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フルメタル・ジャケット

フルメタル・ジャケットフルメタル・ジャケット
Full Metal Jacket
1987年/アメリカ/116分
監督・脚本:スタンリー・キューブリック
原作・脚本:グスタフ・ハスフォード
撮影:ダグラス・ミルサム、音楽:アビゲイル・ミード
出演:マシュー・モディーン、アダム・ボールドウィン、ヴィンセント・ドノフリオ、R・リー・アーメイ、ドリアン・ヘアウッド、他
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「フルメタルジャケット」はこれでたぶん3度目となる鑑賞。

回を増すことに冷静に観れるようになってくるとは思うが、退屈に感じないばかりか、新たな発見もあるように思い、自分の状況や考え方の変化も感じられ刺激的な映画。

最初はただ衝撃を受け、前回は映画の構成が気になり、今回はこの作品が表現している表象が気になった。

一般的に「ベトナム反戦映画」の一本とされるが、キューブリックは過去の「突撃」においてもあからさまに「戦争反対」を作中で謳ったりはしない。

アレクサンドル・ソクーロフ監督の「太陽」などのように、戦争の当事者・主人公に対して扇情的に描くようなことはしない。

被害者も加害者も同等の価値で登場する。このストイシズム的ともいえる客観的な描写により、この映画を真剣に観るものは撃たれることになる。

ドキュメンタリーでもないにも関わらず、ある意味、ドキュメンタリー以上に、客観的に描写されると、観るものは結果的に、その観点、倫理観を問われることとなる。

自分の存在に関する倫理観。こんなことは死ぬまで考えることはない人も大勢いるだろうが、世界はこの倫理観の上になりたっている。

この「前提のない思考」は観るものに困惑や恐怖を与えかねないが、抜本的に問うためにはまさに必要不可欠な作用である。

チープなシシリズムを強要されることに比べたら、このカタルシスは他と比類がない。

全く稀有な映画だ。


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コメント (1)

ぱんだは描写したの?
ただフォードで、原作とか刺激した?

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2006年10月04日 08:04
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