2006年03月

トップページ > 2006年03月

愛の神、エロス

愛の神、エロス愛の神、エロス
eros
2004年/109分
フランス・アメリカ・イタリア・中国
監督:ウォン・カーウァイ、スティーヴン・ソダーバーグ、ミケランジェロ・アントニオーニ
出演:コン・リー、チャン・チェン、アラン・アーキン、ロバート・ダウニー・Jr、他
Amazonで詳しく見る

カンヌを沸かせた3人の監督たちが「エロス」をテーマにした約30分の作品を集めたオムニパス映画。

ソダーバーグ監督のフィルムノワール調の作品やアントニオーニ監督の感覚的な作品も好きですが、何んと言っても1本目のウォン・カーワァイ監督の作品の出来が素晴らしかった。

30分程の「ショートフィルム=短編」だとプロットを説明するための段取的な映像に追われてしまい、長編作品と比べると、心のやわらかいところに届くようなところまでいかない、印象があったのですが、このウォン・カーワァイ監督の作品は見事に僕の予想を裏切った。

テーマは「接触」でしたが、娼婦に恋をした仕立て屋の切実な想いが現れ出ていて思わず熱くなってしまった。
単にこういう話が好きというわけではないとは思うのですが…。

この作品の撮影は、当時脅威をふるっていた感染症「SARS」で緊張状態にあった中国で撮影されたとのこと。

そういう状況で「接触」をテーマにしたこの作品は役者スタッフともども「マスク・ゴム手袋」などしながらの撮影だったようです。映像の中にある緊迫感はそういう現場の緊張感のような気がします。

ショートものでもやればすばらしいものができることを気づかせてくれた作品。
今年の短編部門でのNo.1です。


■公式サイト
http://www.ainokami-eros.com/

female

femalefemale
2005年/日本/118分/R-18
「桃」監督:篠原哲雄
原作:姫野カオルコ、主演:長谷川京子
「太陽のみえる場所まで」監督:廣木隆一
原作:室井祐月、主演:大塚ちひろ
「夜の舌先」監督:松尾スズキ
原作:唯川恵、主演:高岡早紀
「女神のかかと」監督:西川美和
原作:乃南アサ、主演:大塚寧々
「玉虫」監督:塚本晋也
原作:小池真理子、主演:石田えり
Amazonで詳しく見る

最近「短編=ショートフィルム」が気になりだし、その流れに乗って鑑賞。

そもそも塚本晋也監督の現在の最新作「玉虫」目当てに鑑賞したのですが、ノーマークだった「女神のかかと」監督:西川美和、原作:乃南アサ、主演:大塚寧々がこの5本の中では人の機微が表現されていて特に印象的でした。

この作品の公式サイトを見てみると、西川監督は、僕と同じ大学、同じ歳で、僕の好きな作品、「M/OTHER」(諏訪敦彦監督)などにフリーの助監督として参加していた人のようで、一方的に妙な親近感というか、ライバル心のようなものをかきたてられてしまった。西川監督には今後も注目です。

肝心の「玉虫」ですが、短編、長編の違いはありますが、前作「ヴィタール」の方が自分好みだったことは否めない。「六月の蛇」以降「エロスもの」? に向かっている感がありますが、塚本監督の今後の方向にも注目です。

短編=ショートフィルムはとかく段取りをすすめるだけで終わってしまう感じがある。余白を感じられる作品はネタによる部分が大きいので、ネタ繰りが特に難しいですね。


■公式サイト
http://www.female-movie.com/

アワーミュージック

アワーミュージックアワーミュージック
Notre Musique
2004年/フランス=スイス/80分
監督・脚本・編集:ジャン=リュック・ゴダール
製作:アラン・サルド、ルート・ヴァルトブルゲール
撮影:ジュリアン・ハーシュ
美術:アンヌ=マリー・ミエヴィル
出演: ナード・デュー、 サラ・アドラー、ロニー・クラメール、サイモン・エイン、ジャン=リュック・ゴダール、他
Amazonで詳しく見る

ふと、2000年代に入ってからのゴダール作品は観ていないことに気づき慌てて鑑賞。

ゴダール作品は「勝手に逃げろ/人生」の滑稽さが快感で特にお気に入りなのですが、そんなゴダールが2004年に元気に映画を作っていることが確認できただけでホッとしてしまいます。

多くの映画好きにとってゴダール作品は「語り」を誘発する監督のようですが、不思議と何も思いつきません。僕にとってゴダール作品は自分の中の映画にまつわる雑念を浄化してくれる貴重な映画であることは間違いありません。

3月18日、渋谷のイメージフォーラムで、17時〜の回を鑑賞したのですが、その回終了後、現「カイエ・デュ・シネマ」編集長のトークイベントがありました。19日は蓮見重彦さんと青山真治監督のトークがあったようで、とても気になるところです。

そう、今度、本国フランスのパリにある「ポンピドーセンター」でゴダールの大回顧展が催されるそうです。パリにいれば是非行ってみたいものです。


■公式サイト
http://www.godard.jp/


■ポンピドーセンター関連ページ
ポンピドーセンター(ゴダール回顧展)フランス語

ポンピドーセンター(ゴダール回顧展)英語

凶気の桜

凶気の桜凶気の桜
2002年/日本/122分
監督:薗田賢次
原作:ヒキタクニオ
脚本:丸山昇一
撮影:仙元誠三
主題歌:キングギドラ
出演:窪塚洋介、RIKIYA、須藤元気、高橋マリ子、江口洋介、原田芳雄、他
Amazonで詳しく見る

日曜の深夜にふとテレビをつけたら見覚えのある映画が放送されていて再び見てしまった。

そろそろ、桜の季節の到来ですが、この「凶気の桜」は公開当時、「GO」で時の人となった窪塚洋介さんが製作段階から関わったことや、主演で昼間の渋谷のロケの苦労話、などがテレビで放送されていたことを覚えています。

ヤクザ映画的でありながら、原田芳雄さん、江口洋介さん、高橋かおりさん、須藤元気さん、など、Vシネの臭いのしない役者陣や、重く、かつ、透明感のある映像が印象的な映画です。

その後の窪塚さんの事故のことなどを思い出すと、「映画を生きる人々の危うさ」などを考えてしまします。何もなければ何も作れないのですが、最近観たフィリップ・ガレルの作品などを観てもそんなことを思ってしまいます。


■公式サイト
http://www.toei-video.co.jp/data/kyoki/

白と黒の恋人たち

白と黒の恋人たち白と黒の恋人たち
Sauvage Innocence 
2001年/フランス/117分
監督:フィリップ・ガレル
撮影:ラウル・クタール
出演:メディ・ベラ・カセム、ジュリア・フォール、ミッシェル・シュボール、他
Amazonで詳しく見る

「ギターはもう聞こえない」「愛の誕生」「ニコイコン」「秘密の子供」「自由、夜」等のフィリップ・ガレル監督の現在のところの最新作。

この「白と黒の物語」は「ギターはもう聞こえない」などと同様に歌姫ニコとの映画製作=生活を題材としているが、これらと異なるところは、自伝的な作品ではありますが、作り手と題材の距離が離れている点にある。

20年間の年月がそうさせたのかもしれないが、同じテーマ(同じ人)を題材にした映画の本数が多いと思うのは私だけだろうか。

今回はその距離感があるため脚本は自主っぽくないように思うけれど、撮影のシーンの度に同じレールが登場し、磨いたり調節したり、いつもだれかがいじっていたのが印象に残っている。ガレルのこだわり?なのでしょうか。

フィリップ・ガレルはあまり人には勧められる作品を作りませんが、結局好きな監督の1人です。

苦笑いが似合うような映画です。


■公式サイト
http://www.bitters.co.jp/shirotokuro/

ヴィタール

ヴィタール スタンダード・エディションヴィタール スタンダード・エディション
VITAL
2004年/日本/86分
製作・監督・脚本:塚本晋也
音楽:石川忠
エンディング:Cocco
出演:浅野忠信、岸部一徳、國村隼、串田和美、リリィ、木野花、利重剛、他
Amazonで詳しく見る

「鉄男」「東京フィスト」「BULLET BALLET バレット・バレエ」「六月の蛇」などで有名な塚本晋也監督作品。この作品、公開は2004年でしたが、観たい観たいと思いつつようやく鑑賞。

結果的には2006年に観た映画、今のところ No.1 になりました。まず、「人間性とは何ぞや?」といった普遍的な大きなテーマに挑んでいること。「肉体」と「記憶」といったテーマも脚本の中にうまく入っていること。さらに、脚本を通じてこの作品に対する塚本監督の並々ならない取材力を感じたこと。などで印象的な1本となりました。

主演の浅野忠信さんが意外と「普通の人」というか「ヒューマニズム」を感じる役柄に挑戦していたのは意外と新鮮でした。

もちろん岸辺一徳さんの独特の語り口も光っていたのですが、利重剛監督もいい味をだしていました。彼の演技は何故か「クロエ」に出演していた塚本晋也監督の演技そのもの、のような印象を受けました。2人の関係がそうさせるのでようか。青山真治監督の「ユリイカ」と利重剛監督の「クロエ」を観ても2人の演技は相関的になっている気がします。不思議です。

これまで「鉄男」や「双生児」など、とかく「美術の人」と思われがちな塚本監督ですが、この作品は人間の根源的、普遍的なテーマに正面から挑戦しており、「妖怪ハンターヒルコ」などの頃と比べると、映像も洗練され、人間的、というか反ミニマリズム的な意味で「巨匠」という単語を思い出したりもするようになりました。

■公式サイト
http://www.vital-movie.com/

プロフィール

「映画喫茶」は自主映画監督、酒井啓が鑑賞した映画や小説などについて綴った備忘録ブログです。プロフィールなどの詳細は下記公式サイトへどうぞ。
■公式サイト(日本語・Japanese)
http://www.sakaiakira.net/
■公式サイト(英語・English)
SAKAI Akira Official Website
http://en.sakaiakira.net/
■「映画喫茶」モバイル版
http://m.sakaiakira.net/

About 2006年03月

2006年03月にブログ「映画喫茶」に投稿されたすべてのエントリーです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

前のアーカイブ→2006年02月

次のアーカイブ→2006年04月

他にも多くの記事があります。
メインページ
アーカイブページ



« この他の記事の一覧はこちらから »

Copyright 2007 sakaiakira.net All Rights Reserved.