2005年11月

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修道女

修道女修道女
La Religieuse
1966年/フランス/131分
監督・脚本:ジャック・リヴェット
撮影:アラン・ルヴァン
出演:アンナ・カリーナ、ミシュリーヌ・プレール、リゼロッテ・プルファー、フランシーヌ・ベルジェ、他
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何年も前にになりますが、たしかシネセゾンのオールナイトでゴダールの「女は女である」などと一緒に観たように思う。リヴェット汁だらだらの中期ヌーヴェルヴァーグの作品。

他の映画と同様に、今となっては内容を思い出せない映画のひとつなのですが、予想を超え、作品中盤から「銀幕にくぎ付け」になってことを覚えている。

特にアンナ・カリーナが刺すシーンでナイフのアップの画がカットインされているのを観たときにとても「ドキリ」とした記憶がよみがえります。クローズアップカットのカットインの成功例として引き合いにだしたくなります。

映画的には地味だったと思いますが、観終えた後に厭な気持ちになった記憶は全くありません。

以外とアンナ・カリーナがしっかり芝居をしている作品って少ないようにも思うので、そういうことでも貴重な作品。

大いなる遺産

大いなる遺産大いなる遺産
Great Expectations
1997年/アメリカ/110分
監督:アルフォンソ・クアロン
原作:チャールズ・ディケンズ
出演:イーサン・ホーク、グウィネス・パルトロウ、ロバート・デ・ニーロ、他
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始めからどうも「寓話的」と思っていたら、オリジナル脚本の映画ではなかった。というより、読んだことはないが、ディケンズ原作で、少なくとも映画化は3回目の作品だった。

2作目は今回のグウィネス・パルトロウの役を「愛の嵐」、最近は「まぼろし」「スイミングプール」などで活躍の場を広げているシャーロット・ランプリングが演じていたよう。

結局、脚本や役者の好き嫌い次第、と言う意味で「演劇的」な映画だったと思いますが、イーサン・ホークのファンとしては楽しめた1本でした。ロバート・デニーロなどもハマリ役だった。

予言者めいたあの老婆は思い返せば数年前に他界した、初期マトリックスにも出演していた役者と似ているように感じた。単に役柄が似ていただけかもしれませんが。

愛しのチロ

愛しのチロ愛しのチロ
荒木 経惟

平凡社

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アラーキーこと荒木経惟氏の写真集。かなり前になりますが、新宿東口にあるBAR「DUG」でブルーの水玉のシャツを着て元気に飲んでいるのをお見かけしたことを思い出します。

その店にはよく来ているようでとてもくつろいでいらっしゃったのが印象的です。

さてこの本の主役の「チロ」ですが、よくあることではあるかと思いますが、ウチの飼い猫に結構似ていて、人の猫を観ている気がしませんでした。

ページを捲っていると「ウチの猫がアラーキーのお腹の上で寝ている!」と思ってしまうような調子でついニヤニヤしながら観てしまいます。

幸荘物語

幸荘物語幸荘物語
花村 萬月

角川書店

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単行本「吉祥寺幸荘物語」の改題文庫版。

「小説家志望」の男の子が主人公の青春物語。どの作品だったか忘れてしまいましたが、主人公がパン工場で働いている作品を思い出したが、それと比べると、読んだ印象は、たしか長編処女作「ゴッドプレイス物語」に近く、青春のさわやかさ、光と影、が現れていた。

ただ、読んでいる時はあまり気づかなかったけれど、この作品も桐野夏生さんの「冒険の国」の時と同様に、伏線となっているエピソードがなんとなく先の予定調和を予感させてしまうような気もしましたが、読んでいる最中はそういうことも含めて楽しんでいたのかもしれない。そういう意味でも安心して読める物語だった。

花村作品に頻繁に見られる「自尊心」は彼が構築しようとする倫理観の中で不可欠な要素だと思いますが、とてもわかったような気になりつつも、はっきりとはわからない、なかなかやっかいな問題です。

TAMPEN 短篇

TAMPEN 短篇TAMPEN 短篇
2001年/日本/65分
製作:磯見俊裕
撮影:猪本雅三、佐藤譲、田村正毅、山崎裕
出演:渡辺真起子、永瀬正敏、柳愛里、青山真治、他
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演出家(監督)をたてない手法で製作された変わった作品。

細かい演技指導をしないという点では阪本順次監督などとは正反対の出来上がりになるかと思う。そればかりか、黒沢清監督や北野武監督らのような「過剰な演技をそぎ落としたタイトな」演出すらない。

どちらかといえば、諏訪敦彦監督の「Mother」などと同じ方向性をもった作品のように思いますが、「Mother」のような長編ではなく20分程の短編のオムニバス形式なので、また違った切れ味、味わいがあるように思う。

女優の渡辺真紀子さんの魅力溢れる作品である、と同時に、役者として出演している、青山真治監督の意味深な台詞も心にひっかかる。

冒険の国

冒険の国冒険の国
桐野 夏生

新潮社

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久々の桐野夏生さんの作品でした。「天使に見捨てられた夜」「ファイヤーボール・ブルース」「柔らかな頬」などしばらく前に乱読していたのですが、しばらくぶりになります。「OUT」は映画化もされ話題になりました。

この「冒険の国」はかなり初期の長編作品(長編処女作?)ですが、文学賞の受賞は逃したものの、一連の桐野作品にみられる「シニカルさ」がすでに存分に現れていました。この文庫版は当時の発表原稿に手を入れて「文庫オリジナル版」となっています。

約160ページで「長編」というより「中篇」という感じですが、著者の他の長編と比べると、「ネタ」と「ネタ」のあいだにアソビがない、というか、全体の構成上必要な要素があからさまにそこにある、感じが少しします。

「中篇」の難しいところでしょうか。著者はずいぶん前に書いたもので、その未熟さに読み返すのが恥ずかしかったようですが。

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