2005年09月

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クロエ

クロエクロエ デラックス版
Chloe
2001年/日本 /128分
監督・脚本:利重剛、原作:ボリス・ヴィアン
脚本:萩生田宏治
撮影:篠田昇
編集:掛須秀一
出演:永瀬正敏、ともさかりえ、塚本晋也、松田美由紀、鈴木卓爾、青山真治、西島秀俊、他
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ボリス・ビアンの「うたかたの日々」が原案。「エレファントソング」の利重剛監督の「映画への愛」に満ちた作品。

原案が原案だけにストーリー展開は観始めて30分でラストが読めるのですが、それとは別に、ライティングや演出、場面設定など「お金をかけずに手間かける」というか、映画愛に裏打ちされた様々なアイデアが散りばめられており、それを感じれる者は、それだけでいい気持ちになれる「映画的な映画」。

塚本晋也監督のキャラクターやセリフは「心に響く」と同時に「どこかユーモラス」に感じられる。青山真治監督の「キタノ役」やもキャラクター設定などが面白い。「医者役」に西島秀俊さんが現れたときも少しびっくりしました。

ところで青山真治監督の「ユリイカ」には利重剛監督が出演していますが、「クロエ」の青山監督よりも「ユリイカ」の利重監督の方が存在感があるように思うのは私だけだろうか? どっちの監督が使い方うまいのか、役者としての力量があるのかはわかりませんが。(笑)

そう、こうゆう派手さはないがある部分をちゃんと描いている映画って案外少ないように思います。

興行成績などにばかり気をとられていると、いい映画は作られにくくなることを再認識。「クロエ」が興行的に駄目だったわけではありません。

ポーラX

ポーラXポーラX POLA X
1999年/フランス・日本/134分
監督・脚本:レオス・カラックス
原作:ハーマン・メルヴィル
撮影:エリック・ゴーティエ
出演:デルフィーヌ・シュイヨー、ペトルータ・カターナ、ギョーム・ドパルデュー、カテリーナ・ゴルベワ、カトリーヌ・ドヌーヴ、他
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この映画、封切り直後から、偶然か必然か、計6回位観ている。

一連のカラックス作品の魅力のひとつに「焦燥感」が挙げられる。観ていて自分の中に緊張感を誘発されるあまり、プロット上どのようなつながりでその緊張感が生まれているのか、つい見失ってしまうことも多い。

画的には、単なる寝起きのギョーム・ドパルデユーであるが、その画からにじみ出てる感情は絶望だったりして、その根拠、というか出来事がきれいに省かれていたりするので、観ている方としては、むきだしの感情と向かい合っているような気持ちになる。

人は「映画で何を観たいのか?」ということを考えると「人の感情」であったりするので、観終えて、仮に幸福な気持ちに近づけなくても、満足感や何か別のエネルギーのようなものが生まれることがあり、そんな気持ちにさせてくれる映画は数少ない。

それは、カラックスの映画に対する真摯な態度によるものだ。

テープ

テープテープ
Tape
2001年/アメリカ/87分
監督:リチャード・リンクレイター
原作・脚本:ステファン・ベルバー
撮影:マリーズ・アルバルティ
出演:イーサン・ホーク、ユマ・サーマン、ロバート・ショーン・レナード、他
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「恋人たちのディスタンス」で野心的な恋愛映画を撮り、ベネチアを制したリチャード・リンクレイター監督のDVに見えないDV作品。

撮影カメラはPD-150を使用した模様ですが、ただ撮っただけではあの画はだせないので編集作業で何かしているはず。

スポンサーなしで16ミリフィルムで長編を撮ろうとすると莫大な制作費がかかる事を考えると、どうすればあれくらいの画が撮れるのかとても興味深い。最近はパナソニックADX-100?などは24コマ・映画モードでフィルムっぽい映像が撮れるようですが、ハイビジョンを比べてしまうとソースの弱さ?が気にならずにはいられない。でもハイビジョンのDTVはもう少し待ちかな。

さて、映画ですが、かつて「今を生きる」でナイーブな少年を演じていたイーサン・ホークとその実の妻、ユマ・サーマン、そして同じく「今を生きる」で早まって自殺を遂げてしまったロバート・ショーン・レナード、3人の密室劇。

低予算、少人数のクルーで撮影したこの作品は完成度の高い自主映画、小演劇のよう。フォーマット的にも「DVでもこれくらいのことができる可能性がある」とリアルに感じられるので「映画を撮ろう」とする私にとって、手のとどくバジェット・機材で「これだけできる」と感じれるのは、作品の内容の好き嫌いにかかわらず、大きな励みになる作品でした。

ニンゲン合格

ニンゲン合格ニンゲン合格
1998年/日本/109分
監督・脚本:黒沢清
撮影:林淳一郎、音楽:ゲイリー芦屋
主題歌:洞口依子
出演:西島秀俊、役所広司、菅田俊、リリィ、麻生久美子、大杉漣、哀川翔、戸田昌宏、鈴木ヒロミツ、他
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初めて観たのはたしか1998年の東京国際映画祭だったように思う。それ以来折に触れて観てしまう作品。

公開当初、黒沢清監督の「家族モノ」ということで漠然と期待していたが、良い方向に裏切られてしまった。

最近、CMなどでもよく見かける西島秀俊さんが主役ですが、特に印象的なのは彼がソープランドに連れていかれるシーンや、後半の父親がテレビのニュース映像に現れるところは特に驚く、というか笑ってしまった。

映画好きでも(だと?)観ていて心地よい笑いを触発される映画はとても少ないので、私にとってとても貴重な監督の作品の一つ。

もちろん、西島秀俊さんと麻生久美子さんの絡みのシーンなどもとても印象深い。

阪本順治監督などと違って、北野武監督のようにシラけた感じの演出が冴える黒沢清監督ですが、目の前の映像に土は映っていても土の匂いを感じさせない。

でも、人間的な「やるせなさ」のようなものはしっぽりと伝わるこの作品は、私にとってとてもとらえどころがない魅力に溢れた1本。

幸福の鐘

幸福の鐘 デラックス版幸福の鐘 デラックス版
2002年/日本/87分
監督・脚本:SABU
撮影:中堀正夫
出演:寺島進、西田尚美、篠原涼子、益岡徹、塩見三省、鈴木清順、板尾創路、白川和子、手塚とおる、滝沢涼子、田山涼成、他<
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数年前、大学時代のサークルの先輩のつてで、プロの撮影現場を見たくてエキストラに行った作品。

SABU監督は、今まで、「弾丸ランナー」「ポストマン・ブルース」「アンラッキー・モンキー」「DORIVE」と、作家性を出しつつエンタテイメント性も併せもった、数少ない映画監督だと思っていたのですが、今回は「弾丸ランナー」の時はひたすら走っていましたが、それが良いかどうかわからないけれど、今回も一つのことを追求していた。

たしか、ベネチア映画祭に出品していましたが「こういう作風の映画は映画祭で賞を受賞しないと興行的に厳しいだろう。」と思いながら現場に参加していたことを思い出した。

結果的には受賞は逃しましたが、その当時は北野武監督の「花火」がベネチアで金獅子賞を受賞したりと世界的に「日本映画」が流行っている感があったので、ひょっとすると受賞もあるかな、と期待もしていたのですが。

映画は出てくる役者がみな素晴らしいので安心して観ていられる感の高い映画でした。この脚本を自主映画でやっても「観続けるのはキビシイ」感じになると思う。

そんな地味な演出・脚本は自分好みで、低予算でもある意味ゴージャスだと思うのですが、もう一歩テーマを掘り下げる、というか、スケールを大きくできたら、感動できる人が増える作品=作品のメッセージに普遍性が出るのではないかと思ってします。

インストール

インストール コレクターズ・エディション (2枚組)インストール コレクターズ・エディション (2枚組)
2004年/日本/94分/PG-12
監督:片岡K
原作:綿矢りさ「インストール」河出書房新社
脚本:大森美香
撮影:池田英孝
出演:上戸彩、中村七之助、神木隆之介、菊川怜、小島聖、田中好子、他
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たしか、今年の正月に池袋でロードショーしていて、綿谷りささんの本の映画化ということで、村上龍氏が審査委員長の時の芥川賞受賞作「蹴りたい背中」などでも気になっていた作家だったので「ぜひ劇場に足を運ぼう」と思っていたが、予告編の「コケティッシュな感じ」にすっかり足が動かなくなってしまい、観れるまで早9ヶ月がたってしまった。

結果的には、自分にとっては原作を読みたくならなかったのは残念だった。原作ものの(オリジナル脚本じゃない)映画で出来がいいものはつい原作に手がのびてしまうことが多い。

広い気持ちを持って、良いところをひろっていけばそれなりにはたくさん見つかるのだろうけど、根本的に演出が中途半端だった感は否めないと思う。

作品を観始めて5分くらいで終わりまで自分の想像を超えるようなことが起こらないだろう、という確信がもててしまうのは、脚本以上に作品にたいする演出家の手腕によるものが大きいと思う。

演出家のその作品に対する情熱というか想いが小さくまとまってしまったまま、スタッフ、役者に誤解なく伝わっている、という感じだろうか?

用は「もったいない」感がとてもしてしまう映画でした。本とか美術とかスタッフとか役者とか、話題性のある人たちが集まって作った割には「普通の作品ができた」という気がします。

上戸彩さん、今後、どんな女優になっていくのか、とか、小島聖さんってきっとじかに本人と話したら自分をもっていかれてしまいそうだな、とか、田中美子さんの存在感って自分好みだな、などいろいろ感じました。

でも変に期待しないで観れば、この作品を楽しめるようにも思う。

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