2005年07月

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メノット

メノットメノット
2005年/日本/104分/R-15
監督・脚本:及川中
脚本:甲谷利恵
撮影:西村聡仁
出演:国分佐智子、藤本綾、金子昇、阿部進之介、魚谷輝明、甲本雅裕、他
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たしか数年前だけど警察沙汰の事件を起こしていたはずの及川監督の最新作ということで劇場まで足を運ぶ。タイトルはわからないけど友達が及川監督の作品に出演したことがあるようで気になる監督の一人だった。

15禁のレイトショーなのでもっといやらしいシーンが多いかと思ったのですが「さりげない感じ」でこれで「映倫」にひっかかってしまうのはシビアな現実ですな。この作品にはないですが、そもそも作品に「ぼかし」入れるような日本映画? 映倫? の現実が未だに理解できない。普通に考えたらあり得ないことだと思うのですが。

さて本編ですが、登場人物のキャラクター設定が現実以上にハッキリ分かれていたところが気になった。そういう演出なんだろうけど所謂「演劇的」な感じがして「映画的」なリアリティーは感じられない。

こういう脚本は基本的にファンタジーではないのである程度「実話に即した」とか「現実にあり得るような」感じが必要になると思うますが、そこからの方向性が「即興」など「役者の地の部分」を活かす、というよりは、一つの「その映画の中での現実」を設定し、結果的に脚本を忠実に再現する、という方法がとられたように思う。

特に前半はしっくりこなかったのですが、後半はプロット内での不確定な要素が収斂してテンポアップしていてよかった。

出演の金子昇さんや藤本綾さんは以前テレビで見たことがあったように思うのですが、これからは映画にどんどん出演して欲しいです。出演数が増えれば事前情報としての「存在感」が増す、ということもあると思うのです。

あと藤本綾さんのヌード、綺麗でした。「脱ぐイメージ」の無い人が脱ぐとひとまずグッときてしまいます。

ポール・ボウルズの告白

ポール・ボウルズの告白~シェタリング・スカイを書いた男~ポール・ボウルズの告白
~シェタリング・スカイを書いた男~

Let It Come Down:The Life Of Paul Bowles
1998年/カナダ/73分
監督:ジェニファー・ベイチウォル
出演:ポール・ボウルズ、ウィリアム・バロウズ、アレン・ギンズバーグ、他
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ポール・ボウルズ関連はベルトリッチが監督した「シェルタリング・スカイ」しか観たことはなく、他の著作は読んだことがないのですが、モロッコのタンジールでのボウルズの生活を通じて、「ビート・ジェネレーション」と呼ばれているウィリアム・バロウズ、アレン・ギンズバーグ、ジャック・ケルアックなどが、現地安い値段で若い男を買い、召使いを複数雇い、ハシシなどに耽っていた生活が「アメリカ人」的フラットな視点で語られていた。

ボウルズは20年代からタンジールに渡っていたようだが、50年代になってバロウズやギンズバーグが来てからは他の名立たる「ビート」の方々がタンジールで(勝って)気ままな生活をしていた様子が、今となっては「おじいちゃんの昔話」のように好感度すら感じるくらいフランクに語られる。

あと、作中でボウルズとバロウズが話していましたが、ベルトリッチの映画版「シェルタリング・スカイ」を原作者のボウルズは全く認めていないよう。

バロウズも「映像化不可能だ」と同調していましたが、映画の「原作者」が別メディアの作品として一人歩きした作品に不満を言う、という紋切り型がわかりやすくあらわれていたことには少し驚いてしまった。

夢の中へ

夢の中へ夢の中へ
2005年/日本/103分
監督・脚本:園子温
撮影:柳田裕男
出演:田中哲也、夏生ゆうな、村上淳、オダギリジョー、市川実和子、岩松了、麿赤兒、温水洋一、手塚とおる、小嶺麗奈、臼田あさ美、菜葉菜、他
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まず、役者陣が豪華な映画でした。

園監督とは本人はまったく覚えていないと思いますが、10年程前に当時僕が通っていた大学の映画サークルのイベント絡みで一緒に旗に詩を書いた記憶があります。

たしかランボーを引用したことも今思い出しました。その頃から、園監督作品はほとんど全部観ているのですが、前作の『自殺サークル』と比べると初期の作品の印象に近いように思います。

DV作品ですが、撮る側の人間として「フィルムだったらなぁ」と思う気持ちも正直あります。もったいないように思います。

あと、レイトロードショーだったので、もっと「いやらしい」映画を期待していたのですが、想像以上に「真面目」というか「真摯」な後味の残る作品でした。

プロットの展開は漫画家の山野一氏の「パンゲア」におさめられている「ラヤニール」のように「どこかで観たような感じ」だと思いますが、台詞から見ている側の意識までこぼれてくる言葉は全体を通じて一つの線になっており、脚本の完成度の高さが伺えます。

それと演出。あの台詞まわしで長回ししたということは相当リテイクがあったか、役者が優秀だったか、だと思いますが、そんなところからも、「フィルムだったら・・・」と思う気持ちを思い出します。

自然光の美しさはフィルムの得意とするところだし、最終的に映画館で上映するためにキネコするのであれば素材は是非16ミリでもフィルムでお願いしたかったです。

なんだかんだ言っても観終えていい気持ちになってしまったし、いろんな部分で完成度が高かった作品でした。

「夢の中へ」公式サイト
http://yumenonaka.netcinema.tv/

★告知★7/17、18「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」関連イベント「REEL」にて上映

第14回「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」関連イベント「REEL」にて私が監督した『液体と傷』が昨年に引き続きMacintosh上映されます。当日は私も会場にいますので興味のある方は、是非お友達などを連れ遊びに来てください。入場料は無料(1ドリンク要)です。

今年は「The L Word」「青春801あり!」の上映や、女優・山咲千里さんと女優・グィネヴィア・ターナーさんのトークショウ、伏見憲明さんとエスムラルダさんのトークショウ、渡辺直美監督とみさおはるきさんによるトークバトルなど、上映以外にも盛りだくさんなイベントになっているようです。

●開催概要
日 程 ......... 7月17日(日)11時〜15時半、18日(月)16時~19時
時 間 ......... Restaurant Bar "CAY"(青山スパイラルビルB1F)
集客人数 ......... 400名×2日間=800名(予想・全日程込み)
料 金 ......... 入場無料(ドリンクかフードの注文要)

●協賛企業
アップルコンピュータ ......... コンピュータ機材の提供
Restaurant Bar "CAY" ................. 会場の提供

「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」公式WEBサイト

恋の門

恋の門 スペシャル・エディション (初回限定版)恋の門 スペシャル・エディション (初回限定版)
2004年/日本/114分
監督・脚本:松尾スズキ
原作:羽生生純「恋の門」エンターブレイン
撮影:福本淳、衣装:北村道子
主題歌:サンボマスター「月に咲く花のようになるの」
出演:松田龍平、酒井若菜、松尾スズキ、小島聖、塚本晋也、小日向文世、大竹まこと、田辺誠一、片桐はいり、市川染五郎、忌野清志郎、他
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大人計画の松尾スズキ氏の初監督作品。

のっけからとても「演劇的」な映画だった。何がそう感じさせるのかを観ながら考えてしまったが、その原因は「セリフまわし」もそうだけど「カット割り」と「空間の見せ方」にあるように思う。なんか映画っぽくない。それとも演劇的=松尾スズキ的ということか。。

それとこの映画、役者の使い方がとても贅沢。

内容、というかプロットの伏線だけに頼るのではなく、その筋で知名度のある役者さんを多数、というかキャラクターとして登場している人は全て名のある役者さんだったような気がする。コスプレ、同人誌、漫画芸術家?などある意味マイナーでディープな人々を描いているが、こういう役柄をメジャー感のある役者さんがやると絵になりやすいように思う。重さが半減されるのだろうか。

また、役者にとどまらずアニメ、漫画も庵野夫妻らによるオリジナルだったりしたところがこの映画の全体のクオリティーを上げている。

松田龍平さんは両親の顔が浮かびます。「陽炎座」と「エレファントソング」を足して2で割ったような。

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