素粒子

トップページ > ドイツ映画 > 素粒子

素粒子 [DVD]素粒子 [DVD]
ELEMENTARTEILCHEN
2006年/ドイツ/113分
監督・脚本:オスカー・レーラー
原作:ミシェル・ウェルベック
出演:モーリッツ・ブライプトロイ、フランカ・ポテンテ、マルティナ・ゲデック、クリスティアン・ウルメン、ニーナ・ホス、ほか
Amazonで詳しく見る

いろんなアクチュアリティのあるモチーフが詰まった現代的な文芸映画。現代的な問題を扱う映画がよくそうであるように、基本的には安易な回答を導きだせないせいか「病的」で「救いのない感」が作品のそこかしこに漂う。

映画の印象としては、個人的に辱めを受けることなく最後まで見続けられましたが「原作がいい映画」「ドイツの勢いのある俳優が出演している映画」という印象は拭えない。気になったのは全編に共通する「カット割りの多さ」。編集でフラッシュバックを多様しているのでプロデューサーなどからわかりやすくするようなプレッシャーがかかったことは想像できるが、アップの切り返しで心理描写を表現するやり方や、ピン送りで「生死をかけた電話」を表現するのは正直勘弁してほしい。比較的難解な原作を取り上げる際に、その難解さが台詞によるようなものは「映画」としてはいかがなものなのだろうか。監督にはフラッシュバックだけではない、映像の演出を工夫してほしかった。

ただ、俳優と原作に関してはいろいろ楽しめた。どこかで見た顔と思えば、なんと15年程前に渋谷で看た「ラン・ローラ・ラン」の主役の二人が出演しているではありませんか。当時20歳くらいだった彼彼女は35歳くらいになっており、ちょうど今の自分に近しい年齢となった彼らの変化に、自分の変化を重ねてみたりして楽しめた。初めて感じた「初めて観たのに初めてじゃない感情」に似たもの(初めてではなかったのですが)を感じられたのはよかった。

それと原作。本来は映画を観たあとに原作を読みたくなる映画は「映画として良い出来」となりますが、この作品はこの原則にあてはまらなかったところが興味深かった。なんというか「俳優の台詞に頼っている部分やわかりやすく加工されてしまったカットの元となった原作を読んでみたい」という新しい気持ちを作れたところは面白かった。

でも、ひょっとするとこの変な平易さは昨今のドイツの現状・空気を的確に表したものかもしれないのでこの点は保留ではあるのですが・・・。

「素粒子」公式サイト
http://www.espace-sarou.co.jp/soryushi/







プロフィール

「映画喫茶」は自主映画監督、酒井啓が鑑賞した映画や小説などについて綴ったデータベースです。プロフィールなどの詳細は下記公式サイトへどうぞ。

○ 公式サイト
http://sakaiakira.net/
○ 公式サイト(English)
http://en.sakaiakira.net/

PR



Copyright 2005-2011 sakaiakira.net All Rights Reserved.