2006年02月

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欲望

欲望欲望
小池 真理子

新潮社

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「欲望」というとつい、イタリアのミケランジジェロ・アントニオーニ監督の「Blow Up(欲望)」を思い出したりしますが、こちらは和モノ。

去年、篠原哲夫監督によって映画化された原作の小説。作者は「恋」で直木賞を受賞した小池真理子氏。

映画の予告編などで、「avec mon mari」での演技が初々しかった」板谷由夏さんや高岡早紀 さん、村上淳さんなどが出演することを知り。がぜん興味を惹かれていたが映画館へ行きそびれてしまった。

逆はいいけれど、原作ものの映画はたいがい、先に原作を読んでしまうと映画を楽しめなくなってしまうものですが、篠原監督を信じて先に本を読んでしまいました。DVDになってしまいますが、観るのが楽しみです。

小池氏の小説は初めてでしたが、軽く、リズムのある文体でとても読み進めやすいものでした。

「読み物」としては言葉で表すのが困難な「人間のやわらかい部分」を感じさせることができている小説で、それが読みやすさと両立しているのは、さすが、の一言です。評判はいまいちなようですが、直木賞受賞作の「恋」も読んでみようと思う。

作り手としては「受賞」することは生きていくうえでとても助かることだと思いますが、受けてとしては、つまらないものばかりが目立つのは、ひとえに審査員だけの問題なんだろうか。

シモーヌ

シモーヌ デラックス版シモーヌ デラックス版
S1MONE
2002年/アメリカ/117分
監督・製作・脚本:アンドリュー・ニコル
撮影:エドワード・ラックマン、デレク・グローヴァー
出演:アル・パチーノ、レイチェル・ロバーツ、ウィノナ・ライダー、キャサリン・キーナー、エヴァン・レイチェル・ウッド、他
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「ガタカ」の監督、「ターミナル」の製作総指揮・原案などの、アンドリュー・ニコル監督の一風変わったヒューマンSFドラマ。この作品で「美のイコン」のような役・シモーヌを演じたレイチェル・ロバーツは実妻。

いろいろ気づかないこととして観なければいけないプロット上の基本設定があり、「それに気づかないフリをするのはちょっと…」と思ってしまう脚本。一応近未来SFものなので致しかたない部分はあると思うのですが、「お金で解決できない部分としてこんなこともあるのか」と思えたのはある意味新鮮。

主演のアル・パチーノの熱演が光ります。彼の役名は「タランスキー」なのですが、「タランティーノ+ポランスキー」? と思ってしますのは安直でしょうか。

アンドリュー・ニコル監督のちょっと変わった異色作。


■オフィシャルサイト
http://www.s1m0ne.com/

エリ・エリ・レマ・サバクタニ

エリ・エリ・レマ・サバクタニ 豪華版 2枚組エリ・エリ・レマ・サバクタニ 豪華版 2枚組
Eli,Eli,Lema Sabachthani?
2005年/日本/107分
監督・脚本:青山真治
撮影:たむらまさき
出演:浅野忠信、宮崎あおい、中原昌也、筒井康隆、戸田昌宏、鶴見辰吾、エリカ、川津祐介、岡田茉莉子、他
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嫌いな映画か? と問われれば好きな映画。劇中の効果音を含めた(劇中の釧路? での野外ソロライブは観ているだけで気持ちがよい)音楽が印象的。レオス・カラックスの「ポーラX」を思い出す。

「Helpless」の浅野忠信さんや「EUREKA」の宮崎あおいさんのセリフのない演技で魅せるシーンが多いように思ったが、2人とも過去の青山作品でいい味をだしていたので安心して観れる。

監督もハマり具合を計算しやすかったのでは? ただ筒井康隆氏は滑稽な程の大根っぷりで別の意味で際だった存在だった。深く刻まれた皺など「顔」はできていると思うのですが、しゃべらせるとなかなか凄いことを再確認。

よほど低予算で作っていたのか、画がとてもチープな感じがした。映っているものにお金がかかっていない。

美術さんが作ったであろうセットや小道具は素敵でしたが、プロットを押し進める力が感じられず取って付けたような印象が残るのは、ひとえに筒井さんのせいかもしれないが、「レミング病で自殺者が1000万人を超えている」という、「リアル感」がほしいSFには、セットや美術などを完璧にしないと中途半端になってしまいかねないと感じてしまう。

「リアル感」というより「フィクション感」が強ければそれはそれとして受け入れやすいのだが。その場合、低予算でもアイデア次第で面白くなりえるのではと思う。

細かいことはさておき「爆音がキモチイイ」映画。


公式サイト
http://www.elieli.jp/

♂♀(オスメス)

♂♀(オスメス)♂♀(オスメス)
花村 萬月

新潮社

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中年小説家と風俗嬢2人の3Pを主に描いたいやらしい単語満載の情動小説。花村萬月を思わせる「小説家」が夜な夜な女の家を渡り歩き情事を繰り返す。

文庫化されている花村作品はだいたい読んでいるはずなのですが、この「♂♀」は以前途中まで読んで放置してあったにもかかわらずまた同じものを買ってしまいました。

書いたとおりどのページにもふんだんに卑猥な単語がちりばめられており電車の中で読むのは少しためらわれる本ですが、人物描写のなかの「切なさ」のようなものについ心打たれてしまいます。

単に、花村萬月作品に登場する女性達に憧れを抱いているだけかもしれませんが…。

青い夢の女

青い夢の女青い夢の女
Mortel Transfert
2000年/フランス・ドイツ/122分
監督・製作・脚本:ジャン=ジャック・ベネックス
原作:シヤン=ピエール・ガッテーニョ
撮影:ブノワ・ドゥローム
出演:ジャン=ユーグ・アングラード、エレーヌ・ド・フジュロール、他
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数年前になりますが「青い夢の女」の日本公開にあわせて監督のジャン・ジャック・ベネックスが来日し、東京大学のフランス文学研究科主宰の講演会のようなものに参加した記憶があります。

ベネックスの作品は「ベティーブルー」が印象的ですが「ディーバ」や「ロザリンとライオン」など自分好みの作品を作ってくれる世界の中でも数少ない映画監督の一人です。

それまで監督本人はスチールでしか観たことはなかったのですが、とても「女好き」な印象が強く、良くも悪くも期待を裏切られた感がありました。いったん話し始めると、話しが長そうな人です。

さてこの「青い夢の女」ですが、今回もまたとても僕好みでした。とにかく画がすばらしい。きれいな構図を集めた映画は他にもたくさんあるのですが、なんというか、映画への愛や画のもつ深み、のようなものを再現する画はめずらしい。ハリウッドなどと比べるとお金はかかっていませんが、知恵や工夫が見られるところも好印象。

今作は新たに「ユーモア」に取り組んでいたように思われますが、そこに深みは感じられません。「ディーバ」や「ロザリンとライオン」などを思い返しても、ベネックスはナイーブな心象をさらりと的確に描くことが特長かな。

自分的にはレオス・カラックスと足して2で割ったらどんな作品になるのだろう、などど考えてしまいます。

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