映画を撮るキューブリックと、ちょっとおばかなトム・クルーズのブレンドは単に組み合わせだけでも想定外。

ニコール・キッドマンは妖艶で美しいですが、マヌケなトムと結婚して子供までいることを考えると「所詮こんな男が趣味の女か」などとつい大きな態度にでたくなる。

やっぱりこんなハリウッド俳優夫婦を「浮気するかも」くらいのことでベッドでだらだらさせるのは面白い。同じことを所謂自主映画でやっても面白くはならないとは思うが、そうなると、自主の場合はこれの逆をやればいい、ということか。

思い返せばこれで鑑賞するのは3回目くらいだが、不思議と飽きがこない。

他のキューブリック作品と比べるとその切り口が一線を画する作品だが不思議と「こんな形で煙に巻かれてたまるものか」という気持ちにさせられる力が大きい作品のように思う。なかなか映画を観ていてそんな風に考えられることはないので貴重な作品。この映画自体が頓知になっているように感じるところが他の映画では味わえない魅力。

「アイズ ワイド シャット」公式サイト
http://eyeswideshut.warnerbros.com/

海猫

海猫海猫
2004年/日本/129分/R-15
監督:森田芳光
原作:谷村志穂「海猫」(新潮社)
脚本:筒井ともみ
撮影:石川稔
音楽:大島ミチル
出演:伊東美咲、佐藤浩市、仲村トオル、ミムラ、小島聖、角田ともみ、蒼井優、鳥羽潤、深水元基、三田佳子、白石加代子、他
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「のようなもの」「家族ゲーム」「失楽園」「阿修羅のごとく」などの森田芳光監督の、ある意味「今時には珍しい純愛映画」。

作品を鑑賞すると、良くも悪くも「昭和の漁村」ってこんな感じだったんだろうなぁ、ということを思い起こさせる作品。音楽で言えばこぶしがきいた感じ。

でもやっぱり「今、何故この作品なんだろう」感は否めない気がする。びっくりする程「保守的」を絵に描いたような村社会の悲劇を描くことの現代性が見えてこない。

もちろん映画初主演となる伊東美咲さんは頑張っていたけれど、脱げばいいわけではないが、脱ぐほどではなかったし。やっぱり個人的に観る側としては「脱いではいるけれど、いやらしくはない」ような人間ドラマを観たいので、そういう意味ではそもそも彼女の気合いが足りなかったのでは、という気はする。

周りの脇を佐藤浩市さんや白石加代子さんなどの確かな演技で魅せる役者さんに囲まれているとなおさらそんなことを思ってしまう。いくら深津絵里さんなどの数々の映画女優を発掘してきた森田監督の演出をしても、なんというか痛々しさを感ぜずには居られなかったのが印象的だった。

これもこの前観た「父と暮らせば」のように脚本が甘い、というか原作の小さな世界観に映画が制限されてしまっていることのような気もする。映画的というよりテレビの特番か何かでやればいいのに、と思わずにはいられない。

あまり期待していなかった割には比較的観てガッカリした映画。森田監督が原作を読んで自ら映画化を思い立った、というエピソードがよくわからない。もちろん、制作スタッフさんや関係者の方々は
「良い映画」を作ろうと必死で頑張っていたとは思うが、やっぱり、良い映画にしよう、と作り手が思わない映画はほとんどないわけだし。

「海猫」公式サイト
http://umineko.biglobe.ne.jp/

乱歩地獄

乱歩地獄 デラックス版乱歩地獄 デラックス版
2005年/日本/135分/R-15
監督:竹内スグル、実相寺昭雄、佐藤寿保、カネコアツシ
原作:江戸川乱歩
脚本:竹内スグル、薩川昭夫、夢野史郎、カネコアツシ
撮影:竹内スグル、八巻恒存、芦澤明子、山本英夫
衣装:北村道子
出演:浅野忠信、成宮寛貴、松田龍平、森山開次、shan、市川実日子、吉行由実、寺島進、岡元夕紀子、大森南朋、緒川たまき、他
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何年か前にテアトル新宿でロードショーしていた「乱歩地獄」をようやく鑑賞。この映像作品集は乱歩作品のオムニバス形式になっている。

江戸川乱歩原作ものでは実相寺昭雄監督の「屋根裏の散歩者」石井輝男監督の「盲獣VS一寸法師」などを鑑賞しているが「是非原作を読みたい」と思わせる作品ではなかったのでそんなことを期待しつつ観ることに。

特に「芋虫」「蟲」観ていて思ったのは私がかつて撮った「液体と傷」は映像的にはこんな感じのことをやろうとしていたことを確認してしまった。

「プロットがない中で2人の女がモノローグ的に会話をしていく様子はその人個人の社会性を排除してしまうと、結果的に残るのはエロティックなものだった」ということが、乱歩原作の作品にも感じられ新鮮だった。

同時に、自分が撮るなら乱歩もののような作品を撮りたいが、自分が観て面白いと感じる作品は違うテイストであることも確認させられた。「こういうの好きだけど、面白くはない」などと他人事のように思いそうになるがそうではない。

個人的には「芋虫」の岡元夕紀子さんと「蟲」の緒川たまきさんの演技が好印象だった。「美しい人はただそこにいるだけで美しい」なんて言葉を思い出してみたり。

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